ありふれた能力世界最強(リメイク版)   作:コロンKY

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25話『1UP』

〝ふぅ……酷い目に遭ったのじゃ〟

 

 北の山脈地帯の中腹、薙ぎ倒された木々と荒れ果てた川原に、ダンスのせいですっかり忘れていた黒竜の呟きが響いていた。

 

「お前……まさか、竜人族なのか?」

 

 〝む?いかにも。妾は誇り高き竜人族の一人じゃ。偉いんじゃぞ?凄いんじゃぞ?〟

 

 

「そういえばなんでこんな所にいるの?」

 

「……滅んだはずの竜人族が何故こんなところで、一介の冒険者なんぞ襲っていたのか……俺も気になるな。本来なら、敵対したからこのまま銃で撃ち抜いてやるが……優しい〜優しい〜ハジメさんが、話を聞いてやる。」

 

 

 

しかしなかなか話さないのでハジメは銃を構えるがカービィが「何か事情があるんじゃない?」と言うと「さっさと話さないと撃つぞ?」と脅しで済んだ。

 

〝ま、待つのじゃ!話すから!撃たないで!?〟

 

ハジメの所業に、周囲の者達が完全にドン引きしていたがハジメは気にしない。

 

〝妾は、操られておったのじゃ。お主等を襲ったのも本意ではない。仮初の契約主、あの男にそこの青年と仲間達を見つけて殺せと命じられたのじゃ〟

 

 黒竜の話を要約するとこうだ。

 

この黒竜は、ある目的のために竜人族の隠れ里を飛び出して来たらしい。

その目的とは、異世界からの来訪者について調べるというものだ。

目の前の黒竜は、その調査の目的で集落から出てきたらしい。

その前に一度しっかり休息をと思い、この一つ目の山脈と二つ目の山脈の中間辺りで休んでいたらしい。

当然、周囲には魔物もいるので竜人族の代名詞たる固有魔法〝竜化〟により黒竜状態になって。

と、睡眠状態に入った黒竜の前に一人の黒いローブを頭からすっぽりと被った男が現れた。

その男は、眠る黒竜に洗脳や暗示などの闇系魔法を多用して徐々にその思考と精神を蝕んでいった。

 

……とのこと。

 

そこでカービィはタランザを思い出した。

タランザはプププランドのはるか上空にある、フロラルドに住んでいてあやつりの魔術師と呼ばれる程に操るのが得意だ。

そこで操られたデデデ大王と戦ったのだが、その時のデデデ大王もカービィと戦いたくて戦っていた訳ではなかったようにこの黒竜も戦いたくて戦っていたわけではないのだと思った。

(『星のカービィトリプルデラックス』より)

 

〝恐ろしい男じゃった。闇系統の魔法に関しては天才と言っていいレベルじゃろうな。そんな男に丸一日かけて間断なく魔法を行使されたのじゃ。いくら妾と言えど、流石に耐えられんかった……〟

 

『一生の不覚!』と言った感じで悲痛そうな声を上げる黒竜。

しかし、ハジメは冷めた目でツッコミを入れる。

 

「それはつまり、調査に来ておいて丸一日、魔法が掛けられているのにも気づかないくらい爆睡していたって事じゃないのか?」

 

「……ふざけるな」

 

 事情説明を終えた黒竜に、そんな激情を必死に押し殺したような震える声が発せられた。

皆が、その人物に目を向ける。拳を握り締め、怒りを宿した瞳で黒竜を睨んでいるのはウィルだった。

 

「……操られていたから…ゲイルさんを、ナバルさんを、レントさんを、ワスリーさんをクルトさんを!殺したのは仕方ないとでも言うつもりかっ!」

 

「待って!!」

その前に立ち塞がるカービィ。

「どけっ!」「どけっ!」とカービィを退かそうとするが動かない上に、こんな幼い(見た目の)子を殴る気にもなれなかった。

 

「たしかに操られていたからといって悪くないわけじゃない。だけど!本当に悪いのは操っていた人だよね?」

 

「確かに君の言ってることは正しいかもしれない。けど……そもそもその話も死にたくなくて適当にでっち上げたかもしれないじゃないか!」

 

「ボクは、騙されて痛い目にあったことがある。」

 

カービィはマホロアを思い出した。

マホロアはカービィと友達になる為に無限の力を秘めている王冠、ランディアが持つマスタークラウンをカービィと友達になる為に奪ったり、願いを叶える鏡、ディメンションミラーを利用したりした際にカービィは毎度毎度痛い目に遭ったのだ。

 

だが、マホロアの

「カービィにはトモダチがタクサンいるのに、ボクにはダレもイナイ。ボクとイッショに、アソンデほしかったんだヨォ!」

「大ジケンをおこせば、カービィとイッショにボウケンできると思ったんだヨォ!」

 

と、言うマホロアにカービィが

 

「鏡なんてなくても、友達になれるよ!プププランドにおいでよ。いっしょに遊んだり、冒険したりしようよ!」

 

と、カービィが言ったことでそれ以来、マホロアとは友達になったのだ。

 

(『星のカービィWii』『大迷宮のトモダチを救え!』より)

 

だからこそカービィは退かない。

 

 

「……だったら!」

 

「だからこそボクはこの竜が本当のことを言っているのはわかるんだよ。」

 カービィが一生懸命説明してなお、言い募ろうとするしつこいウィル。それに口を挟んだのはレムユエだ。

 

「……きっと、嘘じゃない」

「っ、一体何の根拠があってそんな事を……」

 

 食ってかかるウィルを一瞥すると、レムユエは黒竜を見つめながらぽつぽつと語る。

 

「……竜人族は高潔で清廉。私は皆よりずっと昔を生きた。竜人族の伝説も、より身近なもの。彼女は〝己の誇りにかけて〟と言った。なら、きっと嘘じゃない。」

 

「それに……」と、レムユエはカービィの方を向いて……

 

「嘘をついてない目がどういうものか私はよく知っている」

と、言い切った。

 

〝ふむ、この時代にも竜人族のあり方を知るものが未だいたとは……いや、昔と言ったかの?〟

 

 竜人族という存在のあり方を未だ語り継ぐものでもいるのかと、若干嬉しそうな声音の黒竜。

 

「……ん。私は、吸血鬼族の生き残り。三百年前は、よく王族のあり方の見本に竜人族の話を聞かされた」

 

〝何と、吸血鬼族の……しかも三百年とは……なるほど死んだと聞いていたが、主がかつての吸血姫か。確か名は……〟

 

 どうやら、この黒竜はレムユエと同等以上に生きているらしい。

しかも、口振りからして世界情勢にも全く疎いというわけではないようだ。

今回の様に、時々正体を隠して世情の調査をしているのかもしれない。

その黒竜にして吸血姫の生存は驚いたようだ。

周囲の、ウィルや愛子達も驚愕の目でレムユエを見ている。

 

「レムユエ……それが私の名前。大切な家族に貰った大切な名前。そう呼んで欲しい」

 

 だが、それでも親切にしてくれた先輩冒険者達の無念を思い言葉を零してしまう。

 

「……それでも、殺した事に変わりないじゃないですかっ……!どうしようもなかったってわかってはいますけど……それでもっ!ゲイルさんは、この仕事が終わったらプロポーズするんだって……彼の無念はどうすれば……」

 

「しょうが無いけど、しかたないよね……」

そう言ってカービィは惜しむようにあるものを取り出す。

 

「……それは?」

 

それはピンク色の球体に『1UP』と書かれているものだった。

 

カービィの残機は1つ減って『97』になった。

 

それをウィルが言う『ゲイルさん』に与えた。

 

すると生き返ったのだ!

 

「ね?これでいいでしょ?それとこれは君の物でしょ?」

途中にあったものもウィルのものだったので返した。

 

「……あ、ありがとうございます!」

ウィルたちは帰ろうとしたが、「ちょっと待てや!」とハジメがウィルを声が聞こえない程の遠くに連れて行き二人きりで話す。

 

「……な、何ですか?」

 

「あいつがしたのは蘇生なんかじゃない。」

 

「どう言うことですか!?アンデットとでも言うんですか!」

 

「違う。あいつがやったのはな自分の残機(寿命)を削って他人に分け与えただけだ。」

 

「じゅ、寿命って!そんなことできる筈ないじゃないですか!」

 

「できるんだよアイツなら。」

 

「どうして……」

 

……そんなことしてまで」とウィルが言い終わる前にハジメが答える。

 

「あいつが誰よりも優しいからだ。あいつは誰よりも人思いで優しい。だから誰かが悲しんでいるだけで自分の命を分け与えたんだよ。まぁ……お前があんまり文句を言わなきゃそんな事をしなかったのかもしれんがな。」

 

ウィルの顔が青ざめるがハジメは無視してゲイルの所へ連れて行き帰らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメが戻ると黒竜が懺悔するように、声音に罪悪感を含ませながら己の言葉を紡ぐ。

 

〝操られていたとはいえ、妾が罪なき人々の尊き命を摘み取ってしまったのは事実。償えというなら、大人しく裁きを受けよう。だが、それには今しばらく猶予をくれまいか?せめて、あの危険な男を止めるまで。あの男は、魔物の大群を作ろうとしておる。竜人族は大陸の運命に干渉せぬと掟を立てたが、今回は妾の責任もある。放置はできんのじゃ……勝手は重々承知しておる。だが、どうかこの場は見逃してくれんか!〟

 

ハジメの答えは……

 

「もういい、済んだ事だ。本当はお前の都合なんざ知ったことじゃないし、散々面倒かけてくれたんだから詫びとして死ね……と、言いたい所だが、カービィが命をかけてまでアイツ(ウィル)を説得したんだからどうこう言わねぇよ。」

 

〝あ、ありがとうなのじゃ。そこで提案があるのじゃが……〟

黒竜はハジメに感謝しつつ提案を持ちかけるのだった。

 

 

 




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