ISD《インフィニット・SD》 -レジェンド・オブ・BraveBattleHEROs-   作:龍牙

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ってな訳で完成版です。


第二話《クラス代表決定戦 その1》

「……何をしてたんだ、あんたは?」

 

「ちょっとした悪戯よ」

 

 呆れていると言う表情で楯無を一瞥する四季。セシリアと同じく束の所に身を寄せながら闇の化身退治の世界放浪を続けていた時に知り合った相手だ。

 

 ……なお、どうでも良いことだが世界各地には四季と束によって緊急時の避難場所として作られた彼等の隠れ家が幾つか存在しているが……未だにどの国にも見つかっていない。実は幾つか……転生者の専用機である灰燼に使われていない性能の低い第四世代のパーツが無造作に捨ててあったりする。

 見つかった時の事も考えて……『見つかったら技術革新が起こって面白そう』と言う理由で放置されているが、誰も見つけられずに居るのですっかり二人とも飽きて忘れていたりする。

 

 ……重ねて言うが、灰燼は各部の性能がバラバラでバランスが物凄く悪い(陸戦型ガンダムの様にリミッター等掛けられていない)。著しく性能が劣っているために破棄されて解体予定のパーツの中から適当に選んで、四季と束が暇潰しのパズルゲーム感覚で組み立てた代物だ。最初から人が使うことなど想定されていない。

 それでも、現行の期待の中では高性能機に分類される。……その事を知った上で『世界中の技術者、真面目に仕事しろ』と四季が呟いたが聞かれたら泣いて抗議するだろう……世界中の技術者全員が。

 そんな灰燼に使わなかったパーツを適当に置いているのが、各地の隠れ家である。

 

 軽く言い切る水着エプロンからIS学園の制服に着替えた楯無に軽く溜息を吐いて、お茶を淹れた湯飲みを差し出す。セシリアと同じく世界放浪のときに一度あっただけの友人や知人と言うには短い付き合いだが、確信している……困った性格の人だ、と。

 

「粗茶ですが」

 

「ありがとう、いただくわね」

 

 そう言って受け取った湯飲みに口を着ける楯無。何気に四季君、日本茶や紅茶と言った物の淹れ方もしっかりと知っている。ある意味、魁斬や騎士エピオンの教えの賜物だろう。

 

「貴方もIS学園の生徒だったんですね。楯無先輩、と言うべきですか?」

 

「うーん、どちらかと言うと会長って呼んでもらった方が良いわね。私はIS学園の生徒会長なのよ。それと、生徒会長はIS学園で最強のIS操縦者の証でもあるのよ」

 

 そう言って楯無が開いた扇子には『学園最強』と言う文字が書かれていた。

 

「あれ? 学園最強って……正確には『学園生徒最強』って言うべきでは? 一応……世界最強の称号持ちの“あれ”が教師に居るわけですから」

 

「随分痛いところ突くわね、四季君」

 

 四季の言葉に苦笑を浮べる楯無。際ほどの悪戯への軽い仕返しのつもりだったので、その話題から離れる事にする。

 色んな意味で嫌っている姉については必要以上に触れたくないのだし。はっきり言って固有名詞や連想させる単語を上げるのも嫌うレベルだ。『ブリュンヒルデ』とさえ呼ばない理由の一つも其処にある。

 

「あれって……相変らずお姉さんの事嫌ってるのね」

 

「世界中廻って余計に嫌う理由増えました。……怪しげな宗教団体の御神体に祭り上げられてる奴に関わりたいと思う奴は居ないでしょう」

 

 流石にその事には驚いたのか咳き込んでいる。そんな彼女を直視せずに視線を逸らしているのは四季なりの優しさだろう。姉弟と言う時点で既に肩までどっぷり関わっているのだが。……千冬が知ったらIS強奪して特攻を仕掛けそうな話である。実際、今日一日四季に一度も姉と呼んでもらえず、最小限な事務的な対応しかされずに落ち込んでいるし。

 間違いなく言える事は……箒とは別の意味で千冬も転生者(秋津)の被害者だったりする。

 

「それで、生徒会長や知り合いとして、世界初の男性操縦者の一人に会いに来た……と言う訳ですか」

 

「うーん、それも有るんだけどね。実は……」

 

 楯無からのお願い事を引き受ける事となった四季。一応、タイミングが難しい上に、なるべく彼女から頼まれた事と言うのは隠していて欲しいらしい。

 ……一応、彼女が苦労している原因が兄……それも仲の良い方の兄(一夏)の方にあるので断り辛い。別に転生者や姉が嫌われる要因ならフォローする気も無いが、一夏の方なら……しかも、本人の知らない所で生まれた原因ならばやらない理由は無い。

 加えて、セシリアと同様に付き合いこそ短いが楯無も好いている側の知人なのだから。……複雑な心境に有る元初恋の相手である束もどちらかと言えば好いている側の知人に入る。

 

 まあ、相手から向けられている感情については好意と言うのは理解しているが、それ以外では相変らずだ……。

 

『何処まで鈍感なんだか……』

 

 と言うのは騎士エピオンの弁である。……まあ、四季と共に在る闇のガンダム達の中で女心と言う物を理解していそうなのは逆伐と騎士エピオンだけとも言えそうだが。

 

 なお、おまけの様に話題に上がったセシリア、一夏、転生者に四季を加えた四人によるクラス代表決定戦については、既に彼女の中では四季の完勝で決着が付いている様子だった。

 

「まあ、完全にイジメだけどな……」

 

「貴方との実力差を考えると、当然だけどね」

 

 彼女としてもリアクションに困っている様子だ。そもそも、四季は三人の専用機の事はよく知っている。……転生者の灰燼や一夏の専用機は兎も角、イギリスで作られたセシリアの専用機について知っているのは……知らない方が良い事も世の中には大量にある、らしい。

 それに対して転生者と一夏は四季の専用機の事を知らず、セシリアも知っている事は僅かとしか言えない。……この時点で情報面では圧倒的に勝っている。加えて稼働時間も下手な国家代表よりも豊富で闇のガンダム達に鍛えられた実力もある。……負ける要素など『油断』以外には思いつかないのが現状だった。

 

「まあ、セシリアは兎も角、一兄相手にどうするかは悩み所だな」

 

 セシリアについては本人の希望が有り……転生者については『適当に潰す』と即座に決まっているので悩んですら居なかったりする。……そして、兄についてだけはどう戦うか本気で悩む四季だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、クラス代表決定戦当日……一夏の専用機と一緒に届く様に手配した灰燼が届くのを一夏達と一緒に待っていた。

 

(さてと、今の内に準備をしておくか)

 

 そう思いながら四季は改めて仮面を着ける。一応、仮面(これ)が四季のISの待機状態なのだが、何故か普通に顔に被っていないと展開できない欠点がある。束からランドセルか手作り弁当感覚で渡された機体については使う予定は無い。

 

(システム、オールグリーン。各形態問題ない、何時でも行けるな)

 

 念の為にISの状態のチェック。各武装も一切問題ない。

 

(……それにしても、何で箒が居るんだ?)

 

 ハッチに居るのは一夏と転生者の他に四季と担任の千冬の他に箒の姿が有った。此処は本来関係者以外立ち入り禁止なのだが……

 

(ヴァルキューレは立場上仕方ないとして、なんであいつが居るんだ)

 

 ……なお、四季が居るのは既に専用機を持っている為、万が一二人の専用機の到着が遅れた場合、試合の順番を変える必要が有るため、と言う建前からだ。この理由では対戦相手のセシリアも関係者に含まれるが、彼女は彼女で最初から四季以外に眼中に無かったりする。

 実際には、無事転生者に灰燼を押し付けられるか見届けておくべきと言うのが本当の理由だ。

 

「織斑君! 届きましたよ! 専用機が!」

 

 まあ、結論から言うと何も心配する事無く、欠陥機である灰燼は無事転生者の手に渡った。

 

 そして、もう一つのコンテナが開いた時、そこには《白》が有った。

 

「機体名『白式』と灰燼。両方とも第三世代の機体ですね」

 

「一夏は時間が無いから、 初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)は実戦でやれ。分かっ『待った』……四季」

 

 千冬の言葉を遮って仮面を着けた四季が手を挙げる。

 

「丁度一組元々専用機を持っている者同士が揃ってるんだ、オレが第一試合に出た方が良いだろ?」

 

 態々最初の試合に出す必要は無い、と主張するが何故か箒が四季に噛み付いてくる。

 

「オレが最初に戦ったほうが二人が初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)する時間が稼げるだろ」

 

 そもそも、相手は一分野の代表候補生。少なくとも素人が戦いながら初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)をするのには無理があるだろうと言う、至極最もな判断だ。

 まあ、四季とセシリアの試合が最後なのは、一種の専用機持ち……それも一定以上の間運用経験のある物同士によるメインイベント扱いらしい。

 

 まあ、

 

「残念ながら、時間稼ぎ……なんて器用な真似は苦手なんで、どれだけ時間が用意できるかは分からないけどな」

 

 四季としてもセシリアに対して万全の状態で戦えるように、と言う配慮も有る。そんな相手に対して時間稼ぎのために手を抜いて戦う様な失礼な真似をする気は無い。そんな訳で仲の良い兄である一夏だけなら兎も角転生者の分まで時間稼ぎする気は無い。

 

 そもそも、嫌っている千冬に『時間稼ぎをしろ』等と言われたのだから、尚更だ。カタパルトへと近付いていき、仮面を被りなおし……

 

「行くぞ、マスクコマンダー」

 

 己の機体の名を呟くと全身装甲のISが展開される。

 ……リアル体型のマスクコマンダーと言うその外見に秋津が驚いているのは、仮面で顔はよく分からないが、それでもマスクコマンダーの姿は『ガンダム』と呼べる姿をしているからだろう。

 

 

『なるほど、オレ達の原典(オリジン)の事を知っていると言うわけか』

 

『四季が同類と言う、妙な誤解を受ける可能性があるが……黒蘭の方が良かったんじゃないか?』

 

 

 そんな秋津の姿にガンキラーと逆伐がそう言うが、使い慣れたISマスクコマンダーの方が信頼性が高いと判断する。……まあ、仮面などと言う目立つ事この上ない待機状態を持っているので此方を主にするしかないが。流石に世界でも数少ない代物を二つも独占していると言うのは、色々と問題だろう。

 重ねて言うが、それを渡されたのは、渡した本人()にとっては手作り弁当感覚だ。何れは公表する必要も出てくるだろうが、流石にそれはこの時期では無いだろうと判断した結果だ。

 

 なにより、

 

(七星天剣流を使うにはこっちの方が良いだろ?)

 

『確かに』

 

 四季の言葉に同意する魁斬。普段は射撃武器しか使わない四季だが、本来の得意分野は剣を主体とした近接戦闘、その起訴となるのは七星天剣流の剣技だ。

 

(セシリアや一兄に強くなって貰うためには……ちょっとスパルタだけど、この代表決定戦は悪くない)

 

 今後、闇の化身の配下や闇の化身に命を狙われる危険の有る者達の、戦闘力の強化……己が敵となって鍛えると言うのは悪くないだろうと判断する。

 まあ、一夏の強化プランである七星天剣流の一部の伝授については……直接受けて覚えて貰う、と言う物騒な手段で、彼に伝授する七星天剣流は武者頑駄無零壱の扱っていた本来の形である一刀流での物ではあるが。

 

「マスクコマンダー、織斑四季。出る」

 

 そう静かに呟きバックパックのウイングを展開して、四季はアリーナへと躍り出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリーナへと躍り出ると中央に浮いているセシリアの前に移動すると主武装であるショットガンを展開する。“通常の形態”での他の武装はバックパックのICBMハンブラビとヒートアックスと一体になったマシンガン。共に以上は無い。

 

「あら、四季さんが最初でしたの?」

 

「ああ、他の二人はついさっき専用機が届いたばっかりだからな」

 

「そうでしたの、それではしかたありませんわね」

 

 気安い会話を交わす二人だが、何時でも試合開始の合図が出ても良いように相手からの注意を外さない。

 

「四季さん、見せて差し上げますわ。初めて会った時から私がどれだけ成長したのかを」

 

【試合】

 

「ああ、楽しみにしている」

 

【開始】

 

 セシリアは四季へと優雅な微笑を向けながら、自身の専用機、イギリス第三世代型IS『ブルーティアーズ』の専用武器である大型レーザーライフルである『スターライトmkⅢ』の銃身を四季に向けると同時にトリガーを引く。同時に四季も試合開始の合図と同時に動いたことで回避に成功する。

 

「さあ、踊りましょう。私、セシリア・オルコットとブルーティアーズの奏でるワルツで!!!」

 

「そのお誘い、受けよう」

 

 心の内で『貴方に認められるために』と言う言葉を呟きながら告げられたセシリアの言葉に四季はそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女、セシリア・オルコットにとって織斑四季との出会いは色々と衝撃的だった。……そう色んな意味で。

 

 最強の兵器と考えていたISが巨人によって子供に玩ばれる玩具の様に落ちて行く光景……後に四季から聞いた話だったが、ISのコアネットワーク内に存在する闇の化身とその手下達……四季達が闇のコンピューターウィルス……『DN-ウィルス』と名付けたモノに感染したISの成れの果てと言うべき存在によって当時のセシリアの居た研究施設が半壊に追い込まれた事件が四季との出会いだった。

 

 周囲の物質を無機、有機の区別なく吸収するそれによって誕生したスダ・ドアカワールドのモンスターとの戦闘……相手の攻撃は直撃すれば一撃でシールドエネルギーを全て持って行かれ、逆に自分達の攻撃は相手に効いた様子もない。

 幸いにもISの絶対防御は相手の攻撃から搭乗者の生命を守ってくれる程度の性能が備わっていた事だけは幸いだが、それでも巨大な怪物が暴れまわっている状況でその直ぐ近くに投げ出されたのは哀れとしか言い様がないだろう。

 実際、四季が間に合わなければ確実に怪我人では無く死人が出ていた事は間違いないだろう。

 

 最後に残されたセシリアが彼女の専用機であるブルーティアーズ毎モンスターに捕えられ握りつぶされそうになった瞬間、彼女を捕獲していたモンスターの腕が切り裂かれ己を押しつぶそうしていた圧力が消えた時、彼女の視界に映ったのはISマスクコマンダーを纏った四季の姿だった。

 

 既にダメージが限界になっていたブルーティアーズだが、辛うじて主人を安全に地上に送り届ける事だけはできた。地面に降りた彼女はISが解除されると目の前の光景に呆然としながらへたり込む。

 

 ISマスクコマンダーの仮面の奥で当時の四季は思わず表情を歪ませてしまう。……幾つかのISコアがウィルスに感染してしまっているのが“感覚”で分かる。先ずは、と目の前に居る巨人を一瞥し、それの殲滅を優先する。

 

 近接特化剣闘形態『魁斬フォーム』。ISマスクコマンダーをベースに二刀『イザナギ』と『イザナミ』を武器にして魁斬の武者鎧風の装甲に全身の装甲を換装させたISマスクコマンダーの持つ姿の一つ。武器は二刀だけに限定されるが、この姿は純粋に七星天剣流を扱う事に特化した姿だ。

 

 ……先ず先に言っておくが攻撃が効いていないわけでは無く、人間サイズの射撃武器では敵、モンスター『ジャイアントジオング』の巨体に対してサイズの問題で掠り傷程度しか与えられないだけだ。

 

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)を連続に行いジャイアントジオングの懐に飛び込む四季。

 奇しくも嫌っている姉と似たタイプの形態である魁斬フォームが彼にとっての『本気』と『全力』を発揮する姿だ。……まあ、まだ彼女の場合は改善の余地が有る分良いのだろうが。

 

 流石にサイズの問題の為に一太刀で、とは行かないが飛び回る四季を叩き落そうとするジャイアントジオングの腕を切り裂き、そのまま眼前へと飛び込むと、

 

「七星天剣流……『飛槍突斬』!!!」

 

 零距離から放たれた飛槍突斬によって頭を貫かれたジャイアントジオングの巨体が崩壊していく。

 

「やったか?」

 

 防御力と生命力だけは厄介だったが、それにしても戦闘力の点で『弱い』と判断する。あまりにも簡単に倒せた事に罠を警戒して残心を解かずに見下ろしている四季だが、崩壊していくジャイアントジオングの屍に対して僅かに警戒が緩む。

 

 そんな時に響いたセシリアの悲鳴が四季の意識を其方へと向けさせた。地上では崩壊したジャイアントジオングの体から出現した無数のジオングの頭部にコウモリの翼が生えたモンスター『バンパイアジオング』が出現していた。

 

「チィッ!」

 

 『吸血鬼(バンパイア)』と言うよりも吸血蝙蝠に近いであろうモンスター達が一斉に施設に居る生存者達を襲い始めた。

 

 イザナギとイザナミの二刀だけを残してISを解除、流石に地上近くを飛んでいる蝙蝠サイズのモンスター達を相手にしては戦いにくいと判断しての行動だ。仮面を上げて視界を確保すると、

 

「七星天剣流、『千渦連斬』!!!」

 

 二刀を持って無数に繰り出された高速の斬撃がセシリアを襲おうとしていたバイパイアジオング達を切り裂く。

 

 化け物としか思えない姿のモンスター達を二本の剣で切り裂くその姿は、ファンタジーの中に描かれる勇者か騎士を連想させるその姿……それがセシリアと四季の初めての出会いだった。

 

 

 

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