ありふれた能力世界最強(リメイク版)   作:コロンKY

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43話『クラスメートとの再会』

 

ドォゴオオン!!

 

轟音と共にオルクス大迷宮の天井が崩落し、同時に紅い雷を纏った巨大な漆黒の杭が凄絶な威力を以て飛び出した。

 

スパークする漆黒の杭は、そのまま眼下の虎の子のアハトドを、まるで豆腐のように貫きひしゃげさせ、そのまま地面に突き刺さった。

 

全長百二十センチのほとんどを地中に埋め紅いスパークを放っている巨杭と、それを中心に血肉を撒き散らして原型を留めていないほど破壊され尽くした魔物の残骸に、眼前にいた香織と雫はもちろんのこと、光輝達や彼等を襲っていたアハトド、そして魔人族の女までもが硬直した。

 

戦場には似つかわしくない静寂が辺りを支配し、誰もが訳も分からず呆然と立ち尽くしていると、崩落した天井から人影が飛び降りてきた。

その人物の一人は、香織達に背を向ける形でスタッと軽やかに魔物の残骸を踏みつけながら降り立つと、周囲を睥睨する。

 

そして、肩越しに振り返り背後で寄り添い合う香織と雫を見やった。

 

「……相変わらず仲がいいな、お前等」

 

「ハジメくん!」

 

「へ? ハジメくん?って南雲くん?えっ?なに?どういうこと?」

 

香織の歓喜に満ちた叫びに、隣の雫が混乱しながら香織とハジメを交互に見やる。

どうやら、香織は一発で目の前の白髪眼帯黒コートの人物がハジメだと看破したようだが、雫にはまだ認識が及ばないらしい。

しかし、それでも肩越しに振り返って自分達を苦笑い気味に見ている少年の顔立ちが、記憶にある南雲ハジメと重なりだすと、雫は大きく目を見開いて驚愕の声を上げた。

 

「えっ? えっ? ホントに? ホントに南雲くんなの? えっ? なに?ホントどういうこと?」

 

「いや、落ち着けよ八重樫。お前の売りは冷静沈着さだろ?それにその証拠に隣にカービィがいるだろ?」

 

「あっ、あの時南雲くんを追って行った子!」

 

香織と同じく死を覚悟した直後の一連の出来事に、流石の雫も混乱が収まらないようで痛みも忘れて言葉をこぼす。

 

「な、南雲ォ!おまっ!余波でぶっ飛ばされただろ!ていうか今の何だよ!いきなり迷宮の地面ぶち抜くとか……」

 

文句を言いながら周囲を見渡した遠藤は、そこに親友達と魔物の群れがいて、硬直しながら自分達を見ていることに気がつき「ぬおっ!」などと奇怪な悲鳴を上げた。

そんな遠藤に、再会の喜びとなぜ戻ってきたのかという憤りを半分ずつ含めた声がかかる。

 

「「浩介!」」

「重吾!健太郎!助けを呼んできたぞ!」

 

『助けを呼んできた』その言葉に反応して、光輝達も魔人族の女もようやく我を取り戻した。

 

そして、改めてハジメ達を凝視する。だが、そんな周囲の者達の視線などはお構いなしといった様子で、ハジメは少し面倒臭そうな表情をしながら、全員に手早く指示を出した。

 

「レムユエとティオは悪いがあそこで固まっている奴等の守りを頼む。シアとルティは向こうで倒れている騎士たちの容態を見てやってくれ。俺とカービィでまずは敵を片付けるぞ!」

 

「ん……任せて!」

「任せろなのじゃ!」

「了解ですぅ!」

「わかりました!」

「任せて!」

 

「ハ、ハジメくん……」

 

 香織が、再度、ハジメの名を声を震わせながら呼んだ。

その声音には、再会できた喜びを多分に含んではいたが、同じくらい悲痛さが含まれていた。

それは、この死地にハジメたちが来てしまったが故だろう。

どういう経緯か香織にはわからなかったが、それでも直ぐに逃げて欲しいという想いがその表情から有り有りと伝わる。

 

ハジメは、チラリと香織を見返すと肩を竦めて「大丈夫だから、そこにいろ」と短く伝えた。

そして、即座に『瞬光』を発動し知覚能力を爆発的に引き上げると、『宝物庫』からクロスビットを三機取り出し、それを香織と雫の周りに盾のように配置した。

 

 突然、虚空に現れた十字架型の浮遊する物体に、目を白黒させる香織と雫。

そんな二人に背を向けると、ハジメは元凶たる魔人族の女に向かって傲慢とも言える提案をした。

それは、魔人族の女が、まだハジメ達の敵ではないが故の慈悲である。

 

「そこの赤毛の女。今すぐ去るなら追いはしない。死にたくなければ、さっさと帰れ。」

「……何だって?」

 

「聞こえなかったか?死にたくなければ消えろと言ったんだ。わかったか?」

 

改めて、聞き間違いではないとわかり、魔人族の女はスっと表情を消すと「殺れ」とハジメ達を指差し魔物に命令を下した。

 

この時、あまりに突然の事態――――特に虎の子のアハトドが正体不明の攻撃により一撃死したことで流石に冷静さを欠いていた魔人族の女は、致命的な間違いを犯してしまった。

 

「なるほど。……つまり俺たちの『敵』って事でいいんだな?」

 

ハジメがそう呟いたのとハジメとカービィに数匹のキメラが襲いかかったのは同時だった。

 

ハジメの背後から「ハジメくん!」「南雲君!カービィちゃん!」と焦燥に満ちた警告を発する声が聞こえる。

しかし、ハジメは左側から襲いかかってきたキメラを意にも介さず左手で鷲掴みにすると苦もなく宙に持ち上げて握り潰した。

 

「コピー能力レーザー。貫通レーザー!」

カービィは機械のメガネを掛けた姿になり、そのメガネから太いレーザーが発射され数匹のキメラは貫通して倒された。

 

それを見て、ハジメが侮蔑するような眼差しになった。

「おいおい、何だ?この半端な固有魔法は。大道芸か?」

 

気配や姿を消す固有魔法だろうに動いたら空間が揺らめいてしまうなど意味がないにも程があると、ハジメは、思わずツッコミを入れる。

奈落の魔物にも、気配や姿を消せる魔物はいたが、どいつもこいつも厄介極まりない隠蔽能力だったのだ。

それらに比べれば、動くだけで崩れる隠蔽など、ハジメやカービィからすれば余りに稚拙だったのである。

 

その光景に魔人族の女や香織達が唖然とした表情をする。

 

「ッ!? ちくしょう!」

魔人族の女がそんな声を漏らした。

ハジメとカービィがあっさり魔物を殺し始めた瞬間から、危機感に煽られて大威力の魔法を放つべく仰々しい詠唱を始めたのだが、それに気がついていたハジメが、アブソドの砲撃を指示したであろう魔人族の女に詠唱の邪魔ついでに砲撃を流したのである。

 

そしえいよいよ逸らされた砲撃が直ぐ背後まで迫り、魔人族の女が、自分の指示した攻撃に薙ぎ払われるのかと思われた直後、アブソドが蓄えた魔力が底を尽き砲撃が終ってしまった。

 

「チッ……」

 

ハジメの舌打ちに反応する余裕もなく、冷や汗を流しながらホッと安堵の息を吐く魔人族の女だったが、次の瞬間には凍りついた。

 

ドパァンッ!

 

 炸裂音が轟くと同時に右頬を衝撃と熱波が通り過ぎ、パッと白い何かが飛び散ったからだ。

 

その何かは、先程まで魔人族の女の肩に止まっていた白鴉の魔物の残骸だった。

完全には思惑通りにいかなかったハジメが、腹いせにドンナーをアブソドに、シュラークを白鴉に向けて発砲したのである。

 

あと、数センチずれていたら……そんな事を考えて自然と体が身震いする魔人族の女。

それはつまり、今も視線の先で、強力無比をうたった魔物の軍団をまるで戯れに虫を殺すがごとく駆逐しているハジメとカービィは、いつでも魔人族の女を殺すことが出来るということだ。

今この瞬間も、彼女の命は握られているということだ。

 

戦士たる強靭な精神をもっていると自負している魔人族の女だが、あり得べからざる化け物の存在に体の震えが止まらない。

あれは何だ?

なぜあんなものが存在している?

どうすればあの化け物から生き残ることができる!?

魔人族の女の頭の中では、そんな思いがぐるぐると渦巻いていた。

が、時すでに遅し。

彼らが用意した慈悲を彼女自身が蹴ったのだから。

 

それは、光輝達も同じ気持ちだった。

彼等は、白髪眼帯の少年の正体を直ぐさまハジメとは見抜けず、カービィのこともあの時気にはしてなかったのだから、正体不明の何者かが突然、自分達を散々苦しめた魔物を歯牙にもかけず駆逐しているとしかわからなかったのだ。

 

「何なんだ……彼らは一体、何者なんだ!?」

 

光輝が動かない体を横たわらせながら、そんな事を呟く。

今、周りにいる全員が思っていることだった。

その答えをもたらしたのは、先に逃がし、けれど自らの意志で戻ってきた仲間、遠藤だった。

 

「はは、信じられないだろうけど……あいつは南雲とカービィとその仲間だよ」

 

 

「「「「「「………は?」」」」」」

 

 遠藤の言葉に、光輝達が一斉に間の抜けた声を出す。

遠藤を見て「頭大丈夫か、こいつ?」と思っているのが手に取るようにわかる。

 

「だから、南雲、南雲ハジメだよ。あの日、橋から落ちた南雲だ。迷宮の底で生き延びて、カービィちゃんと共に自力で這い上がってきたらしいぜ。ここに来るまでも、迷宮の魔物が完全に雑魚扱いだった。マジ有り得ねぇ!って俺も思うけど……事実だよ」

「南雲って、え?南雲が生きていたのか!?」

 

光輝が驚愕の声を漏らす。

そして、他の皆も一斉に、現在進行形で殲滅戦を行っている化け物じみた強さの少年を見つめ直し……やはり一斉に否定した。

「どこをどう見たら南雲なんだ?」と。

そんな心情もやはり、手に取るようにわかる遠藤は、「いや、本当なんだって。めっちゃ変わってるけど、ステータスプレートも見たし」と乾いた笑みを浮かべながら、彼が南雲ハジメであることを再度伝える。

 

 皆が、信じられない思いで、ハジメの無双ぶりを茫然と眺めていると、ひどく狼狽した声で遠藤に喰ってかかる人物が現れた。

 

「う、うそだ。南雲は死んだんだ。そうだろ?みんな見てたじゃんか。生きてるわけない!適当なこと言ってんじゃねぇよ!」

「うわっ、なんだよ檜山!ステータスプレートも見たし、本人が認めてんだから間違いないだろ!」

 

「うそだ!何か細工でもしたんだろ!それか、なりすまして何か企んでるんだ!」

「いや、何言ってんだよ?そんなことする意味、何にもないじゃないか」

 

遠藤の胸ぐらを掴んで無茶苦茶なことを言うのは檜山だ。

顔を青ざめさせ尋常ではない様子でハジメの生存を否定する。

周りにいる近藤達も檜山の様子に何事かと若干引いてしまっているようだ。

 

「……大人しくして。鬱陶しいから」

突然現れた美貌の少女に男女関係なく自然と視線が吸い寄せられた。

 

……と、その時、魔人族の女が指示を出したのか、魔物が数体、光輝達へ襲いかかった。

人質にでもしようと考えたのだろう。

普通に挑んでも、ハジメやカービィを攻略できる未来がまるで見えない以上、常套手段だ。

 

鈴が、咄嗟にシールドを発動させようとする。

度重なる魔法の行使に、唯でさえ絶不調の体が悲鳴を上げる。

ブラックアウトしそうな意識を唇を噛んで堪えようとするが……そんな鈴をレムユエの優しい手つきが制止した。頭をそっと撫でたレムユエに、鈴が「ほぇ?」と思わず緩んだ声を漏らして詠唱を止めてしまう。

 

「……大丈夫」

レムユエが、視線を鈴から外し、今まさにその爪牙を、触手を、メイスを振るわんとしている魔物達を睥睨する。

そして、ただ一言、魔法のトリガーを引いた。

 

「蒼天龍嵐(ドラゴストーム)

 

その瞬間、何処からか蒼い龍が現れ一直線に走り抜けて消えた。

そんな魔法を詠唱もせずにノータイムで発動など尋常ではない。

特に、後衛組は、何が起こったのか分からず呆然と頭上の蒼く燃え盛る龍を仰ぎ見た。

 

しかし、彼等が本当に驚くべきはここからだった。

今まさにメイスを振り降ろそうとしていたブルタールモドキ達に襲いかかるとそのまま呑み込み、一瞬で灰も残さず滅殺したからだ。

 

「なに、この魔法……」

 

 一方、魔人族の女は、遠くから蒼天龍嵐(ドラゴストーム)の異様を目にして、内心「化け物ばっかりか!」と悪態をついていた。

そして、次々と駆逐されていく魔物達に焦燥感をあらわにして、先程致命傷を負わせたメルドの傍らにいる兎人族の少女、竜人族の少女と離れたところで寄り添っている二人の少女に狙いを変更することにした。

 

しかし、魔人族の女は、これより更なる理不尽に晒されることになる。

 

シアに襲いかかったブルタールモドキは、振り向きざまのドリュッケンの一撃で頭部をピンボールのように吹き飛ばされ、逆方向から襲いかかった四つ目狼も最初の一撃を放った勢いのまま体を独楽のように回転させた、遠心力のたっぷり乗った一撃を頭部に受けて頭蓋を粉砕されあっさり絶命した。

ティオに至っては竜の力を拳に集めて殴ってワンパンした。

 

また、香織と雫を狙ってキメラや黒猫が襲いかかった。

殺意を撒き散らしながら迫り来る魔物に歯噛みしながら半ばから折れた剣を構えようとする雫だったが、それを制止するように、周囲で浮遊していたクロスビットがスっと雫とキメラの間に入る。

 

雫が「ホントに何なの!?」と内心絶叫していると、その頬を掠めるように何かがくるくると飛び、カランカランという金属音を響かせて地面に落ちた。香織の側でも同じく轟音が響き、やはり同じように金属音が響く。

 

 香織と雫が、混乱しつつも、とにかく迫り来る魔物に注意を戻すと、そこには頭部を爆砕させた魔物達の姿が……唖然としつつ、先程の金属音の元に視線を転じてその正体を確かめる。

 

「これって……薬莢?」

「薬莢って……銃の?」

 

香織と雫が、馴染みのない知識を引っ張り出し顔を見合わせる。

そして、ハジメが両手に銃をもって大暴れしている姿を見やって確信する。

 

「す、すごい……ハジメくんって厨二病だったんだ」

「彼、いつの間に別人になったのよ……」

 

周囲の魔物が一瞬で駆逐されたことで多少の余裕を取り戻した香織と雫が、二人には似つかわしくないツッコミを入れる、

実はそれがクロスビットを通してハジメに伝わっており、厨二病と言われたハジメがダメージを受けているのだが、鍛えられたスルースキルで、ハジメは気にしないことした。

 

「ホントに……なんなのさ」

 

力なく、そんなことを呟いたのは魔人族の女だ。

何をしようとも全てを力でねじ伏せられ粉砕される。

そんな理不尽に、諦観の念が胸中を侵食していく。

もはや、魔物の数もほとんど残っておらず、誰の目から見ても勝敗は明らかだ。

 

魔人族の女は、最後の望み!と逃走のために温存しておいた魔法をハジメに向かって放ち、全力で四つある出口の一つに向かって走った。

ハジメのいる場所に放たれたのは『落牢』だ。

それが、ハジメの直ぐ傍で破裂し、石化の煙がハジメを包み込んだ。光輝達が息を飲み、香織と雫が悲鳴じみた声でハジメの名を呼ぶ。

 

動揺する光輝達を尻目に、魔人族の女は、遂に出口の一つにたどり着いた。

 

 しかし……

 

「はは……既に詰みだったわけだ」

「その通り」

 

放たれた『落牢』はルティのウルトラソードによって真っ二つとなったからだ。

 

ハジメたちに攻撃を仕掛けてしまった時から既にチェックメイトをかけられていたことに今更ながらに気がつき、思わず乾いた笑い声を上げる魔人族の女。

とする石化の煙を紅い波動〝魔力放射〟で別の通路へと押し流す。

 

「……この化け物め。上級魔法が意味をなさないなんて、あんたたち本当に人間?」

 

「実は、自分でも結構疑わしいんだ。だが、化け物というのも存外悪くないもんだぞ?……とにかく、じゃさよならって事で。」

 

嘲笑するように鼻を鳴らした魔人族の女に、ハジメは冷めた眼差しを返した。

そして、何の躊躇いもなくドンナーを発砲し魔人族の女の両足を撃ち抜いた。

 

「あがぁあ!!」

 

 悲鳴を上げて崩れ落ちる魔人族の女。

 

「いつか、あたしの恋人があんたを殺すよ」

 

 その言葉に、ハジメは口元を歪めて不敵な笑みを浮かべる。

 

「俺たちは神だって殺す。その神に踊らされてる程度の奴じゃあ、俺たちには届かない」

 

 互いにもう話すことはないと口を閉じ、ハジメは、ドンナーの銃口を魔人族の女の頭部に向けた。

 

 しかし、いざ引き金を引くという瞬間、大声で制止がかかる。

 

「待て!待つんだ、南雲!彼女はもう戦えないんだぞ!殺す必要はないだろ!」

「……」

 

光輝は、フラフラしながらも少し回復したようで何とか立ち上がると、更に声を張り上げた。

 

「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。南雲も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いてくれ」

 

余りにツッコミどころ満載の言い分に、ハジメは聞く価値すらないと即行で切って捨てた。

そして、無言のまま……引き金を引いた。

 

ドパンッ!

 

だが、当然、正義感の塊たる勇者の方は黙っているはずがなく、静寂の満ちる空間に押し殺したような光輝の声が響いた。

 

「なぜ、なぜ殺したんだ。殺す必要があったのか……」

 

 ハジメは、家族たちの方へ歩みを進めながら、自分を鋭い眼光で睨みつける光輝を視界の端に捉え、一瞬、どう答えようかと迷ったが、次の瞬間には『そもそも答える必要ない』と考え、さらりと無視することにした。

 

 もっとも、そんなハジメの態度を相手が許容するかは別問題であるが……

 

 




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