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それではどうぞ!
〝提案があるのじゃが……妾もそなたたちの旅に入れてくれんかの?〟
黒竜はハジメに感謝しつつ提案を持ちかける。
「……メリットは?」
〝妾はそなたたちに命を助けられた。その恩を返したいのじゃ。頼む!〟
「……頼み方ってもんがあるんじゃないのか?竜の姿じゃなぁ……?」
「……ハジメ、悪い顔してるよ?」
「ハジメさん……!」
「ん……竜人族は恩を仇で返すようなことはしない。仲間にしていいと思う。……けど家族の座は渡さない。」
〝……それはすまんかった。〟
そう言うと黒竜は、直後、その体を黒色の魔力で繭のように包み完全に体を覆うと、その大きさをスルスルと小さくしていく。
そして、ちょうど人が一人入るくらいの大きさになると、一気に魔力が霧散した。
黒き魔力が晴れたその場には、ハジメの目の前で土下座している黒髪金眼の美女がいた。
見た目は二十代前半くらいで、身長は百七十センチ近くあるだろう。
「頼むっ!この通りじゃ!」
「……わかった。そこまでされて仲間にしない程俺は腐っちゃいない。……よろしくな、えーっと……」
「名乗ってなかったな。妾の名はティオ・クラルス。最後の竜人族クラルス族の一人じゃ。よろしく頼む。」
「ボクはカービィだよ!よろしくねティオ!」
「レムユエ……よろしく。」
「シアですぅ!よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくなのじゃ。それと大事な話があるのじゃが……」
ティオ・クラルスと名乗った黒竜は、次いで、黒ローブの男が、魔物を洗脳して大群を作り出し町を襲う気であると語った。
その数は、既に三千から四千に届く程の数だという。
何でも、二つ目の山脈の向こう側から、魔物の群れの主にのみ洗脳を施すことで、効率よく群れを配下に置いているのだとか。
何でも黒ローブの男は、黒髪黒目の人間族で、まだ少年くらいの年齢だったというのだ。
それに、黒竜たるティオを配下にして浮かれていたのか、仕切りに「これで自分は勇者より上だ」等と口にし、随分と勇者に対して妬みがあるようだったという。
黒髪黒目の人間族の少年で、闇系統魔法に天賦の才がある者。
ここまでヒントが出れば、流石に脳裏にとある人物が浮かび上がる。
愛子達は一様に「そんな、まさか……」と呟きながら困惑と疑惑が混ざった複雑な表情をした。
限りなく黒に近いが、信じたくないと言ったところだろう。
と、そこでハジメが突如、遠くを見る目をして「おお、これはまた……」などと呟きを漏らした。
聞けば、ティオの話を聞いてから、無人探査機を回して魔物の群れや黒ローブの男を探していたらしい。
そして、遂に無人探査機の一機がとある場所に集合する魔物の大群を発見した。その数は……
「こりゃあ、三、四千ってレベルじゃないぞ? 桁が一つ追加されるレベルだ」
「あの、南雲君やカービィちゃんなら何とかできるのではないですか?」
と愛子先生の言葉で、全員が一斉にハジメとカービィの方を見る。
その瞳は、もしかしたらという期待の色に染まっていた。
ハジメは、それらの視線を鬱陶しそうに手で振り払う素振りを見せると、投げやり気味に返答する。
「そんな目で見るなよ。俺たちの仕事は、ウィルをフューレンまで連れて行く事なんだ。ウィルは先に行かせたが早く追いかけないとどんな目に遭っているかわかったもんじゃない。保護対象連れて戦争なんてしてられるか!いいからお前等も、さっさと町に戻って報告しとけって。」
ハジメのやる気なさげな態度に反感を覚えたような表情をする生徒達。
そんな中、思いつめたような表情の愛子がハジメに問い掛けた。
「南雲君、黒いローブの男というのは見つかりませんか?」
「ん?いや、さっきから群れをチェックしているんだが、それらしき人影はないな」
「さっきも言ったが、俺たちの仕事はウィルの保護だ。保護対象連れて、大群と戦争なんかやってられない。仮に殺るとしても、こんな起伏が激しい上に障害物だらけのところで殲滅戦なんてやりにくくてしょうがない。真っ平御免被るよ。それに、仮に大群と戦う、あるいは黒ローブの正体を確かめるって事をするとして、じゃあ誰が町に報告するんだ? 万一、俺達が全滅した場合、町は大群の不意打ちを食らうことになるんだぞ? ちなみに、ティンクルスターアライズはカービィじゃないと動かせない構造だから、俺たちに戦わせて他の奴等が先に戻るとか無理だからな?」
「まぁ、彼の言う通りじゃな。妾も魔力が枯渇している以上、何とかしたくても何もできん。まずは町に危急を知らせるのが最優先じゃろ。妾も一日あれば、だいぶ回復するはずじゃしの」
結局一行は、背後に大群という暗雲を背負い、急ぎウルの町に戻りその途中でウィルに合流した。
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ウルの町に着くと、悠然と歩くハジメ達とは異なり愛子達は足をもつれさせる勢いで町長のいる場所へ駆けていった。
ハジメとしては、愛子達とここで別れて、さっさとウィルを連れてフューレンに行ってしまおうと考えていたのだが、むしろ愛子達より先にウィルが飛び出していってしまったため仕方なく後を追いかけた。
「おい、ウィル。勝手に突っ走るなよ。自分が保護対象だって自覚してくれ。報告が済んだなら、さっさとフューレンに向かうぞ」
「な、何を言っているのですか?ハジメ殿。今は、危急の時なのですよ? まさか、この町を見捨てて行くつもりでは……」
「南雲君。どうか力を貸してもらえませんか?このままでは、きっとこの美しい町が壊されるだけでなく、多くの人々の命が失われることになります」
そう愛子先生は言う。
「……意外だな。あんたは生徒の事が最優先なのだと思っていた。色々活動しているのも、それが結局、少しでも早く帰還できる可能性に繋がっているからじゃなかったのか?なのに、見ず知らずの人々のために、その生徒に死地へ赴けと?その意志もないのに?まるで、戦争に駆り立てる教会の連中みたいな考えだな?…………あんたは生徒優先と言いながら結局自分の願望を押し付けてるだけだ。生徒の為って言いながら生徒である俺に殺し合いして来いって言うんだな?」
「っ!?……………………。それでも……元の世界に帰る方法があるなら、直ぐにでも生徒達を連れて帰りたい、その気持ちは今でも変わりません。でも、それは出来ないから……なら、今、この世界で生きている以上、この世界で出会い、言葉を交わし、笑顔を向け合った人々を、少なくとも出来る範囲では見捨てたくない。そう思うことは、人として当然のことだと思います。」
愛子が一つ一つ確かめるように言葉を紡いでいく。
「南雲君、あんなに穏やかだった君が、そんな風になるには、きっと想像を絶する経験をしてきたのだと思います。そこでは、誰かを慮る余裕などなかったのだと思います。君が一番苦しい時に傍にいて力になれなかった先生の言葉など…南雲君には軽いかもしれません。でも、どうか聞いて下さい」
ハジメは愛子に再度向き合う。
「……それは聞き捨てならないな。誰かを慮る余裕などなかったって言うのは間違いだ。確かにあの時カービィが居なかったらそんな余裕はなかったらかもしれないが……俺は敢えてあんたたちを見限ったんだ。」
「そんな……!」
愛子は信じられないと言わんばかりの表情でハジメを見る。
「……だが、チャンスをやってもいい。俺は完全にあんたたちに失望した訳ではないからな。…………………先生はこの先何があっても、俺の先生か?」
それは、言外に味方であり続けるのかと問うハジメ。
「当然ですっ!」
それに対して表情を固めて一瞬の躊躇いもなく答える愛子。
「……俺がどんな決断をしても?それが、先生の望まない結果でもか?」
「言ったはずです。先生の役目は、生徒の未来を決めることではありません。より良い決断ができるようお手伝いすることです。南雲君が先生の話を聞いて、なお決断したことなら否定したりしません」
ハジメはしばらく、その言葉に偽りがないか確かめるように愛子と見つめ合う。
わざわざ言質をとったのは、ハジメ自身、できれば愛子と敵対はしたくなかったからだ。
ハジメは、愛子の瞳に偽りも誤魔化しもないことを確かめると、おもむろに踵を返し出入口へと向かった。
レムユエとシア、カービィも、すぐ後に続く。
「な、南雲君?」
「流石に、数万の大群を相手取るなら、ちょっと準備しておきたいからな。話し合いはそっちでやってくれ」
「南雲君!」
ハジメの返答に顔をパァーと輝かせる愛子。
そんな愛子にハジメは苦笑いして言った。
「俺の知る限り一番の〝先生〟からの忠告だ。まして、それがこいつ等の幸せにつながるかもってんなら……少し考えてみるよ。取り敢えず、今回は、奴らを蹴散らしておくことにする」
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