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北の山脈地帯
おおよそ一時間と少しくらいで六合目に到着したハジメ達は、一度そこで立ち止まった。
理由は、そろそろ辺りに痕跡がないか調べる必要があったのと……
「はぁはぁ、きゅ、休憩ですか……けほっ、はぁはぁ」
「ぜぇー、ぜぇー、大丈夫ですか……愛ちゃん先生、ぜぇーぜぇー」
「うぇっぷ、もう休んでいいのか? はぁはぁ、いいよな? 休むぞ?」
「……ひゅぅーひゅぅー」
「ゲホゲホ、南雲達は化け物か……」
予想以上に愛子達の体力がなく、休む必要があったからである。
もちろん、本来、愛子達のステータスは、この世界の一般人の数倍を誇るので、六合目までの登山ごときでここまで疲弊することはない。
「……これは」
「ん……何か見つけた?」
ハジメがどこか遠くを見るように茫洋とした目をして呟くのを聞き、レムユエが確認する。
その様子に、愛子達も何事かと目を瞬かせた。
「川の上流に……これは盾か?それに、鞄も……まだ新しいみたいだ。当たりかもしれない。レムユエ、シア、カービィ行くぞ」
「ん……」
「はいです!」
「はーい」
先へ進むと、次々と争いの形跡が発見できた。
半ばで立ち折れた木や枝。踏みしめられた草木、更には、折れた剣や血が飛び散った痕もあった。
それらを発見する度に、特に愛子達の表情が強ばっていく。
しばらく、争いの形跡を追っていくと、シアが前方に何か光るものを発見した。
「ハジメさん、これ、ペンダントでしょうか?」
「ん? ああ……遺留品かもな。確かめよう」
シアからペンダントを受け取り汚れを落とすと、どうやらペンダントではなくロケットのようだと気がつく。
中を見ると、女性の写真が入っていた。
おそらく、大した手がかりではないが、古びた様子はないので最近のもの……冒険者一行の誰かのものかもしれない。
なので、一応回収しておく。
「ここで本格的な戦闘があったようだな……この足跡、大型で二足歩行する魔物……確か、山二つ向こうにはブルタールって魔物がいたな。だが、この抉れた地面は……」
「おいおい、マジかよ。気配感知に掛かった。感じから言って人間だと思う。場所は……あの滝壺の奥だ」
「カービィ頼む」
「うん!スーパー能力ウルトラソード!……やぁっ!」
カービィが滝壺を一刀両断するとそこには少年がいた。
ハジメは手っ取り早く青年の正体を確認したいのでギリギリと力を込めた手にデコピンを眠る青年の額にぶち当てた。
『バチコンッ!!』と鈍い音が響く。
「ぐわっ!!」
悲鳴を上げて目を覚まし、額を両手で抑えながらのたうつ青年。
愛子達が、あまりに強力なデコピンと容赦のなさに戦慄の表情を浮かべた。
ハジメは、そんな愛子達をスルーして、涙目になっている青年に近づくと端的に名前を確認する。
「お前が、ウィル・クデタか? クデタ伯爵家三男の」
「いっっ、えっ、君達は一体、どうしてここに……」
「俺はハジメだ。南雲ハジメ。俺たちはフューレンのギルド支部長イルワ・チャングからの依頼で捜索に来た。(俺の都合上)生きていてよかった」
「イルワさんが!?そうですか。あの人が……また借りができてしまったようだ……あの、あなたたちも有難うございます。イルワさんから依頼を受けるなんてよほどの凄腕なのですね」
何があったのかをウィルから聞いた。
要約するとこうだ。
ウィル達は五日前、突然、十体のブルタールと遭遇したらしい。
その数のブルタールと遭遇戦は勘弁だと、撤退に移ったのだが、どんどん増えていき、気がつけば六合目の例の川にいた。
群れに囲まれ、包囲網を脱出するために、盾役と軽戦士の二人が犠牲になったのだという。
それから、大きな川に出たところで、現れたのは、漆黒の竜だったらしい。
その黒竜は、ウィル達が川沿いに出てくるや否や、特大のブレスを吐き、その攻撃でウィルは吹き飛ばされ川に転落。
流されながら見た限りでは、そのブレスで一人が跡形もなく消え去り、残り二人も後門のブルタール、前門の竜に挟撃されていたという。
「わ、わだじはさいでいだ。うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、ひっく、わたじだけ生き残っで……それを、ぐす……よろごんでる……わたじはっ!」
がつまり苦しそうなウィルに、意外なほど透き通った声で語りかけた。
「生きたいと願うことの何が悪い?生き残ったことを喜んで何が悪い? その願いも感情も当然にして自然にして必然だ。お前は人間として、極めて正しい」
「だ、だが……私は……」
「それでも、死んだ奴らのことが気になるなら……生き続けろ。これから先も足掻いて足掻いて死ぬ気で生き続けろ。そうすりゃ、いつかは……今日、生き残った意味があったって、そう思える日が来るだろう」
「……生き続ける」
だが、事はそう簡単には進まない。
再度、カービィのウルトラソードで滝壺から出てきた一行を熱烈に歓迎するものがいたからだ。
グゥルルルル……!
低い唸り声を上げ、漆黒の鱗で全身を覆い、翼をはためかせながら空中より金の眼で睥睨する……それはまさしく〝竜〟だった。
その黒竜は、ウィルの姿を確認するとギロリとその鋭い視線を向けた。
そして、硬直する人間達を前に、おもむろに頭部を持ち上げ仰け反ると、鋭い牙の並ぶ顎門をガパッと開けてそこに魔力を集束しだした。
キュゥワァアアア!!
不思議な音色が夕焼けに染まり始めた山間に響き渡る。
ハジメの脳裏に、川の一部と冒険者を消し飛ばしたというブレスが過ぎった。
「ッ!退避しろ!」
「ボクに任せて!スーパー能力ドラゴストーム!!やあっ!」
カービィはドラゴストームをぶつけてブレスを相殺する。
「今だよみんな!」
「ん、蒼天!」
「どりゃぁぉぁ!ですぅ!」
レムユエとシアが連携して蒼天を纏ったドリュッケンで攻撃する。
そしてトドメと言わんばかりにハジメが一瞬で黒竜の懐に潜り込むと、〝豪脚〟を以て蹴り上げ、再び仰向けに転がした。
「ドドメは任せたぞカービィ!」
「うん!スーパー能力ギガトンハンマー!……はぁぁぁぁっ!やぁっ!」
カービィはギガトンハンマーを最大限まで巨大化させて叩き込んだ。
〝のじゃああああーーーーー!?〟
黒竜の痛そうな悲鳴に全員が「一体何事!?」と度肝を抜かれ、黒竜を凝視したまま硬直する。
どうやら、ただの竜退治とはいかないようだった。
しかし、これで解決と言わんばかりに何処からかあの音楽が流れ始める。
そうあの音楽が!
そしてカービィがノーマルの状態に戻って3人に増えた。
ハジメ、レムユエ、シアはまたあれをやらなくてはならないのかと思う。
大衆の前で踊るなんて真平御免だと思い逃げ始める。
「何処行くんですか!?」と愛子先生は言うが逃げる。
とにかく逃げる。
が、時すでに遅し。
謎の力によりハジメたちは元の位置に戻される。
それどころか愛子先生やクラスメートたちも謎の力で集められる。
「「「!?」」」
そこにいる皆は何が起こる分からず、急に増えたカービィを見たが、
そして皆んな身体が勝手に動き出して、例のダンスを踊り出した。
『テテテテテテテッテテ〜テテテテテテテッテ〜テテテテテテテッテテ〜テテッテテッテテ!』
「「「「「ハァィ!」」」」」
「……って何ですかこのダンスは!?南雲君説明してください!」
「あー、これはカービィと共に戦ったらいずれは体験するものだから諦めろ。そのかわり体力や怪我は全て回復するらしいがな。」
この後、しばらくカービィに説明を求めて追いかけっこが始まったとか
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