ヤンデレの勉強中。
ヤンデレなWちゃんに愛されたいだけなんだ。
自己満足ようです。
(続きは)ないです。
──光の差し込まない薄暗い不気味なコンクリートの部屋。
雨漏りしているのだろうか、天井からポタポタと落ちて来る大きな水滴が顔にぶつかる感触で目が覚めた。
寝起き直後だからなのか、脳が働かず思考が纏まらない。ぼんやりと、霞みがかった意識を少しづつ覚醒させながらゆっくりと周りを見渡した。
暗い、まず最初にそう思った。
視覚が暗闇に慣れておらず周りが確認できない。窓が存在しないのか風も感じない、という事はここは地下空間、独房だろうか?
そして次になぜ自分はこんなところに居るのかと疑問を抱いた。
こんなよくわからない場所に足を運んだ覚えはない。自分は確か、ドクターから頼まれた、ロドスから依頼された仕事で……。
「…………っ!」
そこまで考えて、ようやく自分が椅子に座らせて拘束されている事に気がついた。
酷く痛む頭を押さえようとした時、なぜか腕が動かなかった。
手首に違和感を覚えてソレを振り払うように動かすと金属の鎖が擦れるようなカシャカシャという音を暗闇に響いた。金属製の拘束具が痛いくらいに手首と足首を締め付けていて完全に身動きが取れなくなっている。
一気に意識が覚醒した。
全身に力を巡らせて強引に振り解こうとするも拘束具はビクともしない。自分はなぜこんな状況に陥っているのか、焦燥感が募っていく。
「あら、ようやくお目覚めかしら?」
「っ!?」
突然、耳元で囁かれた。
鼓膜を擽るようなソプラノボイスに聴覚が支配され、弾かれたように顔を向けるとそこにはそこにはニッコリと笑顔を浮かべる女性がいた。
「っ………W」
「ええ、おはよう」
サルカズの傭兵『W』。
薄暗い暗闇の中でも目を惹く銀色の髪に炎のような色の瞳、血のように赤い角を持つ女性。
そして思い出した、仕事先でレユニオンとの戦闘になった際に自分はこの女に敗北して気絶させられた事を。死を覚悟していたが、なぜ今も自分が生きているのかわからない。
何が目的だ、尋問か? いや、もしかしたら、これから……。
「そんなに怯えた顔をしないでちょうだい。少なくともあなたが思ってるような事態にはならないわ」
正面に移動してきた彼女はニッコリと笑顔を浮かべたままズイッとWが顔を近づけてくる。
香水でもつけているのか柑橘系の甘い香水の匂いが鼻腔に入り込んだ。
吐息が顔にかかるくらいに距離が近い。
彼女を前にして思わず体が強張った。それは女性慣れしていないとか恥ずかしさからなどではなく、単純な恐怖心からだった。
目の前の女が怖い。
「……だったら今すぐこの拘束を解いてそのまま帰してほしいんだけど」
「せっかちね、もう少しゆっくりしていけばいいじゃない」
「ふざけるな、お前と遊んでるほど暇じゃない」
「……どうして?」
Wから表情が消えた。
纏う雰囲気の変わった彼女の姿を見て警鐘が自分の中で鳴り響く。
細い華奢な指が腹部に添えられ、指先でなぞるように腕が上へと動いてくる。
胸元を擽り、首元へと手が添えられた。
「がぁっ!……ぐっっ!?……」
「ハハ……それ、いい
息が出来ない。
Wの細い指が喉に喰い込み、万力のようにギチギチと締め付けてくる。腕を振り解こうにも全身が拘束されていて動く事すらままならない。このままでは本当にマズい、酸欠で意識が朦朧としてきた。
穏便に済ませられればそれでよかったが、強行手段に出ることにした。自分は感染者だ、故にユニットは必要ない。
吹き飛んで行きそうな意識をどうにかつなぎ止めながら全身を強化するアーツを発動させ拘束具を引きちぎる為に力を入れた。
「………んっ」
「──っ!?」
だが突然、目の前の女に唇を重ねられた。
酸素を求めてだらしなく開いていた口に差し込まれた舌が口内を蹂躙するかのように暴れ回った。
訳がわからない、Wの行動に困惑して体が固まり発動させたアーツも途切れた。
頭がおかしくなりそうだった。
「………
「ぷはぁっ!!……はぁ…はぁ…はぁ…いきなり、なんの…つもりだよっ」
意識が飲み込まれそうになるなか、差し込まれた舌と唇に強く噛みついた。
Wは噛み付かれた痛みから顔を離して僅かに距離を取った。口元が解放された瞬間、肺に空気を取り込み乱れた呼吸を整えながら目の前の女を睨みつけた。
Wは痛みを堪えるように口元を抑いでいた手を退かすと、口元からポタポタと零れて掌に溜まっていく血液をジッと見つめていた。
「痛いじゃない……すごく、痛かったわ」
「知る、かよ。なんなんだよお前……」
「あ〜あ、こんなに血が出てる」
この女は何を考えてるのかわからない、だから怖い。
戦場で顔合わせて命のやり取りをする事もあれば、なぜかを自分を助けてくれる時もあった。意図が読めない、何が目的なのかわからない。
Wが幽鬼のようにゆっくりと近づいてきた、思わず後退りたくなったが椅子に縛りつけられている所為でそれは出来ない。はやる気持ちを抑えながら焦らず今度こそアーツを発動させようとするが。
「ぎぃっ、がっああぁぁあ!!?」
太腿が激痛が走りじんわりとした熱に包まれた。
そこへ視線を向けるとWが懐から取り出したナイフを太腿へと突き刺していた。ナイフは刀身が見えなくなるくらいに深々と突き刺さっていた。
Wはスプーンでスープでもかき混ぜるかのようにグリップを動かしていた。あまりの痛みに堪えようのない悲鳴をあげた、涙が零れてきそうになったが痛すぎて涙を流している暇がない。
「ほら、動かないでよ。ジッとして」
「ぐっ、ああっ……!」
Wはナイフを弄る手を止めて引き抜くと、後ろ髪を掴んでグッと引っ張り強引に上を向かせてきた。
痛みと涙を堪えながら、視線を向けるとWが自分の血液の溜まった掌を口元に当てがってきた。抵抗しようにも既に遅く、口の中に赤い水が流し込まれた。
気持ち悪い。
吐き出そうとするも首が上を向くように固定されているから液体は流れていく、さらにWは吐き出させないようにする為に血で濡れた手で口元にフタをしてきた。
まだ生温かい熱を持った血液が喉を通って胃袋の中に落ちていった。
Wは僕が血液を飲み干したのを確認すると恍惚とした表情を浮かべてまた唇を重ねてきた、それは血の味がするキスだった。唇を離すと血と唾液の糸を引く口元を拭った。
「ごめんなさい、痛かったわよね。けど、こうでもしないとあなた逃げちゃうじゃない?」
「………っ」
「それにしてもやっぱりすごいわね、あなたのアーツ」
消耗からか、吐き出そうする気力も返事をする気力も湧いてこない。
Wはグッタリとして動かなくなった僕の髪を撫でながらナイフで広げられた大きな傷を見つめていた。
太腿の傷がゆっくりと時間をかけて巻き戻すかのように修復されていく、このアーツ能力を僕は『活性化』と呼んでいる。これは身体能力や再生能力を爆発的に向上させられる。
このアーツを使えばこの拘束具も簡単に破壊できるが、深傷を負い過ぎると自動でリソースが全て再生修復の方に行ってしまうので身体能力の強化ができなくなる。
Wもそれをわかっていて僕のアーツを封じに来たのだろう。
Wがどこから水の溜まった桶とタオルを持ってきた、タオルを濡らして絞ると血で汚れた自分の顔と僕の顔を丁寧に拭き取ってくる。
「お、まえ…なにがしたいんだ? ただの趣味なら冗談キツいぞ」
「ん?……」
この女の目的がわからない、まさか拷問が趣味なのか?
それなら確かに僕はうってつけの相手だろうなんせどれだけ傷つけての時間が経てば傷が治ってしまうのだから長い間楽しむことができる。
声を震わせながら弱々しくWを睨みつけると彼女はキョトンとした表情を浮かべた後、面白そうに笑った。彼女の笑い声がへばりつくように嫌に耳に残る。
「そんな訳ないじゃない。そうね、どこから説明するべきかしらね」
Wは顎に指を当て、悩むような、勿体ぶるような、様子でクスクスと笑っている。
すると頬に両手を添えてきて自分と目線が合うように顔を持ち上げてきた。
そしてこの女のドロリと濁ったような瞳を正面から捉えてしまった。
「私はね、あなたのことが好きなの。愛してると言ってもいいわ、あなたは覚えていないでしょうけど私はあなたを忘れた事はなかったわ」
「………は?」
場違いと言ってもいい程の突然すぎる告白に思考が止まった。
この女は今なんて言った? 好き? 誰が、誰を?
Wは少しだけ恥ずかしそうに頬を朱色に染めながらながら言葉を続ける。
「あなたからすれば私という人物は偶々助けた人間の一人なんでしょうね。けど私からすれば違うのよ、戦場のど真ん中であなたに助けられた日を忘れた事はないわ。自分だって死にそうなくらいボロボロだったのに最後まで私を見捨てずに助け出してくれた」
矢継ぎ早に告げられるWの言葉を飲み込むことができない。そもそもいつ僕が彼女を助けた? 確かに僕は偽善に満ちた人助けは何度か行った事はある、その中に彼女がいたのか?
「我ながらちょろいと思うわ。それでも私はあなたの事が欲しくなっちゃったの……けどあなたの周りには色んな女がいるのよね、ロドスも龍門も他にもあなたに意識を向ける女は沢山いたわ」
「………」
言葉が出ない、金縛りにでもあったかのように体が固まってしまっている。思考も定まらない、脳が正常に機能していない。
自分の中のなにかがドロリと濁った瞳に吸い込まれていく。
頬から手を離したWは懐から何かを取り出した。
「なんだよ、それ……」
それは注射器だった。
冷や汗が流れた。とても嫌な予感がする、今すぐに逃げ出すべきだと本能が叫んでいる。
Wはニコニコと笑いながら注射器の先端に被せられていたキャップを外した。中には紅茶のような色の不気味な薬剤が詰まっていた。
「だから考えて思いついたの、あなたが私の事しか見れないように、私の事だけしか考えられないようにすればいいじゃないって。……ああ、体に害があるような薬じゃないから安心していいわよ。ただ色々と意識が吹っ飛んで私の事しか考えられなくなるだけだから」
逃げ出したくても体が動かない、首筋に注射針が突き刺さる。
「さぁ、熱く絡みあいましょうか」
何かが流れて混んでくる感触と共に意識が落ちていった。
最後に見たのは口元を吊り上げて、悪魔のように歪んだ笑みを浮かべるWの姿だった。
主人公くんはロドス所属の女難持ちのモブオペ、Wちゃんに美味しく頂かれちゃった。
誰か続き書いてくれ。