屍のビリジアン   作:竜音 龍牙

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登場人物

青月海(あおつきかい)
星歌れもん(ほしうたれもん)
緑川龍治(みどりかわりゅうじ)


龍の友達

        *

 某インターネット掲示板

 

 

1:そら

この掲示板に神出鬼没のカンダタって人、知ってる?

 

2:名無しさん

蜘蛛の糸の犍陀多かな?

 

3:リザ

あ、名前だけなら聞いた事ある

確か未来予知で有名だったような

 

4:そら

あ、リザさん来た

そうそう、災害とか有名人の死とかを予知する人!

リザさんですら交流はないのか……

 

5:名無しさん

あ、その人かぁ……

ワイも会ってみたいンゴねえ

「丑の刻、紅き美女は白い神の贄となります」って言うのは有名ンゴ

 

6:リザ

確かそれの翌日、午前2時ごろに有名女優が白いトラックに轢かれて亡くなったんだよね

 

7:名無しさん

赤いドレスが似合う別嬪さんだったンゴねぇ

残念ンゴ……

 

8:そら

やっぱりリザさんは詳しいなぁ

 

9:リザ

ネット廃人ですから(ドヤァ)

 

10:そら

 

11:そら

是非ともカンダタは見てみたい……

あのひと、厨二病だったり不気味だったりするけどね

いわゆる怖いもの見たさってやつ

 

12:名無しさん

めっちゃわかるンゴ

 

13:リザ

浮上してこないかなぁ

 

 

        *

 

 緑川龍治の屋敷

 

 龍治の説明が終わり、海とれもんも、龍治と暮らすことを了承した後のことだ。

龍治はふと時計を見た。

「そうだな……もう夜も遅い、風呂とお前達の生活する部屋に案内してやるのだ。ついてきたまえ」

「あ、もうこんな時間なんだな」

「龍治君のうちのお風呂楽しみ〜!」

 龍治は立ち上がると、二人についてくるよう促した。

 

 広間を出て、龍治について行く二人。

ひたすらに広い屋敷の廊下を歩いてゆく。

「お前んち、やっぱ広いよなぁ、迷いそうだ」

海は感嘆の声をもらした。

広大な屋敷はまるで迷路のようで、風呂や部屋に行くにも迷ってしまいそうだ。

 

 

 案内が終わり、風呂に入ったあと、二人は自らが暮らす部屋に戻ってきた。

風呂や部屋も例に漏れず豪奢で、高級なホテルにでもいるような気持ちになる。

 部屋もホテルのようにたくさんあり、龍治は一人一部屋使って良いと言っていたが、海の希望で、二人で一部屋使うことにした。この状況だ、離れて行動するよりも二人で一緒にいた方が安全だと思ったからだ。

 

「うわぁー!! ベッドも豪華でオシャレー! ひとつしかないけど、これだけ大きいんだから、二人一緒でも広いね!」

 れもんは部屋にある、一際目立つベットを指さし、目を輝かせている。

「え!? 俺は向こうのソファーで寝るからいいよ……?」

海はれもんの言葉に慌てた様子で返す。海にとってれもんは幼なじみではあるものの、やはり、男女が同じベッドで眠るのは抵抗があるようだ。

「そんなの、今更だよぉ。一緒でいいじゃん?」

慌てて赤面する海に対して、れもんは平然としている。

「そうかい? それならいいんだけどさ……」

うろたえる海に構わず、れもんはベッドに飛び込んだ。

「うわー、ふわふわだぁ!! 海も来なよ、とっても寝心地いいよ!」

「マジか、行く!!」

海もベッドに飛び乗り、二人はしばらくベッドを堪能した。

 

 今までの不安は何処へやら、二人は旅行気分で楽しんでいるようだ。

「今日はいろいろありすぎて頭がついてこないよぉ〜」

「めっちゃ疲れたァ……」

「でも、ご飯美味しいし、部屋も最高で良かった〜!」

「こんなこと滅多にないぞ!」

他愛ないことを話し、笑いあう二人。

 しばらくして、ふと、不安になったれもんは海に問いかけた。

「ねえ海、私たち、これからどうなるのかな?」

「龍治が何とかしてくれるさ、見ただろ? 龍治はあの化け物を一撃で倒したんだ!」

海は真っ直ぐとした眼差しで躊躇いなく言った。

「そうね、怖いけど、龍治君を信じて待つしかできないよね……」

「ああ、龍治を信じよう!」

不安げなれもんに、海は明るい笑顔を向けると、れもんも少し安心したようで、僅かに微笑む。

 その後、二人は気が済むまで駄弁ると、眠りについた。

 

        *

 

 翌朝、二人は龍治の「飯ができたのだ」と言う声に起こされた。

 

「うーん、あと5分……ってあの美味い飯か!?」

海は、昨日のビーフシチューを思い出し、勢いよく飛び起きた。

「あのねぼすけの海が……一瞬で起きるなんて……!」

普段の寝覚めの悪い海を知っているれもんは絶句した。やはり美味いものにはかなわないのであろう。支度を済ませると、二人は広間に向かった。

 

「はぁ〜! 朝飯も美味かったァ!!」

 朝食を食べ終え、ひとしきり余韻に浸ると、れもんが口を開く。

「龍治君、今日は日用品とかいるものを家に取りに行っていいかな? 親にここで暮らすことの許可も取らなきゃだし、しばらく帰れそうにないからね……」

言い終わると彼女は少し、寂しげな表情になった。

「構わん、その代わり、同行するのだよ。まだ危険がないとは言いきれないのだ」

「あ、俺も! それに、今日はちょうど学校休みだしさ、終わったら三人で遊ばない?」

海は元気よく話に割り込んだ。

「いいね! 遊ぼ!」

れもんも笑顔で返す。

「それは断る」

しかし、龍治は真顔で断った。

「そこをなんとか……!」

「絶対楽しいよ? 遊ぼうよ〜!」

二人は龍治にキラキラとした眼差しを向け、懇願する。

「……仕方ないのだ、付き合ってやるのだよ」

ついに、二人の懇願に負け、龍治は仕方なく了承した。

「そうと決まれば急いで支度だー!」

「うん、早く行こう!!」

「はあ……愚か者共が……」

 はしゃぐ二人に呆れる龍治であった。

 

 

 それから二人は各自で自宅に戻り、日用品を調達し、家族の了承を得て龍治と合流した。

「必需品は持ってきたか? 忘れ物はないのだな」

龍治は二人に最終確認をした。

「おう、OKだぜ」

「しばらくこの家ともお別れになっちゃうのかな……?」

れもんの表情が曇る。

「来たいなら来れば良いではないか」

龍治が表情を変えることなく言う。

「そうだよね、ありがとう龍治君……!」

れもんの顔にいつもの笑顔が戻った。

「なあなあ、そろそろ遊びに行かねー?」

そして、待ちくたびれたと言わんばかりに海が割り込んだ。

「荷物を置いてからにするのだよ」

「だね、これ結構重いし……」

三人は荷物を置きに、屋敷に戻った。

 

 

 屋敷に荷物を置きに戻った後、一同はショッピングセンターに向かった。

 彼らが住む町はお世辞にも華やかとは言えない田舎だ。よく言えば自然豊かだが、悪く言えば寂れている。当然店や建物自体が少なく、若者も少ないため、遊ぶことのできる場所はショッピングセンターか、カラオケボックスくらいしかない。喫茶店も、ショッピングセンターに数件あるだけだ。

この町の人々は遊びや買い出し、事ある毎にこのショッピングセンターに集うという。

「ここってほんと田舎だよなー。遊べる場所が全くないし、早く都会に行きてえよ」

海がため息混じりに呟く。

「ここはつまんないかもしれないけど……ごめんね龍治君!」

「ああ、構わん。この町がそういった場所なのは知っているのだ」

龍治は来る前によく下調べをしていたらしく、この町について、ある程度のことなら知っているようである。

「そうだ、いつか三人で都会行こうな!」

海は満面の笑みだ。

龍治は相変わらず無愛想に「考えておくのだ」と返す。しかし、その瞳は優しく、微笑んでいる様にも見えた。

 

 しばらく歩くと、ショッピングセンターにたどり着いた。休日の昼下がり、ショッピングセンターは人で賑わっている。

 一同はショッピングセンターの扉をくぐる。入口付近には飲食店の店舗が並び、胃を刺激するような芳香がふわりと漂っている。

「なあ、なんか食おうぜ?」

 その匂いにつられて、海は早速腹を鳴らしている。

「そうね、龍治君は何か食べたいものとかある?」

「せっかく龍治が来てくれたから、龍治の好きな物食おう!」

龍治は少し黙って考えた後に、ぽつりと呟いた。

「……甘い物が食べたいのだ」

「あ、甘い物!?」

予想外の返答に海は拍子抜けした声をあげる。

「龍治君、甘い物が好きなんだね、意外だね。じゃあ、あれしかないでしょ! ついてきて!!」

れもんは少しだけ驚いたが、何かを思いついたように、パッと表情を変えると強引に二人の手を引いた。

 

 れもんが連れてきた先はクレープ屋だった。

「甘い物といえばクレープ! 可愛いし、美味しいよ!」

れもんは嬉々としてクレープを勧める。

「悪くないのだ……!」

龍治は普段の冷めた態度の時とは別人のように目を輝かせている。

「エッ……龍治!?」

それは二人にも一目瞭然である。

 そして、龍治の豹変ぶりに驚きつつも、クレープを購入した。

 

 早速、龍治は待ちきれないといった様子で、クレープを口にした。

「……美味なのだ! これは素晴らしい!!!」

 クリームとチョコレートソースの優しい甘味が口に広がる。そして、苺の酸味と香りが混ざり合い、調和してゆく。

 龍治は子供のように目を輝かせ、夢中で頬張っている。

どうやら龍治はとても甘党のようだ。

二人は初めて見せる、龍治の無邪気な姿を優しい気持ちで見守りながらクレープを食した。

 

        *

 

 夕方になり、すっかり日が沈む頃、三人は満たされたような表情をして帰路についた。

「今日は楽しかったね、二人とも!」

特にれもんは非常に楽しんだようだ。

「うん、でもれもんのわがままに付き合ってばっかりだったけどね、フフ……」

「そうなのだ」

「何よ、二人とも」

「冗談だって、アハハ!」

れもんは頬を膨らませて「もう!」と言っている。

 

 確かに、先程のショッピングセンターでは、れもんが二人を連れ回していた。

服屋や靴屋、挙句の果てにはゲームセンターでプリクラにまで付き合わされる始末だ。

 

「まあ、楽しかったからいっか」

 海はプリクラで撮った小さな写真を眺めながら満足そうに笑う。

その写真には満面の笑みを浮かべる海、可愛らしく決めポーズをとるれもん、そして、作り物のように美しく微笑む龍治の姿があった。

「写真は記録として手元に残るのだよ」

龍治はぽつりと呟く。その手はしっかりと写真を摘んだままで。

「今日を忘れないように……ってとこか」

「ねえ、今度は写真だけじゃなくて、お揃いのキーホルダーでも買おうよ!」

れもんは二人に提案した。

「ああ、また遊んでやるのだよ、それに、お前達に勉強も教えてやるのだ」

 龍治は二人を見つめ、優しく語りかける。

「ほ、本当か!? ありがとう龍治!!」

海はその場で飛び跳ねて喜ぶ。

「良かったぁ……これで赤点回避だね!」

れもんも胸を撫で下ろしている。

「帰ったら勉強をしようではないか!」

三人は談笑しながら、龍治の屋敷に帰って行くのであった。

 

 

 

 

 

        *

 

 某インターネット掲示板

 

100:カンダタ

ほう、どうやらこの掲示板では私のことを話しているようですね。ここには魔の蜥蜴(とかげ)もいるようですし、助言でもしてあげましょうかね

 

101:そら

え、カンダタさん!?

本物???

それに、魔の蜥蜴ってなんや?

 

102:名無しさん

怪しすぎるンゴ

 

103:リザ

は?

嘘だろ……?

多分こいつ本物だわ

 

104:そら

リザさん?

驚いてるみたいだけどどうしたん?

 

105:名無しさん

まさかリザさんが魔の蜥蜴と関係あるとか

 

106:リザ

なんでもないよ

魔の蜥蜴とか知らん

ただ、口調がカンダタにそっくりすぎて驚いてるだけだって

この口調は完全に本人

 

107:名無しさん

言われてみれば確かに……

 

108:カンダタ

アダムとイヴを禁断の果実と蛇に近づけてはいけませんよ。

蛇は彼らを狙います

 

109:リザ

アダムとイヴ……

まさか……

いや、そんなはずは、

あ、なんでもないから忘れてくれ

 

110:そら

リザさん、まじで今日はどしたん?

様子がおかしい

カンダタさんも偽物かもしれないし、気にすることないって

確かに不気味だけどね

 

111:リザ

いや、なんでもない

大丈夫

カンダタが現れて驚いてるだけだから

 

112:名無しさん

リザさん疲れてるのかも?

ゆっくり休んで、元気になったらまた来いよ〜

 

113:リザ

本当に疲れてるのかもね

今日は寝る

おやすみ

 

114:そら

おやすみ〜

 

 

        *




お久しぶりです。クレープ食べたいです。
龍治様は甘党ですよ!!!!!!!!!
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