summer pockets 【If Story】 〜もう一度だけ、あの眩しさを〜   作:白羽凪

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なんか...思ったよりぐだってますね。
いかんいかん、軌道修正しっかりしよう。


第三話 弱さ打ち明ける誰か

~羽依里side~

 

 

「え...?」

 

 そう思って目元を触れてみると、少しばかり濡れていたことに俺は気づいた。

 

 

「...何か、辛いことがあったら、俺、聞きますよ」

 

「...いや、そんなこと」

 

 

 他人に弱みをさらけ出すのは嫌だった。

 ましてや、さらに惨めさが募るだけで、何の得もない気がしていた。

 

 言い方は悪いが、敗北感で満たされるのだ。

 

 けれど、この人の声音は、優しさそのものだった。

 一見幸せそうな人なのに。

 

 きっと、その裏にはもっと重たい、闇のようなものを感じた。

 どんな人生を生きてきたのだろうか。俺には計り知れなかった。

 

 

 

「...瑚太朗君、あまり止めちゃ悪いよ?」

 

「分かってるけど...なんか、こういうの、見過ごせなくてさ」

 

「...だろうね。瑚太朗君らしいや」

 

 

 小鳥さんはあきらめたようにため息をついて、ふっと微笑んだ。

 そのやさしさを、俺は知らない。

 

 だから、少しでも、と触れたくなった。

 話してみるだけというのも、ありなのかも知れない。

 

 

 

「...お話、聞いてもらえますか?」

 

「時間が許す限りは、いくらでも」

 

 

 そう答えられて、少し肩の力が抜けた。

 見ず知らずの誰かのはずなのに、どこからか安心感が湧いてきた。

 

 この人になら、言ってみてもいいかもしれない。

 

 

 俺は、もう一度椅子に座った。 

 そして、淡々と弱音を口にする。

 

 

「...なんか最近、どうしようもなくダメなんです」

 

「うん...色々あるんだろうな」

 

 

 何が、とは聞かなかった。

 

 

「...妻が亡くなって、一人で娘を育ててきたのに...何もうまくいかなくて、距離も離れるままで...。正直、二人がうらやましいんです。こうして今二人並んで座ってることが、嫌なくらいに妬ましくて...!」

 

 言えば言うほど、自分が黒く染まっていく気がしていた。

 けれど、これが本心と言えば本心である。

 

 だからこそ、安易に引けなかった。

 

 

 黙って聞いていた二人だったが、先に口を開いたのは小鳥さんの方だった。

 

 

「...私たちも、簡単に幸せになったわけじゃないですよ」

 

「...何があったんですか?」

 

「えーっと...ちょっとにわかに信じられない話かもしれないですけど...けど、私たちがたどってきた道、お話します」

 

 

 先ほどとは打って変わって小鳥さんは、冷静に、動じることなく自分の過去を告げた。

 

 

 

 

 

 それは、本当に信じられない話だった。

 この世に、そんな戦いがあったなんて、さすがに信じられる話ではなかった。

 

 けれど、その過去を話す表情があまりにも真剣で。嘘偽りないような内容で。

 それを信じずにはいられなかった。

 

 

 その上で、瑚太朗さんは、命を賭して小鳥さんを愛していた。

 何度も、死にかけながら、過去の自分に気づきながら。

 

 それでも、一途な愛を、瑚太朗さんは小鳥さんに送っていたのだ。

 

 俺は、しろはにそこまでしてやれていたのだろうか?

 芯の強さが、違うのではないかと。

 

 また、心のどこかで後悔が生まれる。

 

 

 

 

「...今じゃ俺、すごい小鳥の迷惑になってるかもしれないですけど...、でも、命を賭けて生きてるというのは、変わりません」

 

「...そうですか」

 

「なんて、すいません。一方的な話ばっかり」

 

「いえ、こっちが聞こうとしてたので」

 

 

 実際、俺の方から二人の過去を聞こうとしていたのだから、何も文句は言えない。

 

 

 

「...ただ、俺が言うのもなんですけど...」

 

 

 少しためらいながら、瑚太朗さんは口にした。

 

 

「まだ...娘さんがいるんですよね? ...守るものがあるなら、まだ死ねませんよ」

 

「...分かってます」

 

「分かってても言います。俺って、おせっかい焼きなんで。...人の人生に干渉できるほど俺は強くないですけど...、それでも、鷹原さんが苦しんでいるなら、その後ろ盾になれる人間になりたいと思ってるんです」

 

 

 その目は、相も変わらず信念が座っていた。

 この人は、きっと本気で俺のことを思っている。

 

 本気で、俺を救いたいと思っているんだ。

 大切だと思っていた場所を失いかけた過去があるから。

 

 

 

「...電話番号、教えておくんで、苦しくなったら言ってください。...どこまで力になれるかは分かりませんが、力になりたいんで」

 

 

 そういうなり、瑚太朗さんは自ずから電話番号を差し出してきた。

 断ることもできないまま、俺はその番号を交換する。

 

 

 

 

 ふと、一周回って、頭がすっきりした気がした。

 何も解決してないのに、心が楽になった。

 

 嫉妬の感情が特別薄れたわけじゃないのに...。

 

 それはきっと、苦しさを共有する誰かができたから、だろうか。

 

 

 悪い気はしなかった。

 

 

「...それじゃ、そろそろ仕事戻らないといけないので、帰ります。今後とも弊社のこと、よろしくお願いします」

 

 

 俺は、立ち上がって、今度こそ踵を返した。

 さすがにもう呼び止める声はない。

 

 代わりに、励ましの言葉がまた響いた。

 

 

「いつでも連絡ください。俺、割と暇してるんで」

 

「瑚太朗君、まだアシスタントもままならないしね」

 

「...です」

 

「...ははっ。...また、いつか、絶対に連絡します」

 

 

 最後の言葉はちゃんと言えただろうか。

 その真偽は誰も知らないが、きっと大丈夫だろうと俺は今度こそ天王寺家を出た。

 

 

 今日くらいは、ちゃんとうみと話してみよう。

 まずは、それから始めないと。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、現実は残酷で。

 

 

 

 

 

 会社に戻る数分前、見知らぬ番号が、俺の携帯を鳴らした。

 何かと思って電話を取ってみると、若い男性の声が、緊迫性を孕ませながら口早に避けんだ。

 

 

 

「あっ、うみちゃんの親御さんですか!?」

 

「はい、そうですけど...」

 

「なら言います!! うみちゃんが...

 

 

 

 

 病院へ...運ばれました」

 

 




今回は特別クロスオーバー先を書くことはないです。
...が、まあ、このうみの通う小学校の担任は他作keyのキャラクターです。

といったところで今回はこの辺で。
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