小説版 仮面ライダークウガ&アギト ~超越~ 作:Nameless Abyss
今回からクウガ勢とアギト勢が絡んできます。
今回は翔一くんとクウガ勢が絡みます。
―2003年 6月26日 午前10時30分 城南大学―
―さっき、一条さんから連絡があった。また未確認生命体による事件が始まったらしい。そこで、許可はとってあるから九郎ヶ岳遺跡をもう一度調べてほしいと彼は言っていた。―
「『彼』がいない今、 自分に出来ることを精一杯しなくちゃ。」
小声で呟き、沢渡桜子は出かける準備をしていた。今では城南大学の博士課程を専攻している彼女だが、一条からの連絡を受けて新たな未確認生命体を放ってはおけず大学から許可を得て休学、未確認捜査に協力することにしたのだった。
「行ってきます。」
準備が整うと深呼吸をし、桜子は一人呟いた。かつて
城南大学を後にし、長野県へ向かう前に、一言伝えておこうと桜子はある場所へと向かった。
―2003年 6月26日 午前11時 ポレポレ―
「おっ、今日も性が出てるねぇ。」
ポレポレの2階から降りてくると開口一番、おやっさんが『新人』に伝えた。料理人志望の新人は、ここ数週間おやっさんに弟子入りしてカレーの作り方を習っているのだ。おやっさんにとっても予想以上の上達ぶりだった。
「えへへ、どうですか。今度こそ納得行くカレーが作れましたよ。ちょっと食べてみてください!」
新人は人懐っこい笑顔でカレーを勧める。よし、それじゃ、とおやっさんは新人、津上翔一特製の野菜カレーを試食した。一口食べると「なるほど」と呟く。
「どうですか、俺のカレー。」
明るい笑顔で訊ねてくる翔一に『彼』を重ねながらおやっさんはカレーの感想を返す。
「何だかなぁ…。スパイスの配合も良いし、ベースのブイヨンも文句なしだ。ここら辺は良いんだけど、何だかコクが足りてない、そんな感じがするねぇ。でも、こんな短期間でここまで腕を上げたのは本当に凄いよ!」
「あちゃぁ、誉めてもらえたのは嬉しいけど、免許皆伝はまだ先かぁ…。」
おやっさんの中辛な評価にショックを受けたのか翔一は少しの間しょげてしまった。尤も、すぐ立ち直り、どうすれば良いのか翔一なりに考え始めた。
「でも、コクか…。どうしようかなぁ…。うちの菜園で栽培したトマトたちでもダメとなるとなぁ…。」
そう呟きながら翔一は頭を抱える。その光景を見ていたおやっさんは翔一はくよくよしない人物だと感じ、そんな翔一が未だ帰ってこない『彼』とますます重なって見えた。
「これは僕の持論だけど…。」
おやっさんは翔一に告げ、一旦区切る。翔一が興味津々な表情でおやっさんに目を向ける。おやっさんは再び口を開いて告げた。
「コクって言うのは料理を作る人の経験と比例するんだよ。僕も昔はエベレストを登ったり、他にも色んな所に行ったよ。ま、翔一くんはまだ若いんだからこれからいろいろ経験していけばきっと変わっていくよ、翔一くん。」
翔一を見ながらおやっさんは笑顔でサムズアップを向ける。その時だった。
「おやっさん、いる?」
誰だろう、あの綺麗な人。そう翔一が考えているとおやっさんは挨拶する。
「あら、桜子ちゃんじゃないか。久しぶり。」
「あっ、いたのねおやっさん。あれ?奥の人は誰?」
「そう言えば、顔を合わせるのは初めてだったね。桜子ちゃん、あの子は津上翔一くん。今、僕の店で手伝ってもらいながらカレー作りを修行してるんだ。で、翔一くん。こちらは沢渡桜子ちゃん。城南大学の院生やっててね、たまに手伝ってもらってたんだけど、最近は忙しくて僕も顔を見たのは久しぶりだよ。」
「桜子さん、よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくね、津上くん。」
おやっさんの紹介の後、挨拶を交わす二人。その直後やはりおやっさんと同じことを桜子は感じたのだ。
「何か、津上くんってすごく似てるのよね、『彼』と。」
「『彼』って…?」
「いや、大学時代の友人によく似ててね…。」
懐かしみながら桜子は言い、忘れてたと言わんばかりに続けた。
「あっ、いけない。おやっさん、実は一条さんから頼み事があってね、ちょっと長野にいってくるの。しばらくしたらまた戻ってくるわ。」
「おっ、そうなのか。ちょっと寂しくなるなぁ…。そうだ、翔一くん。」
桜子に返事をすると、急に翔一を呼ぶおやっさん。次にとんでもない事を言い出した。
「君も、一緒に行ってみたらどうだい?きっと『コク』に繋がると思うぞ。」
「ちょっと、危ないからダメよ…。」
桜子は驚きながらも反対する。何せ未確認生命体のいた遺跡の調査なのだ。どんな危険があるのか分かったものではない。しかし、それでもおやっさんは引き下がらない。
「翔一くんを信頼しなよ。翔一くん、何だかんだで『あいつ』とは別方向ですごいところがあるよ。」
おやっさんは笑顔で答えた。何となくだが翔一がただ者ではない事に気づいていたのだ、おやっさんこと飾玉三郎は。そしてこの事が後に伝説を更に塗り替えるきっかけとなる。