銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(旧版)   作:甘蜜柑

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第七十話:チーム・フィリップス誕生 宇宙暦796年5月上旬 惑星ハイネセン、第三十六戦隊司令部

 思いがけず伝説の英雄チュン・ウー・チェン大佐を参謀長に迎えてしまった俺は、第三六戦隊司令部の幕僚チーム編成を進めていた。俺なりの人事案はあったが、参謀長であるチュン大佐との相性も重要だ。寝ても覚めても人事のことばかり考えていた。そんなある日、第一六方面管区司令官シンクレア・セレブレッゼ中将から通信が入ってきた。

 

「フィリップス君、将官昇進おめでとう」

「ありがとうございます」

 

 セレブレッゼ中将とは、ほんの短い間だけ縁があった。二年前のヴァンフリート四=二基地司令部ビル攻防戦で、ラインハルト・フォン・ミューゼルの捕虜になりかけたセレブレッゼ中将は、俺が注意を逸らしたおかげで助かった。そして、ラインハルトに殴られて死にかけた俺は、セレブレッゼ中将の迅速な措置によって助かった。俺がハイネセン第二国防病院に入院した後は交流が途絶えていたのに、どうして今になって連絡してきたんだろうか。

 

「幕僚を探しとるそうだね」

「はい」

「自分のチームを作るのは難しいだろう?」

 

 そう語りかけてくるセレブレッゼ中将の髪とひげには、白いものが混じっていた。彼が率いていた最強の後方支援チーム「チーム・セレブレッゼ」が、二年前のヴァンフリート四=二基地攻防戦で崩壊したことを思い出す。どんな気持ちが今の言葉にこもっているのか、つい考えてしまう。

 

「なかなか、思い通りにはいきません。最高の人材を集めようと思っているんですが」

「そうだろう、私が最初にチームを作った時もそうだった。私も幕僚もみんな未熟だった。最高といえる人材はいなかったな」

「でも、中将のチームは最強と言われていたじゃないですか」

「最初から最強だったわけではない。私もチームも一緒に成長していった。チームは育つものと考えるべきだ」

 

 セレブレッゼ中将の言葉は、俺の中にずっしりと響いた。どれほど苦労してチーム・セレブレッゼを築き上げたのか。その崩壊をどんな気持ちで眺めていたのか。彼の心中を思うと、やりきれない気持ちになった。

 

「そんなに暗い顔をするんじゃない」

「申し訳ありません」

「一つだけ偉そうにアドバイスをするとしたら、最初から完全なメンバーを揃えようとは思わないことだ。一緒に成長したい仲間を選んで、一歩ずつ完全に近づいていきなさい」

「一緒に成長したい仲間ですか?」

「そうだ。二年前の君は少佐だった。それが今や提督だ。君が成長したように、他人も成長する。誰と一緒に成長していきたいか、誰となら未来を共に出来るか。良く考えることだ」

 

 一緒に成長していきたい仲間、未来を共にしたい仲間。セレブレッゼ中将の言葉が頭の中をぐるぐる巡る。俺にとって、誰がそのような仲間なのだろうか。

 

「ありがとうございます。ゆっくり考えてみます」

 

 俺の返事にセレブレッゼ中将は満足げにうなずいた。チームを育てた経験がある人の言葉は心強い。ルグランジュ中将やドーソン中将の話も後で聞いてみよう。経験が足りないなら、先人に学ぶことだ。

 

「小官もチームを新しく作り直しているところでな。貴官の苦労が他人事とは思えなかった。だから、二年ぶりに連絡を入れたくなったわけだ」

「チームを作り直しておられるということは、つまり…」

「そうとも。再起にはチームが必要だ。それも最強のチームが」

 

 そう語るセレブレッゼ中将の声からは、辺境に左遷されてもなお衰えない覇気が感じられた。普通に考えればセレブレッゼ中将の未来は、現在の任期を全うして、もう一期辺境の方面管区司令官を務めた後に予備役編入といったところだ。再起の可能性はほとんどない。そして、辺境に流れてくる人材の質は低い。教育指導の環境にも恵まれていない。それなのに再起を夢見て、最強のチームを作ろうとしている。そんなセレブレッゼ中将の情熱に心打たれずにはいられなかった。

 

「頑張ります!」

「この歳になって、人を育てるのがこんなに面白いとは思わんかったよ。五〇過ぎまでその場しのぎしかしてこなかった年寄りが眼の色を変えて仕事に取り組む。将来に見切りを付けていた若者が自分の可能性を思い出す。なんと愉快なことか」

「参謀教育を受けていない現場組からも、参謀を採用なさったんですか?」

「辺境は人材が少ない。あるものは何でも活用せんとな。兵役あがりの若者を数年で提督にしてのけたドーソンには敵うまいが、兵卒あがりの老人参謀ぐらいは作れるさ」

 

 愉快そうに笑うセレブレッゼ中将を見て、俺はようやく理解した。この人の真価は実務能力でもなければ、ロジスティックス理論でもない。強いチームを作るリーダーシップだ。彼にとって、人材は作るものであって、探すものではない。凡人であろうと、最強のプロフェッショナルに育て上げる。そんな人だからこそ、未熟なチームを最強のチームに育て上げた。そして、再び最強のチームを作り上げるだろう。

 

「期待しております」

「いつか、中央に戻ってきたら期待以上のチームを見せたいものだな」

 

 セレブレッゼ中将は敬礼をすると、通信を切った。心がたぎってくるのを感じる。スクリーンを通じて、セレブレッゼ中将の覇気を吹きこまれたからに違いない。端末を立ち上げると、急いで人事方針を作り上げて、チュン大佐と話し合った。

 

「一緒に成長したい仲間、ですか」

「ど、どうかな…?」

 

 感銘を受けた様子もなく、のんびりとパンをかじっているチュン大佐を見ていると、自分がとてつもなく恥ずかしいことを言ってるような気がした。

 

「いいんじゃないですか。最初から完成形を求められるよりは、やりやすいでしょう」

「だよね!」

「私も同じです」

「何が?」

「まだ三〇代前半。これから成長していく人間と見ていただいた方が気楽です」

 

 その言葉を聞いて、はっとなった。俺のイメージの中のチュン大佐は、宇宙艦隊の采配を振るって獅子帝ラインハルトに立ち向かった偉大な英雄だった。マイペースな性格もあって、最初から完成された存在だと考えていた。しかし、良く考えたらまだ三〇代前半なのだ。いかに才能があっても、知っていることより学ぶべきことの方がはるかに多い年齢である。英雄チュン・ウー・チェンも未熟だが、努力すれば成長する。英雄視するあまり、当たり前のことを忘れてしまっていた。

 

「わかった。気をつける」

「では、方針が決まったところで打ち合わせをしましょうか」

 

 そう言うと、チュン大佐は分厚いファイルを取り出した。参謀長の次に重要なのは、作戦、情報、後方、人事の四部門の長である。主任参謀とも呼ばれる彼らは、各部門の参謀の指導や調整にあたるとともに、関連分野の専門スタッフとの調整も担当する。

 

「ずいぶん詳しく調べたね」

「まあ、それが参謀の仕事です」

 

 ファイルの中身は部長候補者の資料だった。統合作戦本部人事参謀部から渡された資料の他、入手できる限りの資料が添付されている。手書きの補足もびっしり付いていた。チュン大佐の調査能力に驚かされる。

 

「情報部長はハンス・ベッカー中佐に任せたい。これは譲れないな」

「彼は亡命者でしたね」

「そうだね」

 

 情報部は情報の収集と分析にあたる。敵の弱点を探すとともに、自軍の死角を無くす役割を担う。指揮官の耳や目とも言うべき情報部長は、ハンス・ベッカー中佐と決めていた。三年前に姪を連れて亡命してきた彼は、イゼルローン回廊の航路知識を買われて航法参謀を務めてきた。二年前にハイネセン第二国防病院に入院した時に知り合ってから、付き合いが続いている。この病院はダーシャ・ブレツェリ大佐やグレドウィン・スコット准将と知り合った場所でもある。

 

「もともと、情報畑なんですね。そして、信頼関係もある」

 

 帝国軍にいた頃のベッカー中佐は情報畑だった。情報活動には、他人を出し抜く狡猾さ、他人に信用される誠実さという二つの相反する属性が必要となる。情報畑の人間は、油断ならない曲者と正直な好人物の両極端に分かれる傾向があるのもそのためだ。ずけずけと物を言い、嘘をつけない性格のベッカー中佐は後者に属する。

 

「情報活動は人の繋がりだからね。それにチームワークの要としても期待できる」

「では、ベッカー中佐で決まりですね」

 

 そう言うと、チュン大佐は冷め切ったカフェオーレをすすりながら、ファイルのページをめくった。最近気づいたことだが、チュン大佐は猫舌らしい。熱い飲み物を飲んでるのを見たことがない。

 

「セルゲイ・ニコルスキー中佐を人事部長に考えてる」

 

 部隊の人的資源を管理する人事部は、部隊が必要とする人材を調達して適材適所に配置し、個人単位の教育訓練を通じて能力の向上に務める。長身で逞しい肉体を持ち、体育教師を思わせる風貌のセルゲイ・ニコルスキー中佐に人事部長を任せるつもりだった。彼とはヴァンフリート四=二基地で憲兵隊長を務めていた時に仕事の関係で知り合った。個人的な交際は薄かったが、部隊の人員を数字ではなくて一人の人間として捉えるところと、部下にも同僚にも上官にもはっきりと物を言えるところに好感を持っていた。

 

「実績は申し分ありませんが、第二輸送業務集団の人事部長は結構な激務です。動かせるのですか?」

「司令官のスコット准将はいい人だからね。ニコルスキー中佐には司令部の後見人というか、引き締め役を担ってもらえればと思ってる」

 

 数日前、ニコルスキー中佐を譲ってくれるかどうか、ダメ元でスコット准将に打診したら、意外な好感触が返ってきた。俺が彼の元を月二回訪れて、三次元チェスの相手をしてくれるなら応じるというのだ。そんな話、公にはできないが。

 

「動かせるなら、ニコルスキー中佐で決まりですね。動かせなかった場合の第二第三の候補も選定はしておきましょう」

 

 確実に動かせる自信はあった。スコット准将は仕事中も部下と対局してるほどの三次元チェス狂である。対局するといえば、大抵の頼みは聞いてくれる。第一一艦隊で勤務していた頃は、対局するたびに高いケーキをおごってもらったものだ。

 

「問題は作戦と後方なんだ。作戦は知り合いが全然いない。後方は知り合いが多すぎて目移りする」

 

 作戦部は平時は部隊単位の教育訓練を通じて作戦行動に必要な戦力の整備に努め、戦時は状況に応じた作戦案を練る。高い作戦能力を持つチュン・ウー・チェン大佐は、参謀長として全分野にわたる采配をふるう立場だ。作戦だけに専念するわけにはいかない。作戦専任の参謀も別に必要になるが、優秀な作戦屋を手放す指揮官はそうそういない。

 

「閣下はお若いですから、作戦参謀も若手を選んだ方がいいでしょう。ずっと同じ作戦参謀を使い続けないと、用兵の継続性が保てません」

「確かにどの提督も若い作戦屋を育てようとしてるね」

 

 提督は自分が現役でいる間、ずっと使い続けられる作戦参謀を欲している。戦場での手足に等しい作戦参謀が自分より先にいなくなったら、頭の中に思い描いた用兵を実現できなくなってしまうからだ。だから、優秀な士官学校上位卒業者に自分の用兵を教え込んで作戦参謀にする。

 

「閣下と面識がある二〇代から三〇代前半の若手を中心に、候補を絞り込んでおきます」

「後方はどういう人がいいのかな」

 

 部隊の物的資源を管理する後方部は、部隊が必要とする物資の調達、管理。輸送、分配を行う。後方部門に知り合いが多い俺は、誰を選ぶべきか迷いに迷っていた。誰を選んでもうまくいきそうな気になることもあれば、誰を選んでも失敗しそうな気になることもある。

 

「後方はキャゼルヌのような天才でない限りは、経験と人脈のある者がいいでしょう。調整業務が多いですから」

「確かに後方ほどよその部署と顔を合わせる参謀はいないなあ」

「経験豊かな三〇代後半から四〇代の者、それ以下の年齢でも顔が広い者を中心に、候補を絞り込んでおきます」

「よろしく頼むね」

 

 これまで、資料の収集と分析は全部自分の手でやって来た。それが参謀に指示を出すだけで済んでしまう。これからは参謀を上手に動かすのが俺の仕事になるのだ。気を引き締めないといけない。

 

「次は副官です。これは早めに決めてしまってください」

 

 副官は自分自身で務めたことがあるからわかるが、記憶力が良くて、頭の回転が早くて、性格が細かい人が向いている。俺は准将だから、大尉か中尉を副官に選べる。

 

 頭の中に浮かんだのは、俺の後任としてドーソン中将の副官を務めたユリエ・ハラボフ大尉。俺を意識しすぎてドーソン中将の不興を買った彼女は任期を全うした後、トリューニヒト派に誘われることもなく国防委員会情報部に移り、テロ捜査の際に起きた不祥事に巻き込まれて、辺境に飛ばされてしまった。副官という言葉を聞くと、俺のせいで不幸になった彼女のことを思い出してしまう。

 

「参謀長はどういう人がいいと思う?」

「シェリル・コレット大尉ではいかがでしょうか」

 

 作戦と後方では人物の傾向を述べていたチュン大佐が、いきなり個人名をあげたことにびっくりした。しかも、俺が全く評価していない人物だ。一体どういうつもりなのだろうか。

 

「理由を聞かせてくれる?」

「閣下がエル・ファシル臨時保安司令官として戦った時の戦闘詳報に添付されたメモ。あれを書いたの彼女でしょう?」

「まあ、そうだけど」

 

 昨年の九月に俺がエル・ファシル解放運動のテロ部隊を迎え撃った時、中尉だったシェリル・コレットは俺の臨時副官を務めた。指示を出すだけでいっぱいいっぱいになっていた俺は、彼女から渡されたメモで情報を得て指揮をしていたが、情報量があまりに少なすぎて不満だった。俺ならもっと詳細に書く。仕事が雑というのが彼女に対する評価だった。

 

「作戦参謀部であの戦いを分析した際に読ませてもらいました。驚くほど要点だけをきれいに抜き出したメモでしたね」

「情報量が少なすぎなかった?」

「平時ならそうですが、あの状況では正解です。詳細すぎると指揮官自身の情報処理能力が追いつかなくなります」

 

 俺はオフィスでしか副官を務めたことがない。判断までに余裕があるから、可能な限りメモに情報量を詰め込むのが正解だった。一枚の紙になるべく多くの情報を詰め込めるような文章術を磨いてきた。しかし、判断に余裕が無い戦場の副官は別ということなんだろうか。

 

「彼女は俺の頭に合わせてくれたってことなのかな?」

「そういうことです。閣下なら、真っ先に彼女を副官に選ぶと思っていました」

 

 チュン大佐の指摘を受けて、考えこんでしまう。俺より実戦に詳しい彼がここまで評価するのなら、有能と判断してもいいのだろう。しかし、やはりコレット大尉は副官にしたくない。

 

「別の人にお願いしたいなあ」

「やはり、これがネックですか」

 

 チュン大佐が示したコレット大尉の資料には、「シェリル・コレット 旧姓リンチ」と書かれていた。

 

「これは…」

「コレット大尉は、エル・ファシルから逃亡して捕虜になったリンチ少将の娘ですよ。翌年に士官学校に入学しました。当時の校長がリベラルなシトレ元帥だったおかげで、合格を取り消されずに済んでいます」

 

 そんな話、初めて聞いた。そもそも、コレット大尉の身の上には興味がなかった。能力があると言われても副官にしたくなかったのは、外見の問題だった。彼女は太っていて背も大きい。普段はぼんやりした感じで、人と目を合わせようとしない。見ていると、妹のアルマを思い出すのだ。しかし、そんなことをチュン大佐に言えるはずがない。

 

「初めて聞いたよ」

「エル・ファシル警備艦隊にも自ら志願したそうです」

 

 俺は今の人生では逃亡者にならずに、日の当たる場所を歩いている。逃亡者になった人とその関係者に思いを馳せることは無かった。前の人生で俺と家族を襲ったような波がコレット大尉に襲いかかっていたとしたら、やりきれない気持ちになる。

 

「帝国じゃないんだから、父の罪を子供を被ることもない。経歴は問題ない。コレット大尉にしよう」

 

 エル・ファシルの逃亡者の家族としての苦労には同情を感じる。父の汚名をそそぐための努力は立派だと思う。エル・ファシルの英雄の副官になれば、少しは報われるかもしれない。容姿への嫌悪感を我慢しないと使えない副官というのも困り物だが、逃亡者とその関係者に辛く当たるような真似はしたくなかった。

 

「それにリンチ司令官の気持ちもわかるんだよ。俺があの人の立場なら、逃げずにいられるかどうか自信持てない。だから、家族が苦労するのは理不尽だと思う」

 

 俺の言葉にチュン大佐は興味深そうな表情を見せた。洞察力のある彼でも、俺の言葉が逃亡者としての経験から出ていることはわからないだろう。アルマのことと言い、コレット大尉のことと言い、前の人生で逃亡者だったという記憶からは逃れられないらしい。エル・ファシルの英雄が逃亡者の娘を副官にするという妙なめぐり合わせになってしまった。

 

 

 

 俺とチュン大佐は一週間かけて、幕僚を選んでいった。まずは参謀部門の長だ。

 

 作戦部長代理は宇宙艦隊総司令部にいたクリス・ニールセン少佐。人間関係のストレスで体を悪くした彼を見かねたアンドリュー・フォークの仲介で移籍した。基本に忠実な部隊運用をする若手の作戦屋だ。

 

 後方部長は第十一艦隊司令部にいたリリー・レトガー中佐。ドーソン中将の子飼いだが、人格は円満で調整能力に長けている。

 

 その次は専門スタッフ部門の長。通信部長マー・チェンシン技術中佐、経理部長シビーユ・ボルデ中佐、衛生部長アルタ・リンドヴァル軍医少佐、法務部長フェルナンド・バルラガン少佐など、有能な専門家を揃えた。

 

 参謀や専門スタッフは過去に勤務した部署で知り合った人を基本に選んだ。ドーソン中将やルグランジュ中将が推薦してくれた人も若干名加わっている。人格、能力ともにバランスの取れた人選ができたつもりだ。

 

 意外なところでは、俺とほとんど面識がない宇宙艦隊総参謀長ドワイト・グリーンヒル大将が、士官学校副校長を務めていた頃の教え子エドモンド・メッサースミス大尉を推薦してくれた。恩師に似て、気さくでコミュニケーション能力が高い。士官学校上位卒業者でもあり、統合作戦本部や宇宙艦隊総司令部あたりで勤務していてもおかしくない秀才だ。彼を推薦したグリーンヒル大将の意図は不明だが、一緒に育っていく仲間になれそうだ。

 

 不本意な人事が無かったといえば嘘になる。その最たるものがエリオット・カプラン大尉だ。改革市民同盟代議員でトリューニヒト派幹部のアンブローズ・カプランの甥にあたる。士官学校を出てはいるものの成績は最後尾。勤務態度も勤務成績も良くないのに、統合作戦本部や正規艦隊での勤務歴が多いのは、ひとえに伯父の威光の賜物だろう。俺と同い年ということをやたら意識しているっぽいのも鬱陶しかった。そんな人物でも代議員直々の頼みとあれば受け入れないわけにはいかない。

 

 紆余曲折を経て、俺の幕僚チームは発足した。最強のチームになれるか、ごく平凡なチームに終わるかは分からない。でも、ごく一部を除いたら、一緒に成長していきたい仲間を選んだつもりだ。みんなで頑張って成長していきたいと思った。


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