二度目の人生で、Vtuberになりました。   作:SANO

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10:歌コラボ(1)

 告知していた時間となり、父からジェスチャーで配信が始まったことを受けて、俺は軽く息を吸い込む。

 そして……

 

 

「こんゆき~。【サンステージ】所属バーチャルミャーチューバーの冬空ユキです」

 

 

え?

ナニコレ!?

こんちゃ~

え?腰まで映ってるんだが?

マジか!?

おお~

こんゆき~

 

 

 予想していた通り、挨拶そっちのけで画面に映る俺達の姿に対するコメントが、目で追えないほどの勢いで流れていく。

 

 

 ふっ、計画通り(ニヤリ)

 

 

 ……まあ、俺もついさっき知ったことなんだけどね。

 

 

 既に書き込まれているように俺――冬空ユキや、隣で笑いを堪えている橋本さん――水原カレンの姿は、いつもであれば胸が少し映るくらいまでしか無い所を、今はスカートを穿いているのが何となく分かるぐらいまでカメラが引いた状態で映し出されていた。

 さらに、現実の俺と同じように両手でマイクを持っている姿をもきちんと反映されており、ちゃんと視聴者にも分かりやすいように持っているマイクを上下に振ってみると、同じように動いてくれる。

 

 ヤバイな。動きがトレースされるのって、こんなに楽しいのか。

 

 

「すごいよね?これ、ちゃんと動きも反映されてるんですよ!」

 

 

はしゃぐユキちゃんすこ

そのマイクの動きはアカンて

スゲー!

デビューして1カ月も経ってないのに早いよ

スゲェ

すごいすごい

うっ……ふぅ……

もしもし?ポリスメン?

 

 

「っと……え~こほん。コラボということで、今日一緒にやっていく人を紹介します。遅くなりましたが、自己紹介どうぞ~」

『もう、本当だよ。みんな、こんちゃ~!【サンステージ】の良心こと水原カレンだよ~!!』

 

 

 画面端にいたカレンをスタッフがタイミングよく、中央にいた俺の横へと移動してくれる。

 現実では、ずっと俺の隣にいたんだけどね。

 

 

こんちゃ~

こんちゃ~

やはり並んで分かる、ユキちゃんの小ささよw

これでJKなんだぜw

 

 

「いや、別に私は小さくないが?」

『だよねぇ。ユキは小さくないよ』

 

 

 最近、俺のチャンネルで定番ネタになり始めている視聴者――特にユキ友となった人達からの身長関係イジリに、分かっていながらも条件反射的に声を出してしまう。

 同意してくれるカレンに「でしょう?」と言いたくなるが、その前に……

 

 

「じゃあ、この手は何です?」

『ちょうどいい位置にあるから、つい?』

「いや、つい?じゃないが?」

『まぁまぁまぁまぁ。それより説明を始めないと、オープニングだけで配信が終わっちゃうよ』

 

 

 話題を逸らされたが、実際にオープニングだけで既に5分経過しているのに、何一つ説明ができていない。

 このままダラダラと続けたら、10分越えをしてしまいそうだ。

 

 

「さて。もう感づいているとは思いますが、今日は家からではなく【サンステージ】所有のスタジオからお送りします」

 

 

だろうね

これで外を気にせずできる

初スタジオ?

 

 

「そうです。スタジオに入るのは今日が初めてです」

『それにプラスとして、ユキちゃんは初コラボ、初オフと初めてが一杯だよね』

「あっ、そっか。オフで会う同期では、カレンが初めて……」

『やった。一番だ』

「ちょっ、やっ、抱き着くなぁ」

 

 

 今は、抱き着かれている事すらトレースされてしまうのだから、やめてくれ。

 

 

この技術サイコー

てぇてぇ

声だけじゃなく、ちゃんと抱き着いてのを見れる

ぁぁ、ここが天国か

もう抱き着き配信でよくね?

 

 

「もう、説明ができないので離れてっ」

『は~い。ごめんね』

「もう……えっと。今日の予定は、最初に急遽募集していたマシュマロを少し食べた後、何曲か歌って、そのあと感想を言いつつ終わろうと思ってます」

 

 

OK(ズトン)

マジ?募集に気づかなかった

まるまる歌ってもええんやで?

 

 

「マシュマロは今も受け付けてます。どのくらいで反映されるか分かりませんし、採用するかは別問題ですが」

『今日は、スタジオだからスタッフさん達が審査するから、フィルターは厳しめだよ』

「あと、一時間まるまるは無理です。私の体力が持たない」

 

 

よっしゃ、すぐに送ろ

ここのスタッフなら、きっと採用してくれる

ユキちゃんの体力は、幼稚園児レベルだし仕方ない

園児レベルw

 

 

 小学生くらいの体力はあるわ!

 と反論したくなったが、余計にイジられるだろうと呼吸を整えて、予定を進行していく

 

 

「スゥーー……さて、それじゃあマシュマロを食べましょうか」

『じゃあ、最初は私から……これで』

 

 

                             

お二人に質問です。

既にオフで会っているなら、どんな印象を感じましたか?

会っていないなら、声だけでどんな印象を感じましたか?

 

マシュマロ

❏〟

 

 

「あ~……」

 

 

 チラリと隣を見ると、向こうも同じようにチラリとこちらを見てきたので、バチリと視線が合ってしまった。

 相手と話すときは、あまり目を見て話すタイプではない俺は、心の準備もなく目が合ったことに動揺して、速攻で視線をうつむき気味に逸らしてしまう。

 

 そして、そんなやり取りを【冬空ユキ】は寸分の狂いもなくトレースしてしまっているために……

 

 

ユキが乙女すぎるw

やめろ、その仕草は俺にささる

かわいい

最高かよ

 

 

「あっ、あー。ええと、どんな印象を感じたかだよね?少し天然だなぁって」

『え?嘘!?』

「初めて会った時の話をしても?」

『ああ……どうぞ』

 

 

なにやらかした?

受けユキが攻めユキになったw

ケモミミあったら垂れてそう

 

 

 期待する視聴者に、初めて会った時の“入る部屋をミス”と“眼鏡をお辞儀で遠投”を多少なりとも誇張しつつ紹介すれば、案の定の“天然”称号がカレンへと付与される結果となった。

 

 

-----

 

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--

 

-

 

 

 4つほどのマシュマロを食べ終わると、スタッフから“歌って”という指示を受けた。

 

 

「それじゃあ、マシュマロはこの辺でしましょう」

『これ以上食べると、お腹いっぱいで歌えなくなるからね』

「ですです」

 

 

おっ?

とうとうか

待ってた

 

 

「えっと準備のほうは……」

 

 

 視線をスタッフの方へ向けると、両手で〇とジェスチャーをしてくれる。

 

 

「大丈夫ですね。あっ、最初に歌う曲は決まってるので、リクエストは次になります」

 

 

 確認をとっている間に、歌ってほしい曲名がコメント欄を埋め尽くす勢いで流れてくるので、慌てて説明する。

 というか、中身がオッサンじゃないと知らないような曲とかも見えてたけど、設定上はJK二人だから知らない可能性もあるんだぞ?

 俺なんて外見上は、リアル女子中学生だし

 

 まあ、今から歌う曲もJKからすれば古い部類に入るんだけれどね。

 

 そうこうしているうちに、スタジオに設置されているスピーカーから聞き慣れた曲が流れだした。

 

 

あ、これは

デュエットでこれなら妥当

wktk

配役が想像できる

懐かしい

これかぁ

 

 

 流れるメロディーに負けないほど、大きく脈打つ心臓の音が全身を震わせる。

 

 チラリと隣を見れば、視線に気づいたカレ――橋本さんが、声が入らないように口パクで「大丈夫」と笑顔で言うと俺の方を優しく叩く。

 その笑顔で、配信が始まる前に彼女と一緒に、俺の歌声についての相談をしたことを思い出す。

 

 

 

 橋本さんは前置きとして、似たような声について研究している知り合いがいると言いながら、聞いている人数によって効果の度合いに差があるのかもしれない。という仮説を出してきたのだ。

 自分の時は密室で休憩を挟んだりはしたものの、俺の歌を至近距離で聞き続けたがために影響をモロに受けたのかもしれないと……

 

 そして、その仮説はリハーサルとして配信前に一曲だけ歌った時に、補強されることとなった。

 

 念のためと無難な曲を選択して歌ったのだが、聞いていた全員に目に見えるような変化は見えず、こっそりと事情を知っている橋本さんから影響の程を聞いてみても、日常生活で感じたことの変化程度だったという証言。

 

 

 

 笑顔の橋本さんへ、俺も笑顔で大丈夫になったことを伝えると、改めてカメラへと向き直る。

 そして、ちょうどメロディーが終わり

 

 

『星を廻せ 世界の真ん中で』

 

 

配役ー!!

ゆきがシェリル役かいw

ww

でも、上手いじゃん

 

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