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バー『アダムの林檎』。知る人ぞ知る、大人の雰囲気が漂う店である。
静かな店内BGMが流れる中、カウンターで一人の男が琥珀色の液体が入ったグラスを傾けていた。スーツこそ着ているが、その背は小さく顔立ちにも幼さが残っており、どう見ても少年……中学生かそこらの年齢に見える。しかし彼は、こう見えても立派な成人男性……それも、妻子持ちだった。彼の名前は『クレダ・テイト』。世界的大企業『グローリー・ホークス・カンパニー』……通称『GHC』の若き総帥であり、ここアダムの林檎の常連客の一人でもあった。
「……やはりここは落ち着くなあ。他の店だと、ロクにお酒も楽しめないからね……」
「テイトちゃんは未成年に間違われやすいものね。私のところでよければ、いつでも来てもいいわよ♪」
そう言ってバチコーン☆とウインクをしてみせるのは、この店のオーナーである『マギー』。長身の引き締まった身体を派手な色合いのスーツに包み、薄い紫の髪を後ろに撫でつけてうなじのあたりで一つにまとめている男性である。ちなみに彼は、体は男ではあるが心は乙女だと言って憚らない。
マギーもテイトも、共に
「ははは。そうしたいけど、あまり外で飲んでいるとカレンが寂しがるからね……」
「あなたたちは本当に仲良しさんね。妬けてきちゃうわ! 今度はユニちゃんも連れて三人でいらっしゃいな。うちはソフトドリンクも用意してあるから☆」
「ああ、そうさせてもらうよ。ついでに、お代わりも一杯貰おうかな」
「はーい♪」
マギーは上機嫌で酒瓶の並ぶ棚からウイスキーを一本手に取ると、テイトの空いたグラスに酒を注ぐ。もちろんウイスキーに合うおつまみも出すのを忘れない。テイトは出されたおつまみを食べながら、何やら上機嫌なマギーを見る。
「……マギーさん、何かいいことでもあったのかい?」
「あら、わかるかしら」
「僕はこれでも大企業のトップだからね……と言いたいところだけど、見るからに機嫌が良さそうだったからね」
「そうねえ。テイトちゃん相手だから、話しちゃおうかしら。レイちゃん……うちの常連の子なんだけどね、その子にお友達ができたのよ」
「へえ、友達が」
「ええ。レイちゃんは初めて会った時は表情もあまり変わらなくて、自分の感情を出すのも苦手な子だったんだけどね? そのお友達ができてからは、とても楽しそうにその友達のことを話すのよ。それがお姉さん嬉しくって……」
そう言って目じりに溜まった涙を指先で拭うマギー。テイトはグラスを傾けながら、一人娘である『ユニ』のことを思い出していた。人見知りで、自分にあまり自信のなかったユニは、GBNの動画配信サービスでとある配信者の配信を見たのを切っ掛けに、少しずつ変わっていった。そのレイという子もまた、何かしらの切っ掛けを手にしたということだろう。
「ところで、その子はGBNをしているのかい?」
「あら、テイトちゃんったら興味がおありかしらん。共通のゲームを話題にして女の子を口説こうだなんて、カレンちゃんが知ったらなんていうかしらね」
「いやいや、そういうのじゃないから……」
苦笑いしながら、テイトは否定する。これでも妻であるカレン一筋なのだ。人材獲得のためにスカウトをすることはあっても、下心ありきで声をかけるようなことはしない。
「うふふ。GBNをしていればそのうち出会うと思うわよ。もしかしたら、もう出会っていかもしれないわね。その子も、
「ふむん? 色々と、いう部分が気になるけど……。GBNで有名なダイバーか……。レイという名前のダイバーはいたかな……」
「ああ、その子はダイバーネームとリアルネームが違うのよ。でも、そうね~。その正体を知ったらテイトちゃんはきっと驚くわ♪」
うふふ、とマギーは笑う。その正体についてあえて口にしないのは、楽しみを取っておこうという心遣いか。あるいはマギーのいたずら心が発動中なのか。……なんとなくだが後者だろうな、とテイトはそう思った。
「そういえば、今日はメイちゃんは不在のようだね」
「メイちゃんならGBNにいるわ。あの子も、ビルドダイバーズのみんなと出会ってからどんどん表情豊かになったのよね。もう可愛さ倍増よ!」
「彼女にとって、変わる切っ掛けはヒロトくんたちとの出会いだったというわけだね。良いことだ」
カラン、とグラスの中で溶けた氷が音を立てる。人との出会いは一期一会。その出会いは良い方にも悪い方にも影響を受け、与えるもの。レイや、ユニや、メイは、その出会いが良い方向へと向いたのだろう。
そんなことを考えていると、ポケットがわずかに振動する。ポケットからスマホを取り出して見ると、メールが一件入っていた。
「おっと、
「うふふ、またいらしてね。待ってるわ」
会計を済ませて店の外に出ると、入れ違いになるようにして一人の少女がアダムの林檎へと入っていく。青みがかった長い銀髪が視界の端で流れていき、テイトは思わずその姿を目で追いかけた。自分より少しばかり背の低い、鉄華団ジャケットを着た少女をマギーは快く迎え入れている。おそらくは常連客の一人なのだろう。
ドアが閉まり、ドアベルが乾いた音を立てる。テイトは前を向き直ると愛する妻と娘が待つ我が家へと歩き出した。
―――この時すれ違った少女が、GBNにおいて『クオン』と名乗っているダイバーのリアルでの姿なのだと彼が知るのは、まだ先の話である。
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おまけ
レイ「・・・あの、マギーさん・・・。さっきの、男の子は・・・」
マギー「ああ、彼? 彼はテイトちゃんっていうのよ。ああ見えても大人のオ・ト・コなんだから☆」
レイ「!?」
マギー「しかも妻と娘がいる、愛妻家なのよ」
レイ「!?!?!?」
【クレダ・テイト】(笑う男さん)
GBNで複数のフォースからなる巨大アライアンス『
ダイバールックは高身長の金髪碧眼な男性なのだが、リアルでは低身長・童顔・少年声のためによく未成年だと間違われる。(本人は成人済みで、何なら妻と娘がいる)
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