ありふれた能力世界最強(リメイク版)   作:コロンKY

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51話『グリューエン大火山』

 

 『グリューエン大火山』

 

それは、アンカジ公国より北方に進んだ先、約百キロメートルの位置に存在している。

見た目は、直径約五キロメートル、標高三千メートル程の巨石だ。

 

この『グリューエン大火山』は、七大迷宮の一つとして周知されているが、『オルクス大迷宮』のように、冒険者が頻繁に訪れるということはない。

それは、内部の危険性と厄介さ、そして『オルクス大迷宮』の魔物のように魔石回収のうまみが少ないから……というのもあるが、一番の理由は、まず入口にたどり着ける者が少ないからである。

 

 その原因が、

 

「……まるで天空城だな」

 

 そう、『グリューエン大火山』は、かの天空の城を包み込む巨大積乱雲のように、巨大な渦巻く砂嵐に包まれているのだ。

その規模は、『グリューエン大火山』をすっぽりと覆って完全に姿を隠すほどで、砂嵐の竜巻というより流動する壁と行ったほうがしっくりくる。

 

しかも、この砂嵐の中にはサンドワームや他の魔物も多数潜んでおり、視界すら確保が難しい中で容赦なく奇襲を仕掛けてくるというのだ。

並みの実力では、『グリューエン大火山』を包む砂嵐すら突破できないというのも頷ける話である。

 

「つくづく、徒歩でなくて良かったですぅ」

「今のボクはホバリングが使えないからこの潜水艇があって助かったよ。」

 

今ハジメたちは砂漠の世界を潜水艇で進んでいるのたわ。

 

砂嵐の内部は、まさしく赤銅一色に塗りつぶされた閉じた世界。

『ハルツィナ樹海』の霧のように、ほとんど先が見えない。

 

『グリューエン大火山』の入口は、頂上にあるとの事だったので、進める所まで潜水艇で坂道を上がっていく。

坂を登れる理由は潜水艇を更に改造して陸空海どんな地形でも進める乗り物にしてしまったからである。

 

 

やがて山頂に着いた。

 

ハジメ達は、その場所にたどり着くと、アーチ状の岩石の下に『グリューエン大火山』内部へと続く大きな階段を発見した。

ハジメは、階段の手前で立ち止まると肩越しに背後に控えるカービィ、レムユエ、シア、ティオ、ルティ、光輝の顔を順番に見やり、自信に満ちた表情で一言、大迷宮挑戦の号令をかけた。

 

「やるぞ!」

「おー!」

「んっ!」

「はいです!」

「うむっ!」

「はい!」

「あぁ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『グリューエン大火山』の内部は、『オルクス大迷宮』や『ライセン大迷宮』以上に、とんでもない場所だった。

 

 

 

 

……難易度の話ではなく、内部の構造が。

 

まず、マグマが宙を流れている。

マグマが宙に浮いて、そのまま川のような流れを作っているのだ。

空中をうねりながら真っ赤に赤熱化したマグマが流れていく様は、まるで巨大な龍が飛び交っているようだ。

 

また、当然、通路や広間のいたるところにマグマが流れており、迷宮に挑む者は地面のマグマと、頭上のマグマの両方に注意する必要があった。

 

 しかも、

 

「うきゃ!」

「シアっ!コピー能力アイス!ごく・こちこちスプリンクラー!」

カービィがコピー能力アイスで何とか数秒だけマグマを凍らせてその隙にハジメが救出した。

「大丈夫か?」

「有難うございます、カービィさん、ハジメさん。いきなりマグマが噴き出してくるなんて……察知できませんでした」

 

と、シアが言うように、壁のいたるところから唐突にマグマが噴き出してくるのである。

本当に突然な上に、事前の兆候もないので察知が難しい。まさに天然のブービートラップだった。

 

そして、なにより厳しいのが、茹だるような暑さ――もとい熱さだ。

今はカービィがコピー能力アイスを発動したから何とかなったがコピー能力アイスだけでは戦力の幅が減ってしまうのだ。

 

 

そして天井付近を流れるマグマから滴り落ちてくる雫や噴き出すマグマをかわしつつ進んでいると、とある広間で、あちこち人為的に削られている場所を発見した。

ツルハシか何かで砕きでもしたのかボロボロと削れているのだが、その壁の一部から薄い桃色の小さな鉱石が覗いている。

 

「お? 静因石……だよな?あれ」

「うむ、間違いないぞ、ハジメよ」

 

ハジメの確認するような言葉に、知識深いティオが同意する。

どうやら、砂嵐を突破して『グリューエン大火山』に入れる冒険者の発掘場所のようだ。

 

「……小さい」

「ここら辺は小さいのが多いね。」

……とレムユエとカービィの言うと通り、残されている静因石は、ほとんどが小指の先以下のものばかりだった。

ほとんど採られ尽くしたというのもあるのだろうが、サイズそのものも小さい。

やはり表層部分では、静因石回収の効率が悪すぎるようで、一気に、大量に手に入れるには深部に行く必要があるようだ。

 

ハジメは、一応、鉱物系探査で静因石の有無を調べ、簡単に採取できるものだけ、『宝物庫』に収納すると、レムユエ達を促して先を急いだ。

 

そしてカービィを氷としてみんなでひんやりしてカービィからコピー能力スパークの刑をくらわせてから回復させて、再びコピー能力アイスになると更に七階層ほど下に降りた。

記録に残っている冒険者達が降りた最高階層である。

そこから先に進んだ者で生きて戻った者はいない。

気を引き締めつつ、八階層へ続く階段を降りきった。

 

その瞬間、

 

ゴォオオオオ!!!

 

強烈な熱風に煽られたかと思うと、突如、ハジメ達の眼前に巨大な火炎が襲いかかった。

オレンジ色の壁が螺旋を描きながら突き進んでくる。

 

「ん、私がやる。絶禍」

 

そんな火炎に対し、発動されたのはレムユエの魔法。

ハジメ達の眼前に黒く渦巻く球体が出現する。

重力魔法だである。

ただし、それは対象を地面に押しつぶす為のものではなかった。

 

人など簡単に消し炭に出来そうな死の炎は、直径六十センチほどの黒く渦巻く球体に引き寄せられて余すことなく消えていく。

余波すら呑み込むそれは、正確には消滅しているのではない。

黒く渦巻く球体――重力魔法『絶禍』は、それ自体が重力を発生させるもので、あらゆるものを引き寄せ、内部に呑み込む盾なのだ。

 

カービィもこれを見てコピー能力グラビティの新たな技『グラビティウィンド』を思いついた。

 

そして火炎の砲撃が全てレムユエの超重力の渦に呑み込まれると、その射線上に襲撃者の正体が見えた。

 

それは、雄牛。

全身にマグマを纏わせ、立っている場所もマグマの中。

鋭い二本の曲線を描く角を生やしており、口から呼吸の度に炎を吐き出している。

 

さっそくカービィが牛を凍らせて、コピー能力コックで料理してハジメたちは食事をとった。

 

 

「「「「「「「ご馳走様でした。」」」」」」」

そしてカービィは再びコピー能力アイスを発動させて進むことになった。

 

その後、階層を下げる毎に魔物のバリエーションは増えていった。

マグマを翼から撒き散らすコウモリ型の魔物や壁を溶かして飛び出てくる赤熱化したウツボモドキ、炎の針を無数に飛ばしてくるハリネズミ型の魔物、マグマの中から顔だけ出し、マグマを纏った舌をムチのように振るうカメレオン型の魔物、頭上の重力を無視したマグマの川を泳ぐ、やはり赤熱化した蛇など……

 

生半可な魔法では纏うマグマか赤熱化した肉体で無効化してしまう上に、そこかしこに流れるマグマを隠れ蓑に奇襲を仕掛けてくる魔物は厄介なこと極まりなかった。

なにせ、魔物の方は、体当りするだけでも人相手なら致命傷を負わせることが出来る上に、周囲のマグマを利用した攻撃も多く、武器は無限大と言っていい状況。

更に、いざとなればマグマに逃げ込んでしまえば、それだけで安全を確保出来てしまうのだ。

 

ついにカービィはコピー能力アイスだけでは限界を迎え、奥の手『武具召喚』でプラチナソードを片手に持ちながらコピー能力アイスのままで戦い始めた。

 

例え、砂嵐を突破できるだけの力をもった冒険者でも、魔物が出る八階層以降に降りて戻れなかったというのも頷ける。

そして、なにより厄介なのは、刻一刻と増していく暑さである。

 

「はぁはぁ……暑いですぅ。カービィさん、新しい氷をください。」

「……シア、暑いと思うから暑い。流れているのは唯の水……ほら、涼しい、ふふ」

「むっ、カービィよ!レムユエが壊れかけておるのじゃ!目が虚ろになっておる!早く氷を!」

 

そう、途中から暑さが増していき、解決策としてカービィがコピー能力アイスの『アイスほおばり』で敵を凍らせて氷にして皆んなに与えているのだ。

 

暑さに強いティオとコピー能力で何とかしてるカービィ以外、ハジメや光輝、ルティですらダウン状態だ。

一応、更に冷房型アーティファクトで冷気を生み出しているのだが……焼け石に水状態。

急いでカービィはストックしていた魔物を凍らせて皆んなに配った。

 

「はぅあ~~、涼しいですぅ~、生き返りますぅ~」

「……ふみゅ~」

 

 女の子座りで崩れ落ちたレムユエとシアが、目を細めてふにゃりとする。タレムユエとタレシアの誕生だ。

 

ハジメは、内心そんな二人に萌えながら『宝物庫』からタオルを取り出すと全員に配った。

 

「二人とも、だれるのはいいけど、汗くらいは拭いておけよ。冷えすぎると動きが鈍るからな」

「……ん~」

「了解ですぅ~」

 

「皆んなは、まだ余裕そうじゃの?」

「カービィとティオほどじゃない。流石に、この暑さはヤバイ。もっといい冷房系のアーティファクトを揃えておくんだった……これはカービィ様々だな。」

「あぁ。正直俺は他の舐めてたが南雲の言う通りだったな。」と光輝も呟く。

「ふむ、ハジメたちでも参る程ということは……おそらく、それがこの大迷宮のコンセプトなのじゃろうな」

 

「コンセプト?」

 

「うむ。ハジメとカービィから色々話を聞いて思ったのじゃが、大迷宮は試練なんじゃろ?神に挑むための……なら、それぞれに何らかのコンセプトでもあるのかと思ったのじゃよ。例えば、二人が話してくれた『オルクス大迷宮』は、数多の魔物とのバリエーション豊かな戦闘を経て経験を積むこと。『ライセン大迷宮』は、魔法という強力な力を抜きに、あらゆる攻撃への対応力を磨くこと。この『グリューエン大火山』は、暑さによる集中力の阻害と、その状況下での奇襲への対応といったところではないかのぉ?」

 

 ティオの考察に、「なるほど」と頷くハジメたちだった。

 

 

 

迷宮攻略はまだまだ続く。




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