ありふれた能力世界最強(リメイク版)   作:コロンKY

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遅くなりました。
内容考えるのに時間かかりまして……。


44話『改心』

必死に感情を押し殺した光輝の声が響く中、その言葉を向けられている当人(ハジメとカービィ)はというと、まるでその言葉が聞こえていないかのように、スタスタと倒れ伏すメルドの傍に寄り添うシアとルティのもとへ歩みを進めた。

 

レムユエとティオたちの方も、光輝達の護衛はもういいだろうと、ハジメたちの方へ向かう。

 

 

「ルティ、シア、メルドの容態はどうだ?」

「危なかったですね。」

「はい。あと少し遅ければ助かりませんでしたですぅ……指示通り〝神水〟を使っておきましたけど……良かったのですか?」

 

「ああ、この人には、それなりに世話になったんだ。それに、メルドが抜ける穴は、色んな意味で大きすぎる。特に、勇者パーティーの教育係に変なのがついても困るしな。まぁ、あの様子を見る限り、メルドもきちんと教育しきれていないようだが……人格者であることに違いはない。死なせるにはいろんな意味で惜しい人だ」

 

ハジメは、龍太郎に支えられつつクラスメイト達と共に歩み寄ってくる光輝が、未だハジメとカービィを睨みつけているのをチラリと見ながら、シアに、メルドへの神水の使用許可を出した理由を話した。

ちなみに、『変なの』とは、例えば、聖教教会のイシュタルのような人物のことである。

 

「ん……ハジメ」

「ハジメ!」

「ハジメさん!」

「ハジメ」

「ハジメさん。」

 

 

「……みんなありがとな、頼み聞いてくれて」

「んっ、私たちは家族だからそれくらいは気にしなくていい。」

 

「……それにしてもなんだかぞろぞろ集まって来ましたよ!?」

 

「おい、南雲。なぜ、彼女を……」

「ハジメくん……いろいろ聞きたい事はあるんだけど、取り敢えずメルドさんはどうなったの?見た感じ、傷が塞がっているみたいだし呼吸も安定してる。致命傷だったはずなのに……」

 

ハジメを問い詰めようとした光輝の言葉を遮って、香織が、真剣な表情でメルドの傍に膝を突き、詳しく容態を確かめながらハジメに尋ねた。

 

「ああ、それな……ちょっと特別な薬を使ったんだよ。飲めば瀕死でも一瞬で完全治癒するって代物だ。ただし大きな怪我は治らないがな。」

「そ、そんな薬、聞いたことないよ?」

 

「そりゃ、伝説になってるくらいだしな……普通は手に入らない。だから、八重樫は、治癒魔法でもかけてもらえ。魔力回復薬はやるから」

「え、ええ……ありがとう」

 

ハジメに声をかけられ、未だに記憶にあるハジメとのギャップに少しどもりながら薬を受け取り礼をいう雫。

ハジメは香織にも魔力回復薬を投げ渡した。

その後きっちり薬瓶をキャッチした香織も、ハジメに一言礼を言って中身を飲み干す。

香織さえ回復すれば、クラスメート達も直ぐに治癒されるだろう。

そこで、光輝が再び口を開くが……。

 

「おい、南雲、メルドさんの事は礼を言うが、なぜ、彼じ……」

「ハジメくん。メルドさんを助けてくれてありがとう。私達のことも……助けてくれてありがとう」

 

再び、香織によって遮られた。

光輝が、物凄く微妙な表情になっている。

ハジメの変わりように激しいショックを受けはしたが、それでも、どうしても伝えたい事があったのだ。

 

そして、グッと込み上げてくる何かを堪えるように服の裾を両の手で握り締め、しかし、堪えきれずにホロホロと涙をこぼし始めた。

 

「ハジメぐん……生きででくれで、ぐすっ、ありがどうっ。あの時、守れなぐて……ひっく……ゴメンねっ……ぐすっ」

 

女子は香織の気持ちを察していたので生暖かい眼差しを向けており、男子の中でも何となく察していた者は同じような眼差しを、近藤達は苦虫を噛み潰したような目を、光輝と龍太郎は香織が誰を想っていたのか分かっていないのでキョトンとした表情をしている。

 

ハジメは、目の前で顔をくしゃくしゃにして泣く香織が、遠藤に聞いていた通り、あの日からずっと自分の事を気にしていたのだと悟り、何とも言えない表情をした。

 

正直、レムユエやカービィたちには一度、自分の境遇を話す上で香織の話をしたことはあったのだが、それは奈落にいるときのことで、それ以降、香織の事は完全に忘れていたのだである。

なので、これほど強く想われていた事に、少しだけ罪悪感が湧き上がった。

 

ハジメは、困ったような迷うような表情をした後、苦笑いしながら香織に言葉を返した。

 

「……何つーか、心配かけたようだな。直ぐに連絡しなくて悪かったよ。まぁ、この通り、しっかり生きてっから……謝る必要はないし……その、何だ、泣かないでくれ」

 

そう言って香織を見るハジメの眼差しは、いつか見た「守ってくれ」と言った時と同じ香織を気遣う優しさが宿っていた。

香織は思わずワッと泣き出し、そのままハジメの胸に飛び込んでしまった。

ハジメはポンポンと軽く頭を撫でることにした。

流石家族の誰にも手を出さないヘタレなハジメである。

 

「……ふぅ、香織は本当に優しいな。クラスメートが生きていた事を泣いて喜ぶなんて……でも、南雲とそこの少女は無抵抗の人を殺したんだ。話し合う必要がある。もうそれくらいにして、南雲から離れた方がいい」

 

クラスメイトの一部から「お前、空気読めよ!」という非難の眼差しが光輝に飛んだ。

この期に及んで、この男は、まだ香織の気持ちに気がつかないらしい。

(カービィも気づいてない。)

何処かハジメを責めるように睨みながら、ハジメに寄り添う香織を引き離そうとしている。

 

「ちょっと、光輝!南雲君は、私達を助けてくれたのよ?そんな言い方はないでしょう?」

「だが、雫。彼女は既に戦意を喪失していたんだ。殺す必要はなかった。南雲がしたことは許されることじゃない」

そう光輝が言い切ったが……。

「それはどうかな?」

と、カービィが光輝の前に立ち塞がる。

 

「君は……」

 

「ボクはカービィだよ。あとボクは少女じゃなくて男なんだからね!!」

 

「そんなことはどうだっていい。何故カービィ、君はあの南雲と一緒に無抵抗の彼女を殺したんだ?」

 

「殺す必要が本当にないと思う?」

 

「どう言うことだ?」

 

「たしかにあの人には家族とか大切な人がいるかもしれない。」

「だったら……」

 

「でも、あの人は見逃したらボクたちを殺す気でいたし君たちも殺す気でいたんだよ。」

 

「それでも殺す以外の方法はあった筈だろ!」

 

「それにね?ボクやハジメたちは『頼まれて』ここに来たんだ。ボクは始めは殺す気は無かったんだけど……、でもボクだって大切な人に手を出されたら怒るし、関係ない人まで手を出されたらボクだって本気で戦わないといけなくなる。だからボクの意見を変えてあの女の人を回復させたり君に謝ったりするつもりはないよ。」

 

「………つまり君は彼女を今生き返らせることが出来るってことだろ?どうしてそうしない!」

 

「だからボクはそうする気はないって言ったよ。……だったらそこまで君があの女の人にこだわるなら君がその女の人を庇えばよかったんじゃないの?どちらにしてもボクたちが来なかったら君たちはいずれにしても殺されてたんだから。それにこの世界で誰も殺さないなんて出来ないことだよ。仮にしてなかったとしてもそれは逃げてるだけだからね。だってボクが住んでる星、『呆れ返るほど平和な星』ポップスターでも殺す人はいるし(残機()が一つとは言ってない)、ボクだって何度も殺され掛けた(殺された)ことがある。だからそれは仕方ないこと、までは言わないけどそこまで言う必要はないとボクは思う。じゃあ改めて聞くんだけどあの女の人を生き返らせるにはボクの命を丸々消費しないといけないんだ。つまり君はボクに死ねって言ってるってことだよね?そう言うことだよね?それで君がボクを殺して同じ事が言える?」

 

「あのね、光輝、いい加減にしなさいよ?大体……」

諦めの悪い光輝の物言いに、雫が目を吊り上げて反論する。

クラスメイト達は、どうしたものかとオロオロするばかりであったが、檜山達は、元々ハジメが気に食わなかったこともあり、光輝に加勢し始める。

 

 

 

 

が………。

 

 

 

 

 

 

「………………すまなかった。」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

クラスメートとハジメは固まった。

 

「俺の考えは甘かったと思う。……言い訳かもしれないが俺たちのいた世界では人の死を見る機会なんてそうそう無かった。……だから俺は気がつかなかった。そこまで言われて気づいたよ。この世界は俺たちのいた場所とは違うって。……俺は正義を掲げてきたが…………正義って言うのは人それぞれ違って、人それぞれの考え方があって、それでも自分の価値観で決めつけていたものだったんだな。人それぞれで違って当たり前だ。」

 

 

 

天之河光輝。

突然だが一般家庭の一人息子として生まれた彼には、今でも心から尊敬し憧れている人物がいる。

その人物とは、光輝の祖父である。

その祖父の名を天之河完治(かんじ)といい、業界では有名な敏腕弁護士だった。

一人暮らしだった祖父は孫である光輝を大層可愛がった。

そんな祖父を光輝はよく慕っており、所謂おじいちゃん子というやつだった。

中でも光輝が一番好きだったのは完治の話す経験談。

長年の弁護士としての仕事より得た経験を、絵本を読むが如く光輝に語って聞かせた。

小さい光輝にも分かりやすいように、また、現実的なことを言えば守秘義務から相当アレンジは入っていたが、それでも弁が立つ祖父の話は人間ドラマに満ちていて光輝は幾度も心躍らせた。

弱きを助け、強きを挫き、困っている人には迷わず手を差し伸べ、正しいことを為し、常に公平である……完治のお話は結局のところ、そういう教えを含んだものだ。

理想と正義を体現したヒーロー物語。

幼い子供に対するありふれたお話。

それ故に、光輝にとっては祖父完治こそがヒーローだった。

同年代の子供が、ヒーローに憧れるように、完治に憧れたのだ。

身近にいたからこそ、その憧れは他の子供達より強かったと言えるだろう。

『いつか自分も祖父のように』と。

 

 

だが、当然のことながら、世の中というものは完治のお話のように正義と公平が悪と理不尽を切り裂き、理想の正しさを実現し続けられるようには出来ていない。

当たり前である。

弁護士という職業とて、正義と公平は掲げていても、その一番の使命は真実の追求や悪人の弾劾ではなく依頼人の利益を守ること。

『敏腕』弁護士と呼ばれるのは、弁護士として技量に優れているというだけでなく、それだけ完治が清濁併せ持った現実的思考の出来る人間だったということでもあるからだ。

世の中の薄汚れた部分も理想や正義を掲げるだけでは足りないことも知り尽くしているということである。

………が、それを光輝に教える前に完治は他界してしまった。

光輝が小学校に入る前、急性の心筋梗塞で亡くなった。

 

完治の死は光輝に大きな影響を残した。

 

大好きな祖父を想い、思い出に浸れば浸るほど完治というヒーロー像は美化されていき、幼い光輝の心の深い部分に『理想的な正しさ』が根付いてしまったのである。

 

その正しさとは、子供の耳に心地いい祖父が教えた通りの正しさであり、同時に少数派や清濁の内、『濁』の部分を一切認めない正しさである。

カービィだって冒険の途中で残機が減った(殺された)りするがカービィがハジメたちに話すのはカービィの冒険から『濁』の部分を取り除いたものであるからだ。

 

話は戻すが、光輝は大多数の人が正しいと思うことが絶対的に正しいと思うようになったのだ。

もっとも、それは別に特別なことではない。テレビや本の中のヒーローを見て、理想の正しさを掲げる子供など、ごまんといる。

だが、そんな子供達は現実の壁に直面し多くの失敗を繰り返し、時に挫折し、諦めることを覚えて、割り切りと妥協の仕方を学び、上手く現実という名の荒波に乗る方法を自然と学んでいくのである。

 

だが自然な流れに乗るには光輝は余りに非凡すぎた。

高すぎるスペックが現実の壁を理想通りに乗り越えさせてしまった。

失敗も挫折もなく、あらゆる局面を自らの力で押し通せてしまった。

子供の理想が通せてしまったのだ。

 

結果、光輝はいつしか、自分の正しさを疑うということをしなくなった。

その危うさを真剣に受け止めることも、改めることもなかった。

 

だが、カービィによって光輝はようやく初めて、現実の壁というものを目の当たりにした。

そしてそれをようやく認めたのである。

 

「………ん?おかしいな。俺はあの勇者が間違いに気づいたように聞こえたんだが……」

「大丈夫、私もよ。」と、雫がツッコミを入れる。

 

「南雲、今まで俺の意見を押し付けてすまなかった。香織が南雲に好意を抱いていたのに俺は嫉妬してた……たぶんだが。本当にすまない!」

 

 

「………はぁ、そこまで言われたら本当は『いつもお前のせいで学校での境遇が酷かったんだがどうしてくれるんだあぁん?』……と、言いたい所だがここはお前を説得したカービィに免じて許してやる。」

 

「ありがとう。」

 

「…………で?白崎が俺に好意を持ってるってどう言うことだ?」

 

「えっと……そのっ!…… 」

香織は両手を胸の前で組み頬を真っ赤に染めて、深呼吸を一回すると、震えそうになる声を必死に抑えながらはっきりと……告げた。

 

「貴方が好きです」

「……白崎」

 

香織の表情には、羞恥と想いを告げることが出来た喜びの全てが詰まっていた。

そして、一歩も引かないという不退転の決意が宿っていた。

 

覚悟と誠意の込められた眼差しに、ハジメもまた真剣さを瞳に宿して答える。

 

「………まだ白崎の想いには応えられない。何故ならそれが奈落に落ちる前の俺か、変わり果てた今の俺か、はっきりしてないからだ。……はっきりして尚、俺の事が好きなら……俺はその想いに応える。」

 

「……ハジメくん。」

「心配すんな。またしばらくしたら会えるからな。あとついでだが勇者こと天之川は貰ってくぞ。」

 

「「「「「え」」」」」

クラスメートたちはハジメがそっち系だったのか思い込む。

 

「勘違いすんな。俺たちがこの勇者にきっちり現実を突きつけてやる為に連れて行くんだよ。」

 

「わかった!次会う時までにしっかりと決めるからね!」と、香織はハッキリと言う。

 

「あぁ。」

ハジメは頷く。

 

「でも光輝がいないと大幅に戦力が下がるわ。」

 

「その心配はない。」と、ハジメが雫に答えるようにドサっとハジメが錬成で作成した高性能の剣や盾、杖のアーティファクトが入っている。

 

「……これは?」

 

「一つ一つが強力なアーティファクトだ。これがあれば戦力は大幅に上がるだろうからそれで補え。」

 

「わかったわ。」

 

 

 

 

 

 

 

――――色々ありつつ、遂に、一行は地上へとたどり着いた。

 

香織は、未だ、俯いて思い悩んでいる。

雫は、そんな香織を心配そうに寄り添いながら見つめていたのだった。




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