屍のビリジアン   作:竜音 龍牙

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登場人物

青月海(あおつきかい)
星歌れもん(ほしうたれもん)
緑川龍治(みどりかわりゅうじ)


能力少女

        *

 某インターネット掲示板

 

115:カンダタ

少し中性的すぎましたかね、では特別にヒントを差し上げましょうか。

禁断の果実ですが、ここでは「林檎」としましょう。

林檎色の蛇がアダムとイヴを狙っています。

あとは貴方次第ですよ、魔の蜥蜴さん。

 

        *

 

116:リザ

みんなおはよー

昨日は取り乱してごめんね

カンダタ意味不明すぎてワロエナイ

 

117:そら

おはようリザさん

大丈夫そうでよかった

 

118:名無しさん

おはようじょ

それにしても、このカンダタは意味不明すぎるンゴ

荒らしかな?

 

119:リザ

おはようじょwww

それな、

よく見たらこいつ、本物のカンダタとは雰囲気違うし、もう関わるのやめとこ

絶対偽物だし、荒らしだよそいつ

 

120:そら

そうかなぁ?

僕は本物だと思うよ

これは全体に向けて言ってるんじゃなくて、個人に言ってるみたいだし

それなら僕らからしたら意味不明なのも納得がいく

 

121:リザ

えー

でも不気味だし、胡散臭いからそいつと関わるのやめようぜ

 

122:名無しさん

せやな

掲示板で有名人のカンダタがここに来るとか有り得んし

 

123:そら

そうだね

荒らしだったから怖いからね

 

 

 

 

 

 

        *

 

 

 

 放課後、クラスメイトが下校や部活動で移動をし、人の少なくなった教室はやけに広く、静寂に包まれた薄暗い空間になる。昼間の賑やかな雰囲気とは対照的な光景は、どこか物寂しさを感じさせる。

 れもんは、古びて少し色褪せた教室の壁にもたれかかり、小さな写真を眺めて微笑んだ。

それは先日、海達と遊びに行った時に撮ったプリクラの写真だ。

「この前は楽しかった〜」

「だな、また遊びに行こうな!」

れもんが呟くと、隣にいた海がニッと笑い、元気な返事を返す。

「あの後、あれだけ渋ってた勉強も教えてくれて、龍治君とは仲良くなれた気がするね!」

「そうだな! ああ見えて龍治は優しいんだよなぁ、勉強教えるのうまいし」

 あれから、二人は龍治の家に住み、生活を共にすることで、龍治が少しずつ心を開いたようだ。

二人に関わることを避けていた龍治だったが、今では二人に勉強を教えたり、他愛ない話を聞いてやるほどには距離が近くなった。

「こう見ると、龍治君ってとっても綺麗だよね……」

 れもんが独り言のようにぽつりと呟いた時だった。

 

「当然なのだ! 俺は美しい!!!」

突然、聞き慣れた声が静まり返った教室に響く。

 緑川龍治だ。そこには仁王立ちで、手で髪をかき上げ、格好つける龍治がいた。

自己陶酔にひたり、自慢げな表情で二人を見つめる。

「あ、ナルシスト! じゃなくて龍治!」

「龍治君いたんだ」

二人は声に反応して龍治の方を見る。

「誰がナルシストだ大馬鹿者! 俺は事実を言っているだけなのだよ!」

海の言葉に不機嫌そうに答える龍治に海はごめんごめん、と笑って返す。

「俺が美しいのは事実なのだ。その証拠に、俺はこの世界でモデルの仕事もしているのだよ」

疑いの眼差しを向ける二人に、龍治は検索してみろと促す。れもんが半信半疑で龍治の名を検索すると、そこにはモデルとしての緑川龍治の姿が映されていた。

「え? これって龍治君……」

「マジかよ……」

驚きを隠せない二人に龍治は続ける。

「まだ新人だが、着実に知名度は上がっているのだよ」

どうやら最近人気の新人モデルらしい。

「そういえば女子がそんなこと言ってたような……」

「あの子達が言ってたことは本当だったんだ……すごいよ龍治君! でも、他の仕事もあるのに、モデルなんかして、龍治君は大丈夫なの? 無理してるんじゃない……?」

多才で完璧な龍治に驚くと同時に、心配を覚えるれもん。

しかし、龍治は微塵も疲れを感じさせない顔つきで返す。

「俺にとって、本来の仕事もモデル活動も、どちらもかけがえのないものだ。それに、俺の意志でやっていることなのだ。どんな環境に置かれても高みを目指し、努力を続けることこそが美しさであり、俺の生きる意味なのだよ」

エメラルドグリーンの瞳は強い意志を宿し、静かに燃えているようだ。

「それに、最強の王子がそんなことで疲れる訳がないのだよ、これは俺にとって学びであり、娯楽なのだ」

龍治は本心なのか、強がりなのかは分からぬことを零すと、さて、と二人を見つめ直した。

「もう下校しようではないか、魔物の気配はないが、安全とも言えないのだ」

「あー……」

れもんと海は沈黙のあと気まずそうに言った。

「これから部活……」

 

 

        *

 

「あー、なんでこうなるかなー」

「そうだね……」

 部活動が終わり、二人は下校している。

 町は夕暮れ色に染まり、沈みかけた日が紅い。薄暗い道を街灯が照らし始める。静かな道に、二人の声が響く。

「龍治には悪いことしたなぁ」

「うん……」

二人は部活動に行く前の、教室での会話を思い出した。

 

 

「これから部活……」

二人は申し訳なさそうに言う。

「は?」

案の定、龍治が不機嫌になる。

「お前達、命を狙われているというのに呑気に部活動ができると思っているのか?」

反論の余地がないほどに正論だ。

「ま、待てよ龍治!! 中学の時から続けてきたテニスを今やめろって言われても……この高校だって、テニスの推薦があったから入れたわけだし……」

「そ、そうよ! 私も吹奏楽と音楽が生きがいなの!」

「ほう、だから何なのだ……?」

二人は必死に弁解するが、龍治は譲ろうとしない。

「魔物の気配がないなら三人で下校しなくても……それに、朝練だって出たいの!」

「それか龍治も部活に入っちゃえよ! そしたら三人一緒に行動できるぜ……?」

身振り手振りで必死に説得する二人とは対照的に、龍治は冷静だ。

「はぁ、何度も言っているが、俺は部活動ができるほど時間に余裕はない、それに魔物の気配がないとはいえ、お前達の安全が保証された訳ではないのだ」

二人はそれでも引き下がる気はないようだ。

「お前達の尊厳や自由はなるべく尊重しているつもりなのだが、不可能なこともあるのだ、分かってくれたまえ」

淡々と語る龍治に次第に苛立ちを覚える海。

「……なあ、龍治はモデルやってるのに、俺たちは部活できないのズルくねぇか? それに、俺たちもお前が言ったように、どんな状況でも高みを目指したいんだ! 尊重してるなら俺たちの気持ちを踏みにじるのはやめろよ!」

海が龍治を睨む。

「ちょっと海っ……!」

険悪な雰囲気になり、仲介をしようとするれもん。しかし、龍治は二人に背を向けると冷淡に言う。

「もう良い……警告はしたのだ。あとは好きにしたまえ。助言を無視して欲を満たすためだけに動く、貪欲な愚か者共には失望したのだ……」

龍治は振り返ることなく教室を後にした。

「……そうかよ」

「……海、部活行こっか」

二人は気持ちが晴れないまま、部活動に向かった。

 

 

「はぁ、明日龍治に謝るか……」

「そうしよう、これからのことも真剣に考えないと……」

 二人は随分と反省し、そして今後の部活動や日常生活について思考していた。

「そうだよな、龍治は俺たちを魔物から守るために必死に考えてくれているんだ。もう、わがままは言ってられないな!」

 そう言って海が前を向いた時、視界の端に人影が蠢いた。海はそれを見逃さなかった。

 

「……れもん、走ろう」

「え? いきなりどうして……」

れもんの問いかけに返事を返す間もなく、彼女の手を引いて走り出す海。

()()、狙われてるかも……」

海は険しい表情で呟く。

「龍治君は魔物の気配はないって……なのにどうして……?」

「分からない、とにかく逃げよう!」

 突然の追っ手に困惑しながらも二人は走る。振り返ることなく、龍治の家を目指して必死に走り続ける。

「こっちだ!」

「ちょっと! こっちは道が違……」

海は急に角を曲がる。龍治の屋敷に続く道とは別の道に出る。

「先回りしてるやつがいた」

「そんな……」

あのまま角を曲がっていなければ、先回りした敵に捕まっていたと想像し、背筋が凍りついたれもん。

「今度は複数いるみたいだ、それに、あの時みたいに龍治が助けに来てくれるとは……」

「私たちで逃げ切らないと……!」

 二人は全力で逃げる。しかし、オークに追われた時とは違い、追っ手が多い。

先回りされては行く手を阻まれ、脇道に逃げる。繰り返すたびに、どんどん道が狭くなってゆく。

 

「……だめだ、行き止まりだ」

「まさか、最初からこれを狙って……」

 ついに、二人は人気のない袋小路へと誘導されてしまう。

そこは建物の影で薄暗く、廃棄されたドラム缶や廃材、錆びた鉄柱などが無造作に転がっている。

「追い詰めたぜ」

「こいつらを連れていけば金がもらえるのか」

「さっさとボコして連れていこうぜ」

後方から声がして、振り返るとそこには5人の、見るからに不良といった雰囲気の若者がいた。不良達は野球のバットやナックルダスター、バールなどを身につけている。

 海は咄嗟にれもんを庇う。れもんは足が震え、立っているのもやっとといったところだ。

「れもん、ごめんな……」

「そんな、龍治く……」

二人は龍治が助けに来るという淡い希望を抱いたが、叶うことはない。何故なら不良達は人間だ。魔物ではないので、龍治でも気配で探し出すことは不可能だ。

「小遣いゲットー!!」

そう言って不良の一人が海に向かってバットを振りかざす。

「やめてー!!!!」

刹那、れもんが叫ぶ。

すると、まわりにあるドラム缶や廃材が一斉に不良に向かって転がってゆく。

「なんだぁ!?」

驚き、咄嗟にそれらをかわす不良。しかし、ドラム缶の一つが衝突し、うめき声をあげて不良はその場に倒れた。

「はぁ? 何が起きたんだ?」

「テメェらがやったのか!?」

突然の出来事に混乱する不良達。

「やれ! 殴れ!」

「許さねえぞ!!」

仲間が倒されたことを理解した不良達は怒り、二人に殴りかかる。

しかし、平坦な地面にも関わらず、まるで意思を持っているかのように廃材は不良達めがけて転がり続ける。

不良達は廃材に衝突し転倒するか、廃材を避けるために身を引く。

「海! 今よ!」

れもんの声により、異様な光景を前に呆然としていた海は我に返り、れもんの手を引いて走り出す。

廃材と苦闘している不良の横をすり抜け、全力で走る。

「おい、待てコラ!」

不良の一人が手を伸ばす。

しかし、れもんの手を掴む前に、立てかけてあった鉄柱が二人と不良の間に倒れ、不良の行く手を阻む。

 こうして二人は不良から逃げ切り、袋小路を抜け出した。

 

 

 二人は近くにあったファミリーレストランに身を潜め、龍治に連絡をとっていた。

龍治の家まではまだ距離があり、不良達がまた追いかけて来ると思ったからだ。

「龍治にさっきのことと、迎えに来てほしいって言っといたから……」

 龍治に連絡し、一通り事情を説明した海は疲れきった顔でれもんの方を見る。

二人は、テーブル席に向き合う形で座っている。

「海、さっきのことなんだけど……」

少しの沈黙が流れ、れもんは気まずそうに口を開く。

二人の間の重い空気とは裏腹に、店は陽気な音楽と、他の客の楽しそうな笑い声で満ちている。

「うん、俺は何があってもれもんを突き放したりしないから、ちゃんと話して」

海は優しく促し、その言葉を聞いて安心したれもんは、ぽつりぽつりと話し始めた。

 

「実は私、魔法が使えるみたいなの」

 

 れもんの口から出た言葉は、あまりにも突飛で現実味のないものだった。

しかし、龍治や魔物、魔界のことを知ってしまった海は、今更驚くことはなかった。

 

「不良に追い詰められた時、ドラム缶とかごみを転がしたのは私なんだ。私がその魔法を使っちゃった……」

「魔法かぁ、そうだったんだ」

 

「魔法っていっても、ものを少し動かすくらいしかできないけどね。実は、5年くらい前かな? 理由は分からないけど、気づいたら使えるようになってて。でも、こんな力……知られちゃったら絶対に嫌われる、化け物だって罵られる……だからずっと隠してたの。使わないようにしてたの」

 

 そう言ったれもんの表情は曇り、俯いてしまう。

そんなれもんを海は優しく撫でた。

「すごいじゃん! れもんが助けてくれたんだな、ありがとう。それに、命の恩人を嫌ったりしないよ! あの時、れもんの力がなかったら、俺ら今頃どうなってたことか」

その言葉を聞き、れもんは力の抜けたような表情をする。

「えへへ、海はやっぱり海だね」

「なんだよそれ〜」

 二人は顔を見合わせ、クスクスと笑うと、海が口元に人差し指を立て、呟く。

「なあ、このことは龍治には内緒にしとこう。あいつも魔法を使うからな。信用してないわけじゃないけど、やっぱりれもんを危険な目にあわせたくないんだ」

その言葉を聞いたれもんは小さく何度か頷く。

「そうしよう。それに、さっきの連絡でも、あの力のことについては触れないでくれてありがとう。これは私たちだけの秘密だね」

「あ、バレてたかー、なんか、説明される前かられもんが助けてくれたんだって何となくわかってさー」

海は頭を搔いて、照れたように笑った。

 

 

 

「貴様ら、迎えに来てやったのだ」

 ファミリーレストラン。二人が座るテーブル席の横で、腕組みをし、仁王立ちで睨みつける龍治。相変わらず無表情だが、その姿からは静かに燃える怒りがひしひしと伝わってくる。

「本当にすいませんでした龍治サン」

「……ごめんね龍治君」

二人は俯き、小さくなって謝罪する。

「まあ良い、不良から逃げきれただけ運が良かったのだ」

龍治は安堵のため息をつくと、二人に帰るぞと促す。

「龍治、怒ってるよな……?」

「本当にごめんなさい」

二人は席を立ち、遠慮がちに龍治について行く。

「……心配したのだぞ」

龍治の顔からは先程の怒りは消え、少し拗ねたように吐き捨てた。

 

 会計を済ませ店を出ると、外は完全に日が沈み、街灯と建物の明かりがちらほらと見える。いつの間にか、すっかり夜になっていたようだ。

「お前達、次こそは離れないでくれたまえ」

龍治は辺りを見回すと、小さく頷いて進み始める。

「あら〜、龍治君ったら優し〜」

海がふざけて龍治の腕に抱きつく。

「は? やめろ貴様、気持ちが悪いのだ!」

龍治は嫌そうに海を振り払う。

「早く帰ろうではないか、三人一緒にな」

 そう言った龍治の瞳は、一瞬だけ優しく煌めいた。

 

        *

 

 

 小一時間前、例の袋小路。

 

 海とれもんは不良達から遠ざかってゆく。

不良達は、向かってくる廃材をかわすのに夢中で、二人を追いかけることができなかった。

二人が去りしばらくすると、廃材はピタリと動きを止め、何事もなかったかのように辺りは静まり返った。不良は、倒れた仲間を起こして叫ぶ。

「ちくしょう! なんだよこの動くごみは! これのせいであいつらを逃がしちまったじゃねえか!」

「早く追うぞ!」

「俺らの金だ! 追え!」

「まだ遠くには行ってないはずだ!」

 不良達が立ち上がり、走り出そうとした、その時だった。

 

「……ああ、わかったのだ。つまり、その不良に追われ、逃げてきたと。ああ、迎えか。任せるのだ」

スマートフォンを片手に、誰かと連絡を取りながら、こちらに向かってくる人影があった。

「誰だテメェ!?」

「やんのかコラ!」

不良達は大声で威嚇し、身構える。

 

「女か……?」

「見るからにザコだなァ!」

 その人物は華奢な体格に、美しいつややかな長髪、人形のように整った顔。そして、不釣り合いな詰襟の学生服を纏った女のような見た目をしている。

 

「俺は男だ、愚か者」

 

 その人物は凛とした声でそう言い放つ。決して高くはないが、透き通っていて、美しい声色だ。

「邪魔だコラ!!」

「どけよクソ野郎!」

不良達の罵倒に臆することなく、彼は進む。

不良の一人がバールを構え、彼を狙う。

「はあ、あまり手荒なことはしたくないのだが……」

 彼はそう言うと、不良達に向かって手を翳す。すると、その手は淡い緑色に輝く。

それを見た不良達は、焦点の定まらない目をして惚けてしまった。

 

「先程のことは全て把握しているのだ。学生二人を襲ったことも()()だ」

 

「一体誰の差し金なのだ、貴様らを雇ったのはどこの誰なのだ。その者の目的は何なのだ。全て答えたまえ」

 

 彼がそう言うと、魂の抜けたような不良達は、操られたように口を開く。

「俺らは……『レッドサーペント』と名乗るヤンキー集団から50万で雇われた……あいつら二人を捕まえてこいって……金目当てだ、ヤツらの目的なんざ……聞いてねえ……あいつらの拠点は……何処かは知らねえが……取引をしたのは……町外れの……あの廃ビルだ……」

 

「ほう、レッドサーペントか……廃ビルで取引をしたのだな。貴重な情報だ、提供、ご苦労なのだ」

彼がそう言うと、不良達は我に返る。

「は? テメェ今何しやがった!」

「俺らに喋らせたな!」

「許さねえ! ぶっ殺す!」

不良達はそう叫ぶが、何故か体に力が入らず、全く動かすことができない。

「クソッ! なんで体が動かねえんだ!」

立て続けに起こる不思議な出来事に、不良達は狼狽することしかできない。

「嗚呼、俺を倒したいようだが無駄だ」

 そう言うと彼は、スマートフォンの画面を不良達に突き出し、動画を再生する。

そこには、先程の、二人を襲う不良達の姿が映し出されている。どうやら彼は、この出来事を撮影していたようだ。二人を袋小路に追い詰め、武器を持って詰め寄る姿が鮮明に映っている。

「この証拠を警察に提示して、貴様らを捕まえてもらうのだ。通報しておいた、もうじき警察が来るはずだ」

それを聞いた不良達は一気に青ざめる。

「やめろ! クソが! テメェ、ナニモンなんだよ!」

それを聞いた彼は髪をかきあげ、格好つけると、自己陶酔したような声色で答える。

 

「俺か? フッ……俺は緑川龍治なのだ」

 

 

 しばらくすると、サイレンの音が響き渡り、パトロールカーが到着した。

動けないままの不良達は、呆気なく警察に取り押さえられた。

龍治は証拠を警察に提示すると、二人が待つファミリーレストランへと向かう。

 

「魔物だと気配でわかるのだが……気配を消すために人間に攫わせるとはな。奴らもそれなりに頭を使うではないか……それに、奴らから逃れるためにれもんが使った()()は……はあ、厄介なことになりそうなのだ」

 

そう言って龍治は歩き出した。

 

 

        *

 

 

 某所。

 

「兄貴! 雇った人間が捕まっちまったと連絡が!」

 薄暗く光の刺さない、朽ち果てた廃墟にて。

一人の男が慌ただしく、兄貴と呼ばれた男の部屋に入る。

 

「もしかしたらあいつら、俺らレッドサーペントのことまで吐きやがったかも! ヤバいよ兄貴!」

男はひどく狼狽した様子でまくし立てる。

 

「あー、わかった……クソが!! 使えねえ人間共だなァ!!」

『兄貴』はそう叫び、机を殴る。

「ちくしょう、また人間を用意しろ!! 今度はもっと大人数だ! 何がなんでも捕まえるぞ!!……俺らの命がかかってるんだ!」

 

「わかったよ兄貴!」

そう言うと男は走ってどこかへ行く。

 

 一人残された『兄貴』は呟く。

「この俺、カーマイン・スネークが『兄弟』を守らねえと、レッドサーペントを守らねえと……」

 

 

 

        *

 

 

 

 あるマンションの一室。薄暗い部屋。

コンピューターの画面の前で、少年はひたすらに考えを巡らせる。

「林檎……蛇……林檎色……赤の……蛇…………あっ! 赤い蛇、『レッドサーペント』! わかったぞ! 確かレッドサーペントは魔界のギャングだ。リーダーは、ええと……カーマイン・スネークだっけか? ギャングが絡んでるってことか!? これは大変だ! あいつに伝えないと!」

 

何かを考えついたらしい、少年は慌てふためいてスマートフォンを持ち、電話をかけようとする 。

 

「待てよ? なんでカンダタはこんなこと知ってんの? 魔界のことだぞ……何者だよ全く……」

 

 少年は疑問を持ったままで電話をかけた。




たいへん長らくお待たせいたしました。
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