起きたら『グルド』になったので、取り敢えず歯を磨く事から始めようと思う   作:ヘルメット助教授

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誤字脱字ありましたらスイマセン

途中で視点が定点カメラに替わります


18話、天下一武道会中編

『それでは、本日最後の試合!

孫悟空選手対、ラディッツ選手の闘いを、始めて下さい!』

 

銅鑼の音が響き、舞台の2人が向かい合う

 

黒髪のツンツン頭に亀仙流の道着を着た悟空と、この一年近くで、すっかり原作と同じ風貌になったラディッツ

 

実の兄弟が天下一武道会の本選でブツかる

 

……いやね、なんか感慨深いですよ

 

感慨深いんですが……、これは試合にならないでしょ

 

「あり?どうした?構えねーんか?」

 

ファイティングポーズを取る悟空に対し、ラディッツは腕を組んだまま不動の構え

 

「……」

 

「来ねーんなら、オラから行くぞ!

でりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

駆け出す悟空

 

それに対しラディッツは

 

『バチーン!』

 

「んぎゃ!?」

 

普段は腰に巻かれた尻尾による一撃で、悟空を軽く迎撃したラディッツ

 

原作でクリリンにやった、あの尻尾攻撃によって、悟空は自分が駆け出した位置まで戻される

 

アイツの戦闘力を考えれば、かなり威力を抑えた一撃だろう

 

でなきゃ、今ので試合が終わってる

 

挨拶代わりってヤツか、同じサイヤ人としての

 

 

 

「おちちちち……あっ!」

 

「げぇ!?」

 

悟空も、俺の隣に居るウーロンも気付く

 

ラディッツにサイヤ人の特徴である、尻尾がある事に

 

 

 

ナレーターが試合を一時止めて、その尻尾が本物かどうかを本人に確かめている

 

『な、なんとラディッツ選手には尻尾が生えております!?

本人の体から生えておりますのでルール上、凶器とは認められません、これは試合続行です!』

 

確認の為に中断された試合が再開される

 

「ひぃぃぃ、まさか悟空以外に尻尾があるヤツが居るなんて、き…聞いてねぇぞ」

 

ウーロンは尻尾を見た時から、ガクブルしてる

 

そりゃあ、あの大猿の暴れっぷりを間近で見れば、この反応も仕方ないだろう

 

対して大猿を見たことがないランチさん(凶暴)は興味なさそうで、早く始めろと野次を飛ばしている

 

「ほぇ~たまげたなぁ、オラの他にも尻尾があるヤツがいるなんて」

 

親近感を覚えたのか、試合中にも関わらず悟空がラディッツに話し掛ける

 

「カカロット、貴様の尻尾はどうした?」

 

「ん?カカ……?

オラ、カカなんとかって名前じゃねぇ、孫悟空だ」

 

「…アイツの言ってた通り、本当に記憶が無いのか

おい、貴様は昔、頭を強く打った事はあるか?」

 

「ん?オラ、ものすげぇ昔に頭を打ったみてぇで、今でもその傷が残ってっぞ」

 

「ふん…、それで尻尾はどうした?」

 

話を戻すラディッツ

 

「尻尾は1年くれ~前の満月の夜に、気が付いたら切れてた」

 

「満月の夜…よく覚えておけカカロット、月が真円を描く時こそ、俺達サイヤ人の本領が発揮されるのだ」

 

「サイヤ人?なんだそれ?」

 

「貴様と俺は、宇宙一の強戦士族であるサイヤ人の血を引いている

俺達サイヤ人は闘いこそが最大の喜びであり、存在価値と言っても良いだろう

感じた事はないか?強いヤツを見た時に心の底から沸き上がる、ワクワクするような感じが?」

 

「…オラがサイヤ人…」

 

「この尻尾が何よりの証拠だ

そして俺は貴様の兄、ラディッツだ」

 

「なぁクリリン、兄ってなんだ!?」

 

『ズルッ!』

 

一般的な知識が壊滅的に欠落している悟空が、いきなりに本殿の物陰から試合を見てたクリリンに話を振る

 

サイヤ人の事は何となく本能で理解は出来たみたいだが、そっちの方が分からないとか、流石は悟空

 

あ~そう言えば悟空は、結婚の意味も知らなかったっけ

 

そんでクリリンに聞いてたな~

 

「ば、バカ野郎!兄ってのはだな!

…《クリリン説明中》…」

 

説明が終わると悟空は驚いた顔をしている

 

「オラとオメーが兄弟……」

 

「ついでに教えてやる

父親はバーダック、母親はギネだ」

 

「バーダック、ギネ、ラディッツ

へへっ…なんだぁ、オラにも父ちゃんや母ちゃんが居たんか~

じっちゃんが死んで独りになったと思ってたけど、なんか一気に賑やかになった気分だ~♪」

 

ニコニコ顔で実に幸せそうな悟空だが、ラディッツも弟に真実を伝える時が来るだろう

 

サイヤ人のハートを持つラディッツなら、大した事はないかもしれんが、普通の人間ならキツいものがあるよな

 

「……でも!

例えオメーが兄ちゃんでも、オラは負けねーもんね!」

 

バッと構える悟空

 

うん、そうなるだろう

 

サイヤ人なら

 

「ふん、来い…カカロット」

 

地球に来てから付き合いが長いからか、アイツは心なしか嬉しそうにしてるのが分かる

 

サイヤ人は家族の情が薄いらしいが、仲間意識は強い

 

もしや、バーダックとの拳による会話で心境が変わったのか?

 

いずれにしても、今のラディッツは原作と違って弟を殺す気はないようだ

 

 

 

悟空の攻撃を、ラディッツは尻尾だけで迎撃し続ける

 

あの2人に、それだけ力の差があるのは知ってた

 

ラディッツは器用に己の尻尾を、悟空の腕や脚に絡ませて空中に投げたり、打ち払ったりしてる

 

諦めない悟空は、本人の弱点である尻尾を狙い始めて

 

「にひひ……掴んじゃったもんね~」

 

小柄さを生かし、ラディッツの尻尾を掴むと渾身の力で握る

 

「……」

 

「……あり?」

 

原作ラディッツなら、この時点で命乞いをしてたかもだが、どっこい今のラディッツに弱点は無い

 

「いつまでも弱点を残しておく訳がないだろう!」

 

片手で悟空の体を持ち上げ、投げる

 

 

 

「この程度の力で、俺に負けないだと?

ふん、ならば少しだけ本気を見せてやる」

 

握り拳を作るラディッツが、気を高めだす

 

この試合用にと意図的に下げていた戦闘力が爆上がりして、会場の空気と大地を揺るがせば、クリリンが腰を抜かしてアワアワし、亀仙人は冷や汗と鼻水が垂れている

 

本殿に居る桃白白や、敗れたバイオレットやナムさんも、気の変化を感じ取っている事だろう

 

俺はアイツに、あまり上げすぎるなと念を送ると、ラディッツは2千程度の戦闘力に留めてくれる

 

俺には大した数字じゃないが、200や300そこそこが最強クラスの地球に2千の存在はヤバ過ぎる

 

試合相手の悟空も本能でラディッツのヤバさに気付いたらしく、軽口を閉じており、表情は真剣そのもの

 

 

 

とは言え本気ならば戦闘力が3万に迫る、『2万9千』のラディッツにしたら超手抜きレベル

 

なぜラディッツの正確な戦闘力が分かるのか、それはここに来る前にカプセルコーポレーションに寄り、ブリーフ博士に預けていた『スカウター』で俺達はフルパワー状態での戦闘力の数値を確認し合ったから

 

俺が2万7千で、ラディッツは前述した数値だ

 

因みにスカウターは盗聴防止のシステムが備え付けられ、計測できる数値が最大で『2億』まで上昇している

 

他に変わったシステムは無い

 

ただ、星間距離でも問題なく会話できるスカウターの超高性能なシステムは、博士すら唸らせたそうなので

 

これでまた、カプセルコーポレーションの株が上がるだろう

 

 

 

地響きが凄いので、もう少しだけ抑えろと俺は再び念を送る

 

会話は一方通行だが、俺は『テレパシー』が出来るようになった

 

やり方はモールス信号みたいに、思った言葉をサイコ・ウェーブに乗せて相手の脳内に直接送る

 

まだ界王様みたいに星間距離でも会話できるような高性能なモノでなく、『入れ替えテレポート』みたいに相手が視界に居ないと出来ない

 

原作でも次の天下一武道会で、餃子が天津飯と脳内で会話してたから、意外と簡単なのではと思い、やってみたら出来たのだ

 

流石は超能力者のグルドだぜ

 

「ま、まいったな…オラ、こんなスゲー奴を目の前にしてんのに、ワクワクしてきちまった

亀仙人のじっちゃんの下で修行して、結構強くなったつもりだったけど……上には上がいるんだな」

 

悟空は冷や汗を垂らしながらも、僅かに笑う辺りはサイヤ人だからか

 

上には上がいるか……それが分かっただけでも、ラディッツが出た意味があった

 

しかし、その程度の力では宇宙に蔓延る強大な悪魔は愚か、他に生き残ったサイヤ人にすら勝てないぞ悟空

 

 

 

そこからラディッツは悟空の意識が無くなる迄ボコボコにし、勝利者となると、気絶する弟を小脇に抱えて舞台を後にした

 

途中で悟空の容態を心配したクリリンが駆け寄ろうとするが、ラディッツの圧に負けて近付けないでいたな

 

……さて、天下一武道会の初日はこれで終わりだが、なんか色々と原作と違って疲れたよ

 

桃白白が出たり、バイオレットが負けたり、ラディッツが悟空を殺さないか内心ハラハラしたり

 

悟空はラディッツに任せて、俺はバイオレットの所に行くとするか

 

ウーロンとランチさん(凶暴)に、また明日と別れの挨拶をして、俺は医務室のバイオレットを訪ねるのであった

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

《視点切り替え、定点カメラ》

 

 

 

 

 

極小サイズのカメラ・ロボットが、その日に行われていた天下一武道会の様子を全て撮影していた

 

そのロボットが撮った戦闘データは逐一、何処かの研究機関に電送されており、その研究機関の一室ではメインパネルを睨む3人の姿があった

 

 

 

ボサボサ頭の白衣の男『Dr.マシリト』と、彼のスポンサーになった『ピラフ』、そしてマシリトの助手であろう、老研究員の姿が見える

 

「頼むぞDr、必ずアイツ等に復讐をするロボットを作ってくれ!金に糸目はつけん!」

 

鼻息荒く、ピラフが声を張り上げる

 

「ふははははは!お任せをピラフ様

この超天才科学者であるDr.マシリトが、必ずやピラフ様に納得して頂ける作品を献上しますぞ!」

 

早速とばかりにマシリトは、完成したばかりの自慢の作品を紹介しだす

 

助手の老研究員がリモコンをいじれば、不細工なロボットと、筋ばった生物の融合した様がモノが部屋に現れる

 

ゴテゴテの機械のパーツを纏った群青色の生き物で、背丈は今の悟空やグルドと同じ位に低い

 

赤く、瞳の無い目玉で、口元のマスクからは漏れるような呼吸音をしている

 

「フシュー!

フシューー!」

 

「な、なんだこの気持ち悪いヤツは!?」

 

存外に潔癖症なピラフが、マシリトの作ったグロテスクな作品を見て口元を抑えている

 

手下のシュウとマイも同様に

 

「これぞ私の叡知と助手の作品を掛け合わせて出来た、名付けて『バイオ・キャラメルマン6号』」

 

「み、見た目は悪いが、肝心の強さはどうなんだ?」

 

ピラフが尋ねれば、マシリトは助手に見世物で使われる瓦を持って来させる

 

積まれている瓦の数は、ざっと30枚

 

マシリトの作品『バイオ・キャラメルマン6号』は、それを渾身の力で瓦を1枚残して全て割ってしまった

 

ジンジンと痛む手を後ろに隠しながら、6号は自慢気に胸を反らすが、それ以上に製作者のマシリトは有頂天

 

「どうです?凄いでしょう?

はぁ~はっはっはっはっはっ」

 

大口を開けて笑うマシリト

 

「これは良い!

これならばあの小僧や、あっちの緑色の不細工なヤツにも勝てる!」

 

「「はーはっはっはっはっ!!」

 

笑う2人を見て、シュウがマイに素朴な疑問を投げ掛ける

 

ーーでも…あんなに頑丈な煉瓦の牢屋から逃げたアイツ等が相手なら、瓦なんて参考にならないんじゃ…

 

ーーしっ!言っちゃダメ

 

人差し指を形の良い、紅を差した唇に当てるマイ

 

ピラフとマシリトが更に大笑いをするとシュウとマイも空気を読んで苦笑いをし、笑う機能が無い6号も手を隠しながら大笑いする格好をする

 

『むが~!』『ふが~!』

 

「おおっと忘れていたよDr.千兵衛、そろそろ君も、このピラフ様の世界征服の野望に手を貸す気分になったかね?」

 

部屋の隅に縄でぐるぐる巻きにされ、猿轡を噛まされたまま放置されていた『則巻千兵衛』に尋ねるピラフ

 

しかし千兵衛は頑なに首を横に振る

 

「ふふふ、このマシリトが居ればそんなヤツは無用ですぞピラフ様

なぁ千兵衛、だいぶ頭頂部が薄くなってきてるが、天才科学者なら毛生え薬ぐらい作れるものなのに、なんでそうなったんだ~?」

 

ニヤニヤとマシリトが千兵衛の頭を見ると、彼は怒って猿轡の状態でも怒鳴りつけるが、それは何一つ伝わっていない

 

「は~ん?何を言っておるのか分からんな~

なになに~、俺はハゲになりたいから手伝ってくれだ~?

よかろう、ならば6号!手を貸してやれぇ!」

 

「フシューー♪」

 

マシリトは6号を差し向け、千兵衛の頭から髪の毛を一本一本抜かせる

 

やめてくれと千兵衛はまるで、芋虫のように這って逃げる

 

逃げ惑う千兵衛、追う6号、笑うマシリトにピラフ一味

 

 

 

そんな賑やかな部屋の中、助手の老研究員がラディッツの戦闘力の変化と、その強靭な肉体に着目している事を知るものは誰も居なかった

 

 

 

 

 

その助手の名前は『コーチン』

 

ピラフにマシリトを紹介した、謎多き科学者だった

 

 

 




グルドの戦闘力、2万7千
更にグルドは『一方通行のテレパシー』を覚えました
なぜ一方通行なのか、それは普段からラディッツがテレパシーで話してこられても、普通に言葉に出して会話をする為で、テレパシーの精度が上がらないからです

ラディッツの戦闘力、2万9千
変身後のザーボンさんと、強さは互角くらいです

因みにどこかの地上最強の生物である『範馬勇次郎氏』は瓦を40枚、簡単に割ってました

マシリトやピラフと混じって、一緒に高笑いする6号の姿を想像すると、少し可愛いと思ってしまうのは作者だけでしょうか

バイオ・キャラメルマン6号は略すと『バイオマン』で、マシリトは8号まで作っているそうです

6号の外見はバイオマンに機械をゴテゴテ着けたものを想像して下さい

さて……出てきましたDr.コーチン

果たして彼は何を企んでいるのか?

ありがとうございました!

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