今回はあまり改変点はありません。
それではどうぞ
「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」
そして、なかなかに図太かった。
だが助ける気なんて……。
と、思ったがハジメはティンクルスターアライズを誰が操縦しているか思い出す。
カービィだ。
「困ってるの?ボク達に任せてよ!!」
「助けてくれるんですか?ありがとうございますぅ!」
ハジメは、ティンクルスターアライズにしがみついて離れないウサミミ少女を横目に見る。そして、奈落から脱出して早々に舞い込んだ面倒事に深い溜息を吐くのだった。
客観的に見ればシアは美少女だ。
シアは少し青みがかったロングストレートの白髪に、蒼穹の瞳。
眉やまつ毛まで白く、肌の白さとも相まって黙っていれば神秘的な容姿とも言えるだろう。
手足もスラリと長く、ウサミミやウサ尻尾がふりふりと揺れる様は何とも愛らしい。
ケモナー達が見れば感動して思わず滂沱の涙を流すに違いない。
しかしシアは残念ウサギだった。
矜持を傷つけられたシアは言ってしまった。
カービィとレムユエを指差して言ってはならない言葉を……
「で、でも!胸なら私が勝ってます!二人の女の子はペッタンコじゃないですか!」
〝ペッタンコじゃないですか〟〝ペッタンコじゃないですか〟〝ペッタンコじゃないですか〟
峡谷に命知らずなウサミミ少女の叫びが木霊こだまする。
自分が女の子と全く思ってないカービィは頭に「?」を浮かべているが………
レムユエがピタリと止まり、前髪で表情を隠したままユラリとティンクルスターアライズから降りた。
ハジメは「あ~あ」と天を仰ぎ、無言で合掌する。
ウサミミよ、安らかに眠れ……。
ちなみに、レムユエは着痩せするが、それなりにある。
断じてライセン大峡谷の如く絶壁ではない。
震えるシアのウサミミに、囁ささやくようなユエの声がやけに明瞭に響いた。
―――― ……お祈りは済ませた?
―――― ……謝ったら許してくれたり
―――― …………
―――― 死にたくなぁい! 死にたくなぁい!
「〝嵐帝〟」
―――― アッーーーー!!
突如発生した竜巻に巻き上げられ錐揉みしながら天に打ち上げられるシア。
彼女の悲鳴が峡谷に木霊し、きっかり十秒後、グシャ! という音と共にハジメ達の眼前に墜落した。
「うぅ~ひどい目に遭いました。こんな場面見えてなかったのに……」
涙目で、しょぼしょぼとボロ布を直すシアは、意味不明なことを言いながらハジメ達の下へ這い寄って来た。既にホラーだった。
「はぁ~、お前の耐久力は一体どうなってんだ? 尋常じゃないぞ……何者なんだ?」
「改めまして、私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実は……」
カービィは余りに話が長く、難しい(?)話だった為、よくわからなかったが困ってることだけはよくわかった。
ハジメは樹海の案内と引き換えにシアを雇った。
「あ、ありがとうございます!うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~」
ぐしぐしと嬉し泣きするシア。
しかし、仲間のためにもグズグズしていられないと直ぐに立ち上がる。
「あ、あの、宜しくお願いします!そ、それであなたたちのことは何と呼べば……」
「ん? そう言えば名乗ってなかったか……俺はハジメ。南雲ハジメだ」
「……レムユエ」
「ボクはカービィ!よろしくね!」
「ハジメさんとレムユエちゃんとカービィちゃんですね」
3人の名前を何度か反芻し覚えるシア。しかし、カービィとレムユエが不満顔で抗議する。
「……さんを付けろ。残念ウサギ」
「ボクは女の子じゃないよ!!」
「ふぇっ!?」
「ほれ、取り敢えず残念ウサギも後ろに乗れ」
シアをティンクルスターアライズに乗せた。
「あ、あの。助けてもらうのに必死で、つい流してしまったのですが……この乗り物?何なのでしょう?それに、魔法も使いましたよね?ここでは使えないはずなのに……」
「あ~、それはカービィに聞いてくれ。」
「カービィさんこれ何ですか?」
「えーっとね、これはティンクルスターアライズって言って不思議な乗り物だよ!」
「それ分かってませんよね!?」
ハジメは、道中、レムユエが魔法を使える理由、あの歌はカービィの能力だと。
すると、シアは目を見開いて驚愕を表にした。
いや、それどころか少しカービィに怯えたが「……カービィさんはきっと自覚がないんですぅ……」と言って諦めた。
「え、それじゃあハジメさんとレムユエさんも魔力を直接操れたり、カービィさんの歌の被害者だったり、固有魔法が使えると……」
「ああ、そうなるな」
「……ん」
「ボクの歌の被害者ってどう言うこと!?」
「「「なんでもないです(片言)」」」
しばらく呆然としていたシアだったが、突然、何かを堪える様にハジメの肩に顔を埋めた。
そして、何故か泣きべそをかき始めた。
「……いきなり何だ? 騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり……情緒不安定なヤツだな」
「……手遅れ?」
「手遅れって何ですか!手遅れって!私は至って正常です!……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」
「「「……」」」
なんだかんだでシアを無視して三人が話し始めた。
「あの~、私のこと忘れてませんか? ここは『大変だったね。もう一人じゃないよ。傍にいてあげるから』とか言って慰めるところでは? 私、コロっと堕ちゃいますよ?チョロインですよ?」
「「「…………」」」
「なのに、せっかくのチャンスをスルーして、何でいきなり仲間外れにしているんですか!寂しいです!ウサギは寂しいと死んじゃいます!私も仲間に入れて下さい!」
「「黙れ残念ウサギ」」
「……はい……ぐすっ……」
「あんまりシアをいじめないでよ!」
ハジメとレムユエはあの歌を思い出したように身震いして、
「「ワスレテナイデスヨヤダナー」」
実はあの後(一曲目終了後)更に数曲歌っていた。
途中でハジメとユエは意識を取り戻すも、また気絶するの繰り返しだった。
それでこの渓谷にいた魔物が全滅したのは言うまでもない。
そんなシーンが今ハジメとユエの中では再生されていた。
正に地獄絵図である。※本人に自覚はありません。
「私と対応違くないですか!?」
「「黙れ残念ウサギ!!」」
いろいろあってシアの案内により、ハウリア族を見つけた。
「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~!」
その聞きなれた声音に、これは現実だと理解したのか兎人族が一斉に彼女の名を呼んだ。
「「「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」」」
その後ハウリア族を連れてハジメ達はライセン大峡谷からの脱出を果たす。
登りきった崖の上、そこには……
「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」
三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、ハジメ達を見るなり驚いた表情を見せた。
だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。
「カービィ、」
「何?」
「歌を一曲。」
「えっ!?いいの?」
帝国兵は何が起こるか分からずハジメたちの様子に「何が起こるんだ!?」と警戒していたがすぐ分かることだった。
ハジメはハウリア族に専用の完全防音耳栓を渡し。
ハジメとユエも人用の完全防音耳栓をつける。
「いっくよ!」
「いつでもぐーすーかーーびぃーほしーーのかーーびぃーー…………」
ー10分後ー
その後その場にいた帝国兵を見たものは居ない。
改まってシアは聞いてきた。
「あの、あの! ハジメさんとレムユエさんのこと、カービィさんのこと、教えてくれませんか?」
「? 俺達のことは話したろ?」
「いえ、能力とかそいうことではなくて、なぜ、奈落?という場所にいたのかとか、旅の目的って何なのかとか、今まで何をしていたのかとか、あなたたち自身のことが知りたいです。」
「……聞いてどうするんだ?」
「どうするというわけではなく、ただ知りたいだけです。……私、この体質のせいで家族には沢山迷惑をかけました。小さい時はそれがすごく嫌で……もちろん、皆はそんな事ないって言ってくれましたし、今は、自分を嫌ってはいませんが……それでも、やっぱり、この世界のはみだし者のような気がして……だから、私、嬉しかったのです。あなたたちに出会って、私みたいな存在は他にもいるのだと知って、一人じゃない、はみだし者なんかじゃないって思えて……勝手ながら、そ、その、な、仲間みたいに思えて……だから、その、もっとあなたたちのことを知りたいといいますか……何といいますか……」
結果……
「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、ハジメさんもユエさんもがわいぞうですぅ~。カービィさんは色々ありすぎですぅ〜そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」
「なんかボクだけかわいそうじゃない見たいなんだけど………そんなときは天才なボクが歌で元気をつけてあげるよ!」
実際は天才ではなく天災だが。
とこの場にいるカービィ以外の誰もが思ったのだった。
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