「ひどい! もう知らない!」
柚さんは俺にウィッグを投げつけて走り去ってしまう。追いかけないと……
「柚さん! 待って……痛っ」
手を地面に置き立ち上がろうとすると身体に痛みが走る。思ってたより下敷きになったときのダメージが大きいようだ。
「はーちゃん!」
「なー姉……」
地面に倒れていると横断歩道からなー姉が駆け寄ってきた。そういえばカフェで放置していた。よくここが分かったものだ。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫……ちょっとベンチまで運んでくれない?」
俺はなー姉の肩に身体を預ける。なー姉は重そうにしていたが文句も言わずにベンチまで運んでくれた。
「ふぅ……。ありがとうなー姉」
「バレたのですね」
なー姉は確認するかのように聞いてきた。
「……理解が早くて助かるよ」
「ウィッグが取れてるのですからそりゃ察しますよ」
そういえばウィッグ手に持ったままだった。俺はウィッグについてる土を払い頭に装着する。
「柚さんは?」
「怒ってどっか行っちゃったよ。もう知らないって……」
「そうですか……早く探しに行かないとですね」
「俺はやめておくよ。なー姉一人で行って」
「……なぜですか?」
「俺は柚さんをずっと騙していたんだ。顔を合わせる資格なんて……」
「じー君」
「ぐぇっ」
俺が喋っている途中、なー姉は俺の頭を両手の拳で挟みグリグリしてきた。小さい頃なー姉がアニメの影響を受けて俺によくやってたな……と呑気に考えていたがすごく痛い。
「好きな女の子に逃げられたからって何をそんな弱気になってるんですか。バレてしまった以上私たちがするべきことは土下座でもなんでも誠心誠意謝ることです。はーちゃんのための女装ということをお忘れか?」
「分かった追いかけるから! だからぐりぐりするのやめて!」
そう叫ぶとなー姉はやっと両手を離して俺を解放する。ただでさえ体中が痛かったのに頭もぐりぐりされ泣きっ面に蜂だ。
「それにじー君はこのまま柚さんと何も話さずにお別れしてもいいんですか」
「それは、したくないよ……」
そうだ。ようやく自分の気持ちに気付いたんだ。それなのに、このままお別れするなんて絶対に嫌だ。
「でしたらきちんと柚さんと話し合うべきです」
「そうだな。探して、謝って、俺の気持ちを伝える」
「安心してください。骨は拾いますよ」
「なら心強い」
覚悟は決まった。痛みも引いた。後は柚さんを探すだけだ。俺たちはベンチから立ち上がり、公園の外へ出た。
*****
「といっても柚さんどこ行ったんだろう」
柚さんは事務所の方向へ走っていった。だがそれだけでは柚さんの居場所はわからなかった。
「あれ、颯ちゃんに凪ちゃん」
可能性としてはそこそこ高い事務所の前まで行くと、穂乃香さんが立っていた。
「二人ともさっき帰ったばかりだと思ったのですけど」
「穂乃香さん! 柚さん見ませんでしたか?」
「え、柚ちゃんですか? 柚ちゃんなら少し前に駅の方に走っていくのを見ましたけど……」
「本当ですか!?」
駅の方……ということは家に帰った? いや駅前のデパートとかゲーセンとかにいるかも知れない。
「え、ええ……。あの、何かあったのですか?」
「じー君の正体がバレたんですよ」
「え!?」
なー姉が状況を説明すると穂乃香さんはひどく驚いていた。
「そんな……だから柚ちゃん様子が変だったのですね」
「凪は駅周辺を探しますのでじー君は電車に乗って柚さんを探してください」
「私も手伝いたいのですがこれからお仕事がありまして……」
「お気持ちだけで十分ですよ。情報ありがとうございました」
「いえいえ、ご健闘を祈っています」
穂乃香さんと別れて俺たちは駅の方に向かう。そこからなー姉とも別れ、俺は電車に駆け込んだ。
*****
「……見つけた」
駅に着いたはいいが肝心の柚さんの家の場所が分からない。わずかな可能性にかけて河原に足を運ぶと、柚さんが体育座りをして佇んでいた。
「柚さん」
「……」
声をかけると柚さんは顔を上げてこちらを見る。声の主が俺だと分かるとムスッと睨まれ、いきなり心が折れそうになった。
「迅クン……なんだよね?」
「はい」
俺は頭に手をやりウィッグを外す。柚さんはその様子をじっと見ていた。
「なんで……。なんでこんな格好してるの?」
「はい。ちゃんと説明するので……聞いてくれますか?」
柚さんは黙ってこちらを見ている。聞いてくれるのだと解釈し、俺はこれまでのことを話し始めた。
*****
「……というわけなんです」
これまでの嘘のような本当の話を柚さんは説明が終わるまで黙って聞いてくれた。
「一応、話は分かった……。でも、今更そんなこと言われてもやっぱり納得できないよ……」
「ごめんなさい……」
「一緒にレッスンして楽しかったし、自主練まで付き合ってくれて、すっごくいい子だなって信用してたのに……! 友達だって思ってたのにっ!」
一度溢れたら止められないというように、柚さんは感情を爆発させ、声を荒げた。
「だから……。だから、恋愛相談だってしたのに! アタシが迅クンのこと話したときも内心バカにしてたんでしょ! デートに誘われて緊張してたアタシを鼻で笑ってたんでしょ!」
「違います……。そんなわけないじゃないですか!」
「信じられないよっ! だったら何で? 何でアタシとデートなんてしたの!」
「それは……柚さんのことが好きだから!」
「え……」
言った。言ってしまった。ムードもへったくれもない、むしろ最悪なタイミングの告白だ。柚さんもあんなに興奮してたのに固まっている。
「俺は……柚さんのことが好きです。好きだから……正体がバレたらダメなのに自主練に付き合ったり、デートをしたりしたんです」
「……」
「柚さんと過ごした時間は本当に楽しかったです……。だから、そんな悲しいこと言わないでください……!」
顔を伏せた柚さんは、そのまま押し黙ってしまう。俺も口をつぐんで、柚さんが言葉を発するのを待った。
「本当……なの?」
「……はい」
柚さんはまた視線を足元に落とし黙り込む。
「嘘だよ……。迅クンの言うことなんて何も信じられないよ……」
「本当なんです」
確かに嘘をつき続けていた俺だけど、この思いは本物だ。この思いだけは、信じて欲しかった。
「……。だったら、キス……してよ」
「えっ?」
「本当にアタシのことが好きなら、キス……して……」
「柚さん……」
顔を上げた柚さんは、目を閉じて俺に顔を向ける。
「……」
何をするのが正しいか分からない。だけどこの雰囲気に逆らうことなんてできなく、したいとも思わなかった。俺はゆっくりと顔を近づけていった。
「ん……」
軽く触れ合う。初めてだからよく分からない。体を離すと柚さんは顔を少し赤く染め、俺を見て言った。
「アタシも……好きだよ……。迅クンのこと」
「え……」
柚さんの言葉に俺は耳を疑った。俺はずっと柚さんを騙していたのに……
「正体を隠していたのは怒ってるけど、やっぱりアタシは、迅クンのことが好き。オーディション落ちて落ち込んでたアタシを励ましてくれたり、雨で冷えたところにジャージを貸してくれたり、お姉ちゃんのために女装までしたり……そんな優しい迅クンが好きだよ」
まさか全てを知っても柚さんが好きでいてくれると思わなかった。それが堪らなく嬉しくて、俺は柚さんを抱き寄せる。
「柚さん……」
俺たちは見つめ合い、そして……。
「ん……」
再び、キスをした。
*****
「はぁ……」
これまでの緊張が解け、俺と柚さんにどっと疲れが押し寄せる。俺たちは揃ってその場に座り込んだ。
「キスで許しちゃうなんて、アタシってチョロいな……」
「悪い人に騙されないか心配ですよ」
「もう騙されたよ」
「……すみません」
夕日が差し込む川を眺めながら柚さんと軽口をたたく。いつものようなその会話がとても心地よかった。
「そういえば手紙必要なくなっちゃったな」
「手紙……。あれって俺へのものだったんですか」
「そうだよ。今気づいたの?」
「はい。てっきり学校の友達宛てかと……」
「学校の友達だったら普通にメールするよ」
なるほど……。確かに友達だったらいくらでもメール出来るし、メアドを知らない俺宛てだったからわざわざ手紙を書いてたのか。
「アタシってば迅クンのアドレス知ってたんだね」
「そうですね。あ、メールで思い出しましたけどなー姉と穂乃香さんに仲直りしたって送らないと……」
「……ん? なんで穂乃香チャン?」
「穂乃香さんは俺が女装していること知っていて協力してもらってるんですよ」
そういうと柚さんは少し不機嫌そうに顔をプクッとさせた。
「アタシだけじゃなかったんだ……」
「もしかしてヤキモチですか」
「そうだよ。そういえば迅クンって穂乃香チャンの演技の練習も付き合ってたなってこと思い出して」
ツーンとそっぽを向く柚さん。こんなことを言うと怒られそうだけど、その姿はとても愛おしかった。
「大丈夫です。俺が好きなのは柚さんですから」
「も、もう! 恥ずかしいこと言わないで! 嬉しいけど……」
柚さんは顔を赤くして怒ったかと思うともじもじする。俺も恥ずかしかったけど言ってよかった。
「じゃあそろそろ帰りますか」
「もう帰っちゃうの?」
柚さんは寂しそうに言った。
「寮の門限もありますから」
「そうだけど……」
「明日もデートしましょう。俺行きたい場所があるんですよ」
「うん……! デート!」
柚さんは嬉しそうに笑う。俺の好きな、まぶしい笑顔だった。
*****
そして翌日、デートの日。俺と柚さんは都内の遊園地に来ていた。
「東京へ来たならここに行きたいって思ってたんですよね」
「有名だもんね! じゃあ今日一日で遊び尽くしちゃおう!」
とはいっても春休みの終わりということもあって人が多い。全部を回ることは無理なので遊ぶ施設は慎重に選んでいきたい。
「やっぱり遊園地といえばジェットコースターだよね!」
「そうですね」
「迅クンはジェットコースター平気な人?」
「こういうちゃんとしたやつ乗るのは初めてなので分からないですね。多分大丈夫だと思いますけど」
遊園地は小学校低学年のとき以来で、その時は身長制限で乗ることが出来なかった。あのときはなー姉と一緒に駄々こねて母さんに迷惑かけたなぁ……
*****
「いやー楽しかったね!」
「そうですね! ここまですごいなんて思いませんでした!」
結論から言うとジェットコースターはめっちゃ楽しかった。分かってはいたけどマジで速いし、360度回るとこでは思わず叫んでしまった。
「ま、まさか……もう2、3回乗るなんて言わないよね?」
「? いや、もう一回乗るよりかは別のところに行きたいって思ってますけど……」
「だ、だよね〜、よかった……」
ホッと胸を撫で下ろす柚さん。何か様子がおかしい。
「いやね。この前フリスクのみんなと遊園地に乗ったんだけど……穂乃香チャンがお芝居のために無重力の感覚を知りたいって、ジェットコースターを何回も乗ったんだよ……すごいハードなやつ……」
「あー……」
「何事もホドホドが一番だよね……」
「さすが穂乃香さんですね」
演技にかける情熱が半端ない。こういうところも穂乃香の魅力の一つなんだろうな。
「迅クン」
「なんですか?」
「他の女の子のこと話すの禁止」
「話題に出したの柚さんですよね!?」
柚さんは大変嫉妬深かった。
*****
その後も一日中遊園地を堪能した。着ぐるみと一緒に写真を撮ったり、お昼を何口か交換したり、コーヒカップでヒートアップして2人で気持ち悪くなったり、お化け屋敷で柚さんに驚かされたり……。離れ離れになってしまう分、思いっきり楽しんだ。
そして今、最後のアトラクションとして観覧車に乗っている。
「明後日帰っちゃうんだよね……」
「はい」
観覧車の中で俺と柚さんは隣並んで座っている。終わりが近付いているからなのか、柚さんのトーンは少しだけ落ちていた。
「次いつ会えるかな?」
「夏休みですかね……」
「ゴールデンウィークは?」
「来れるか微妙なところですね……」
行きたいのは山々だけど、部活もあるし、泊まるところもないからな……。一人で叔母さんの家にお世話になるのも申し訳ないし
「えー来ようよ〜」
「部活もありますし」
「部活とアタシどっちが大事なの!?」
「……柚さんです」
「そこは即答してよ!?」
柚さんは俺と離れ離れになるのが不安なようだった。俺もそうだ。
「まだ親にもなー姉にも言ってないんですけど」
「うん」
「俺、東京の高校に行こうと思うんです」
「えっ……」
俺は少し前から考えていたことを話すことにした。多分親に反対されるのでこれから説得するのだが。
「徳島と比べてやっぱり都会はいいなって。電車はよく来るし、お店も多い。地元での生活ももちろんいいですけど、俺は都会で暮らしたいって強く思うようになりました。……あと柚さんもいますし」
「うん……」
「だから、今は全然会えないかもしれませんけど、俺が高校生になるまで待ってもらえませんか?」
俺はそう言って柚さんを見ると、柚さんはニヤニヤして俺のことを見ていた。
「そっか。ふふーん、迅クンってばもう高校のことまで考えてるなんて、アタシのこと好きすぎなんじゃない?」
「もう、茶化さないでくださいよ」
「ゴメンゴメン。でもそこまで考えてくれてるって知ってアタシも嬉しいよ。アタシも同じ気持ちだから……。だから、末永くヨロシクねっ!」
隣に座る柚さんが自分の手を俺の手に重ねる。温かい。離れていても、柚さんとなら上手くやっていける。そんな気がした。
*****
そして俺とはー姉の入れ替わりの日がやってきた。
「じー君そわそわしすぎですよ」
「そういうなー姉だってさっきからキョロキョロして」
「2人とも同じ反応で面白いね! さすが双子!」
「正確には三つ子ですけどね」
今日は俺とはー姉が入れ替わる日。1人新幹線でやってくるはー姉を迎えるため、俺となー姉、柚さんと穂乃香さんは駅のホームまで来ていた。
「ところでじー君。いつまでその格好をしてるのですか?」
「え?」
寮を出るためには女装しなくてはいけないので、俺はいつもの女装姿だった。
「そっか。すっかり忘れていた」
「……忘れるくらい女装が染み付いてしまったのですね。ゆーこちゃんに頼んでしっかり洗い流してもらいましょう」
「そこまで染み付いてねーよ。俺ちょっと着替えてくるから」
そう言って俺は駅の多目的トイレに入り着替え始めた。ウィッグ、パッド、ブラにスカート。どれも少し前まで馴染みのなかった代物だがすっかりと自分の一部となってしまった。
「今までありがとうな」
戦友と呼ぶべきそれらに俺は礼を述べる。もう身につけることはないだろう。そして鞄から男物の服を取り出す。着るのにすこし手間取ってしまった。
「ただいま」
「おかえりなさい。遅かったですね。ズボンの履き方を忘れてしまいましたか?」
「うるさいよ」
「ジャージ以外を着てる迅くん初めて見た気がします」
「アタシは何回あるよっ!」
「柚ちゃんはあんなに近くにいて女装に気づかなかったのですからそんな得意げな顔しないでください」
「なんだと〜!」
みんなと会話をしているうちに新幹線が来ることを知らせるアナウンスがきた。
「あ、新幹線来たみたい」
「確かこれに乗ってるはずです」
到着した新幹線から続々と人が降りてくる。サラリーマン、家族連れ、英国紳士風のおじいさん。はー姉は……
「「あっ」」
目的の少女と目が合う。俺となー姉は同時に声を上げた。向こうから走ってくるはー姉も同じような反応をしていた。
「なー! じー君!」
はー姉は真っ直ぐに俺となー姉のところに走り飛び込んできた。
「久しぶりー! 会いたかったよー!」
俺となー姉をギュッと思いっきり抱きしめるはー姉。はー姉は既にポロポロと涙をこぼしていた。
「はーちゃん痛いですよ。足もリハビリ終えたばっかりなんですから飛び込まないでください」
なー姉は軽口を叩きながらもやっぱり泣きそうな顔をしていた。俺も泣いてないが目が熱くなる。
「わぁ、女装した迅クンにそっくり……」
「一度並べて見てみたいですね……。着替えさせなければよかったです」
初めて見るはー姉に柚さんと穂乃香さんは驚いているようだった。そんな二人にはー姉も気がついたようだ。
「え!? 綾瀬穂乃香ちゃんに喜多見柚ちゃん!?」
「お、柚たちのこと知ってるんだ」
「はじめまして颯ちゃん。綾瀬穂乃香です」
「は、はじめまして。久川颯、です……」
はー姉は生で見る柚さんと穂乃香さんを前にしてガチガチに緊張していた。
「ふふっ、そんな緊張しないでください。同じ事務所の仲間なんですから」
「そうそう! 楽しくやろっ!」
「仲間……そうだよね。はーアイドルになれるんだよね……」
アイドルになれるという実感が湧いたのかはー姉は嬉しそうな顔をする。その顔を見て俺は、女装してよかったのだと思うのだった。
*****
「本当にもう行っちゃうの?」
「うん。今乗らないと今日中に帰れなくなるから」
俺が乗る新幹線が到着した。本当の本当に、お別れの時間だ。
「1日くらい一緒にいたいよ……」
「泊まるところないだろ、寮はもうはー姉の居場所なんだから」
それに、これ以上居続けるともっと別れるのが辛くなる。
「じー君、はー頑張るから……頑張ってすごいアイドルになるから、絶対見ててね!」
はー姉は明るくて真っ直ぐ、俺の大事な三つ子の姉だ。そんなはー姉のアイドルという夢は、いつしか俺の夢にもなっていた。ここからが本当のアイドル久川颯のスタートだ。その活躍を近くで見ることが出来ないのは惜しいけど、はー姉なら輝けるって信じてる。
「離れていても凪たち三つ子はいつも一つですよ。だから……お元気で」
なー姉は変なやつで、弟の俺でもたまに何を考えているのか分からないときがある。でも誰よりも俺とはー姉のことを考えてるのは知ってるから、安心して女装することができた。なー姉自身もアイドルに興味が湧いてきたみたいだし、今度は自分のやりたいようにアイドルをやって欲しい。
「徳島に帰ってもお元気で。迅くんとの思い出は決して忘れません。颯ちゃんのことは任せてください」
穂乃香さん。女装を知られてしまった最初の人で、あの時は本当に全てが終わったかと思った。だけど女装を受け入れてくれるだけでなく、いろいろ協力までしてくれ非常に助けられた。本当に頭が上がりません。映画のヒロイン役頑張ってください。上映されたら必ず見に行きます。
「帰っても毎日メールするからっ! テレビとかライブとかあるときは教えるしそれにそれに……」
柚さん。事務所で初めて会い、一緒にレッスンをしたアイドルで……俺の大切な人。一緒にバドミントンをしたりレッスンをしたりデートをしたり……本当に楽しかった。離れていてもずっと応援してますよ。
他にも色々な人のお世話になった。ここでの出来事は全てかけがえのない思い出だ。
新幹線の発車を知らせるベルが鳴る。俺は新幹線に乗り、振り返った。はー姉、なー姉、穂乃香さん、柚さん、事務所の皆さん、今まで本当に……
「ありがとうございました! さようならっ!」
扉が閉まり、新幹線は動き出す。非日常から日常へと戻るのだ。
こうして俺の女装生活は幕を閉じた。
次が最終話です。
フリスクのジェットコースターのくだりはシンデレラガールズ劇場1388話から。柚は絶叫系平気な方だと思ってます。