小説版 仮面ライダークウガ&アギト ~超越~ 作:Nameless Abyss
と言っても、まだ導入部なのであまり話は進まないです。申し訳ない…。
―古代―
(何故だ、何故こんなことを…)
まだクウガすら存在しなかった時代、リントはグロンギへの対抗策を持たず、ただ殺されるしかなかった。 狩りの対象として殺され、鮮血が流れる。
「ウォオオオオオオーーー!!!」
―2003年 時刻・場所不明―
闇夜の中、ボロボロの白いドレスを着た女性がおぼつかない足取りで歩いていた。
「奴等が来なくなってから久しいな。」
アギトとやらが戦っていた存在は、どうやら我々のことも恐れたようだ。何度も襲撃を受けた。その度に逃亡をしてきたが、最近はそれも無くなった。どうやら、奴らの親玉が倒されたか、考えを改めたようだな。
「まあそんなことはいい。今は、『新たなゲゲル』を優先すべきだ…。」
ボロボロでみすぼらしい服装とは裏腹の美しさを持つ女は闇の中を歩く、ある場所へ向かって。
アンノウンの襲撃もあって遅れたものの、彼女―ラ・バルバ・デはこれまでの間、更なるゲゲルの準備をしていたのだ。
―2003年 3月某日 場所不明―
かつての未確認生命体事件、その始まりの地にその女はたどり着いた。ここに最後の鍵が残っている。
「レザレデ・ロサグゾ・ガミオ。ゴンダレビ・ザジレ・スゾゾ・ゲギバス・ゲゲル。」
彼らにとっては当たり前の言葉であるグロンギ語、しかし
バルバの前には2つの棺があった。片方の棺には狼を思わせる赤い紋章が刻まれており、もう片方の棺には獅子とも虎ともつかぬ不気味な獣の顔のような紋章が刻まれていた。次の瞬間、不気味な獣のような紋章の棺が開き、中から怪人が現れた。
―2003年 6月23日 午前10時 警視庁―
「ったく、本当に困りますよね。アンノウンのおかげでここしばらくイタズラ電話が多いのなんの。」
休憩室で缶コーヒーを買いながら愚痴るのはG3ユニットの尾室だ。アンノウンとの戦いが終わり、3か月後G3ユニットが解散されると決まっても、究極の凡人と評されるほどの平凡さは相変わらずだった。
「本当に困るよなぁ…。特に、『例のイタズラ電話』には…」
開けようとした缶コーヒーをこぼしながら氷川誠が言葉を返す。
氷川の言う『例のイタズラ電話』と言うのは、存在が市民の間で噂されるようになったG3システムを一目見ようとしたのか野座間製薬の研究施設付近にアンノウンが出没したというイタズラ電話があった一件のことだ。案の定G3-Xは民衆の目に留まり、写真に撮られネット上に拡散されてしまった。警察にとってはまさに恥としか言えない醜態だっただろう。
「あぁ、そんなこともありましたね。しかも、まさかあんな事態になるなんて…」
この話には続きがある。結局アンノウンは確認されず引き返そうとした瞬間に、野座間製薬の研究施設から銀色の身体と紫色の眼の「怪人」が突如現れ、まるで獣のような雄叫びをあげ暴れ出したのだ。混乱した市民を逃がしながら戦ったのもあり流石の
「確か、警視総監の意向で今度野座間製薬に取り調べが入るらしいですよ。」
「あの怪物との関連性が見つかれば野座間の企業生命も終わりだろうな…。」
余談だが、後に野座間製薬と怪人との関与が確認され、大々的に報道された結果、瞬く間に野座間製薬は株価が暴落し、倒産した。当然例の怪物の研究も中断されたため、この世界では別世界のような惨劇は起こらなかったのだが、そのきっかけになったのがイタズラ電話というのも妙な話である。
「アンノウンにせよ他の何かにせよ、また現れたなら私たちがまた倒せばいいだけの事よ。」
「あっ、小沢さん…。」
二人が話しているところに割って入ったのは同じG3ユニットメンバーの小沢澄子だ。G3ユニットの解散後には退職すると意思表明しているが、良くも悪くも歯に衣着せぬ物言いは健在だ。
「まあ、このメンバーでやってくのもあと数ヵ月ですけどね。」
「まあまあ、そうネガティブなことを言わずに最後まで頑張りましょうよ」
「そうね。氷川くんはこういうときに良いこと言うわね。未来のG5ユニット長官、尾室くんも見習いなさい。」
「そういうときだけその肩書きで呼ばないでくださいよぉ…。」
この後、尾室以外の二人の今後を確認するための会議が行われるため、氷川と小沢は去っていった。
―2003年 6月23日 午後9時 ロンドン―
「やはり、こうして一人でのびのびと過ごしていられるのは良いですね…。」
特に
「それにしても、まさかあの男とばったり出くわすとは…。」
話は30分ほど前に遡る。
拘り深い彼が厳選したバーで注文したカクテルを受け取り、支払いを済ませたその時だった。
「隣の席、よろしいですか?おや、北條刑事ではありませんか。こんなところで会うとは。」
「これは奇遇ですね、まさかあなたとこんなところで出くわすとは、
北條が出くわしたのは警視庁の窓際部署『特命係』所属の杉下右京警部だった。面識こそなかったものの杉下の変人ぶりは北條の耳にも届いていた。同時に、実際に面と向かって話したことで、北條は杉下から小沢にも似た雰囲気を感じ取っていた。
適当にあしらって追い払おう、そう思い矢継ぎ早に訊ねる。
「なにか用件でもあるんでしょう?あなたがそれも無しに来るとは思えない。」
「はいぃ?」
やや早口気味に北條が問いかける。杉下は口癖とも言える相づちをし、少し間をおいて答え始める。
「いくら僕でも、完璧超人じゃありません。たまたま休暇を取ってロンドンにやってきたら同じ日本の警官がいたから少しお話をと思っただけですよ。」
何が完璧超人じゃありません、だ。無断とはいえ多くの難解な事件の犯人を見つけ出し、解決してきた彼の優秀さも聞いていた北條は心の中で毒づく。そして、先程から気になっていたことを問い質す。
「馴れ馴れしいですね、だいたい何故私の名前を知ってるんですか?私との面識は無いはずでしょう?」
「実に鋭い指摘です。指摘と言えば北條さん、何か心当たりがありませんか?」
「はぁ?」
リズム感すら感じさせる独特の口調で話し続ける杉下の言動に呆れる北條だったが、杉下は気にすることなく続ける。
「半年ほど前に終息した連続殺人事件。確か、『アンノウン』によるものでしたか。アンノウンは完全に人知を越えた存在。流石の僕もお手上げです。そんなアンノウンに対抗する存在を、あなたは危険因子として指摘したのは覚えておりますか?」
「…あっ!」
杉下の指摘通りである。当初は小沢への嫌み程度のつもりでアギトの危険性を指摘したが警視庁の上層部が賛同した結果、一時G3ユニットはアンノウンを保護し、アギトを狙う組織となってしまった。今では警視総監の尽力もあって元に戻ったものの、発端となった北條の行動は人類の可能性を否定し、
「小野田官房長から聴いた芳しい情報なんですがね。警視庁上層部はGトレーラー奪還を許した君に全ての責任を押し付けて君を特命係に入れようとしているそうなんですよ…。」
特命係への異動、事実上の左遷である。エリート街道を歩んできた北條には地獄、いやそれ以上のものにも感じられ、顔が青ざめた。
直後、彼は走り出していた。例え冗談だったとしても寒気がしてその場から逃げるように出てきたのだ。
逃げ出す途中、水鉄砲を持った青年とぶつかったが北條は気づくよしもなかった。
「本当に迷惑だった…。あんな人の元で仕事なんて、考えただけで恐ろしい。もうしばらく、ここで過ごして落ち着いてからホテルに戻るとしよう。」
そんな事を考えていたときだった。突如悲鳴が聴こえた。声が聴こえた方に振り向くと、女性が蜘蛛の巣のようなものに捕らわれていた。そして、蜘蛛の巣の主にふさわしい、蜘蛛のような姿のアンノウン、スパイダーロードが女性に近づいていた。
「ア、アンノウン!」
咄嗟に女性を助けようとアンノウンに体当たりした北條だったが人知を超越した存在であるアンノウンには敵わず逆に殴り飛ばされてしまう。
こんな時にG3ユニットがいれば、直前まで邪険にしていた者達の力を必要とする自分自身を北條は惨めに感じた。
「…」
何も言わず、その手で十字架を刻むような仕草をしながら更に女性に近づいていくアンノウン。刻み終わるとその頭上に天使の輪のような光が現れ、その中からまるで毒針のようなシンプルな形をしたレイピアが取り出される。
「クソッ…。」
北條が諦めかけた瞬間だった。
何かに貫かれ、その跡に文字のような何かが浮かび上がる。光の輪が、先程とは異なり最期を表すかのごとく弱々しく光る。
北條が急いで女性を抱えて離れると、断末魔と共に爆発が起こる。
「いったい、何が…。あっ、あれは!」
北條が周りを見渡すと、暗がりの為にはっきりとは見えなかったが遠い所にアンノウンとはまた違う『異形』らしきものが一瞬見えた。
「まさか、あれは…」
僅かに見えたその姿に、北條は見覚えがあった。
「未確認生命体…第4号…なのか…?」
その後、女性のために救急車を呼んだ後、北條はホテルに戻る前に先程のバーに戻って夜にもかかわらずモンキーズランチを飲んで一休みした。どうしても4号の事が気になったのか、それとも『異動』の話を引きずっているのかモンキーズランチの注がれたグラスはあっという間に空になった。
ちょっと長くなってしまいましたが、やっとこさ本編入れました。
ちょっとだけ今回登場した怪人について解説です。
ヤモリアマゾン
野座間製薬の工場付近で確認されたアマゾン。この世界ではこの個体を除いてまだアマゾンは完成しておらず、この個体自体もアマゾン細胞がまだ研究段階のものだったため、S1の実験体と比べてもまだ能力・知性は劣る。見た目は前原くんことアマゾンシグマからベルトを取ったようなイメージ(強さに関してはシグマと雲泥の差ですが…)
スパイダーロード
北條さんが遭遇したアンノウン。他のアンノウンとは異なり、外国でアギトになりうる人間を始末していたためアギトと人間の歩みを見届けるという闇の青年の意思が届いておらず未だに活動していた。北條さんの抵抗をものともしなかったが、最終的には緑のクウガのブラストペガサスが命中し撃退される。この小説ではクウガの封印エネルギーはグロンギに限らず人(リント)に仇なす存在全般に対して作用するという事にしております。デザインはビートルロードからカブト虫の意匠を取り払ってグムンのそれに差し替えたような姿をイメージしております。
そして、少しだけ出てきた彼ですが、このあとかなり長いこと出てきません。そこは悪しからず