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それではどうぞ!
現在カービィたちは一日経ってようやく目を覚ましたイルワさんに会いに行っている。
「いや、ステータスの件で……なにかあるとは思ってたが……道理でキャサリン先生の目に留まるわけだ。ハジメ君たちが異世界人の一人だということは予想していたが……実際は、遥か斜め上をいったね……」
「……それで、支部長さんよ。あんたはどうするんだ? 危険分子だと教会にでも突き出すか?」
イルワは、ハジメの質問に非難するような眼差しを向けると居住まいを正した。
「冗談がキツいよ。出来るわけないだろう? 君達を敵に回すようなこと、個人的にもギルド幹部としても有り得ない選択肢だよ……大体、見くびらないで欲しい。君達は私の恩人なんだ。そのことを私が忘れることは生涯ないよ」
「……そうか。そいつは良かった」
「私としては、約束通り可能な限り君達の後ろ盾になろうと思う。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思うよ。一応、後ろ盾になりやすいように、君達の冒険者ランクを全員〝金〟にしておく。普通は、〝金〟を付けるには色々面倒な手続きがいるのだけど……事後承諾でも何とかなるよ。キャサリン先生と僕の推薦、それに〝女神の騎士団〟という名声があるからね」
その後、カービィたちはシアが「せっかくですし観光でもしましょうよ!」と言ったのでカービィたちは観光することにした。
「ハジメさん!まずはメアシュタットに行きましょう!私、一度も生きている海の生き物って見たことないんです!」
ガイドブックを片手に、ウサミミを「早く! 早く!」と言う様にぴょこぴょこ動かすシア。
『ハルツィナ樹海』出身なので海の生物というのを見たことがないらしく、メアシュタットというフューレン観光区でも有名な水族館に見に行きたいらしい。
「へぇ~、内陸なのに海の生き物とか……気合はいってんな。管理、維持、輸送と大変だろうに……」
途中の大道芸通りで、人間の限界に挑戦するようなアクロバティックな妙技に目を奪われつつ、たどり着いたメアシュタットは相当大きな施設だった。海をイメージしているのか全体的に青みがかった建物となっており多くの人で賑わっていた。
中の様子は極めて地球の水族館に似ていた。
ただ、地球ほど、大質量の水の圧力に耐える透明の水槽を作る技術がないのか、格子状の金属製の柵に分厚いガラスがタイルの様に埋め込まれており、若干の見にくさはあった。
だが、シアはそんな事気にならないようで、初めて見る海の生き物の泳いでいる姿に瞳をキラキラさせて、頻りに指を差しながらハジメに話かけた。
カービィは少しよだれを垂らしていたがそれでも食欲を抑えて我慢していた。
すぐ隣で同じく瞳をキラキラさせている家族連れの幼女と仕草が同じだ。不意に、幼女の父親と思しき人と視線が合い、その目に生暖かさが含まれている気がして、ハジメは何となく気まずくなりカービィやシアの手を取ってその場を離れた。
そんなこんなで一時間ほど水族館を楽しんでいると、突然、シアがギョッとしたようにとある水槽を二度見し、更に凝視し始めた。
そこにいたのは……人面魚そっくりだった。
「……な、なぜ彼がここに……」
この人面魚は水棲系の魔物であるらしく、固有魔法〝念話〟が使えるようだ。滅多に話すことはないらしいがきちんと会話が成立するらしく、確認されている中では唯一意思疎通の出来る魔物として有名らしい。
ただ、物凄い面倒くさがりのようで、仮に会話出来たとしても、やる気の欠片もない返答しかなく、話している内に相手の人間まで無気力になっていくという副作用?みたいなものまであるので注意が必要とのことだ。
あと、お酒が大好きらしく、飲むと饒舌になるらしい。
但し、一方的に説教臭いことを話し続けるだけで会話は成立しなくなるらしいが……ちなみに、名称はリーマンだった。
ハジメは、一筋の汗を流しながら未だ見つめ合っているのかにらみ合っているのかわからないシアを放置して、話しかけてみた。ただ、普通に会話しても滅多に返してくれないらしいので、同じく〝念話〟を使ってみる。
〝お前さん、念話が使えるんだって?本当に話せるのか?言葉の意味を理解できる?〟
突然の念話に、リーマンの目元が一瞬ピクリと反応する。
そして、シアたちから視線を外すと、ゆっくりハジメを見返した。
〝……チッ、初対面だろ。まず名乗れよ。それが礼儀ってもんだろうが。全く、これだから最近の若者は……〟
おっさん顔の魚に礼儀を説かれてしまった。
痛恨のミスである。
ハジメは頬を引き攣らせながら再度会話を試みる。
〝……悪かったな。俺はハジメだ。本当に会話出来るんだな。リーマンってのは一体何なんだ?〟
〝……お前さん。人間ってのは何なんだ?と聞かれてどう答える気だ?そんなもんわかるわけないだろうが。まぁ、敢えて言うなら俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもねぇ。あと名はねぇから好きに呼んでくれ〟
ハジメは、内心「どうしよう……」と思った。
何か、セリフがいちいち常識的で、しかも少しカッコイイのだ。
全くもって予想外である。
やる気の欠片もなかったんじゃないのか?と水族館の職員にクレームを付けたい。
ハジメが、ちょっと現実逃避気味に遠くを見る目をしていると、今度はリーマンの方から質問が来た。
〝こっちも一つ聞きてぇ。お前さん、なぜ念話が出来る?人間の魔法を使っている気配もねぇのに……まるで俺と同じみてぇだ〟
当然といえば当然の疑問だろう。
何せ、人間が固有魔法として〝念話〟を使っているのだ。
なぜ自分と同じことを平然と出来ているのか気になるところだ。
普段は、滅多に会話しないリーマンがハジメとの会話に応じているのも、その辺りが原因なのだろう。
ハジメは、念話が使える魔物を喰って奪い取ったとかなり端折った説明をした。
〝……若ぇのに苦労してんだな。よし、聞きてぇことがあるなら言ってみな。おっちゃんが分かることなら教えてやるよ〟
ハジメは同情された。
どうやら、魔物を喰うしかないほど貧乏だとでも思われたようだ。
今のそれなりにいい服を着ている姿を見て、「頑張ったんだなぁ、てやんでぇ! 泣かせるじゃねぇか」とヒレで鼻をすする仕草をしている。
実際、苦労したことは間違いないので特に訂正はしないハジメ。
ただ、人面魚に同情される人生って……と若干ヘコんだ。
何とか気を取り直しつつ、リーマンに色々聞いてみる。
例えば、魔物には明確な意思があるのか、魔物はどうやって生まれるのか、他にも意思疎通できる魔物はいるのか……リーマン曰く、ほとんどの魔物は本能的で明確な意思はないらしい。
言語を理解して意思疎通できる魔物など自分の種族しか知らないようだ。また、魔物が生まれる方法も知らないらしい。
他にも色々話しているとそれなりの時間が経ち、傍目には若い男とおっさん顔の人面魚が見つめ合っているという果てしなくシュールな光景なので、人目につき始める。
リーマンとの会話は中々に面白かったが、リーマンが「おっと、家族旅行の邪魔だったな」と空気を呼んで会話の終わりを示した。
ちなみに、その頃には「リーさん」「ハー坊」と呼び合う仲になっていたりする。
ハジメは、リーマンの中に〝漢〟を見たのだ。
ハジメは、最後にリーマンが何故こんなところにいるのか聞いてみた。そして、返ってきた答えは……
〝ん?いやな、さっきも話した通り、自由気ままな旅をしていたんだが……少し前に地下水脈を泳いでいたらいきなり地上に噴き飛ばされてな……気がついたら地上の泉の傍の草むらにいたんだよ。別に、水中じゃなくても死にはしないが、流石に身動きは取れなくてな。念話で助けを求めたら……まぁ、ここに連れてこられたってわけだ〟
ハジメは、ツーと一筋の汗を流した。
それは、明らかにライセンの大迷宮から排出された時のことだろう。
どうやら、リーマンはそれに巻き込まれて一緒に噴水に打ち上げられたらしい。
直接の原因はミレディの阿呆だが、巻き込んだという点に変わりはない。
ハジメは、ゴホンッと咳払いを一つして気を取り直すと、リーマンに尋ねた。
〝あ~、リーさん。その、何だ。ここから出たいか?〟
〝うん?そりゃあ、出てぇよ。俺にゃあ、宛もない気ままな旅が性に合ってる。生き物ってのは自然に生まれて自然に還るのが一番なんだ。こんな檻の中じゃなく、大海の中で死にてぇてもんだよ〟
既に、リーマンを気に入っていたハジメは、巻き込んだこともあるしと彼を助けることにした。
〝リーさん。なら、俺が近くの川にでも送り届けてやるよ。どうやら、この状況は俺達の事情に巻き込んじまったせいみたいだしな。数分後に迎えを寄越すから、信じて大人しく運ばれてくれ〟
〝ハー坊……へっ、若造が、気ぃ遣いやがって……何をする気かは知らねぇが、てめぇの力になろうって奴を信用できないほど落ちぶれちゃいねぇよ。ハー坊を信じて待ってるぜ〟
ハジメは、新たな友人のこれからに幸運を祈りつつメアシュタット水族館を後にした。
そして、その数分後、下部にカゴをつけた空飛ぶ十字架が水族館内を爆走し、リーマンの水槽を粉砕、流れ出てきたリーマンを見事カゴにキャッチすると追いかける職員達を蹴散らし(怪我はさせていない)、更に壁を破壊して外に出ると遥か上空へと消えていくという珍事が発生した。新種の魔物か、あるいはリーマンの隠された能力かと大騒ぎになるのだが……それはどうでもいい話だ。
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