乙女アイドル ~久川家の三つ子の弟~   作:アンセンブル

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第2話 セクシーな乙女の事務所案内

 事務所のエントランスに入った俺はまずその広さと綺麗さに驚かされた。

 

「すげえな……で、どこに行けばいいんだっけか?」

 

「受付からプロデューサーを呼んでもらうよう言われています。それよりじー君」

 

「ん?」

 

「口調、そろそろはーちゃんモードにしておかないと」

 

「そうだな……ん、んんっ! じゃあなー行くよ!」

 

「うわぁ……」

 

「引かないでよ! これからこの口調で生活するんだから!」

 

「いえ、あまりにもはーちゃんに似ていたから……」

 

 受付でプロデューサーを呼びだししばらくすると、20代後半くらいのスーツ姿の男がやってきた。彼がプロデューサーなるものだろうか。

 

「お待たせ、ここに来るまで迷わなかった?」

 

「おひさしぶりです、P。今日のために山手線ゲームでシュミレーションしてきたので、抜かりナッシングです」

 

「駅内で迷ったから意味なかったけどねー」

 

「ははは、改めて自己紹介するけど君たちのプロデューサーを務める者です。これからよろしくね」

 

「よろしくお願いします!」

 

「よろしくです」

 

 まじめそうだけど堅苦しくなく初対面でも話しやすい人だ。俺たちはプロデューサーに連れられてプロジェクトルームに行き契約内容の確認をしてもらった。

 

「ご両親の許可取れたみたいだね」

 

「うん! ちゃんと書類にサインもらってきたよー!」

 

「説得には1日もかかりませんでした」

 

「おーけー、あとは……」

 

 書類内容を確認するプロデューサー。どうやら目の前にいるのが久川颯であると信じて疑ってないみたいだ。まあはー姉とは2、3回くらいしか会ってないみたいだし仕方のないことだろう。

 

「うん、問題なさそうだね。では今日から君たちはうちの新人アイドルってことになります」

 

「わーい!」

 

「女子寮関連の書類も問題ないから今日から女子寮に住むことになるけど大丈夫かな?」

 

「もちろん! ちゃんと荷物は持ってきたよ」

 

「あんなものやこんなもの、公開まであと半日」

 

「あはは、じゃあ今日はまず事務所の案内をする……て言いたいんだけどこのあと外せない会議が入っちゃってね。事務所案内は他の子に任せることにしました。柚ー」

 

「はいはーい」

 

 プロデューサーに呼ばれてやってきたのは元気そうなパッツンボブのかわいい女の子。年は同じくらいだろうか。

 

「喜多見柚、春から中学3年生のアイドルです! これからよろしく!」

 

 元気に挨拶をする喜多見さん。春から中学3年生ってことは1つ上の先輩か……。

 

「久川颯です! よろしくお願いします、喜多見さん!」

 

「姉の久川凪です。ネギじゃなく、なぎですよ」

 

「あはは、面白い子だね! 名字じゃ堅苦しいから名前で呼んでよ」

 

「じゃあ……柚さん!」

 

「うん、よろしくね。颯チャン、凪チャン!」

 

「じゃあ柚、今朝言ったようにこの紙に書かれてる場所を案内してくれるか。14時には戻れると思うからそのくらいにまたここで」

 

「おっけー。じゃあ出発~」

 

「「はい!」」

 

 

「ここがレッスンスタジオだよ」

 

 まず連れてこられたのはレッスンスタジオ。壁の一面が鏡になっており何人かのアイドルが鏡の前でダンスや歌を歌っていた。

 

「みてみてなー! 壁が鏡になってる! ここで特訓するんだよね!」

 

「レッスンと特訓の違いとは? 気の持ちようですか」

 

「今はレッスンの時間じゃないから自主練してる子しかいないね。午後はトレーナーさんが来てアイドル達のビシバシしごくんだよ」

 

 柚さんから説明を受けていると、自主練しているアイドルの1人がこちらに気がついてやってきた。

 

「柚ちゃん、おはようございます。こちらの方達は?」

 

「穂乃香チャン、この子達は今日からアイドルになった颯チャンと凪チャンだよ」

 

「こんにちは久川凪です。ネギでは……」

 

「久川颯です!」

 

「綾瀬穂乃香です。2人は双子なんですか?」

 

「うん! はーが妹でー」

 

「凪が姉です。英語でいうとシスター」

 

「それじゃどっちかわからないでしょ……」

 

 あまり弟である俺の存在を匂わせたくないので三つ子とは答えない。なー姉とはー姉の関係だけでいえば双子と言っても嘘にはなら……ならないのかな?

 

「穂乃香さんは自主練というやつですか?」

 

「はい、ダンスの表現に少し疑問がありまして」

 

「ダンスの表現……?」

 

「穂乃香チャンはバレエやっててね。演技とかダンスとかもう表現力がすごいの!」

 

 へえー、なんかすごい。ダンスなんて言われたとおり動かすことしか知らないから表現と言われてもピンとこない。

 

「あとね、すっごく身体が柔らかいの! 穂乃香ちゃんなんかやってみて」

 

「柚ちゃん唐突ですね……まあ自己紹介もかねてやりますけど」

 

 そう言うと穂乃香さんは床に座って足を180度に開き、その状態から身体をべったりと前に倒した。

 

「す、すごい……」

 

「これは見事な180度。定規要らず」

 

 俺なんかまず足が90度開くかどうかだし、そこから身体を倒すなんて夢のまた夢だ。

 

 それにしても……穂乃香さんはレッスン着という薄い格好をしているわけで。身体を前に倒すと胸元が……。

 

「い゛て゛っ!?」

 

 そんなことを考えていたら隣にいるなー姉が尻をつねってきた。こういうとき三つ子というのは面倒で、相手の考えていることが容易に分かってしまう。

 

「ん? どうしたの颯チャン?」

 

「い、いえ……なんでもないです」

 

「どうやらはーちゃんも身体を柔らかくしたいみたいです」

 

「なー!?」

 

「本当ですか! では颯ちゃんもやってみましょう!」

 

 なー姉の一言で開脚する流れになってしまい、俺はしぶしぶ床にすわり足を開いた。

 

「いだだだだ! なーストップストップ!! ギブギブ!!!」

 

「まだ90度しか開いてないし前にも倒れていません。もう3、4倍は頑張ってください」

 

「4倍ってそれもう人間じゃないよおおおお!!!!」

 

「柚より硬いね……」

 

「大丈夫です! 日々特訓すれば3倍も夢じゃありません!」

 

「3倍も多分人間じゃないですよおおおお!!!」

 

「うわー穂乃香チャンの特訓スイッチに火が付いちゃったよ」

 

 アイドル初日、いきなりこれからのことに不安を抱くのだった……

 

 

 その後レッスンスタジオを後にした俺たちは次なる場所へ移動した。

 

「ここは撮影スタジオ。今ちょうど撮影中だから静かにね」

 

 撮影スタジオは不思議な雰囲気に包まれており、メイクするような場所と白い衝立があり、その前にはカメラが置かれていた。そのカメラの前では着物を着た黒髪ロングの女の子が様々なポーズをして写真を撮られていた。

 

「綺麗……」

 

「あの子は桃井あずきチャン。あとで紹介するね」

 

 その後撮影が終わり、カメラマンさんに挨拶をした「あずきチャン」さんがこちらにやってきた。

 

「あずきチャンお疲れ!」

 

「ありがとう柚ちゃん。見学?」

 

「この子たちの案内をしてたんだよ」

 

「新人アイドルの久川颯です!」

 

「姉の久川凪です。以下略」

 

「かわいい~。私は桃井あずき! じゃあさっきの撮影見られちゃったんだ、恥ずかしいな~」

 

「そんな! 表情やポーズで雰囲気が全然違ってすごかったです!」

 

「いやーそれほどでもー」

 

 実際あずきさんの撮影は驚きの連続だった。今はかわいらしい表情を見せているが撮影では大人びた着物美人を演じており、ギャップに驚かされる。

 

「今日はセクシー大作戦?」

 

「いや、江戸の見返り美人大作戦」

 

「???」

 

「セクシー大作戦とは? なんだかイケない空気を感じますね」

 

「あずきはセクシーさには自信があるんだ~」

 

 あずきさんはそう言うと着物を胸元までずらしセクシーポーズを……。

 

「ぶふぉっ!」

 

「わーあずきチャンセクシー!」

 

 セクシーさに自信があると自負するだけはあり、さらけ出された白い肩や鎖骨は扇情的で中学2年生の俺には刺激が強すぎた。あずきさんはきっと男がいないと思っているからこんなことをしてるんだろうけど、目の前にいるんです……ごめんなさい……ありがとうございます……。

 

「ふんっ!」

 

「痛って!」

 

 また隣の凪からお尻をつまれる。いやこれ俺が悪くなくない?

 

 

「じゃあそろそろお昼にしようか。食堂に案内するね」

 

 事務所には食堂がありお手頃な値段で料理を提供してくれるらしい。

 

「お金はプロデューサーさんからもらってるから好きなの選んでね」

 

 食券機には定食のようながっつりしたものからサンドウィッチのような軽食まで幅広くメニューがあった。俺はチキンカツカレーの大盛りを選択し列に並ぶ。

 

「おー颯ちゃんカツカレーの大盛り? 結構がっつり系だねー」

 

 柚さんにそう言われ気づく。そうか、女の子はあんま食べないのか。迂闊だったかな。

 

「はーちゃんは緊張して昨日から何も食べてないのです。今にもおなかと背中がくっつきそうだったので許してあげてください」

 

「え? 朝は食べなきゃダメだよ。一日のエネルギー源なんだからアイドルは特に」

 

「はーい」

 

 すかさずなー姉がフォローしてくれる。流石なー姉。後で礼しとかないと。

 

「じゃあ席は……あっ」

 

 料理を受け取った柚さんはテーブルに1人座って食事をしていた女の子のところに向かった。

 

「忍ちゃん、隣いい?」

 

「もちろん、いいよ」

 

「やった。颯ちゃん達こっちこっち!」

 

柚さんに招かれ向かいの席になー姉と座る。

 

「この子達は?」

 

「久川颯です! 隣のなーとアイドルになりました!」

 

「凪です。よろしくお願いします」

 

「プロデューサーさんに頼まれて事務所を案内してたの」

 

「そうなんだ。アタシは工藤忍。よろしくね」

 

 手をさしのべてきたので俺もそれに答える。お姉さんって感じの人だ。

 

「あれ、忍チャン大盛りなんだ。珍しい」

 

「う、うん……そうだけど」

 

 忍さんのお皿を見ると俺の大盛りカレーと同じサイズのものだった。結構食べる人なのかな。

 

「朝ご飯食べてなくて……」

 

「……ねえ。アイドルは朝ご飯食べないとダメって言ったのは忍チャンだよね」

 

「はい……」

 

「アタシついさっき颯ちゃん達に偉そうに教えたばかり何だけど」

 

「ごめんなさい……」

 

 縮こまる忍さん。年齢は忍さんの方が上なのにとなんだかおかしくて俺は思わず笑ってしまった。

 

 

「ごちそうさま」

 

「なかなかのものでした。シェフを呼んでください」

 

「じゃあいい時間だしプロジェクトルームに戻ろうか……とその前に忍チャン」

 

「ん、何?」

 

「なんかこう、サービスショットとかないの」

 

「え、なんで?」

 

「いやさっき穂乃香チャンもあずきチャンもやってくれたから……」

 

「意味分からないよ……」

 

 こうして平和に食事を終えた俺たちは事務所のプロジェクトルームに移動した。

 

 プロジェクトルームにはすでにプロデューサーが戻っていて、書類とにらめっこをしていた。

 

「ここは見覚えのある部屋ですね。実家のような安心感です。ホームシックはまだ早い」

 

「ただいま戻りました!」

 

「おかえり。どうだった」

 

「すごかった! アイドルの裏側なんてはじめてで楽しかった!」

 

「それはよかった。柚もありがとう」

 

「へへーん。お安いご用だよ」

 

「じゃあ最後に女子寮を案内するよ」

 

「ついに、物件案内ですか? これは期待が高まりますね」

 

「柚さん、今日はありがとうございました!」

 

「ありがとうございました」

 

「いいっていいって。じゃあまた明日!」

 

 最後にこれからの生活の拠点である女子寮だ。まだまだ気は休まらない。むしろこれからが本番だと言い聞かせプロデューサーの後に続いた。

 

 

 




デレステで凪のコミュを見てるけど口調がさっぱり掴めない……。

フリスクの内2人はメインのつもりです。
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