この果てしなき修羅場に終焉を!   作:ルイ提督

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エピローグ? そんなものはアンタには渡さないわ

元アクシズ教が運営する会社に就職してから早くも三ヵ月が経過した。当初は単なるウォーターサーバーの営業かと思ったら、悪魔退治なんていう変な裏の仕事も任されるようになったりと色々あったが、なんだかんだで生活は順調だ。悪魔の出現は一月に一回あるかないかであるし、悪魔の強さも異世界のモンスター達とそれほど大きな差はない。神社での異変を解決し、すぐさま独り立ちとなったのは流石に不安だったが、そんな不安も”彼女達”のおかげで大分和らいでいた。

 

「お~やってるやってる……流石は八尺様……頼りになるな~」

 

『何を呑気な顔をしておる。あの山姫にも限界はあるのだぞ?』

 

「へいへい……”狙撃”」

 

『むっ……びゅーてぃふぉー!』

 

 視界の先、のどかな田園風景の中心では巨体を俊敏に動かして敵悪魔を次々と粉砕しているのは仲魔である八尺様だ。そんな彼女を潜り抜けて俺達に近づく敵悪魔……赤くぶよぶよとした塊に人間の顔が複数浮かび上がった気味の悪い見た目をした”幽鬼レギオン”をボルトアクション式ライフルで狙い撃つ。

 弾丸が見事に命中したレギオンは血しぶきを上げ肉片を飛び散らしながら消滅する。この地球じゃ銃で撃たれれば幽霊も悪魔も神も殺せる。それは知りたくもなかった新たな常識だった。そして、次のターゲットをライフルのスコープ越しに探していた時、視界に何やら白い物体がかすめる。その瞬間、俺は慌ててライフルを投げ捨てた。

 

「あっぶね!? クソ……あの白いくねくねした奴の相手は任せた!」

 

『あいわかった。報酬はお主の濃厚な生体マグネタイトでよいぞ』

 

「無駄口言ってないで早く行け!」

 

『むぅ……つれないのう……』

 

 不満そうな表情を浮かべる姦姦蛇螺の下半身をげしげしと蹴りつけると、彼女はのそのそと田んぼふちでくねくねしてる奴の討伐に向かった。それを見届けた俺は、この悪魔が湧き出る原因となっているらしい古民家へと足を運ぶ。そんな古民家の居間では、先行して突入していた女神アクアの姿があった。濃紺のレディーススーツに身を包んだ彼女は何やら難しい顔をしながら木製の立体パズルのような木箱をいじっていた。

 

「それでアクア、悪魔が湧く原因は分かったのか?」

 

「それなら丁度その原因を浄化した所よ。だから、外の連中も力を失って消えてるはずだわ。それより、この箱を開けてくれないかしら? こういうのって中身が気になるのよね」

 

「へいへい、これくらいのパズルな楽勝……って何やらすんだ駄女神!」

 

「ひゃっ!? いきなり怒鳴らないでよ!」

 

 俺はアクアから渡された箱を窓から外に向けて思いっきり投げ捨てた。アクアは何やら俺に対してびくびくしているが、俺は流れるようにノリツッコミをしてしまった自分自身にびくびくしていた。

 

「お前が俺に投げ渡したのは多分、”コトリバコ”っていう呪い箱で……お前は呪いとか大丈夫なのか?」

 

「私があんな程度の低い呪いを受けるわけないでしょう? それより、アレの正体がよく分かったわね。私はあんなの初めて見たわよ?」

 

「まあアレは結構特徴的な見た目してるしな。最近は暇なときはそっち関連の勉強もしてるし……それはそれとして……アレの中身は……」

 

 

 

 コトリバコの中身を聞いたアクアはうげっとした顔をしていた。そして、事務所に任務完了の連絡を入れた俺はアクアと共に外に出る。そこには、どんよりとした異界の瘴気は消え去ったのどかな田園風景が広がっていた。

 

 

『おお……甘露、甘露……』

 

 

『ぽぽぽぽぽっ……!』

 

 

 そして、仲魔の怪異たちはそんな田んぼの一画で壊れたコトリバコから中身を取り出してポリポリと食べていた。アクアと共に俺もうげっとした顔をしてしまう。なんだかんだでコイツらも立派な化け物だった。

 

「ねえ、やっぱりアレは滅ぼすべきじゃないのかしら……」

 

「物騒な気は抑えろ……それより今夜は面倒な仕事の達成を記念して一杯やるか」

 

「ふーん……そう……」

 

 興味なさそうな表情で生返事をしたアクアが車の助手席に乗り込む。俺は武器や物品をトランクにつっこみ、全身を敵悪魔の血で染めながら笑顔で戦闘終了後のご褒美をねだってくる怪異達を送還術式に叩き込む。そうして、運転席に乗り込んだ俺をアクアは半眼で睨んで来た。

 

「どうした、不機嫌だな? 何かやっちまったか俺?」

 

「やっちまったもクソもないわよ……もうわけが分からないわ! どうしてこうなったの!?」

 

「どうしてたもこうしたも、お前が俺が浮気するからなんて変な理由で仕事に付き合うようになって……」

 

「そうじゃないわよ! 前提がおかしいの! カズマさんとこの日本で二人っきりで暮らす事になった時、私は少し退屈だけど幸せで穏やかな日々が過ごせるって思ったのに! それがこんな……!」

 

 頭を抱えて項垂れるアクアを横目に俺は車を発進させる。ちなみに、この車は営業車ではなく神社での臨時ボーナスで購入した車である。彼女を連れてドライブに繰り出した時、『アクアが”アクア”に乗っているなんて……ふひゃははは!』と一人で爆笑し、彼女にドン引きされた記憶は今も新しい。

 それはそれとしてこの頃、アクアの精神が若干不安定なのは知っていた。もしかしたら、めぐみんやダクネスに対しての罪悪感でも抱き始めたのかと思ったがどうやら違うようだ。

 

 

「数か月前までスーツを着て現代社会にズタボロされるカズマは正直言って可愛かったわ。母性本能ともいえる女としての心をぐいぐい刺激するアンタの姿を全力で応援したし、そんな状況でも甘える私に優しくしてくれたのは嬉しかったわ。でも、たった三ヵ月後には怪異を従えて悪魔を狩ってるし、初々しいスーツ姿はどこかに消えて変な軍服を着て銃をぶっぱなしておまけに頭には金色のバケツをかぶってるのよ!? もう、私はどうすればいいか分からないわよ!」

 

「なんだよお前、急にヒス起こすなよ。後、デモニカスーツを馬鹿にするな。防御面も優秀だし、こんなにもカッコイイのに……」

 

「むきいいっ!」

 

「いてててっ!? わかった、わかったからヘルメットを殴るな! 脳が揺れる!?」

 

 急にヒステリックを起こし俺の頭を殴打し始めたアクアを宥めるため、俺は彼女が金色のバケツと称したヘルメットを脱いで後部座席に放り投げる。後には、頬を膨らましたアクアの仏頂面が残った。その後、押し黙ったアクアをそのままに車を走らせて家へと直帰した。

 

 家についた俺は車を地下駐車場に止めてエレベーターへと乗り込む。そして、マンションの最上階に位置する我が家に入り、アクアはふらふらとソファーへ導かれて横になる。俺はというと、地方都市の控えめな夜景を見ながら、ウォータサーバーから紙コップに注いだ水をゴクリと口にした。

 

「なあ、アクア」

 

「なによ……」

 

疲れたようにソファーでぐったりと横になるアクアに、ここ最近における”真理”を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「人生ってチョロいな!」

 

 

 

 

 

 

 顔面に向かってテレビのリモコンが飛んできた。アクアが投げつけたそれを難なくキャッチした俺は彼女の横へ腰を降ろし、巨大な壁かけテレビのスイッチを入れる。こちらにゲシゲシと蹴りを入れるアクアを上から抑え込むと、彼女は相変わらずの仏頂面をしていた。

 

「どうした、今の生活が不満か?」

 

「不満は別にないわよ。でも、それはそれとしてカズマの事はムカつくの! この成金!」

 

「おいおい、それは誉め言葉だぞ……」

 

「ううぅ~!」

 

目に涙まで貯めてこちらに反骨心を示すアクアに対し俺は溜息をついた。

 

 

 

 

 神社での怪異討伐の後、臨時ボーナスとして数百万円の報酬を受け取った。先輩によると、あの異界で出現した悪魔は非常に強力だったらしく妥当な報酬らしい。それこそ、この規模の案件を昔気質の退魔士に依頼すると報酬としてこの数倍は必要だそうだ。

 ともかく、あぶく銭を受け取った俺は出社までの足として車を購入したり、先輩の紹介で刀や銃器をなどの武器を手に入れたりした。それでもまだ余った金を使い、俺は更なる金儲けをしようと企んだ。そうして手を出したのはあのFXだ。最悪、FXで有り金を全部溶かした人の顔を晒すことになってもエリス様に泣きつけばいいかと楽観的に始めた。だが、一か月後には元金は約100倍に膨れ上がっていた。あぶく銭で更にあぶく銭を手に入れた俺だが、今のレバレッジで損失を出したらこの莫大な資産も吹っ飛んでしまう。

 という事で、FXをきっぱりやめて株式投資に手を出す事にした。その結果、莫大な元金は二ヶ月後にはその三倍に膨れ上がっていた。とりあえずアクアの資産に俺の資産の8割を入れたところ、ひと月に引き出して良い上限が数百万まで伸びた。そして、残りの2割をいわゆる安定株の購入に当てた結果、今まで通りの生活をするだけなら配当金だけで可能となった。

 この結果に対して大きな揺り戻しは起こっていない。株式投資で実は結構な損失を出した事が揺り戻しの可能性もあるが、最終的には利益が損失を上回った。今ではアクアと遊びで競馬やボートレースに手を出しているが、アクアは毎回のように撃沈している一方で俺は小さな勝ちを繰り返してアクアの損失を補填できるほどの額は博打によって得たいた。これを見て流石の俺も実感する。どうやら、俺は異世界でも経験した”安定期”に入っているようだ。これは苦労して稼いだ金は博打に入れても裏切らないというジンクスをより実感させた。

 ちなみに現在の仕事についてだが、今では水の配送などの仕事は他の社員に任せ、悪魔狩りはノーギャラで行っている。アクシズ財団には結構な額を寄付して例の上層部のおっさんとも緊密に連絡を取り合った結果、今では色んな意味で”事情通”である。また、デモニカスーツもその伝手で手に入れた最新式の装備だった。

 

「そういえば、わざわざ隣に引っ越したっていうのにここしばらくエリス様達に会ってないよな……」

 

「うっさいわね……アンタは私だけを見てればいいのよ……」

 

「なんだよ、焼きもちか?」

 

「あーもう……本当にカズマは……」

 

 イライラした様子のアクア俺はぎゅっと抱きしめる。そうすれば、経験上アクアは大人しくなるのを知っていた。案の定、いそいそと抱きしめ返してきた。そんなアクアを撫でながら俺はもう一つの真理を悟った。

 

 

 

 

 

「アクアってチョロいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「むがあああっ!」

 

「いてえええっ!? なにすんだ駄女神!? 噛むなクソバカ!」

 

 

狂犬と化したアクアを振り払いながら俺は何とも言えない充足感のようなもの覚えた。その感情が何を示すのかはいまひとつ分からないが、おそらくこれが”幸せ”というものなのだろう。

 

 

 そんな日の翌日、朝からテレビ前のソファー陣取っていた俺にアクアが神妙な顔で立ちはだかる。彼女の手には以前も目にした豚の貯金箱が握られていた。

 

「ねえカズマ、暇なら旅行でも行きましょうよ。せっかく生活も安定してきたのに、アンタってばだらだら過ごしてるだけじゃない」

 

「なにおう!? これでも俺も結構色々とやってる……というかもう貯金箱を硬貨でいっぱいにしたのか?」

 

「残念ながらこの中身は半分も貯まってないけど、カズマがすでに馬鹿らしいほどのお金を手に入れているじゃない。それなら少しくらいは旅に出てもいいと思うの」

 

「うーん……」

 

「なによ、乗り気じゃないの?」

 

「別にいいと思うぞ。ただ、どこに旅行に行くんだ?」

 

 思えばアクアと旅行について話すのはこれが初めてではない。一週間に一度は話のタネになっていた気がする。だが、その場では旅行先の決着がつかずに毎回言い争いで終わっていた。となればここは言ったもん勝ちである。俺はかねてから行こうと思っていた地の名を口にした。

 

「それじゃあ北海道に行くか! やっぱ旅行と言ったら美味い飯がある場所だよな!」

 

「はあ? 何言ってるのカズマ、旅行っていったら綺麗な海と豊かな自然を楽しめる沖縄に決まってるでしょう!?」

 

「いやいや、沖縄とか飯がクソまずいから論外だろ。豚の餌よりひどいのばっかじゃねえか」

 

「ちょっと待ちなさい! 流石にそれはディスりすぎよ! それにご飯は米兵御用達の料理屋にいけば問題ないわ。それより、ご飯以外はじゃがいも畑しか存在しない北海道の方が論外よ!」

 

「いやその北海道にも色々あるぞ……その用途不明の時計塔とか……あと……うーん……五稜郭……? と、とにかく俺は北に行くぞ! つーかお前も沖縄の飯のまずさは分かってるみたいじゃねーか!」

 

「うっさいわね! それよりアンタは北海道のつまらなさを経験した事ないの? 道内全域の観光施設は寂れてるし嫌になるくらい虫が多くてストレス満載なの。という事で沖縄で決まりね!」

 

「はあ!? 勝手に決めんな駄女神!」

 

「うっさいわよバカズマ!」

 

 それからはいつものような言い争いになってしまった。お互いの旅行先についてある事ない事をディスりあい、数時間後には大人げなくつかみ合いの喧嘩となった。そうして、お互いにぼろぼろとなった俺が提案したのは”多数決”であった。

 

「という事で八尺様、北海道と沖縄、旅行するならどっちがいい?」

 

『ぽぽっ……?』

 

「ねえカズマ、こんな怪異にそんな質問するの?」

 

「一応は日本の怪異なんだから知識はありそうなんだが……」

 

 苦肉の策で出した妥協案に、アクアだけでなく俺も心配になってきた。だが、質問を受けた八尺様はどこからともなくスケッチブックと油性ペンを取りだして何かを描き始める。そうして、ニコニコとした笑顔で俺達の前にスケッチブックを差し出す。そこには、どこか見覚えのある形が記されていた。

 

「これって県のシルエットよね……確か東北地方の……何県だったかしら」

 

「岩手県だな……」

 

「ねえ、二択で聞いてこの答えを出すなんて、この子ってば結構なバカよね……」

 

「おう、事実でも言ってやるな」

 

 アクアと共に八尺様を暖かい目で見ていると、彼女はスケッチブックに『ばかじゃないよー』と書き足して涙目になっていた。だが、彼女のせいで旅行先について更なる話の捻じれが出たため、俺はさっさともう一人の怪異、姦姦蛇螺を召喚した。

 

「という事で旅行に行くなら北海道と沖縄、どっちがいい?」

 

『なんじゃいきなり……まあ旅行ならば、わらわは長野にいきたいのう。弱っていた分霊とはいえ、かの祟り神の力を貰い受けたのじゃそれ相応の礼を……ってなんじゃお主ら? 物騒な顔を浮かべよって……』

 

「カズマ、やっぱりこのお馬鹿さん達はさっさと始末した方がいいと思うの」

 

「落ち着け落ち着け……ともかくこれじゃあ話が振り出しに戻ったな」

 

 一気に熱の冷めてしまった俺達に八尺様がすっとスケッチブックを差し出す。そこには、デフォルメされた笑顔の八尺様と『Go To 岩手』の文字、彼女の周りに倒れ伏す俺達のイラストが描かれていた。思わずため息をついた俺だが、そのイラストの中央に描かれたものを見て妙案を思いついた。

 

「こうなったら、ゲームで決着をつけようじゃないかアクア」

 

「別にいいけど、運ゲーは許さないわよ」

 

「安心しろ。勝負は麻雀でつけようじゃないか。これなら運ゲーとまでは言えないだろう?」

 

 

 

俺の言葉を受けたアクアは最初は難色を示したが、次第にニヤニヤとした表情を浮かべ始めた。

 

 

「ふーん、その勝負を受けて立つわ! それと、最初に言っておくけど、私は手先が”器用”なの。後から難癖をつけるのはお互いになしにしましょう?」

 

「ああ、別にいいぞ。まとめて俺の運で消し飛ばしてやる……!」

 

 

 

 

 

 

こうして、旅行先を賭けた真剣勝負が始まった。

 

 

 

 

 

 

「嘘よこんなの……燕返しだって決まったのに……」

 

「俺の運が負けただと……!?」

 

『はいはい、キンクリキンクリ』

 

『ぽぽぽぽぽっ!』

 

 旅行先を賭けた麻雀勝負は結果として八尺様の一人勝ちで終わってしまった。彼女はニコニコした笑顔を浮かべ『優勝!』と書かれたスケッチブックを持って身体を左右に揺らしている。一応、俺は二位でアクアは三位、ラスは巫女服ラミアが引いた。一応、俺が二位なのでアクアには勝ったのだが、いまさらそれを言って勝ち誇る気力はもう残っていなかった。

 

 

 

『お主ら、そんなに落ち込むくらいなら両方行けばよかろうに……』

 

 

それは、ヘビ女がぽつりと呟いた一言だった。

 

 

 

 

これには俺とアクアも顔を見合わせる。

 

それは一種の盲点だった。

 

 

 そして、八尺様がスケッチブックを俺に押し付けてくる。そこには『日本一周! ちょーたのしいよー!』と書かれていた。そうと決まれば話は早い。俺とアクアはノートパソコンを覗き込みながら旅の予定を立てる事にした。

 

「よし、それじゃあ大洗からフェリーに乗って……」

 

「バカねカズマ! どうせ船に乗るなら日本海側を通りましょうよ。太平洋って汚いじゃない」

 

「なにおう!?」

 

 

結局、日本一周旅行の予定は大筋をまとめるだけでも翌朝までかかってしまった。

 

 

 

 

 そして、アクアが寝落ちしてから数時間後、俺は書店へと足を運んで旅行雑誌を大量に買い込んで足早に帰宅していた。だが、我が家である最上階にてエレベーターを降りた際にそうした浮ついた気持ちは消し飛ぶ。俺の目の前には少し懐かしい友人の姿があった。

 

「やあやあ助手君、久しぶりだねぇ」

 

「ああっ……久しぶり……」

 

「どったの? なんだか気分が悪そうだよ?」

 

「いや別にそういうわけじゃないんだが……」

 

「まあまあ、今日は君もお待ちかねな”あの子”が来てるから相手をしてあげてよ」

 

 そう言って小さく微笑んだのは相変わらず布面積の少ない衣服を着た銀髪ショートの快活娘。女神エリスの分身、クリスであった。彼女は俺に手招きをした後、ゆっくりと歩き出す。俺は買い込んだ旅行雑誌を急いで我が家の玄関に叩き込んでからその後に続いた。今更ながら、新居にこのタワーマンションを選んだのは失敗な気がした。

 

 俺がエリス様の部屋に入ると、アクア達から比べると少し小さな影が俺の胸に飛び込んで来た。最初はめぐみんかと思ったが、彼女よりかは豊かな双丘を感じてそれは違うと思いなおす。何より、目下に見える女の子の髪色は眩しいくらい鮮やかな金髪だった。

 

「お兄様お兄様お兄様~!」

 

「んっ……!? お前……まさかアイリスか!?」

 

「はいっ! お兄様の将来の結婚相手、アイリスですよ!」

 

「いや、結婚相手って……」

 

「ご不満ですか? ふふっ、でもめぐみんさんよりかは私も成長しているんですよ。いつまでも子ども扱いは許しませんから」

 

 ロイヤルスマイルを浮かべるアイリス王女とこうして真っ向から顔を合わせるのは実はかなり久しぶりだった。それ故に彼女の成長ぶりには少し驚く。身長の伸びはそれほどではないが、全体的に出るとこは出て引っ込むところは引っ込んだ非常に理想的な成長ぶりであった。

 

「めぐみんさんからお兄様がアクアさんと故郷に帰り、会いに行ってみれば男女の関係になってたと泣きつかれた時にはどうしようかと思いましたが、私にとってはチャンスでしかありません! 結婚しましょうお兄様!」

 

「だからいきなりすぎだっての! 離れろクソガキ!」

 

「ちょっと待ってくださいよお兄様! 子ども扱いはいやです!」

 

「ああもう、クリス! パスパス!」

 

「はいよ~」

 

 飛びついてくるアイリスを俺はクリスへと受け流す。アイリスは頬を膨らましてクリスに抗議していたが、俺はクリスの目配せに頷いて部屋の奥へと進む。そうして進んだリビングには所在なさげに佇むダクネスの姿があった。約半年ぶりとなる彼女との再会を前にお互いが無言になってしまう。窓際で佇むダクネスの横に陣取ること数十分、重い口を開いたのはダクネスの方からであった。

 

「めぐみんから話は聞いた。アクアと駆け落ちまがいの関係になったらしいな」

 

「そういう言い方は……いや認める。結果として今の俺はアクアと恋人関係だ。ダクネス達にとっては急かもしれないが、俺にとっては別にそうでもない。異世界ではなんだかんだで一番古い付き合いだし、当時の事を振り返るとアイツが俺にとっては救いの女神以外の何物でもないんだ。一度女として意識してしまったらもう俺の負けだ。俺はもう、アクアの傍を離れたくない」

 

「そうか……」

 

 言葉少なく黙り込むダクネスを前に俺も再び沈黙を選ぶ。彼女は窓から見える景色を眺めながら、表情をほんの少しだけ和らげた。

 

「正直言って、私はお前に会うのが怖かった。自信満々でこの世界に赴いためぐみんが、次の日にはズタボロになって帰って来た。それ以降はずっと塞いでたよ。出てくるのはアクアへの呪詛とカズマへの恨み言ばかり。流石の私も気づけたよ。貴様がアクアを選び、私達を見捨てたとな」

 

「…………」

 

「だが、今日のカズマの表情を見れば嫌でも気づかされる。お前があのポンコツ女神をどうしようもなく愛してしまったとな。それに、貴様の表情にはやすらぎと安心が見え隠れしている。やはり、故郷というものは人間の拠り所なのだな」

 

「そうだな。なんだかんだ言って、日本の風土とこっちのハイテク機器に囲まれた生活は落ち着くんだ。異世界も悪くなかったけど、ネット環境や漫画みたいな娯楽はこちらが勝る。おまけに向こうでの安心感の象徴だったアクアが傍にいるおかげで俺は……そうだな……幸せな日々を過ごしてるよ」

 

「なっ……!? こっちまで恥ずかしくなるような話をよく堂々と出来るな」

 

 顔を赤らめながら俺に文句を言うダクネスを俺は涼しい顔で受け流す。もうこんな事でいちいち恥ずかしがってはいられないし、曖昧な態度では彼女達を余計に傷つけてしまう。だからこそ、俺は彼女に厳しい言葉を吐くことにした。

 

「これも一種の旅の恥はかき捨てって意味だ」

 

「それは……どういう意味だ?」

 

「そのまんまの意味だよ。俺は異世界に帰る気はないし、今後の人生もアクアと共に歩むつもりだ。こうして旧交を温めるのはたまには良いもんだ。でも、俺はもうお前らとこれ以上は仲良く出来ない。あの女神様はわりかし嫉妬深いんだ」

 

「えっ……」

 

絶句してしまったダクネスを残し、俺はさっさとこの場を去る事にした。玄関前では相変わらずアイリスがクリスに拘束されている。クリスはというと、俺に視線を向けてから何かを察したのだろう。しょんぼりと項垂れてしまった。代わりに開放されたアイリスが飛びついてくるが、俺はそんな彼女の頭を手でつかんで止めた。

 

「お兄様、どこに行くのですか!? 私はお兄様の故郷を案内して貰いたいです!」

 

「あのな……いや……この際だからはっきり言ってやる。アイリス、俺はアクアと付き合ってるんだ」

 

「はい、存じてますよ! でも、ここに帰化すれば私を縛る王女なんて肩書も消せますし、私はお兄様の妾だとしてもそれはそれで……!」

 

 興奮した様子でそんな事を語るアイリスには正直言って辟易する。だが、この程度で俺は屈しない。彼女の頭をがっしりと掴んで目線を合わす。キョトンとした表情でこちらを見るアイリスに俺ははっきりと言ってやった。

 

 

 

 

 

「迷惑だからもうこっちに来るなよ王女様」

 

 

 

 

 固まってしまったアイリスに俺は罪悪感を覚えたが、これは仕方がない事だと割り切る。エリス様の部屋から出た後、俺は背後から聞こえる”子供の泣き声”を出来るだけ聞かないようにした。そうして、マンションの通路を歩きながらやっぱりここは引っ越した方がいいなと後悔していると、背後から誰かが駆け寄る気配がして振り返る。そこには無表情で感情のこもってない瞳をこちらにむけるダクネスがこちらをじっと見ていた。

 

「決めたよカズマ、私は諦めない」

 

「往生際が悪いな……」

 

「別に私はカズマの言葉が信じられないわけじゃない。ただ、私はアクアの事が信じられないだけだ」

 

「おいおい流石にそれは……」

 

「いいや、この際だから言ってやろう。アクアはどうしようもないバカでクズのノロマだ。頭は働かないし、男の機微を察せない鈍感さもある。何より、カズマの言うようにアレはどうしようもなく嫉妬深いし、掴んだら離さない諦めの悪さもある。そういった事を重ねて、アレは貴様を失望させる。そんな時の貴様の受け皿に私はなりたいんだ」

 

 アクアの事を悪く言われる事で俺の心もカチンとくるが、それ以上に今のダクネスの心情が理解出来なかった。彼女の考え方は何というか”最初から負けている”。ダクネスの諦めの悪さはよく知っているが、これはいつもの彼女の諦めの悪さとはまた別のベクトルな気がした。

 

「なあ、考え直せダクネス。お前がこっちに来て横恋慕しても誰も幸せにならない。それに、ダスティネス家はどうするんだ?」

 

「貴様のためなら私は貴族なんてこちらからやめてやる。私はもうこちらで暮らす覚悟は決めた」

 

「本気か……?」

 

「ああ、本気だよ。私は貴様をどうしようもなく愛しているからな」

 

 

 それはとてもダクネスらしい諦めの悪さだとある意味では言えた。だが、俺はそんな彼女に苦笑いしか返す事が出来ない。

 

 

それが俺にとって決定打だったからだ。

 

 

 

 そして、右手は自然と懐の自動式拳銃へと延びていた。だが、抜き撃ちをする直前で思いとどまる。それはダクネスの防御特性を忌避したからではない。ただ、彼女の正体に察しがついてしまったからだ。

 

 

 

「なあ、そんなに俺が信用できないのか?」

 

 

「いいや、私はカズマをこれからもすっと永遠に愛して信じ続ける。でも、あの女は信用出来ないんだ!」

 

 

 嫌悪感を滲ませたその表情に俺は溜息をつく。それから、ゆっくりと帰路へとついた。ダクネスはそれ

以上は追ってはこなかった。

 

なんとも嫌な気持ちになりながらも、我が家のリビングについた俺は気持ちよさそうに眠るアクアを揺り起こす。彼女は少し不機嫌そうな寝ぼけ顔をしていたが、俺が買ってきた旅行雑誌を見て満面の笑みを浮かべていた。

 

「やるじゃないカズマ! えへへーそれじゃあ旅行計画の詳細をたてましょうか!」

 

「ああ、そうだな」

 

 アクアとあれやこれやと笑顔で会話しながらも、俺の心の奥底では何とも言えない気持ちが渦巻いていた。だが、そんな思いも彼女との楽しい旅行計画を前に小さくなっていく。アクアだけは何があっても守り抜く。その思いは今も昔も変わらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 約二週間に渡って議論された日本一周旅行の計画。それをワードにまとめてコピーした簡易の旅のしおりを片手に、俺は地下駐車場へと足を運んだ。アクアとの相談の結果、自家用車を使って旅をする事にしたのだ。仕事に関しては先輩に頑張ってもらう事にして約三ヵ月の休職である。まあ、元々あってないような仕事だったのでそこは大丈夫だ。とにかく、二人でそこそこの荷物をトランクに突っ込み、いざ旅行に出発だとそりゃあもう上機嫌で出発した俺達に”アレ”は立ちはだかった。

 

地上への入口へとつながる通路に黒い瘴気と重苦しい雰囲気を漂わせる何かがいたのだ。だが、奴の姿と顔は瘴気で判然としないが、それが人型であることだけは理解出来た。俺はどうするべきかとアクアに視線を飛ばしたが、アクアはというと”アレ”を見てどこか怯えていた。

 

「アクア、アレはなんだろうな。さっきからあそこ動かねえから駐車場から出られねえ。もう、思い切って車で突っ込んでみるか?」

 

「そ、それはダメよ! それとカズマ、あれの事は”認識しない”ようにして、私がアンタに術式をかけて見えないようにしてるけど、用心はした方がいいわ」

 

 その言葉を聞いて俺は相手が精神干渉系の技能を持つ悪魔か、くねくねのような理解したら発狂系の何かかと理解する。だからこそ、俺の行動は早かった。車を止めてトランクを漁り、刀とショットガンを手早く取り出し、悪魔召喚プログラムを弄って八尺様と姦姦蛇螺を召喚するが、その間も黒い影には動きは見られない。せっかくだからとショットガンでやつに狙いを定めた俺を、助手席から飛び出したアクアが慌てて止めに入った。

 

「待ちなさいカズマ! アレは……多分私が交渉すればどいてくれるわ。だからその……物騒なのはやめて!」

 

「大丈夫なのか……?」

 

「そう信じるしかないわ。流石の私でもアレは……」

 

怖気づいたように下を向くアクアの背を俺は軽く撫でる。そうして、くすりとした微笑みを見せた彼女は黒い影に対峙する。奴までの距離は約20メートル。俺は神経麻痺の効果がついたスラッグ弾を静かに装填した。

 

「ねえ聞いて……貴方はなんでここにいるの?」

 

『………………』

 

「私は貴方に伝えたはずよ? ここは”私の世界”よ。だから、去りなさい。ここはただの通過駅であって貴方の終着駅はここじゃないの。だから……」

 

 

 奴の動きを注視していた俺は、奴の動きを見逃さなかった。だからこそ、俺はすぐさま指示を飛ばしていた。

 

 

「防げ!」

 

「ちょっとカズマ……って……えっ……!?」

 

 俺の指示に忠実に動いてくれたのは八尺様だった。素早くアクアの前に躍り出た八尺様は、奴が懐から出した回転式拳銃による銃撃を代わりに受ける事となる。駐車場内に反響する銃声と共に八尺様の身体は霧となって消えてしまった。

 

「アクア、アイツはなんだ!?」

 

「アレはその……とにかく殺すのは私が許さないわ!」

 

「なんだよそれ!? まあいい、とりあえず足止めをは頼んだ!」

 

『それはもしかしてわらわにいっとるのか? あの山姫を一撃で倒した相手にわらわが敵うはずが……』

 

「いいから行け! 後、銃弾は絶対に避けろ! あれは破魔と呪殺の力が宿ってるみたいだ」

 

『こ、こら!? わらわを足蹴にするでない! むう、行けばいいのだろう行けば……』

 

 ゆっくりとこちらに歩みを進める黒い影に姦姦蛇螺が思いのほか俊敏な動きで襲い掛かる。それを傍目に俺は動揺しているアクアの頬を軽く叩いた。彼女はほんの少しの間、何かに葛藤していたが覚悟を決めたように言葉を紡いだ。

 

「カズマ、アレについては言葉で説明している暇はないわ。でも、対処法は一つ。アレをいるべき場所に戻して二度とこちらに来れないようにその次元との繋がりを絶つ。それしかないわ」

 

「ならさっさとしてくれ。アレは明らかにアクアを狙ってたぞ!?」

 

「あの黒い影を送り返す次元はあのエリスの世界なの。だから、アレを封印したらもう二度とあちらの世界にはいけない。それでもいいの?」

 

 申し訳なさそうな顔でそんな事を告げるアクアに俺も僅かなためらいが生まれる。だが、目の前の女神の存在と比べれば、取るべき選択肢など最初から決まっていた。

 

「俺は異世界なんてどうでもいい。アクアさえいればいいんだ!」

 

「ちょっ……アンタってばいきなり……!」

 

「とにかく、さっさとやっちまえ!」

 

「う、うん……!」

 

 顔を深紅に染めながら神気を漂わせ始めたアクアは詠唱や祝詞のようなものを唱え始める。だが、それと同時に何かの液体がぶしゃっとまき散らされる音がした。黒い影の方へ目を向けると、姦姦蛇螺が上半身と下半身をざっくりと切断されて血に溺れていた。

 

『まさかこんな最後とはのう……ああっ……わらわの神格が消えて行く……』

 

『…………』

 

『まあ、短いながらも……ひぎっ!?』

 

 姦姦蛇螺の首が宙を舞う。斬り飛ばしたのは奴が手に持つ大鎌だった。その姿を見て俺の頭の中で想起するものがる。それは”死神”という存在だった。

 

「カズマ……」

 

「分かってる。俺が足止めするから後は任せた」

 

「うん……お願い……それと貴方の携帯を貸してちょうだい。あの子達の事、悪いようにしないわ」

 

「ああ、頼んだ」

 

 俺はちらりと悪魔召喚プログラムの入ったスマホを見る。そこには戦闘不能の文字が並び、姦姦蛇螺に至っては邪神の肩書きが”鬼女”となって大幅に弱体化していた。それをアクアに投げ渡し、俺は日本刀を構えて奴と対峙する。黒い影は、禍々しい大鎌を構えながらゆっくりと足を進めていた。

 

「なあお前は一体何者なんだ?」

 

『…………』

 

「答えないか。でも、ここから先には進ませねえ! こんな所で躓いてたまるか!」

 

『っ………!』

 

 俺の刀による斬撃は黒い影の大鎌によって防がれる。だが奴と刃を交える事で俺も相手の事が少しは理解出来た。それは奴が大鎌の扱いに慣れていないという事、おまけに奴の攻撃は大振りで”命中率”が悪かった。

 

「オラっ! さっさと死ね!」

 

『……!』

 

俺の回し蹴りをまともに受けた黒い影は地面へと無様に転がる。そんな奴に刀を突き立てようとした時、黒い影は新たに現れた巨大な何かに体を吹っ飛ばされ、壁際に駐車されていた高級車に突っ込んで車を大破させる。思わず振り返った俺は。八つの首を持った巨大な大蛇と目が合った。そいつはフシャーっと鳴いた後、よろよろと立ち上がった黒い影に再び突っ込んでいく。それを見届けた俺はひとまず、戦線を後退させた。

 

「なあアクア、あのヘビってもしかして……」

 

「昔、私に力をくれた水神の搾りカスをあの子に上げたのよ。同じ水神だったから悪魔合体も上手くいったわ。それより、準備は出来たわ。後はアレをあそこに押し込むだけよ」

 

 アクアが指さした先、地上への出口付近の通路に真円を描く空間の裂け目が出来ていた。そうと決まれば話は早い。俺はもう一度ショットガンを手に取った。

 

「アレが……”あの子”が持つ鎌は”神殺しの武器”よ。心苦しいけど私は斬られるわけにはいかない。だからカズマ、あの子は貴方が返してあげて。きっとそれが一番後腐れがないわ……」

 

「ああ、任せろ! で、それはそれとしてアイツは無事か?」

 

「はいはい、分霊だったおかげで消滅はしてないわ。という事でさっさと決着をつけてきなさい。せっかくの旅行初日を台無しにしないで」

 

 そう言って、アクアは肩をすくめながら携帯を俺に投げ渡してくる。すぐさま画面に目を落とした俺は”龍王ヤマタノオロチ”と可愛げない姿になったアイツに軽く笑いつつ、戦闘不能の文字が消えた彼女を召喚した。

 

『ぽぽぽぽっ!』

 

「蘇った所で悪いが連戦だ。いつも通り前衛を頼む。援護はするから奴をあの次元の裂け目に押し込んでやれ!」

 

『ぽぽぽっ』

 

 おっけーっと書かれたスケッチブックを片手に八尺様が黒い影に向かって行く。俺は巨大ヘビを相手に防戦一方になっている黒い影に照準を向ける。とはいっても、ヘビの頭の本数はすでに半分になっていた。侮れない相手だと再認識しつつ、俺は使い慣れたスキルを発動した。

 

「狙撃っ!」

 

『………!?』

 

 向かってくる八尺様に銃を抜こうとした黒い影の右手を俺は正確に撃ち貫く。ダメージはあまり入っていないが、奴の動きが鈍る。そこに八尺様のベノンザッパーが炸裂する。地面を転がる奴は確実に次元の裂け目の方へと近づいた。

 

 

 

 

だが次の瞬間、仲魔達の動きが文字通りピタリと止まる。八尺様に至っては、跳躍して地に足がついていないというのに静止を続けている。そして、今までと比較にならない速さで黒い影が大鎌を掲げて走り出した。慌てて立ちはだかった俺に奴は一瞬動きを止めるが、気が付けば俺の視界は暗闇に落ちていた。それは俺もよく使う砂を使用した外道技だった。

 

 

 

「目つぶしだと!?」

 

 

 気づいた時にはもう遅い。初級水魔法を唱えて水で目を洗い流した時、俺が見たのはアクアに大鎌を振るう黒い影の姿だった。だからこそ、俺は最も使い慣れたスキルに全てを託した。

 

 

 

 

「”スティール”!」

 

 

 

 眩い光と共に俺の右手に窃盗スキルが発動する。だが、俺は最後の最後で不運に見舞われた。俺が奪ったのは奴が振るう大鎌ではなく、武骨で大振りなナイフだった。

 

 

 

「ひゃあっ!?」

 

 

 駐車場内にアクアの悲鳴がこだまする。俺は怨嗟の想いを抱きながら抜き放った自動式拳銃を奴の身体に全弾命中させる。そして、奴が大鎌を取り落とすガシャンという音がした。

 

「無事かアクア!?」

 

「ええ、なんとか回避できたわ。私の服は少しダメージ受けちゃったけど……」

 

朗らかに笑うアクアを見て俺はとりあえず安堵する。そして、急いで奴から大鎌を取り上げた俺は、それを次元の裂け目に投げ込んだ。

 

 

そうして油断していた時、先ほどとは比べ物にならないアクアの悲鳴が響き渡った。

 

 

素早くアクアの下に戻った俺だが、黒い影は相変わらず地面でよろよろと動くのみだった。ただ、悲痛な表情を浮かべながらアクアは自分の足元を見ていた。そこにはアクアのいつも着ている青いドレスの破片の他に、そこから溢れたであろう用途不明の壊れた小道具が溢れていた。だが、その中に俺が贈り物として渡した財布が混じっていた。無残に切れ込みが入れられた財布を拾ったアクアは、しばらく肩を震わせた後、無表情で黒い影を蹴りつけ始めた。

 

「な、なんでこんな……許さない許さない許さない!」

 

『……………』

 

「死ね死ね……死になさいよ……! せっかく私が温情をかけたのにこんな……」

 

『……………』

 

「どうして、なんでこんな事するの……せっかくカズマが私にプレゼントしてくれたのよ? あんなにも素直じゃないカズマさんが私のためにこの財布を選んでくれたの。私の事を考えながら、私にこれが似合うって少ない予算で無理して買ってくれたの! 彼が私のために汗水流して働いて最初に貰った給料で私に買ってくれた大切な贈り物なのよ。本当だったらこの先も私がずっと大切に使うはずで……大切に……宝物にしようって思ってたのに……それを……ぐすっ……許さない! 絶対に許さないんだから!」

 

 黒い影の首を両手でギリギリと締め上げるアクアはボロボロと涙を流していた。そんなアクアにどんな言葉をかけようかと考えていた時、俺は奴の黒い瘴気と顔にかかった影が消えていくの見た。そして、奴の顔を理解した事で俺は本当に発狂しかけた。だが、それは別に精神干渉系のスキルが働いたからではない。

 

 

 

 

黒い影の正体は俺のよく知る人物だった。

 

 

 

 

 

「許さない……絶対に許さない!」

 

 

 

 

そんな人物の首をアクアが締め上げている。それが受け入れられなかった俺は、ため息をつきながら車へと乗り込み、イグニッションキーを回す。大衆車らしい穏やかなエンシン音を響かせるのを聞きながら、俺は思いっきりアクセルを踏みこんだ。

 

 

 

「ひぐっ!?」

 

『……!?』

 

 

ボンネットがひしゃげる音と共に結果としてアクアと奴は盛大に吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

車から降りた俺にアクアは当然のように憤怒の表情を浮かべてしがみついてきた。

 

 

「いきなり何すんのよキチガイカズマ! 世界中を探しても彼女をひき殺そうとする彼氏なんていないわよ!」

 

「落ち着けアクア。そして、あの黒い影の姿をよく見ろ」

 

「なによ……私はアイツを絶対に……」

 

 そこでアクアの言葉が止まり、身体をガタガタと震わせ始める。どうやら、怒りに我を忘れて俺が奴を認識しないようにした術式が解除されてる事に気づいたようだ。それから、彼女は悲痛な表情で言い訳を始めた。

 

「ち、違うのカズマ……これは……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」

 

「いいんだよ別に。それよりちょっとここで待ってろ」

 

 絶望的な表情でペタンと腰を降ろしたアクアを尻目に俺は黒い影に近づいた。彼女は俺が彼女自身の正体を把握した事に気づいたのだろう。涙を浮かべながらこちらを向けてよろよろと歩き出した。

 

 

 

『…………!』

 

 

 

 彼女の声はやはり聞き慣れたものだった。全身を銃創や擦過痕、切り傷を受けて彼女の衣服も血に染まっていた。そして、俺に向けて手を伸ばした彼女に俺は一言だけ謝った。

 

 

 

 

「ごめんな」

 

 

 

 謝罪と同時に、俺は彼女が伸ばした手にさっき盗んだ武骨で大振りなナイフを突き立てる。女神の力が宿ったナイフによる不意打ちは効いたのだろう。彼女は俺の声を呼びながら狂乱したように泣いていた。

 

 

そんな彼女を俺は軽く蹴り飛ばす。面白いように転がった彼女は次元の裂け目へと飲み込まれる。だが、右手は車止めにかろうじて掴まり、左手を俺の方に伸ばしながら懇願するように助けを求めていた。そんな彼女の手を俺はショットガンで撃ちぬく。

 

 

 

そうして、やっと彼女は俺の前から消えてくれた。

 

 

 次元の裂け目もそれにより閉じて、後には駐車場の静寂だけが残される。ショットガンを肩にかつぎながら振り返ると、アクアは罪悪感に怯えたように俺から後ずさる。次の瞬間、光柱が出現してそこからエリス様、めぐみん、ダクネス、、アイリスが現れる。彼女達は俺の姿を見て安堵の表情を浮かべていた。

 

「遅れて申し訳ございませんカズマさん! でも、無事だったみたいですね!」

 

「ああ、でもアクアがちょっとな」

 

「分かってます。”アレ”を見たのでしょう? そうです……アクア先輩はアレを貴方に隠すような信用出来ない女神なんです! ですから、これからは私達とずっと……!」 

 

「なあ、少し黙っててくれないかエリス様?」

 

「えっ……!?」

 

「カズマカズマ、それは救援に来た私達に対してあんまりにも辛辣じゃないですか?」

 

「そうだぞカズマ。少なくともアクアよりかは私達の方が頼りがいがあるはずだ」

 

 

 めぐみんを始め、口々に俺とアクアに対して文句を言う彼女達にうんざりとする。だから、俺はもう一度言ってやった。

 

 

 

 

 

「だから黙れっていってるだろう”アクア”! 俺は本人の言葉が聞きたいんだ。ガワを被ったお前の話は聞きたくない!」

 

 

 

 

 

 

 

俺の言葉を聞いた彼女達は一斉に黙り込んでしまった。

 

 

 

 

 

だが、諦めの悪い奴が俺の前に現れる。それは金髪碧眼のダクネスだった。

 

 

 

「何をおかしな事を言うんだカズマ。私は”私”だぞ!?」

 

「あのなあ、はっきり言ってやるがエリス様達に関しては正直いって全然見抜けなかった。でも、お前の下手な演技を見て芋づる式に理解出来たんだよ。お前が”アクア”だってな。ということでどけ!」

 

 

 俺の手押しでよろよろと崩れ落ちたダクネスをよそに、俺は敗れた財布を両手で握って泣きはらしているアクアの横に座る。彼女は俺と目を合わそうとしてくれなかった。だが、しばらくしてからボソボソと言葉を呟き始める。それは俺に対しての謝罪の言葉だった。

 

「ごめんなさい……」

 

「謝るな」

 

「こめんなさいごめんんさい……」

 

「うるさい駄女神」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」

 

「いいから謝んな」

 

 泣き喚くアクアを慰めながら、俺はエリス様達の方へ顔を向ける彼女達は無表情で微動だにせず棒立ちしていた。それを見てもう一度ため息をつきながら俺はアクアを車の助手席へと乗せてやった。

その後、戦いを終えて静かに佇む八尺様と龍神に感謝を告げながら送還陣に入れ、自らも運転席に乗り込む。そうして、俺はやっとこの駐車場から脱出する事が出来た。

 

「ねえカズマ……聞かないの?」

 

「別に好き好んで聞きたくはねえ。でも、今思えばお前が話した天界規定がどーたらだとかは全部嘘だって分かってる。エリス様達の状況を見ると、お前が下手したらめぐみん達を全員殺害してる可能性にだって至ってる」

 

「そこまでヒドイ事はしてないわよ! ただ、ちょっと彼女達からカズマさんの記憶を全部抜き取って……」

 

「そこまで大差ねえじゃねえか」

 

「ううっ……!」

 

大粒の涙を流し始めたアクアに俺はもう一度ため息をつく。そんな俺にアクアは身体をビクリと震わせた。

 

 

「ねえカズマさん……今までごめんね……ずっと貴方を騙し続けて……こんな私にこれ以上構わなくても……」

 

「あのなあアクア、俺はアイツにナイフを突き立てた時点で覚悟は決まってんだ。俺はどうしようもないアクアを受け入れる。だけど、一つだけ聞かせてくれ」

 

「なに……?」

 

「こんな事をしようとしたきっかけはなんだ?」

 

 それは純粋な疑問だった。路肩に車を止め、ひしゃげたボンネットに顔をしかめながら俺はアクアの返事を待つ。そうして待つ事数十分、彼女はようやく言葉を紡ぎ始めた。

 

「私は……私はカズマさんに好かれているのかいつも不安だったの」

 

「はあ? そんな理由か?」

 

「きっかけとしては十分よ。だから、私はカズマさんに愛されてるって実感が欲しかった。それで、サキュバスの夢で貴方が見たっていう私との”夢”を探し求めた。性的な対象として私を見てくれる。それを知るだけでも私は自信が持てた。でも、あの日手に入れた”夢”は私の常識を壊したの。だってそれは……」

 

「お前、もしかしてそれって……!」

 

「ええ、驚きだったわ。カズマさんが密かに故郷に帰りたいっていう願望を持ってたのも驚きだし、何故かその相手として私を……それを知ったら我慢が出来なくなって……でもその思いは必死に押さえつけたの。だけど、あの世界の状況を理解して私はその思いを解放して”この道”を選んだ。アイツに無茶苦茶にされるくらいなら、”私の世界”にする。それだけよ」

 

 自嘲しながら語るアクアに俺は逆に火が出るほど恥ずかしかった。アクアの語る夢とは、俺がサキュバスに”おまかせ無意識願望コース”を選んだ時のものだろう。てっきり、まさしく夢の酒池肉林が繰り広げられるかと期待していたが、実際には違った。あれは事故として出来るだけ思い出さないようにしていたのだが……

 

 

 

 

「それでねカズマ、”タイムリープ”って知ってる?」

 

 

 

 

そうしてアクアが語ったのは非常に眉唾な話だった。

 

 

 

 

「でもね、あの子の正体は魔神クロノスなんかじゃない。私と同じように、旧き神を取り込んでるの。だから同一視された存在の武器を振るっていた。でも、あの子の……あの神の真名は……」

 

 

 

 

 

 

 

俺はアクアの話を聞きながら、ゆっくりと車を動かす。そして、当初の予定とは違ったルートを走り始めたのを理解した彼女は小さく苦笑した。

 

 

 

「ごめんねカズマ……こんな私でごめんね……旅行って気分じゃないよね……」

 

「泣くなよ。それとこれに関してはちょっと予定を早めただけだ」

 

「ふふっ、私を山に捨てる予定……?」

 

「バカを言えバカを! まったく、お前はどうしようもないな……」

 

 

 車を走らせながら、俺は今日の朝から続く衝撃の展開の数々に思わず笑いが漏れる。そして、助手席で小さくなっているアクアを見て、俺はもう一度笑った。

 

「なあアクア、俺はこれでも安心してるんだ」

 

「どういう意味よ……」

 

「いやな、これがエリス様だったりしたらお前が正直に話した事を永遠にばらさずに俺と生活してる気がするんだ。でも、ポンコツなお前が考えた俺を独占するための計画はこうして暴かれたわけだ」

 

「うっ……」

 

「なんつーか、そういう所も含めてやっぱりお前はアクアなんだなって」

 

「ちょっと納得行かない安心のされ方なんですけど……」

 

 ぶーたれるアクアに対して、俺はもう一度心から笑う。アクアがこのような暴挙に出た理由も今は全て知ることが出来た。知ってしまったら、俺は決して彼女を責める事は出来ない。惚れた弱みと言えば終わりだが、俺は今でもこんなアクアがどうしようもなく愛おしかった。

 

 そして、バイパスから一般道に降りた俺は懐かしい道をひた走る。アクアも周囲の光景をちらちら見ながら、俺の目的地に感づいたのか彼女は身体をそわそわとし始めた。そして、俺は因縁の地にたどり着く。それはド田舎の一般道であり、周辺は田畑しか存在しなかった。

 

「おいアクア。ここが俺が情けなくも死ぬ原因を作った場所だ」

 

「…………」

 

「なんつーか変わってねーなー」

 

ハンドルを握る手が震えてくる。だが、止まりはしない。もう俺は後戻りをするわけにはいかないからだ。そんな俺にアクアは心配そうな表情を向けてきた。

 

「ねえ、大丈夫カズマ?」

 

「ああ、大丈夫だ。俺は大丈夫だよ」

 

 そう言って車を走らせること数十分。俺はゆっくりと車を停止させる。そこには見るだけで涙が出てしまいそうな光景が広がっていた。そこは昔と何一つ変わっていない。我が愛すべき”自宅”であった。

 そのまま、俺はその光景を目に焼きつける。ここに来てどうすればいいか分からなくなった。色々と考えている事もあったが、何もかもが吹き飛んだ。そうして、固まっている俺に彼女は優しく語りかけてくれた。

 

 

 

 

「大丈夫、大丈夫だよカズマ」

 

 

 

 それはあまりにも無責任な言葉だった。だからこそ、俺は踏みそうになっていたアクセルから足を離す。そうして、サイドブレーキを引いてエンジンを止めた。周囲は相変わらずの田舎で懐かしい風景。それを見ながら、俺はダッシュボードに手をかけた。

 

「アクア、俺は一度死んだ。そうして、異世界で色んな出会いがあって骨を埋める覚悟だってした。実際、故郷の事なんて忘れてたんだ。ニートやってる後ろ暗い記憶は俺に取って邪魔だったし、借金を背負っている間はそんな事を考える余裕もなかった。でも、金が入って怠惰に過ごしていると俺はここでの事を思い出す。あの年まで好き放題やってたのに、俺は……俺は何も返せずに死んじまった……」

 

「うん……」

 

「だからこそ、異世界で生き抜いて幸せに過ごす事に決めたんだ。それが償いになるならってな。でも、こうしてこの世界に戻って来てしまった以上、俺は会わなきゃならねえ人達がいる。でも、ここに来てやっぱり思うんだ。これって俺に取っても、相手にとっても恐ろしい事だってな」

 

 

彼らがどのような反応を示すのかは未知数だ。気まぐれに手紙を送ったが、彼らはそれを悪質な冗談と破り捨てているかもしれない。でも、面と向かって会えばもう誤魔化せない。そんな俺に対し、彼らがどんな反応を示すのかが怖かった。

 

「だからアクア、一緒に行ってくれないか?」

 

「ふふーん! カズマさんってば本当に憶病なんだから」

 

 にへらっとした微笑みにつられて俺も思わず笑ってしまう。そして、そんな彼女に俺は小さな小箱を渡した。その中に入っているのはいわゆる”アレ”だ。給料三か月分とも言われるアレである。

 

「貰ってくれるか……?」

 

「うーん……」

 

「お、おいなんだよ!? いやっ……その……財布よりかは高いものだから貰ってくれると嬉しいというか……」

 

「カズマ!」

 

ピシャリとそう言い放ったアクアによって車内はシンと静まり返る。それから、アクアは顔を深紅に染めながら左手を差し出す。その意図を理解した俺は彼女の薬指にそっと指輪を通す。それからバクバクと唸る心臓を抑えながらこっぱずかしい言葉を言い放った。

 

 

「結婚してくれアクア。ずっと俺の傍にいて欲しい」

 

 

 

 一世一代の大勝負だった。そんな俺にアクアは屈託のない満面の笑みを返す。それだけで、俺はどうしようもなく嬉しくなってしまった。

 

 

 

「私もカズマさんの傍を離れないわ。永遠に……例え世界が変わったとしても……絶対に離さない……死んでも離さないんだから」

 

 

 

 

 ぎゅっと抱き着いてくるアクアを俺は抱きしめ返す。例え何を失ったとしても、アクアだけは絶対に離さない。それは俺の新たな決意だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、それはそれとして怖いもんは怖いな! ゾンビ扱いされたらどうすりゃいいんだ!?」

 

「もう、さっきからうるさいわね! そんなの全部私に任せなさいな。私は女神なの。分かる? カズマさんの最愛の女神様なの!」

 

「分かった、分かったから……」

 

「えいっ!」

 

「おいバカ! まだ心の準備が……!?」

 

アクアがインターホンのボタンを押してしまった。そして、玄関扉の向こう側で足音が近づいてくるのが分かる。思わず頭が真っ白になってしまった俺を、アクア小突いて来た。

 

「カズマ、大丈夫よ。私が傍にいるわ」

 

「ああっ……」

 

「それに夢だったんでしょう? こうやって美人なお嫁さんを連れて元気やってるって伝える事がね!」

 

「おまっ……それを言うなよ!」

 

「自信持ちなさいな! アンタのお嫁さん女神様なのよ! 世界で一番美しくて、世界で一番貴方に相応しいのが私なんだから!」

 

 

そんな時ガチャリとドアが開けられる。扉の向こうには昔よりは少しだけ老けた顔があった。彼らと再会したら、どんな言葉を言うべきかずっと考えていた。あれはマズイんじゃないか、こういったら正直言ってホラーじゃないのかと。でも、最初に言うべき言葉は昔から変わらない。だから俺は自然とその言葉を口にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、間に合ってます。穀潰しはさっさと地獄に帰ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ばたんと扉は閉められ、ガチャリとした施錠音が鳴り響く。

 

 

 

気づけば、俺は拳銃を抜いていた。

 

 

 

 

 

 

「お前それでも親かよおおおおおおおおおおっ!」

 

 

 

「わああああああっ!? 落ち着いて! 落ち着いてカズマ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の傍にはアクアがいる。それだけで十分なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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