お気に入り(89→92)
それではどうぞ!
散々、愛子が吠えた後、カービィが食料を食べ尽くし、他の客の目もあるからとVIP席の方へ案内されたハジメ達。
そこで、愛子や園部優花達生徒から怒涛の質問を投げかけられていた。
Q、橋から落ちた後二人はどうしたのか?
ハジメA、超頑張った
カービィA、頑張ってハジメを探した後力を合わせて脱出したよ〜
Q、なぜ白髪なのか
ハジメA、俺が超頑張った結果
カービィA、奈落でハジメが魔物を食べたからだよ〜
Q、どうしてカービィは白髪じゃないのか
ハジメA、カービィの固有能力だから
カービィA、ボクの能力で料理したからだよ〜
Q、ハジメ目はどうしたのか
ハジメA、超超頑張った結果
カービィA、奈落でのハジメの食生活の結果だよ〜
Q、なぜ、直ぐに戻らなかったのか
ハジメA、戻る理由がない
カービィA、ハジメのことを放っておけないから
そこまで聞いて愛子が、「真面目に答えなさい!」と頬を膨らませて怒る。
全く、迫力がないのが物悲しい。
案の定、ハジメには柳に風といった様子。
カービィは割と真面目に答えていたのだがそれは伝わらなかった。
その様子にキレたのは、愛子専属護衛隊隊長のデビッドだ。
愛する女性が蔑ろにされていることに耐えられなかったのだろう。
拳をテーブルに叩きつけながら大声を上げた。
「おい、お前ら!愛子が質問しているのだぞ!真面目に答えろ!」
ハジメは、チラリとデビッドを見ると、はぁと溜息を吐いた。
「お前は食事中だろ?行儀よくしろよ」
「食べないならボクが食べちゃうよ?」
「ふん、行儀だと?その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ?少しは人間らしくなるだろう。それとその幼女は何だ?子供はこんな場所に連れてくるべきではない。」
「「「「………」」」」
「何だ、その眼は?無礼だぞ!神の使徒でもないのに、神殿騎士に逆らうのか!」
「……小さい男」
「ボクは子供じゃなーい!」
「ふん!異教徒め。そこの獣風情と一緒に地獄へ送ってやる」
無表情で静かに呟き、傍らの剣に手をかけるデビッド。
突如現れた修羅場に、生徒達はオロオロし、愛子やチェイス達は止めようとする。
だが、デビッドは周りの声も聞こえない様子で、遂に鞘から剣を僅かに引き抜いた。
その瞬間、
バヒュン!
とハジメがスプーンを剛力を使って飛ばした。
それはデビットの真横を通り過ぎた。
直接、殺気を浴びているわけではないが、ハジメから放たれる桁違いの威圧感に、愛子達も顔を青ざめさせてガクガクと震えている。
ハジメは、ドンナーを取り出してゴトッとわざとらしく音を立てながらテーブルの上に置いた。
威嚇のためだ。そして、自分の立ち位置と愛子達に求める立ち位置を明確に宣言する。
「俺は、あんたらに興味がない。関わりたいとも、関わって欲しいとも思わない。いちいち、今までの事とかこれからの事を報告するつもりもない。ここには仕事に来ただけで、終わればまた旅に出る。そこでお別れだ。あとは互いに不干渉でいこう。あんたらが、どこで何をしようと勝手だが、俺の邪魔だけはしないでくれ。今みたいに、敵意をもたれちゃ……つい殺っちまいそうになる。」
「おい、シア。これが〝外〟での普通なんだ。気にしていたらキリがないぞ?」
「はぃ、そうですよね……わかってはいるのですけど……やっぱり、人間の方には、この耳は気持ち悪いのでしょうね」
「……シアのウサミミは可愛い」
「レムユエさん……そうでしょうか」
「シア!」
「何ですかカービィさん?」
「見てて、コピー能力アニマル!」
するとカービィはウサギのぬいぐるみを着ていた。
「カービィさん……!ありがとうございます。」
それでも自信なさげなシアに、今度はハジメが若干呆れた様子でフォローを入れる。
「あのな、こいつらは教会やら国の上層に洗脳じみた教育されてるから、忌避感が半端ないだけだ。兎人族は愛玩奴隷の需要では一番なんだろう?それはつまり、一般的には気持ち悪いとまでは思われちゃいないってことだ」
「そう……でしょうか……あ、あの、ちなみにカービィさん、レムユエさん、ハジメさんは……その……どう思いますか……私のウサミミ」
「……別にどうも……」
「……私のお気に入り。シアと寝てる時にモフモフしてる。」
「ボクは普通だと思うよ。だってボクが住んでたところなんてもっといろんな種類がいたもん。」
「レ、レムユエさん……私のウサミミが好きだったんですね……えへへ」
シアが赤く染まった頬を両手で押さえイヤンイヤンし、頭上のウサミミは「わーい!」と喜びを表現する様にわっさわっさと動く。
ついさっきまで下手をすれば皆殺しにされるのではと錯覚しそうな緊迫感が漂っていたのに、今は何故か家族のような空間が広がっている不思議に、愛子達も騎士達も目を白黒させた。
しばらく、ハジメ達の家族ちっくなやり取りを見ていると、男子生徒の一人相川昇がポツリとこぼす。
「あれ? 不思議だな。さっきまで南雲のことマジで怖かったんだけど、今は殺意しか湧いてこないや……」
「お前もか。つーか、あの三人、ヤバイくらい可愛いんですけど……どストライクなんですけど……なのに、目の前で家族扱いしてるとか拷問なんですけど……」
「……南雲の言う通り、何をしていたか何てどうでもいい。だが、異世界の女の子と仲良くなる術だけは……聞き出したい! ……昇!明人!」
「「へっ、地獄に行く時は一緒だぜ、淳!」」
「南雲君でいいでしょうか?先程は、隊長が失礼しました。何分、我々は愛子さんの護衛を務めておりますから、愛子さんに関することになると少々神経が過敏になってしまうのです。どうか、お許し願いたい」
「そのアーティファクト……でしょうか。貴方が持っている武器は。寡聞にして存じないのですが、相当強力な物とお見受けします。弓より早く強力にもかかわらず、魔法のように詠唱も陣も必要ない。一体、何処で手に入れたのでしょう?」
ハジメが、チラリとチェイスを見る。
そして、何かを言おうとして、興奮した声に遮られた。
クラス男子の玉井淳史だ。
「そ、そうだよ、南雲。それ銃だろ!?何で、そんなもん持ってんだよ!」
玉井の叫びにチェイスが反応する。
「銃?玉井は、あれが何か知っているのですか?」
「え?ああ、そりゃあ、知ってるよ。俺達の世界の武器だからな」
玉井の言葉にチェイスの眼が光る。
そして、ハジメをゆっくりと見据えた。
「ボクの世界にもあるよ。」
と、カービィは早撃ちのことを思い出す。
(夢の泉物語のサブゲーム『早撃ちカービィ』より)
「ほぅ、つまり、この世界に元々あったアーティファクトではないと……とすると、異世界人によって作成されたもの……作成者は当然……」
「俺だな」
「ではそこの幼女の方も?」
「違うよ。ボクの星で作られたものだよ。今は手持ちにないけど」
ハジメは、あっさりと自分が創り出したと答えた。
チェイスは、ハジメに秘密主義者という印象を抱いていたため、あっさり認めたことに意外感を表にする。
「あっさり認めるのですね。南雲君、その武器が持つ意味を理解していますか? それは……」
「この世界の戦争事情を一変させる……だろ? 量産できればな。大方、言いたいことはやはり戻ってこいとか、せめて作成方法を教えろとか、そんな感じだろ? 当然、全部却下だ。諦めろ」
「ですが、それを量産できればレベルの低い兵達も高い攻撃力を得ることができます。そうすれば、来る戦争でも多くの者を生かし、勝率も大幅に上がることでしょう。あなたが協力する事で、お友達や先生の助けにもなるのですよ? ならば……」
「なんと言われようと、協力するつもりはない。奪おうというなら敵とみなす。その時は……戦争前に滅ぶ覚悟をしろ」
「チェイスさん。南雲君には南雲君の考えがあります。私の生徒に無理強いはしないで下さい。南雲君も、あまり過激な事は言わないで下さい。もっと穏便に……南雲君は、本当に戻ってこないつもり何ですか?」
「ああ、戻るつもりはない。明朝、仕事に出て依頼を果たしたら、そのままここを出る」
「どうして……」
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夜中。
深夜を周り、一日の活動とその後の予想外の展開に精神的にも肉体的にも疲れ果て、誰もが眠りついた頃、しかし、愛子は未だ寝付けずにいた。
……と、そこへ、突如誰もいないはずの部屋の中から声が掛けられた。
「なに百面相してるんだ、先生?」
「ッ!?」
そこにいたのは背中に飛行機のようなものが付いているカービィとハジメだった。
ギョッとして声がした方へ振り向く愛子。
どうやら窓から飛んで来たようだ。
「な、南雲君?カービィちゃん?なんでここに?」
「こんな時間に、しかも女性の部屋にノックもなくいきなり侵入とは感心しませんよ。しかもわざわざ窓から……一体、どうしたんですか?」
「まぁ、そこは悪かったよ。他の連中に見られたくなかったんだ、この訪問を。先生には話しておきたい事があったんだが、さっきは、教会やら王国の奴等がいたから話せなかったんだよ。内容的に、アイツ等発狂でもして暴れそうだし」
「話ですか? 南雲君たちは、先生達のことはどうでもよかったんじゃ……」
「いや、戻るつもりはないからな?だから、そんな期待した目で見るのは止めてくれ……今から話す話は、先生が一番冷静に受け止められるだろうと思ったから話す。聞いた後、どうするかは先生の判断に任せるよ」
そう言ってハジメとカービィは、オスカーから聞いた〝解放者〟と狂った神の遊戯の物語を話し始めた。
「まぁ、そういうわけだ。俺たちが奈落の底で知った事はな。これを知ってどうするかは先生に任せるよ。戯言と切って捨てるもよし、真実として行動を起こすもよし。好きにしてくれ」
「な、南雲君は、もしかして、その〝狂った神〟、私たちを召喚したというエヒト神をどうにかしようと……旅を?」
「ハッ、まさか。この世界がどうなろうが心底どうでもいい。俺は俺なりに帰還の方法を探るだけだ。……って思ってたんだが」
「ボクは困っていたらほっとけないからね」
「……って言う訳で俺はカービィに協力することにしたんだ」
「アテはあるんですか?」
「まぁな。大迷宮が鍵だ。興味があるなら探索したらいい。オルクスの百階を超えれば、めでたく本当の大迷宮だ。もっとも、今日の様子を見る限り、行っても直ぐに死ぬと思うけどな。あの程度の〝威圧〟に耐えられないようじゃ論外だよ」
「白崎さんは諦めていませんでしたよ」
「……」
愛子から掛けられた予想外の言葉にハジメの歩みが止まる。
愛子は、背中を向けたままのハジメにそっと語りかけた。
「皆が君は死んだと言っても、彼女だけは諦めていませんでした。自分の目で確認するまで、君の生存を信じると。今も、オルクス大迷宮で戦っています。天之河君達は純粋に実戦訓練として潜っているようですが、彼女だけは君を探すことが目的のようです」
「…………白崎は無事か?」
「は、はい。オルクス大迷宮は危険な場所ではありますが、順調に実力を伸ばして、攻略を進めているようです。時々届く手紙にはそうありますよ。やっぱり気になりますか?南雲君と白崎さんは仲がよかったですもんね」
にこやかに語る愛子に、しかしハジメは否定も肯定もせず無表情で肩越しに振り返った。
「そう言う意味じゃないんだが……手紙のやり取りがあるなら伝えとくといい。あいつが本当に注意すべきは迷宮の魔物じゃない。仲間の方だと」
「え? それはどういう……」
「先生、今日の玉井達の態度から大体の事情は察した。俺が奈落に落ちた原因はベヒモスとの戦闘、または事故・・って事にでもなっているんじゃないか?」
「そ、それは……はい。一部の魔法が制御を離れて誤爆したと……南雲君はやはり皆を恨んで……」
「そんなことはどうでもいい。肝心なのはそこだ。誤爆? 違うぞ。あれは明確に俺を狙って誘導された魔弾だった」
「え? 誘導? 狙って?」
「俺は、クラスメイトの誰かに殺されかけたって事だ」
「ッ!?」
顔面を蒼白して硬直する愛子に、「原因は白崎との関係くらいしか思いつかないからな、嫉妬で人一人殺すようなヤツだ。まだ無事なら白崎に後ろから襲われないよう忠告しとくといい」と言い残し、ハジメとカービィは部屋を出ていった。
愛子はハジメの言葉にシンとする部屋に冷気が吹き込んだように錯覚し、愛子は両腕で自らの体を抱きしめた。
愛子の悩みは深くなり、普段に増して眠れぬ夜を過ごしたのだった。
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