小説版 仮面ライダークウガ&アギト ~超越~ 作:Nameless Abyss
今回からやっと本筋に入っていきます。
―2003年 6月 23日 正午 長野県警―
「本当に久しぶりだな、こうして面と向かって話すのは。」
かつて『4号』とともに戦った一条薫と、医師として4号の正体である『彼』を支えた椿秀一は久々の再会を果たした。無論、電話をする程度の事は続けており決して交流が無くなっていたわけではないが、アンノウンへの対応もあり、互いに忙しくなっていたため長らく顔をあわせることは叶わなかった。
久々の再会に心を踊らせていた椿だったが、対照的に一条の表情は暗かった。椿にも原因に心当たりはあった。
「お前、警視庁のG3だったか、アレの装着者に立候補したそうだな。」
「ああ、そうだ…。」
咎めるかのような口調で尋ねる椿に対し、うつむいたまま一条は返事をする。
「いいか、よく聞け。お前の気持ちはよくわかる。アンノウンの驚異から『アイツ』が守ったものを守りたかったんだろ?だがな、そのためにお前が傷つくなんてそれこそ『アイツ』は望んでなんかいないぞ。」
「それでも、出来ることをやりたかったんだ。守れるチャンスがあるなら、そう思ったら動かずにはいられなかった…。」
椿の言う通り、一条はG3装着者選抜試験を受けたのだった。心に深い傷を負い、それでも最後まで戦い続けた『彼』に代わって戦うために。無論『彼』もそれを望むはずが無いのは分かっていた。それでも、何も出来ないのは悔しかった。
しかし、『あかつき号事件』の影響もあり正装着員に選ばれたのは氷川誠であり、一条は悔しさで胸がいっぱいになっていた。
「お前が戦って傷つきなんかしたら『アイツ』は必ず悲しむし、また首を突っ込んでくるだろうよ。それこそ『アイツ』をまた傷つけることになるだろ。そんなことより、お前はお前に出来ることをやるべきだ。」
「その通りだ。『アイツ』がいたら引き止めたに違いない。だが、力になれない今の自分が嫌だったんだ…。」
強い責任感。それが一条の長所の一つである。同時に、それは責任を感じすぎてしまうと言う悪い面にもなりうる。今がまさにそうだった。
「気にするな。誰だって考えすぎて落ち込むときはあるさ。そんな辛気臭い話より、久々にどこかに飯でも食いに行かないか?」
「そうだな。じゃあ、つい最近出来たあの蕎麦屋なんかどうだ?」
「ほう、建物も雰囲気あって良さそうじゃないか~。ちなみに、店員や常連さんに可愛らしい子はいるのか?」
「新しく出来た上にどことなく強面な従業員ばかりだからか、そこまで人は集まってないよ。でも、味は一流だ。」
一条の顔は険しかった先程より穏やかになっていた。
その後、二人は蕎麦屋で昼食をとり、その後東京に戻る椿を一条は見送った。
椿の乗った新幹線が見えなくなり、帰ろうとしたその時だった。一条は付近で突如倒れる女性を見つけた。近づいて声をかけたときには既に息絶えていた。
「一体、これは…。」
長野県警へ急遽連絡し、鑑定を行った結果、死因は一酸化炭素中毒だと判断されたが、人の手では不可能な犯行だった。
捜索がすぐに行われたが、誰が何のために、そしてどうやって行ったのかまるで分からず、アンノウンの仕業ではないか等とも言われていた。
(何故だかよく分からないが、嫌な予感がする。まさかとは思うが、
この時はまだ確信を持てなかったが、二日後に二人目の被害者が出たことで、一条の予感は確信へと変わっていった。
―2003年 6月 25日 午後4時 九郎ヶ岳遺跡―
未確認生命体事件、その始まりの地である九郎ヶ岳遺跡。約2年ぶりに一条はそこへ訪れた。
懐中電灯と携帯電話を携え、夜ですら比にならない暗闇の中へ一条は踏み込んでいく。
「気のせいなら、良いんだが…。」
小声で呟きながら闇の中を進んでいくと、
「これは、一体…」
呟いた直後、闇の中と言えど迂闊に懐中電灯を点けたことを後悔した。部屋の中から気配を感じたのだ。慌てて電灯を消し、息を潜める。
足音が聞こえる。闇の中を迷いもなく進んでいた。
隠れても無駄だった。足音の主は一条に気づいていた。
足音が止んだと思うと、冷たい声でいい放った。
「また会ったな、リントの戦士よ…。」
思わず驚き、声が聞こえた方へ振り向く。忘れるはずのない、あの声。
「…お前は!」
見紛うはずがなかった。声の主は未確認生命体B群1号、ラ・バルバ・デ。未確認事件、そしてアンノウンの暗躍の裏で彼女も生き延びていたのだ。
二度と起こるはずのなかった再会。
二度と起こってはならなかった
未確認生命体の復活、一条はその事実にただただ戦慄するばかりだった。