ありふれた能力世界最強(リメイク版)   作:コロンKY

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第四章
42話『遠藤との再会』


あれから数日、ハジメ達は依頼(ミュウの送り届け)の達成報告をする為に冒険者ギルドのホルアド支部に到着した。

ハジメはギルドの扉を開ける。

他の町のギルドと違って、ホルアド支部の扉は金属製だった。

重苦しい音が響き、それが人が入ってきた合図になっているようだ。

 

前回、ハジメたちがホルアドに来たときは、冒険者ギルドに行く必要も暇もなかったので中に入るのは今回が初めてだ。

ホルアド支部の内装や雰囲気は、最初にハジメが抱いていた『異世界の冒険者ギルド』そのままだった。

 

冒険者自体の雰囲気も他の町とは違うようだ。

誰も彼も目がギラついていて、ブルックのようなほのぼのした雰囲気は皆無である。

 

ハジメ達がギルドに足を踏み入れた瞬間、冒険者達の視線が一斉にハジメ達を捉えた。

 

血気盛んな、あるいは酔った勢いで席を立ち始める一部の冒険者達。

彼等の視線は、「女を多く侍らせているふざけたガキをぶちのめす」と何より雄弁に物語っており、このギルドを包む異様な雰囲気からくる鬱憤を晴らす八つ当たりと、単純なやっかみ混じりの嫌がらせであることは明らかである。

 

取り敢えず話はぶちのめしてからだという、荒くれ者そのものの考え方でハジメたちの方へ踏み出そうとした。

 

が、家族を大切にするハジメが、誤解をそのままに黙っているわけがなかった。

ハジメが穏便に済ます為に優しく話し掛けたが耳を傾けることすらなかった。

既に、ハジメの額には青筋が深く深~く浮き上がっていた。

 

 そして……

 

ドンッ!!

 

そんな音が聞こえてきそうなほど濃密にして巨大かつ凶悪なプレッシャーが、ハジメ達を睨みつけていた冒険者達に情け容赦一切なく叩きつけられた。

 

………と、永遠に続くかと思われた威圧がふとその圧力を弱めた。

ハジメも無駄に争いたくはないので攻撃されない限りは手を出すつもりはないのだ。

 

中には失禁したり吐いたりしている者もいるが……そんな彼等にハジメが優しく(?)話しかけた。

 

「おい、今、こっちを睨んだ奴ら」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

ハジメの声にビクッと体を震わせる冒険者達。

 

「俺は女を侍らせてなんかいない。こいつらは俺の大切な家族だ。だから家族に手を出したその時は……」

 

 

「「「「「「「(ゴクリ)」」」」」」」

 

「容赦無く殺す。いいな?」

 

「「「「「「「はいっ!」」」」」」」

 

冒険者達はハジメの眼光が鋭くなってきたので必死でスルーすることにした。

 

 

 

ハジメも、満足したようでもう冒険者達に興味はないとカウンターへと歩いて行った。

 

ハジメ達が、カウンターに向かった瞬間、ドサドサと崩れ落ちる音があちこちから響いたがサクッと無視して、たどり着いたカウンターの受付嬢に要件を伝える。

 

「支部長はいるか? フューレンのギルド支部長から手紙を預かっているんだが……本人に直接渡せと言われているんだ。あと依頼達成の報告だ。」

 

 ハジメ達は、そう言いながら自分のステータスプレートを受付嬢に差し出す。

 

「は、はい。お預かりします。え、えっと、フューレン支部のギルド支部長様からの依頼……ですか?」

 

「ぜ、全員〝金〟ランク!?」

 

その声に、ギルド内の冒険者も職員も含めた全ての人が、受付嬢と同じように驚愕に目を見開いてハジメ達を凝視する。

建物内がにわかに騒がしくなった。

 

受付嬢は、自分が個人情報を大声で晒してしまったことに気がついてサッと表情を青ざめさせる。

 

「も、申し訳ありません!本当に、申し訳ありません!」

「あ~、いや。別にいいから。取り敢えず、支部長に取り次ぎしてくれるか?」

「は、はい!少々お待ちください!」

 

やがて、と言っても五分も経たないうち、ギルドの奥からズダダダッ!と何者かが猛ダッシュしてくる音が聞こえだした。

カウンター横の通路から全身黒装束の少年がズザザザザザーと床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた。

 

ハジメは、その人物に見覚えがあり、こんなところで再会するとは思わなかったので思わず目を丸くして呟いた。

 

 

「……遠藤!?」

 

 

ハジメの呟きに〝!〟と、黒装束の少年、遠藤浩介は、辺りをキョロキョロと見渡し、それでも目当ての人物が見つからないことに苛立ったように大声を出し始めた。

 

「南雲ぉ!いるのか!お前なのか!何処なんだ!南雲ぉ!生きてんなら出てきやがれぇ!南雲ハジメェー!」

 

あまりの大声に、思わず耳に指で栓をする人達が続出する。

その声は、単に死んだ筈のクラスメイトが生存しているかもしれず、それを確かめたいという気持ち以上の必死さが含まれているようだった。

 

カービィ達の視線が一斉にハジメの方を向く。

 

「どうするのハジメ?えーっと、確か召喚?された時に一緒にいたからクラスメート?って言う仲間なんだよね?」

 

「クラスメートは仲間じゃないが……まぁ話しくらいは聞いてやるか。」

 

「あ~、遠藤? ちゃんと聞こえてるから大声で人の名前を連呼するのは止めてくれ」

「!? 南雲! どこだ!」

 

ハジメの声に反応してグリンッと顔をハジメの方に向ける遠藤。余りに必死な形相に、ハジメは思わずドン引きする。

 

一瞬、ハジメと視線があった遠藤だが、直ぐにハジメから目を逸らすと再び辺りをキョロキョロと見渡し始めた。

 

「くそっ!声は聞こえるのに姿が見当たらねぇ!幽霊か?やっぱり化けて出てきたのか!?俺には姿が見えないってのか!?」

「いや、目の前にいるだろうが、ど阿呆。つか、いい加減落ち着けよ。影の薄さランキング生涯世界一位」

 

「!?また、声が!?ていうか、誰がコンビニの自動ドアすら反応してくれない影が薄いどころか存在自体が薄くて何時か消えそうな男だ!自動ドアくらい十回に一回はちゃんと開くわ!」

 

「十回中九回は開かないのか……お前、前は三回一回じゃなかったか?」

 

そこまで言葉を交わしてようやく、目の前の白髪眼帯の男が会話している本人だと気がついたようで、遠藤は、ハジメの顔をマジマジと見つめ始める。

 

「お、お前……お前が南雲……なのか?」

「はぁ……ああ、そうだ。見た目こんなだが、正真正銘南雲ハジメだ。……って言うかカービィが近くにいるんだから気づけよ!」

 

「え?あ、本当だ。南雲探しに集中して気づかなかった。……それにしてもお前……生きていたのか!」

「今、目の前にいるんだから当たり前だろ?」

 

「何か、えらく変わってるんだけど……見た目とか雰囲気とか口調とか……」

「奈落の底から自力で這い上がってきたんだぞ? そりゃ多少変わるだろ。」

 

「そ、そういうものかな?いや、でも、カービィちゃんだっけ?は変わってないんだが………「気にするな」……そうか……ホントに生きて……」

 

あっけらかんとしたハジメの態度に困惑する遠藤だったが、それでも死んだと思っていたクラスメイトが本当に生きていたと理解し、安堵したように目元を和らげた。

いくら香織に構われていることに他の男と同じように嫉妬の念を抱いていたとしても、また檜山達のイジメを見て見ぬふりをしていたとしても、死んでもいいなんて恐ろしいことを思えるはずもない。

ハジメの死は大きな衝撃であった。

それに幼い(ように見える)カービィも無事なのはハジメが奈落で力を付けて守ったからだろうと遠藤は納得する。

 

だからこそ、遠藤は、純粋にクラスメイトの生存が嬉しかったのだ。

 

「っていうかお前……冒険者してたのか?しかも全員〝金〟て……」

「ん~、まぁな」

 

ハジメの返答に遠藤の表情がガラリと変わる。

クラスメイトが生きていた事にホッとしたような表情から切羽詰ったような表情に。

改めて、よく見てみると遠藤がボロボロであることに気がつくハジメ。

(カービィは気がついていたようだが)

ハジメは一体、何があったんだと内心首を捻る。

 

「……つまり、カービィちゃんを守りながら迷宮の深層から自力で生還できる上に、冒険者の最高ランクを貰えるくらい強いってことだよな?信じられねぇけど……」

「まぁ、半分くらいあってるな。俺が脱出できたのはカービィやレムユエの協力があったからだ。」

 

遠藤の真剣な表情でなされた確認に肯定の意をハジメが示すと、次の瞬間遠藤はハジメに飛びかからんばかりの勢いで肩をつかみに掛かり、今まで以上に必死さの滲む声音で、表情を悲痛に歪めながら懇願を始めた。

 

「なら頼む!一緒に迷宮に潜ってくれ!早くしないと皆死んじまう!一人でも多くの戦力が必要なんだ!健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ!頼むよ、南雲!」

 

「ちょ、ちょっと待て。いきなりなんだ!?状況が全くわからないんだが?死んじまうって何だよ。天之河がいれば大抵何とかなるだろ?メルド団長がいれば、二度とベヒモスの時みたいな失敗もしないだろうし……」

 

ハジメが、普段目立たない遠藤のあまりに切羽詰った尋常でない様子に、困惑しながら問い返す。

遠藤はメルド団長の名が出た瞬間、ひどく暗い表情になって膝から崩れ落ちた。

そして、押し殺したような低く澱んだ声でポツリと呟く。

 

「……んだよ」

「聞こえねぇよ。何だって?」

「……死んだって言ったんだ!メルド団長もアランさんも他の皆も! 迷宮に潜ってた騎士は皆死んだ!俺を逃がすために!俺のせいで!死んだんだ!死んだんだよぉ!」

「そんな!?」

カービィは沢山の人が死んだことに少し驚く。

「……そうか」

だがハジメは冷静である。

 

ハジメの天職が非戦系であるために、ハジメとメルド団長との接点はそれほど多くなかった。

しかし、それでもメルド団長が気のいい男であったことは覚えているし、あの日、ハジメが奈落に落ちた日、最後の場面で〝無能〟の自分を信じてくれたことも覚えている。

そんな彼が死んだと聞かされれば、奈落から出たばかりの頃のハジメなら「あっそ」で終わらせたかもしれないが、今は、少し残念さが胸中をよぎる。少なくとも、心の中で冥福を祈るくらいには。

もちろんカービィの命を使ってまで生き返らせる気は全くない。

 

「で? 何があったんだ?」

「それは……」

 

尋ねるハジメに、遠藤は膝を付きうなだれたまま事の次第を話そうとする。

……と、そこでしわがれた声による制止がかかった。

 

「話の続きは、奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」

 

声の主は、六十歳過ぎくらいのガタイのいい左目に大きな傷が入った迫力のある男だった。

 

 ハジメたちは、先程の受付嬢が傍にいることからも彼がギルド支部長だろうと当たりをつけた。

 

おそらく、遠藤は既にここで同じように騒いで、勇者組や騎士団に何かがあったことを晒してしまったのだろう。

ギルドに入ったときの異様な雰囲気はそのせいだろう。

 

ギルド支部長と思しき男は、遠藤の腕を掴んで強引に立たせると有無を言わさずギルドの奥へと連れて行った。

遠藤は、かなり情緒不安定なようで、今は、ぐったりと力を失っている。

 

きっと、話の内容は碌な事じゃないんだろうなと嫌な予想をしながらハジメ達は後を付いていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……魔人族……ね」

 

冒険者ギルドホルアド支部の応接室にハジメの呟きが響く。

対面のソファーにホルアド支部の支部長ロア・バワビスと遠藤浩介が座っており、遠藤の正面にハジメが、その両サイドにレムユエとカービィ、ティオとシアとルティが座っている。

 

遠藤から事の次第を聞き終わったハジメの第一声が先程の呟きだった。

 

魔人族の襲撃に遭い、勇者パーティーが窮地にあるというその話に遠藤もロアも深刻な表情をしており、室内は重苦しい雰囲気で満たされていた。

 

カービィの表情は助けに行く気満々である。

ハジメは正直言って天之川や檜山がいる為あまり行きたくない。

しかし白崎もいることから再会する必要はあると感じた。

何故ならハジメは奈落に落ちる前の日、白崎に「守られる」約束をしたのだから。

 

「つぅか!何なんだよ!何で、清水までいるの!?状況理解してんの!?みんな、死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「うん?僕は清水ではなくルティと言う名前がありますので……。」

 

「え。どう言うことだ南雲ォ!?」

 

「記憶喪失になったから名前を与えた。」

 

遠藤が何か言いそうになったが無視して話し始める支部長。

「さて、ハジメ、カービィ、レムユエ、シア、ティオ、ルティ……だったな?イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」

 

「まぁ、全部成り行きだけどな」

事も無げな様子で肩をすくめるハジメに、ロアは面白そうに唇の端を釣り上げた。

 

「手紙には、お前たちの〝金〟ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな……たった数人で数万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅……にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん……もう、お前らが実は魔王軍だと言われても俺は不思議に思わんぞ」

 

ロアの言葉に、遠藤が大きく目を見開いて驚愕をあらわにする。自力で『オルクス大迷宮』の深層から脱出したハジメたちの事を、それなりに強くなったのだろうとは思っていたが、それでも自分よりは弱いと考えていたのだ。

 

何せハジメの天職は〝錬成師〟という非戦系職業であり、元は〝無能〟と呼ばれていた上、〝金〟ランクと言っても、それは異世界の冒険者の基準であるから自分達召喚された者とは比較対象にならない。

なので、精々、破壊した転移陣の修復と、軽い戦闘にレムユエと言う子の戦闘のサポートくらいの実力だろうくらいでの認識だったのだ。

 

元々、遠藤が冒険者ギルドにいたのは、高ランク冒険者に光輝達の救援を手伝ってもらうためだった。

もちろん、深層まで連れて行くことは出来ないが、せめて転移陣の守護くらいは任せたかったのである。

七十層の転移陣を守護するには、せめて〝銀〟ランク以上の冒険者の力が必要だったからだ。

 

 そして、遠藤の起こした騒動に気がついたロアが、遠藤の首根っこを掴んで奥の部屋に引きずり込み事情聴取をしているところで、ハジメのステータスプレートをもった受付嬢が駆け込んできたというわけだ。

 

そんなわけで、遠藤は、自分がハジメたちの実力を過小評価していたことに気がつき、もしかすると全員自分以上の実力を持っているのかもしれないと、過去のハジメと比べて驚愕しているのである。

 

遠藤が驚きのあまり硬直している間も、ロアとハジメたちの話は進んでいく。

 

「バカ言わないでくれ……魔王だなんて、そこまで弱くないつもりだぞ?」

「ふっ、魔王を雑魚扱いか?随分な大言を吐くやつだ……だが、それが本当なら俺からの、冒険者ギルドホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」

 

「……勇者達の救出だな?」

 

「そ、そうだ!南雲!一緒に助けに行こう!お前たちがそんなに強いなら、きっとみんな助けられる!」

「……」

 

「どうしたんだよ!今、こうしている間にもアイツ等は死にかけているかもしれないんだぞ!何を迷ってんだよ!仲間だろ!」

「……は?仲間だと?」

 

ハジメは、考え事のため逸らしていた視線を元に戻し、冷めた表情でヒートアップする遠藤を見つめ返した。

その瞳に宿る余りの冷たさに思わず身を引く遠藤だがそれでも、ハジメという貴重な戦力を逃すわけにはいかないので半ば意地で言葉を返す。

 

「あ、ああ。仲間だろ!なら、助けに行くのは当ぜ……」

「勝手に、お前等の仲間にするな。はっきり言うが、俺がお前等にもっている認識は唯の〝同郷〟の人間程度であって、それ以上でもそれ以下でもない。他人と何ら変わらない」

 

「なっ!?そんな……何を言って……」

 

「だが、俺の家族であるカービィが『絶対に助ける』って言う眼をしてるからな。今回限りだ。」

 

「本当か!?」

 

「ただし、お前に貸し1だ。わかったな?」

 

「あ、あぁ!わかった。」

 

ハジメは、先程の考え事の続き、すなわち、光輝達を助けることのデメリットを考える。

もしもカービィ自身の命を使った蘇生がバレたら光輝は死んだ人全員を生き返らせることを強要する可能性がある。

 

それにハジメ自身が言った通り、ハジメにとってクラスメイトは既に顔見知り程度の認識である。

今更、過去のあれこれを持ち出して復讐してやりたいなどという思いもなければ、逆に出来る限り力になりたいなどという思いもない。

本当に、関心のないどうでもいい相手だった。

 

 

だが、誰にでも手を差し伸べることのできるカービィが助けたいと言っているのだ。

それはハジメが奈落でカービィに救われたようにそれくらいのチャンスは与えてやってもいいかもしれない。

ハジメはそう思って『貸し1』として手を貸すことにしたのだ。

 

 

それに、ハジメは、あの奈落に落ちる前の日の語らいを思い出していた。

異世界に来て〝無能〟で〝最弱〟だったハジメに「私が、南雲君を守るよ」と、そう言った女の子、白崎香織。

結局は彼女の不安を取り除くために〝守ってもらう〟と約束したのに、結局、その約束は果たされなかった。

あの最後の瞬間、奈落へ落ち行くハジメに、壊れそうなほど悲痛な表情で手を伸ばす彼女の事を、何故か、この町に戻ってきてから頻繁に思い出すハジメ。

 

「白崎は……彼女はまだ、無事だったか?」

 

ハジメが、狼狽している遠藤にポツリと尋ねる。いきなりの質問に「えっ?」と一瞬、疑問の声を漏らすものの、遠藤は、取り敢えず何か話をしなければハジメが協力してくれないのではと思い、慌てて香織の話をしだす。

 

「あ、ああ。白崎さんは無事だ。っていうか、彼女がいなきゃ俺達が無事じゃなかった。最初の襲撃で重吾も八重樫さんも死んでたと思うし……白崎さん、マジですげぇんだ。回復魔法がとんでもないっていうか……あの日、お前が落ちたあの日から、何ていうか鬼気迫るっていうのかな?こっちが止めたくなるくらい訓練に打ち込んでいて……雰囲気も少し変わったかな? ちょっと大人っぽくなったっていうか、いつも何か考えてるみたいで、ぽわぽわした雰囲気がなくなったっていうか……」

「……そうか」

 

聞いてないことも必死に話す遠藤に、ハジメは一言そう返した。そして、頭をカリカリと掻きながら、傍らで自分をている家族を見やる。

 

「ボクたちに任せてよ!」

「……ハジメのしたいように。私たちは、どこでも付いて行く。ね?」

「もちろんですぅ!」

「当然じゃな。」

「そうですね。」

 

 

対面で、愕然とした表情をしながら「え? 何このハーレム……」と呟いている遠藤を尻目に、ハジメは仲間に己の意志を伝えた。

 

「ありがとな、お前等。神に選ばれた勇者になんて、わざわざ自分から関わりたくはないし、お前達を関わらせるのも嫌なんだが……ちょっと義理を果たしたい相手がいるんだ。だから、ちょっくら助けに行こうかと思う。まぁ、あいつらの事だから、案外、自分達で何とかしそうな気もするがな」

 

ハジメの本心としては、光輝達がどうなろうと知ったことではなかったし、勇者の傍は同時に狂った神にも近そうな気がして、わざわざ近寄りたい相手ではなかった。

 

だが、カービィは救いたいと思っているからついでにハジメの事を恐らく気に病んで無茶をしているであろう香織には、顔見せくらいはしてやりたいと思ったのだ。

 

危険度に関しては特に気にしていない。

遠藤の話からすれば既に戦った四つ目狼が出たようだが、キメラ等にしても奈落の迷宮でいうなら十層以下の強さだろう。

何の問題もない。

寧ろ一人でも過剰戦力である程だ。

 

「え、えっと、結局、一緒に行ってくれるんだよな?」

「ああ、ロア支部長。一応、対外的には依頼という事にしておきたいんだ。無報酬と言う訳じゃあ無いよな?」

 

「ああ、それくらい構わねぇよ」

 

 

 

ハジメ達は遠藤の案内で出発することにした。

(遠藤の方が移動スピードが遅いからである)

 

「おら、さっさと案内しやがれ、遠藤」

「うわっ、ケツを蹴るなよ! っていうかお前いろいろ変わりすぎだろ!」

「やかましい。さくっと行って、一日……いや半日で終わらせるぞ。」

 

 

 

迷宮深層に向かって疾走しながら、ハジメの態度や環境についてブツブツと納得いかなさそうに遠藤は呟くがハジメ達の耳に届くことはない。

 

しゃべる暇があるならもっと速く走れとつつかれ、敏捷値の高さに関して持っていた自信を粉微塵に砕かれつつ、遠藤は親友達の無事を祈ったのだった。

 

 




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