ありふれてない檜山大介でも世界最強は無理だ   作:不明の奉仕種族

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ちょっと気合入れ過ぎて長くなった。短編回の約二倍はある。ユルシテ


クソ蛇、テメェ後で絶対財布革な(ガチギレ

 

「じゃあ作戦通りに」

 

「おっけ」「ワンッ」

 

 九十九階層の激戦から一日、俺たちはとうとう百階層の魔物に挑むことにした。

 百階層に入った時、真正面に見えた扉の前で最後の作戦を立てた。自分たちが持ち得る武器、魔法、道具、技術全て持ち寄り立てられた作戦は骸骨剣士を除けばこれまで戦った相手であれば十分に封殺できるほどの物だと自負している。

 しかし九十九階層の骸骨剣士であれだけの強さなのだ。生半可な気持ちで向かえば返り討ちにされる危険がある。そのため相手の戦力は十分に分析して行くつもりだ。

セーブは無いのだ手堅くいこう。

 

 因みに今の俺たちの強さはざっとこんなものである。

 

 俺が以下の通り。

============================

檜山大介 17歳 男 レベル:80

天職:軽戦士

筋力:1720

体力:1807

耐性:1700

敏捷:1302

魔力:879

魔耐:2150

技能:推理・観察眼[+肉体理解][+弱点看破]・不倒[+不飲不食]・言語理解・武器修得補正・剣術[+千斬舞踏][+断殺大剣術][+シュナピア流剣術]・槍術・ダガ―術[+刺突加速]・回避術[+緊急回避]・受け身[+衝撃吸収]・走破[+縦横無尽][+瞬身][+翻弄歩法]・風属性適正・変性[+鬼人化][+怨念昇華][+怪力][+血肉喰らい][+炎装]・侵食耐性[+回復力強化][+消化器官強化]・高速肉体修復・狂化耐性[+忘却][+平常化]・火属性適正[+炎装操作]・風纏い[+風装][+空歩][+風刃]・意思疎通

=============================

武器:大剣(重量操作)、片刃剣(重量操作)、鉈剣、直剣、ナイフ二本

 

 でユエさんはと相棒が以下の通り。

ユエさん:魔法・全適正、魔力・膨大、超回復する。

相棒:雷属性の固有魔法、超速移動、落雷、体当たり、爪、牙、黒ロープ

 ステータスプレートが無いので説明しづらいがだいたいこんな感じである。

 

 

 俺のステータス最初は俊敏が高かった筈なのになんで今はこんなガチガチの筋力と体力特化になっちまったんだ・・・。しかしそうでなくても大分バケモノみたいな能力値になったな、改めて種族の所見て見たら種族:鬼人ってなっててへこんだ。俺が何したって言うんや。

 

 ただ、これだけの能力を持っていればなんて慢心は出来ない。それは骸骨剣士に思い知らされた。

 さて、確認はこの位で良いか。そろそろ進むとしよう。

 

「開けるぞ?」

 

「ごーごー」

 

「ヴァッフ」

 

 扉に触れると魔法陣が光り、ゴゴゴと両開きに開いていく。

 その開いていく光景を俺たちは固唾を飲んで見守った。

 

 

 

 扉の先は巨大な回廊だった。学校のグラウンドいっぱいはありそうな通路とその横には紫に光る柱が手前側から奥へと点灯していった。その光を真っ白な建材で作られた床や壁が眩く反射させる。

 そしてその奥には如何にもここが終着点と言っているような巨大な扉が佇んでいた。

 

 なんとも神々しいその外観に俺たちは中々凝った作りだと思い階層全体を見回した。するとおかしなことに気づく

 

「魔物が居ない?」

 

「トラップかも」

 

 九十九階層の骸骨剣士は「百階層に挑める強さ」と言っていたことから何かと戦うことは確定なのだが、その相手が居ないのは少々怪しい。もしかして骸骨剣士みたいに足元から作られるとか?

 そしてその予想は大体当たっていた。

 

 並んだ光る柱の間を通り抜け、そして最後の柱の間に差し掛かった時ソレは起きた。

 

 地面に突如として浮き上がる巨大な魔法陣。それは見慣れた召喚のための物だったが、その大きさは規格外だった。その大きさに圧倒されたベヒモスの魔法陣よりも更に二回りほど大きい。それが不気味な赤黒い魔力光を放ちながら脈動した。

 それが百階層の魔物の召喚陣であると俺たちが判断するのに時間はいらなかった。

 

「ッ!!ユエさん!!相棒!!」

 

「わかってる。作戦通りにいく」「ヴルルル」

 

 しかし俺たちがやることは変わらない。当初考えていた作戦通りユエさんはその魔法陣より離れた空中に浮かび上がり、俺と相棒は近くの柱の陰に隠れる。

 

 魔法陣から現れたのは六首の大蛇、ヒュドラだった。首は赤、青、黄、黒、緑、白の六色に分かれ、それぞれの口からは鋭い牙が覗いている。目は真っ赤に爛々と輝きその目は全てユエさんの方を向いている。

 そしてすべての首がユエさんを認識すると口を開き咆哮

 

「「「「「「CRUAAAAドガァァァァァァァァァン!!!!

 

 上げきれなかった。咆哮を遮るようにユエさんがヒュドラに向かって最大威力の魔法を炸裂させたのだ。哀れ蛇公は爆炎に呑まれていった。

 これが俺たちの作戦の一つ。開幕ぶっぱである。相手が警戒しきらない最序盤に手持ちの切り札をかますこの戦法はこちらから攻撃を仕掛ける場合に非常に効果的である。

 

「「「「「「CCRRRRRUAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」」」」」」

 

 その爆炎が晴れるとそこには咆哮を中断させられ、さらにはダメージを負い怒り狂うボロボロのヒュドラが居た。

 さすがに倒しきれないとは思っていたがまだまだ元気そうとは恐れ入るな。しょうがないここからは持久戦に持ち込んで・・・!!

そこまで柱の影からヒュドラを見ていて俺はあることに気づく。

 

 六つの頭の一つ、白い頭が光を発しておりその光を浴びた頭がどんどんとその傷を消していっているのだ。

 コイツ回復手段を持っているのか!マズイ持久戦は開幕の一発が無意味になるぞ。その間あげに行きついた俺はすぐさま叫ぶ。

 

「ユエさん!相棒!作戦変更、すぐに攻める。あの蛇野郎回復してやがる。俺とユエさんが残りの五本を抑えるから相棒は白い頭を仕留めてくれ!!」

 

 その言葉の瞬間全員が一斉に動き出した。

 

 初手は俺たちの中で最速の相棒。その神速でもって白頭に向けて体当たりを喰らわせた。

 電撃を流星の様な一撃を受けた白頭はたまらず地面に叩きつけられた。相棒はそこから更に落雷を喰らわせ白頭を追い詰める。

 それに遅れて残りの頭が気づき相棒を攻撃しようとするが俺とユエさんがそれを許さない。

 

 俺は直剣と片刃剣を持ち、赤首へと向け駆け出す。そして何時もの通り〝炎装〟を自分と剣に纏いながら〝風装〟で加速と回転を加えながらその首を螺旋状に駆け上がった。

 回転と加速の勢い、そして持ち前の筋力により切り刻まれた赤首は、その全身を真っ赤にしながら悲痛の声を上げる。

 そして首から離れ上空まで飛び上がった俺は大剣の両手持ちに武器を持ち替え、重量操作により最大まで重くしたソレを黄首に向けて振り下ろす。

 大剣は赤熱した刀身でもって黄首をその半ばまで両断した。少し硬かった気もするが超重量+溶断で切れない生物は早々居ない。

 

 ユエさんはと言うと緑首、青首と相対した。二つの首からはそれぞれカマイタチと水流弾を弾幕として放ってくる。それをユエさんは右に左にと何処で知ったのか飛行機のバレルロールの様な軌道で全て避けていた。

 そして弾幕が止んだ瞬間、ユエさんは両手から極細の帯を放ちソレを振り払った。

 その瞬間、二つの首は根本から切断された。そこにすかさずユエさんの雷が炸裂し丸焦げになる。

 二つの帯の正体は水流カッターである。しかももともと使っていた〝破断〟をアレンジし水中に研磨剤として砕いた魔石を含ませ、恐ろしく威力の上がった一撃である。手元に魔石が無いと打てないがそのコスト以上の効果と言えよう。

 

 しかしこの快進撃は止まることになる。

 

「キャン!」

 

「相棒!!」「ヴォル!!」

 

 白首を抑えていた相棒が弾き飛ばされたのだ。下手人はいつの間にか俺たちの攻撃から逃れていた黒首。

 あの野郎いつの間に!!いやそんなことは後だ。

 

 俺はすぐさま吹き飛んだ相棒に駆け寄る。相棒は体には目立った外傷は無かったが酷く怯えていた。

 一体どうしたと言うのだろう。常に気丈な相棒が怯えるほどとはよっぽどの事があったに違いない。

 そう思った俺は怯えて動けない相棒を抱きかかえ柱の陰に移動しようとした。

 

「大介!!」

 

 しかしユエさんの焦った声が聞こえ大蛇の方を振り向く。

 そこには今まで無かった七本目の銀首がこちらに向けて口に貯めた極光を放とうそしていた。既に一秒後には放たれるだろうそれに俺はザっと血の気が引いた。マズイ、このままでは相棒もろとも喰らってしまう。あれの威力は分からないがきっと生半可なモノではない筈だ。

 俺はとっさに相棒を庇うように抱え込み相手に背を向け、襲い来る衝撃に対して覚悟を決める。

 しかし俺を襲った衝撃は激しい痛みでは無くドンッという軽い体を押すものだった。

 

「え?」

 

 俺は驚いて衝撃の方を向いた。そこにいたのはユエさんだった。

 

 その直後、放たれた極光がユエさんの下半身を呑み込み消し飛ばした。

 

「大介・・・逃げて・・・」

 

 それだけ小さく呟きユエさんはパタリと地面に横たわる。いつもはすぐに再生される筈の傷口からは一向に治る気配を見せない。

 俺は混乱する気持ちを必死に抑えながら倒れたユエさんを背負い、大蛇から全力で退避した。

 

 

 

「クッソ、なんで治らない!!」

 

 大蛇から最も遠い柱の影に隠れた俺は必死にユエさんの怪我を直そうとするが一向に治らない。

 腕を切って出た血を飲ませているのだが極光に抉られた傷口はボロボロと崩れていこうとしている。

 

(まさか、放射能の類に細胞を侵食されているのか?)

 

 俺は元の世界の知識からそう予想を立てる。現に傷口の細胞はグズグズになっている。もし放射能では無いとしても傷口をこのままにしておくのはマズイ。

 

「ごめんユエさん」

 

 俺はそう言って血を吸わせていた腕をユエさんの口の中に押し込むと、手に持った片刃剣で傷口を胴から切り落とした。その痛みにユエさんは俺の腕に思いっきり噛みついた。指も俺の体の各所にめり込んでいる。よほど痛かったのだろう。

 その余りの痛ましさに胸を締め付けられる気持ちになったが、いつも通り治りだしたユエさんの体に一安心する。

 

 相棒はと言えば最初は俺に抱きかかえられたことすら分からず暴れていたが頭をゆっくりと撫でてやると落ち着きを取り戻した。しかしまだ何かの恐怖を感じているのか立ち上がることが出来ていない。

 

 そんな相棒をユエさんの隣へ寝かせる。すまない相棒、もしもの時はユエさんと一緒に逃げてくれ。

 そう言って立ち上がる。そして背負っていたバックパックを下ろし、中の魔石を全て口の中に突っ込みかみ砕き飲み干した。どうせこれが最後の戦いなのだ全て使ってしまっても問題有るまい。おいおい相棒そんな顔で見つめてくれるな、照れるだろ。

 そんな風に相棒に軽口を叩いた後、俺は大蛇に向かって歩き出した。

 

 思えばこんな風に一人で戦うなんて何時ぶりだろう。たしかベヒモス戦後は常に誰かと一緒に戦ってきた気がする。全く良い迷宮攻略をさせて貰ったものだ。二人が居なければきっと俺はここに居なかっただろう。え?鎌虫?何のことやら。

 だからこそ二人を殺される訳にはいかない。常に支え、並び立って戦ってくれた戦友にしてかけがえのない仲間をこんなクソ蛇なんぞに奪われる訳にはいかないのだ。

 俺は大剣と片刃剣を両手に握りながら大蛇に向かって吠える。

 

 

「来いよクソ蛇ィィィィィィィィィッ!!俺の仲間を傷つけるとは良い度胸だぁぁぁぁぁぁぁ!!今すぐ死にさらせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 ヴォルフヒルは動けない自分が情けなかった。あの時黒蛇が睨んだ瞬間己の頭を駆け回ったのは恐怖だった。それも死や飢えなどのこれまで経験し乗り越えたモノでは無い。

 

 〝孤独〟〝戦友と吸血鬼との別離〟〝再び誰からも声を掛けられない一階層〟

 

 それが怒涛の様に頭を犯していった。笑ってしまう、群れを追い出されても一匹狼で生きてきた自分がいつの間にか彼らに絆されていた。そしてそれを失う恐怖はがっちりと自分を蝕んでくる。嫌だ嫌だ嫌だこの互いを想い合えるこの関係を、この仲間達を失いたくない。止めてくれ。

 

「ヴォル・・・」

 

 そんな恐怖に怯えていたヴォルフヒルは、傍らから掛けられた声にバッと顔を上げた。そこには重症から復帰したユエが居た。しかしその顔色は明らかに悪く、あらかじめポーション瓶に用意していた大介の血液を飲んでも上手く歩けそうに無かった。

 そんなユエはよろよろとヴォルフヒルに手を伸ばし告げた。

 

「お願いヴォル、大介の所まで連れて行って・・・。私だけじゃもうあそこまで動けない」

 

 そのお願いにヴォルはうなだれ、フルフルと首を振る。

 自分はもう動けない。このどうしようもない恐怖に打ち勝てる気がしないのだ。

 しかしそう告げるヴォルフヒルの恐怖を感じたのかユエはその力の無い拳でその鼻面をぽかりと殴り叱りつける。

 

「立ちなさいヴォル!・・・私たちは大介の仲間、それにこれまで何度も助けられてここまで来た・・・。その大介を今度は私たちが助ける番・・・なの!!」

 

 そう言うとユエはヴォルフヒルの首に抱き着きその体を震わせる。

 

「お願いヴォル!・・・助けなきゃ、・・・私たちが助けなきゃ・・・大介が死んじゃう!!」

 

 その言葉にヴォルフヒルはバッと顔を上げ、そして大蛇の方を見る。

 そこには一人で大蛇に立ち向かう戦友の姿が有った。善戦しているが、その全身を血に染め今にも倒れそうな有様だ。その背中はかつて一階層で己を守り熊に立ち向かった時の彼と重なる。

 

 そうだ、俺は何をしていた。ヴォルフヒルの瞳に強い光が灯る。

 自分は何故彼に付いてきた。強くなるためか?下の階層に行ってみたかったからか?いいや違う!あの時、熊に殺されそうだったあの時、共に戦いそして命を救ってくれた彼を戦友と認めその恩に報いるためだったでは無いか!!

 立て!!己の体はこんな時のために付いているのではないのか!!爪や牙は大事な存在を守るために付いているのではないのか!!

 立て!!!!

 

「・・・ヴォル?」

 

「・・・ウォン」

 

 既に震えは止まっていた。

 

 

 

 

 

 大蛇に突っ込んだ俺はまず真っ先に回復しかけの白首の頭を真っ二つにかち割った。

 相棒により半殺し状態だった白首は守ってくれる首が半壊していたためあっさりと絶命した。しかし逃げている間赤首は何とか動けるまでに回復してしまっていた。今のところ殺せたのは黄、緑、白、青である。まぁ七本と戦うよりは楽だけどよ。

 

 なんとかポジティブシンキングで銀首の攻撃に警戒していた俺は相棒を倒した黒首の瞳がこちらを見つめているのに気が付いた。

 何かマズイと重いその視線から外れようとした瞬間、キラリと光った黒首の瞳により俺の視界は黒く塗りつぶされた。

 

 

 

 気が付いたそこは灯りが無く果てまで暗い空間だった。

 

(?何処だ此処は)

 

 また転移させられたかと歩みだした俺はちゃぷりという音に地面が水たまりになっているのに気づいた。そしてその瞬間、辺りに漂いだした鉄錆の匂いに俺の本能は激しく警鐘を鳴らす。

 しかし俺の意志に関係なくその目は辺りの光景を映し出した。

 

 

 この空間全てを埋め尽くすように広がる赤い水たまり

 

 所々に倒れるクラスメイト達

 

 絶望の表情をこちらに向けながら絶命しているユエさん

 

 体から内臓を零れさせる相棒

 

 そして銀首に加えられた俺の幼馴染

 

 視線に気づいた大蛇がこちらを見てニヤリと嗤った

 

 

 次の瞬間、俺の視界は真っ赤に染まった。

 

 

 

 銀首は上手く決まった黒首の邪眼にほくそ笑んでいた。

 ザマァ見ろ人間、俺たちに愚かにも歯向かうからそうなるのだ。大人しく俺の極光で消し飛んでいればいいものを。さぁ、今慈悲をくれてやろ。

 

 そう口を開けた銀蛇の隣にいた黒首が突如として消えた。

 

 驚いて黒首の方を見て見れば、そこに有るのは首の断面だけだった。

 一体何が起きたと混乱し、首を巡らせた銀首は背後に鬼を見た。

 

 

 

 コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル

 

 今の大介の心を占めていた感情はただそれだけだった。そしてその業火のような殺意は大介の体を変化させた。

 

 

 戦士として十分な筋肉が付いていた体は更にボコボコと盛り上がり、肌の色はベージュからうっすらとした赤へと変わった。

 

 丸かった耳は尖り、額の角は更に天を突かんばかりにその長さを増している。

 

 そして黒と赤だった目は全て深紅に染まっていた。

 

 

 まさに鬼と形容すべき存在、それが今の大介の姿だった。しかし怒り狂った彼はそんな事気にも留めず、力任せに繰り出す両手の剣の連撃で赤首をなます切りにした。グチャグチャと飛ぶ肉片を、大介は空中で噛みつきそのまま咀嚼する。

 

 実はこれに近い状態に一回大介はなっていた。

それは一階層でのこと。熊により致命傷を受けた大介はそのタガを外した。獣のように熊に襲い掛かりその死んだばかりのハラワタにかぶりつく。そしてその腹の中身を貪り食い、足りないと思えば兎や狼を捕食した。この時相棒を襲わなかったのはただ一つ残った理性だったのか。

 結果、彼の額には角が一本増える事となった。

 

 その余りに恐ろしい有様に銀蛇は全身から細い極光を無数に放った。しかし大介はその攻撃を避けず、当たるまま、傷つくままに銀首のみとなったヒュドラへと迫っていく。

 ここに来て銀首は最終手段を取った。

 

 それまで死んでいった頭たちをその体にどんどんと吸収する。そして多頭として必要だった広い体をどんどんと細くしなやかな物へと変化させた。

 変化を終了した後、そこにいたのは一回り大きくなった銀首だけの大蛇だった。そして銀首はその口から咆哮と共にそれまでよりも太い極光を大介へと放とうとした。

 

 

 

 駆けるヴォルフヒルに乗ったユエは鬼のようになった大介を見て驚愕した。

 本人談で彼が人間から鬼人へと変化したのは知っていたが、まさか更に鬼へと近づくなんて思わなかった。変化した大介はその圧倒的な力で大蛇を蹂躙している。

 しかしその戦い方は異常だ。自分が傷ついても進み続ける大介は無数に放たれる極光を全て受けているせいで体中がボロボロになっている。

 

(このままじゃダメ・・・。大蛇を倒してもきっとそのまま死んでしまう)

 

 だから彼の正気を取り戻すために彼らは叫んだ。どうかいつもの笑顔を携えた彼に戻ってくれと願いを込めて。

 

 

 

『ダイスケ・・』(・・・誰だ?俺を呼ぶのは・・・)

 

 俺は暗闇に微睡みながら浮いていた。

 

『ダイス・・・』(俺は・・・何をしていたんだっけ・・・)

 

 何か酷い光景を見た気がする。ただどうも・・・、ここは気持ちい。

 

『ダイ・・・・』(もう・・・どうでも良いか)

 

 ああ、意識が・・・消えて・・・

 

『ダイスケ!!/ヴォン!!』

 

 

 

「うわぁっ!!??」

 

 な、なんだ今誰かに呼ばれた様な・・・。あれ、なんかすごいなじみ深いモフモフがある。

 なにか少し寝起きの様な感覚で辺りを手探っていた俺は凄い安心する物体を掴みながら一体俺はどうしたのかと思考を巡らせる。確かユエさんが死にかけて、相棒を拾って・・・。

 

「大介!!」「ヴォン!!」

 

「うおっ!?ど、どうしたんだお前ら・・・て、あれなんで俺相棒に担がれてるの?」

 

「良かった、戻って来た」

 

「ウォー―ン、ウォオオン!!」

 

「あの、すみません相棒、ユエさん。俺ちょっと現状が理解できないので説明良いっすか?」

 

 いきなり俺に泣きながら抱き着いたユエさんと、喜びに打ち震える相棒に俺はメッチャ混乱しながら質問する。

 

 

 

 極太極光が大介に向かって放たれる直前、銀蛇となったヒュドラはその顔面に魔法が直撃し、極光はあらぬ方へと放たれた。

 魔法を放ったのはもちろんユエであった。しかしその魔法にはいつもの威力は無かった。これが彼女が今出せる魔力の最大威力であった。既に枯渇した魔力を何とか回復し放った一撃である。それでも常人の中級魔法よりは強力なところが凄い。

 

 そして銀蛇の攻撃をしのいだユエとヴォルフヒルはそのままゆっくりと歩く大介を捕まえ抱え上げるとそのまま逃げだしたのだった。

 しかし抱え上げた大介はその真っ赤に染まった目で銀蛇を睨みそちらの方へと行こうとする。それを絶対に自分たちを傷つけない事を利用しながら正気に戻るまで何度もその名を呼び続けたわけである。

 

 それを聞かされた俺は非常に申し訳ない気持ちになった。

 マジかよ、俺悪夢かなんか見せられて暴走したの?そんで安静にしてなきゃいけない仲間に助けられたと?うわコレ凄い残念過ぎるだろ・・・。死にさらせとか言っときながら・・・うわ、黒歴史確定だわ。

 ていうかなに?また鬼化進んだの?俺どんだけ人外に落ちりゃあ済むんだよ・・・。

 

 そんな風に落ち込んでいる俺にユエさんと相棒が話しかけてくる。

 

「大介、気にしちゃダメ。アナタは私たちを助けてくれたし、そんなアナタだからこそ私たちはまた立ち上がれた」

 

「ヴォーンヴォルッフフ」ゲンキダセセンユウ カッコイイゾ

 

「二人とも・・・」

 

 そんな優しい二人に胸がジーンとなっていた俺だったがすぐ傍で聞こえてきた迷宮の破砕音ですぐに現実へと戻って来る。

 見ると銀蛇が俺たちを探し、やたらめったら暴れている。

 

「取り敢えずまずはアイツをぶっ殺すぞ」

 

 

 

「クソ蛇ィィィィ!!こっちだ!!」

 

 大暴れし極光をまき散らす銀蛇の前に俺は躍り出る。ヒェ、いま掠ったぞ。侵食耐性マジで取っといて良かった。

 

 いきなり現れた俺に銀蛇は構わず突っ込んできた。それを俺は剣を眼前でクロスし、鬼化により増大した筋力によって受け止める。ガリガリと地面を削りながら押し込まれるがとうとうその巨体を受け止める事に成功する。そして俺は銀蛇が止まった瞬間、後ろに向かって大きく飛びのく。

 それを追いかけて銀蛇は口から極光を放とうとするがそうは問屋が卸さない。

 

 銀の閃光と化した相棒が黒ロープを持って瞬時にその口を縛り上げる。案の定極光は銀蛇の口内で炸裂し、その顎砕く。

 そしてそこに俺の血を吸い完全回復したユエさんが緋槍による絨毯爆撃で釘付けにする。

 

 そして俺は〝瞬身〟〝風装〟〝炎装〟〝怪力〟を一気に発動し銀蛇へと両手に持った大剣を振り上げ突っ込んだ。

 助走と〝風装〟、そして鬼化により底上げされた俺のスピードは音速にまで至り、そして

 

 

 スパンという軽い音と共に銀蛇を縦に綺麗に両断したのだった。

 

 

 

 こうして俺たちはとうとうオルクス大迷宮、その下層百階層全てを踏破したのだった。

 




はい百階層踏破おめでとう!!これでやっと平凡ほのぼの回が書け・・・え、地上組には戦闘描写がある?はー、マジで?(絶望
強敵戦を通して仲間の絆が強まるの好き?僕は好き。ちょっと強化されたけどやっぱり最後は殺される蛇さんでした。すまんね、絆のための生贄となってくれや。
そして鬼化が限界突破する大介さん。でも理性だけはログインしたから問題ない。

今回の変更点

ヒュドラ→ちょっと強化(なお後に蛇革)

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