二度目の人生で、Vtuberになりました。   作:SANO

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13:接触

 彼女を知ったのは、【あるてま】所属の来宮きりんと、同じく【あるてま】所属の黒猫燦を通してであった。

 

 来宮きりんの配信は自身がVtuberになる前から見ていて、その中の雑談配信から2期生の一人として話題に上っていたので名前だけは知っていた。

 そして、実際に目にしたのは黒猫燦とのコラボの時であり、気になる存在になったのもこの時だった。

 

 炎上系と言われるだけあって、色々とヤらかす黒猫燦を叱ったり文句を言いながらも世話を焼いている姿は、黒猫の言う通り「まま」のように思えた。

 “母親”という存在を知らない俺が、だ。

 

 

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 前世の母親は、俺が物心がつく前から父親と共に、医療を受けられない子供達のために世界中を飛び回っていて、年に2回でも会えれば「沢山会えた年」となるほどの多忙な人だった。

 だから俺は、両親の顔がクッキリと思い出せないほどの年月を母方の祖父母の家で育った。

 

 故に小学生時代は、祖父母の癖などがうつったりして「年寄臭い」とイジメを受けた時期もあった。

 まあ、爺ちゃんがスゴイ怖い人で相手方の家に乗り込むほどにアグレッシブな人だったから、1カ月も経たずにイジメは収束してたりするのだが……そして、そんな爺ちゃんをも一言で黙らせることのできる婆ちゃんは、怒らせてはいけない人だと、子供ながらも理解できた。

 

 そんな祖父母に育てられて、高校生になった頃。

 両親が海外で災害に巻き込まれて死んだことを、初めて見るボロボロと涙を流す爺ちゃんから聞かされた。

 そして、悲しむ祖父母と共に俺も悲しむ……フリをしつつも実際には心は酷く冷めきっていた。

 

 当然だろう。

 両親のしていることは素晴らしいし尊敬できることであるとは理解できる。

 だがそんな二人は、自身の子供である俺に何をしてくれた?

 

 この時、俺にとって本当の両親は親せきの叔父叔母程度で、祖父母こそが両親だった。

 

 

 

 

 今世の母親を、俺は知らない。

 俺という赤ん坊のために、自身の命を使ったからだ。

 

 父がたまに母の写真や動画を見せてくれたが、自分は母親似なんだと思うだけで「この人が俺のお母さんなのか」とはならなかった。

 十年以上前に撮影されたものであったし、母は結構な童顔だったので余計にそう思えたのだろう。

 それに前世以上にというか、そもそも言葉を交わしたこともないし、直接会ったこともない。

 そんな人を母親と認識するには、中身がオッサンであっても感謝こそすれど無理があった。

 

 となると、今世では芳子さんが母親役なのかとも思ったが、改めて考えると芳子さんは母親というよりは可愛がりな近所の小母さんみたいな感じだ。

 自分の娘のように可愛がってくれるが、一定のラインには踏み込まないように注意している感じとか……“家族”にならないように一歩引いているように思う。

 

 

 

 

 こうして、世間一般的な母親という存在を知らずに俺は生きてきた。

 

 だというのに、彼女――夏波結がコメントや黒猫燦から「まま」とか「ゆいまま」などと呼ばれている姿は、本人が肯定していないというのに俺の中ではストンと型にハマったかのように納得できてしまった。

 そうなると、彼女が世話を焼く姿(特に黒猫燦に対しての姿)を見れば見るほどに、自分の中でボヤけていた「母親像」は夏波結そっくりに形作られていき、無意識下で「ゆいまま」と普通に読んでいるようにまで重症化していた。

 

 そして、それが今、最悪のタイミングで発露してしまっている。

 

 

 

 と思っていたのだが……

 

 

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「あら?私をほっといて可愛い女の子をナンパですか?」

「違うわよっ」

 

 

 夏波結(仮)と無言の応酬をしている中に、少し茶化すような声色で背の高い綺麗な女性が脇から声をかけてくる。

 最近、俺の周囲に現れる女性の美人、美女率が異様に高い気がするのは気のせいだろうか?

 

 ともかく、俺の発言に警戒したのだろう夏波結(仮)から両腕を握られていたから、傍目からは迫られているように見えたのかもしれない。

 その点は相手方も自覚したのか、腕から手を放してくれる。

 

 代わりに利き手首を掴まれたが……。

 

 

「それじゃあ、その可愛い子と何をしているのですか?」

「それは……」

 

 

 チラリと、夏波結(仮)は俺と男性店員へと視線を向けてくる。

 

 いや、ここで俺に対応を求められても困る。

 ある意味で知っているとも言えなくもないが、まったく知らない大人3人が立ち位置的に俺を囲んでいるのだ。

 

 人見知りのコミュ症としては、ここに発狂しないで存在し続けているだけで既にキャパオーバー状態なので、これ以上の何かを俺に求めるなら強制シャットダウンされる覚悟を持ってほしい。

 現に、俺の顔色は緊張や囲まれている恐怖に、青を通り越して白くなっているはずだ。

 

 幸いにも夏波結(仮)には理解してもらえたようで、視線はすぐにそらされて男性店員に向けられることになるが

 

 

「えと、私にも正直、何が何だか……」

 

 

 ですよね!俺がやらかした時にはいなかったんだから!!

 

 

「とりあえず。タオルで拭いてあげるのが先じゃないかしら?」

 

 

 なんとなく夏波結(仮)と知り合いっぽい綺麗な女性が場を纏めるのに従って、俺は店側からのタオルで大まかに濡れた部分を拭き取る。

 そして失言とは関係なく、故意ではないとはいえ俺を濡らしてしまったことを保護者へ謝罪したいとのことで、場を移す意味も込めて橋本さん達がいる個室へと念のために男性店員付きで移動することになった。

 

 

「あっ、やっと帰ってきた。どうし……何があったの?」

 

 

 まずはと俺が中へ入ると、橋本さんが心配そうな声を出しながら俺の元へと駆け寄ってくる。

 俺達のマネージャーも同じように安堵したような表情をしているから、また迷惑をかけてしまったのが分かり心が痛い。

 そして、これらももっと迷惑をかけてしまうことが確定しているので、さらに痛みが倍増する。

 

 駆け寄ってきた橋本さんは、入り口にいる男性店員と美人な女性二人の姿を見つけてると、俺の手を包むように握りながら優しく聞いてきた。

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