護刀アメノハバキリ 作:F.I.S.生化学班
「……遅い」
腕を組み、指で己の腕をトントンと叩く翼。口をへの字に曲げ、眉がシーソーのような急な角度になっている。
「あのバカの事だ。どうせいつもみたいに、人助けが理由で遅れてんじゃねえのか?」
呆れたように言うクリス。
「……ううむ」
目を瞑ったまま、唸る弦十郎。
特異災害対策機動部二課仮設本部にて、イラつく者と、楽観視する者、考え込む者の三名だけが声を発していた。
「……しかし、前もって連絡していたにも関わらず、30分も、何の連絡もなしに遅れるなんて事、今まであっただろうか?」
翼が疑問の声を上げる。なんだかんだで、これほどまでに遅れることは今まで無かった。遅れるなら遅れるで連絡があった。
「たしかに、翼の言う通りかもしれない。場所の確認だ」
シンフォギア装者達に配布されている携帯型の端末にはGPS機能が付与されている為、いざと言う時はこれで位置を割り出せる。弦十郎は、特異災害対策起動部二課の司令として、オペレーターに確認をさせた。
「司令、これは……」
「なん、だと……っ!?」
最後に反応が途絶えた場所が、現在、敵のアジトだと思われる有力候補の一つ、今は営業をしていない浜崎病院であった。
「現場へ急行だ! 急げ! 死んでも守りきれ!」
「「はい!」」
巧妙に隠されたアジトへの痕跡。緒川達が全力を尽くすことでようやく見つけた不確かな軌跡。
「こんな形で、確信したくはなかった」
苦虫を噛み潰したような顔で、呟いた。
▼
『貴方達! 今すぐギアを纏いなさい!』
「まさかマム、もう来たって言うの!?」
『奴らは、直上から降下してきています!』
マムの声が終わると同時に、爆発音と共に天井が吹き飛んだ。巻き起こる砂埃の中、顔を覆った腕の隙間から窺える、揺らめく銀の閃光。
「お縄につきな!」
「くっ!」
「きゃっ!」
「デース!?」
「くぅっ!」
まともな反応も取れず、一瞬で無力化される四人。
「……翼さん。クリスちゃん」
見えなくとも、声で判断ができる。
「敵装者の無力化に成功。立花を発見しました」
「へっ。プチャヘンザだ」
無力化した四人に対し、銃口を突きつけるクリスと、鋒を向ける翼。
『待て、翼。ウェル博士と小日向くんはそこには居ないのか?』
「……ええ、居ないようです」
部屋を見渡して返事をした後、翼が視線を送る。
「しゃあねぇな。あたしが残るよ」
「では、雪音は立花と探索を」
『ああ。頼むぞ、翼、そしてクリスくん』
通信を終わらせ、立花を鎖から解き放つ。翼の技量でもってすれば、鎖のみを斬り裂く事なぞ造作もない。
「……立花、お前、泣いているのか?」
「な、泣いてなんかいませんよ! さ、クリスちゃん! 未来を探しに行きましょう!」
ゴシゴシと目元を擦り、翼の問いかけに対し、何事もなかった様に振る舞う立花。
「……あのバカ」
戦場に涙は似合わぬ。
そも、泣いている暇などないのだから。
▼
「まさか、直上からとは。大胆不敵な電撃戦、見事と言うべきか」
「どうしますか、ナスターシャ教授。ソロモンの杖を使った所で、時間稼ぎにしかならないでしょう」
そうは言いながらも、ドクターウェルはノイズを出現させ、指示を出している。
「……ドクターウェル」
「なんですか?」
「一か八かの賭けになります。それでも、貴方は乗りますか?」
「ふふん。いいじゃないですか。ですが、僕は成功させますよ。英雄ならば、この程度のこと造作もないですからね」
一生懸命の対価が奇跡だと言うのならば、きっと。そう、きっと。
▼
それほど離れていない個室で小日向を確保した二人は、シンフォギアを身に纏い、ノイズを撃破しながら出口へと向かっていた。
「ちっ! ノイズ達が妙に固い!」
「それに、なんだか身体も重い気が……」
小日向を背負っているからと言えばそうなのだが、それとはまた違った重さが身体を蝕んでいた。名誉の為に言うが、小日向未来は重くない。ふわりふわりと舞う羽の様に軽い。確かに元陸上部だからリディアンに入ってからは音楽漬けの関係で運動をしていない事から「ちょっとお腹周りが……」と思うことはあったが、健康的な範囲内である。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!!」
「「ッ!?」」
獣の様な叫び声が壁を伝い、反響し、轟く。そして、高速で接近してくる崩壊音と、腹に底に来るような重厚な足音。
「バカ! 振り返るな! 行け!」
「でもクリスちゃん!」
「連れて帰るんだろう!?」
「……必ず戻ります!」
振り返らない。最短で、最速で、真っ直ぐに、一直線に駆け抜ける!
「……ったく。世話が焼ける」
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!」
「先手必勝ォォォォォアアア!!!!!」
細い通路内で形成できるギリギリの大きさのミサイルを闇の中にぶっ放す。当たればよし。当たらなくても崩落させることができるからよし。
「これ以上、失ってたまるかってんだ!」
相性は悪い。でも、それでも、だとしても、やらなきゃならない。
▼
「さあ、ウェル博士が何処にいるのか、吐いてもらおうか」
「言われて吐くとでも?」
挑発的な笑みを返すマリア。
「答えなくとも良い。直にヘリが来る。話はゆっくりと、柵の向こうから聞かせてもらおう」
同じく、不適に笑って返す翼。
「さて、そう簡単に事が運ぶものかしらね」
「どう言う意味だ?」
「こういうことよ」
突如、翼達の周りに現れるノイズ達。
「なっ!? そうか、ソロモンの杖!」
「ご明察。さて、この状況でも私達に構う余裕があるかしら?」
「……見縊ってもらっては困る」
翼が剣を天に翳す。
【千ノ落涙】
流星の如く降り注ぐ剣の形をしたエネルギーの塊。ノイズを的確に撃ち抜き、一瞬で殲滅する。
「なっ!?」
「剣と鍛えたこの身、そう容易く封じれるとは思わないで貰おうか」
剣を振るう、もしくは天に翳す必要があるとはいえ、この技は非常に使い勝手が良い。近中距離に対応可能であり、且つ、対人スキルも高い翼が見張り役を引き受けるのは、当然のことだった。
「翼さーん!」
背後からの声に、振り返ることなく返す。
「見つけたのか!」
「はい! 緒川さんが屋上からヘリで連れてってくれました! 捕まってたのは未来だけで、他の子はみんな返されたみたいです!」
「そうか、ならいい」
瞬間、爆発音。廃病院から赤き閃光が外へと飛び出す。
「ぐあああああああっ!!!」
「クリスちゃん!?」
地面に叩きつけられ二転三転。
「ぐっ……うおおおぉぉぁぁああっ! おねんね、するには、まだ、早えってんだ!」
虚勢だ。地べたに這いつくばり、まともに立ち上がることすら出来ていない。全身を震わせるだけだ。
「うおおおおおおおおおおお!!!」
駆け出す立花。反対に、耳元に手を当て、詰問するマリア。
「ちょっとウェル! どういうことなの!?」
『ネフィリムがお散歩に行きたいようでしたので、放しました』
「はぁっ!? 大丈夫なんでしょうねぇ!?」
『今日の分はまだですし、事が終わってから束ちゃんに歌ってもらうしかないですねえ』
「今のこの状況で出来るとでも!?」
『出来ますとも。どうあがいても、彼方はネフィリムに対応するしかなくなる。その一瞬が好機』
『マリア。どうあれ今はネフィリムの気紛れに任せるしかありません。何処かに身を潜め、やり過ごしなさい』
「……わかったわ」
「その反応から察するに、これは其方としても想定外、という事だな」
立花の様子を確認しつつも、四人の装者から意識を逸らす事なく問いかける。
「……ネフィリムは、暴走状態の融合症例一号と似たようなものだ。放っておけば、どうなるかわからないよ」
「だが、貴様らを放っておくわけにもいかん」
「だから、ボクが出る」
「た、束!? それはいくらなんでも無理だと思うデース!」
「……どういう事だ?」
「ネフィリムを制御出来るのは、ボクだけだ。此方としても、無辜の民を好きで殺したい訳ではない。そちらも負傷者が出ている。痛み分けという事で、この場は治めようじゃないか。そういう事だけれども、いいかな」
揃って耳元に手を当てる三人。
『束。独断が過ぎます』
『いいじゃないですかナスターシャ教授。どちらにせよ仕切り直すしか無いんですし』
『……はあ。束、後で、お話をしましょう』
「……こっちの話は纏まった。そっちはどうかな」
冷や汗を流しながら問う束。
「致し方あるまい。この場限りの共闘だ。が、しかし、三人には目の届く範囲に居てもらおう。もしもギアを纏うのであれば、此方としても考えがある」
「わかってるわ。それでいいわよ」
「なら、そこから動くなよ」
脚部の収納口から短剣を取り出し、三本地に投げ突き刺す。
【影縫い】
「な、これ、は……っ!?」
「う、動けない?」
「お、重い、デース……」
「何をした」
圧を放つ束。
「逃げられぬよう、縫い止めただけだ」
「……なるほど。では、行こうか。忍法を扱う天羽々斬の装者」
「鍔は確りと固定しておけよ、天羽々斬の装者」
目と目を合わせたやり取り。そして視線は戦場へと。
「─── ─── ─── ───」
ほんの一瞬。瞬きするにも満たぬ一瞬で己を貫き通す為の鎧を装着し、シンフォギアの戦士へと変身した束。今宵も月の煌めきを反射し、存在感を知らしめる。
「出陣である」
失ったはずの明と暗が入り混じる右腕で、拳を握りしめた。
▼
「はっ! はっ! せやぁ!」
背後の雪音クリスを庇うよう、ネフィリムの相手をする立花響。しかし、普段と比べて著しく動きが悪かった。
「立花! 遅れた!」
「翼さん! 束ちゃんも!?」
「今だけの共闘だ! 目を離すな!」
「はい!」
逸れた意識が再び戻る。
「動きを止めるあの技で、縫い止められるか?」
「あれだけの膂力だ。そう長くは持たないかもしれない。加えて、俊敏だ。ほんの一瞬でいい。動きが止まれば、完全に杭を打つ事が可能だ」
「こちらは最大出力でなければ、この場を治められぬ。故に、時間がかかる」
「……なるほど。お姫様を護る騎士であり、敵を穿つ鉾であれと言う事か」
「分かったのならば、タイミングを合わせろ!」
「むしろ其方が、合わせられるかな?」
ネフィリムの猛攻を凌ぎながらの作戦会議は終わった。賽は投げられたのだ。
──♪ 妖刀・天羽々斬
鎧を身に纏ったシンフォギアの装者が、歌い始めた。
「あちらのタイミングに合わせ、此方が動きを止め、その隙に私が影縫いで完全に固定する!」
「はい! 了解です!」
「ああ! 何がなんでも間に合わせてやるさ!」
シンフォギアは歌うことで本来の力を発揮する。そして、雪音クリスが過去にやったように、感情にも左右される。故に、最大火力を出せるのは、最大までフォニックゲインを引き揚げられるタイミングは、サビでなのである。
機会は二度、もしくは三度。
約一分か、二分か、それとも三分目か。
そのタイミングに合わせてネフィリムに大打撃を与え、動きを止め、影縫いで完全に固定化させなければならない。が、現状まともに動けるのは翼のみであり、本調子ではない響では火力を出せず、ダメージからか未だに戦線復帰できていないクリスが戦線に戻るのを期待するかである。
と、いうことは、一番では間に合わず、やるとしたら二番である。
「うわああああああああ!!!」
「立花ァ! クッ!」
均衡が崩れた。とうとう立花響の可能とする処理が追いつかなくなった。避けれなかった一撃を受け、雪音クリスの元へと吹っ飛ぶ立花響。
「はあああああ!」
【千ノ落涙】
広範囲殲滅技だが、落下地点はある程度収束することも可能である。範囲を狭め、密度を上げ、可能な限りネフィリムを足止めし、立花響と雪音クリスを庇える時間を増やす。
「頃合だな!?」
翼が視線を移せば、月の光を受け、燦々と降り注ぐ妖光を受け、星の瞬きの様に輝く鎧が佇んでいた。
間違いなく、最高のタイミング。
「ハッ! 休憩時間は終わりだ!」
雪音クリスも立ち上がり、巨大なミサイル二つと、多量の小型ミサイルを形成していた。これで確実に動きを止められる。誰もがそう思っていた。
「ぶっ飛べカーニバ、う、グ、うあああああああああああああ!!!???」
「雪音!?」
「クリスちゃん!」
突如悲鳴を上げる雪音クリス。制御を失ったミサイル達は、噴煙撒き散らしながらあらぬ方向へと吹っ飛んでいく。
『あんぎゃあああああ!? この山育ち! こっちを狙うなこっちを! 死人を出すつもりか!?』
ウェルの罵倒が、廃病院の拡声器から放たれる。
小型ミサイルは地に穴を空け、廃病院をブチ抜き、そして、巨大なミサイルの片割れは廃病院を。もう一つは、カカシ目掛けて向かっていた。
「ウソ、でしょう……?」
マリアが呟いた。立ち位置的には、己の背後に切歌と調という守るべき存在。正面からは、迫りくるデッドエンド。永遠に伸びた刹那の中、マリアは、確実な死を意識した。
「マリアさん!」
「マリア!」
「しまった!」
「おい、うそだろ……?」
立花響が、飛彩束が、風鳴翼が、雪音クリスが叫ぶ。
どうやっても間に合わない。
──結局、何も為せずに、無意味にここで散るのかしら。
──まったく。私の名を騙るぐらいなら、もう少し意地を見せてもらいたいところなのだけれどね。
幻聴か。悪魔の囁きか。わからぬ。だが、マリアの胸に宿った信念の火を、弱ってしまった篝火を、再び燃え上がらせるには十分だった。月の光に惑わされた己の意志を正し、今ここに、覚悟は完了した。
──たとえこの身、炎に抱かれようとも、せめて二人だけでも!
まともに身動きの取れぬ中、手を広げ、庇うように、すべてを受け止めるように立つ。
「やめろおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
雪音クリスの悲鳴は、爆発音にかき消された。
▼
「……私は、フィーネ。終わりの名を持つ者」
爆炎の中から、声が聞こえる。
『流石ですよ、フィーネ』
「フィーネ? どういうことですか?」
『文字通りですよ』
月の光を拒む煙が晴れ、障壁と、その内に護られるように仁王立ちをするマリアの姿が浮かび上がった。
「な、そんな、ウソ、ですよね……?」
「お、おい、マジの話だって言うのかよ……」
「そんな。櫻井女史は、たしかに…….」
茫然と呟く特異災害対策機動部二課の装者達。
『そう! 彼女こそが、再誕したフィーネその人なのですよ!』
現代に蘇った亡霊が、忌々しき月の元、再び立ちはだかる。
GのロングイントロED有能すぎか?
Gのクリスちゃんって、立花響の成長速度に驚嘆して焦りを抱いたり、ネフィリム相手に何もできずにおねんねしたり、エアキャリアを狙撃するはずが間に合わなかったり、切歌に接近戦に持ち込まれて何もできずにボコボコにされたり、不憫よね。そら、ソロモンの杖手に入れる為にあんな手段取るわな。
なお、こっちの世界では、4期でやるはずの『人を撃つ覚悟』に近しい事をやってしまったせいで精神的ダメージが更に増えている模様。なんでこんな酷い目に合わせるんですか?
束ちゃんの初、お披露目曲は『妖刀・天羽々斬』
この曲名だけで八割ぐらい察しはつくだろうからなにも言わない。
フィーネ
切歌にイメージを送り届けることが出来たんだから、声も送り届けられるでしょ。フィーネだし出来そう。
※全部妄想
しらべぇ
月読調
調神社に関わりがありそうだけど実際はどうか分からない。
過去の記憶無し。
お守りだけが手掛かり。
でもさあ、FISは身寄りのない子を集めてたんだから、非合法なことはやりにくいよなあ? 誘拐は、やれないことはないけど難しいよなあ? (ノイズ対策で監視カメラが多すぎる。)
と、なると、『月読調』は、『調神社の少女』と一緒に行動していた際、なんらかの事故に巻き込まれた結果、生き残ってしまったと考えられるのでは?
唯一の友人が死んだらそらショックで記憶もぶっ飛ぶで……
家庭環境もあまり宜しくなかったのかもしれない。それが『心の壁』となって、苦しめ続けていたのかもしれない。
アームドギアの謎の人形。あれまさか、友達がいなくて、尚且つ親も遊び相手になってくれなかったから、ずっとボッチ遊びしてたのでは……
※全部妄想
GX響
あれは平和ボケしてたから聖詠が浮かばなかったって事でfa?
Gでも精神的ダメージ結構あったけど、あれはなりふり構ってる状況じゃなかったから割と耐えられたとして、うーん。
力から逃げてたって言ってたけど、災害救助でなんかやらかしたとか? 壁をぶち壊した結果、瓦礫の山ができて人が下敷きになったとか。それだったら確かにトラウマになるわな。
※全部妄想
苦しいので、色々と。続きを書きます、現実逃避する時に。