【跡地】GBN総合掲示板   作:青いカンテラ

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今回は掲示板ではないので初投稿です。


G-TUBER配信回(非掲示板)
ザクムラの作業場【雑談配信】


 どこかの作業場をイメージしたと思われるフォースネストの一角を、Gチューブ配信用のカメラが映している。

 大きな作業台の上には工具が置かれており、壁には標語の書かれた紙や作業台には置けないような大きめの工具類がキッチリと並べられていた。かと思えば、床には配線の切れ端や何かの削りカスが放置されている。

 現実であればこういったものは作業の邪魔になるため掃除をするものだが、ここはGBN。床に散らばっている配線の切れ端も、削りカスも、そして画面の端で見切れている無造作に積まれた鉄板の切れ端も……すべてデータで再現されたものであり、雰囲気を出すためのある種の小物だ。

 

『お?』

『配信始まったー!』

『床掃除しろし』

『神配信』

『おはこんばんにちわ』

 

 予定されていた配信開始時間になると同時に、コメント欄がにわかに騒がしくなる。ものの数秒ほどで、10個ほどのコメントが画面の右から現れては左へと流れて消えていった。この配信の主はまだ姿を見せていないが、いつものことなのかリスナーたちは特に気にした様子もなく思い思いにコメントを打ち込んでいる。

 

 それから数分ほどして、溶接工の付けるマスクで顔を隠したダイバーが、ぬっと顔を覗かせた。溶接マスクで顔を隠し、整備士の服を着た大柄な男性のダイバールック。彼こそがGBN運営公認Gチューバーの一人、ザクムラである。

 

「……おっと、配信始まってたか。よっす、同僚たち。待たせたな。ザクムラの作業場にようこそ」

 

『待ってはないよ』

『同じく』

『神配信』

『もうちょっとのんびりしててもよかったんやで?』

『配信者不在でもリスナー同士で盛り上がれる稀有な配信枠』

 

「お前らひどくない? 同僚には優しくしよ?」

 

 コメントのあんまりな反応に、このフォースネストの主にして配信者……ザクムラはがっくりと肩を落とした。そんな彼の反応を見てさらにコメントが流れていく。流れていくコメントに目を通し、気になったものは拾い上げる。配信開始からのこの流れは、彼の配信枠では最早恒例となっている。

 

 ザクムラの活動内容は、GBNを新たに始めたユーザー向けの動画作成と投稿。よくある質問のQ&Aや、各種UIの解説などを動画にしてGチューブにアップしている。他にもクリエイトミッション機能を利用して、低ランカーや初心者向けのミッションを配布しており、評判は中々。

 しかし彼は他のGチューバーと違い配信枠はほとんど取らず、たまにこうして配信をしても、その内容は雑談中心の初心者ダイバーQ&Aや低ランカー向け解説が主のためか、運営公認Gチューバーのわりにはチャンネル登録者数は伸び悩んでいた……のだが、最近はとあるGチューバーがツブヤキで動画を紹介したことで徐々に増えてきている。

 

『初見』

 

「おー、初見さんいらっしゃい。ゆっくりしていってくれ」

 

『なに、初見さんだと?』

『初見だ!囲め!』

『初見さんがくるのは神配信』

『トリモチランチャーで逃げられないようにしろ!』

『初見さんにプレッシャーをかけるな』

『初見さんお茶どうぞ ( ^^) _旦~~』

 

「そうだぞー。新しい同僚候補が来てテンションが上がるのはわかる。けど、怖がらせちゃあダメだ。まずは優しくしてだな、気を許してきたところをがっちりと捕まえて逃げられないようにするんだ」

 

『草』

『やべーこと言ってる・・・』

『ザクムラの方がヤバいってそれいち』

『捕まえて逃げられないようにするとか怖いなー、戸締りしとこ』

『これはサイコパスですわ』

 

「は? 怖くないんだが? 俺ほどの紳士はGBNにはいないんだが?」

 

『なにいってんだこの偽宇宙エンジニア・・・』

『(一)<コワくないヨ』

『ザクムラに捕まったら溶接用マスクと作業服着せられて「同類」にされそう』

『あっ、ザクムラが俺らのことを「同僚」って呼ぶのはそういう・・・』

『それなんてSCP?』

『俺らはすでにザクムラの同類に改造されていた・・・?』

『オレタチ ハ ナニカ サレタ ヨウダ』

『カミハイシン』

 

「俺のことを何だと思ってるんだよ……。と、そうだ忘れてた。同僚たちに見せたいものがあるんだ」

 

『見せたいもの?』

『へへへ、ストリップかな?』

『ガチムチ野郎のストリップとか誰得だよ・・・』

『リアルは女の子かもしれんやろ!』

『そうだよ(便乗)』

『なんや、彼女でもできたか』

『は? 許さんぞ』

『我ら非モテ同盟を裏切るのは許されない』

 

 ザクムラの「見せたいもの」という言葉に反応して盛り上がるコメント。それらに適当に返事をしつつ、ある程度落ち着いた頃を見計らってメニューを開き操作を行う。

 

 場所が一瞬にして変わり、作業場のようなフォースネストからダイバーたちの機体が置かれている格納庫へと移動する。いくつものメンテナンスベッドが並ぶ中でザクムラは迷うことなく一機のMSが置かれている場所へと歩いていくとカメラを向けた。

 

「はーい、注目。これが今回見せたいものね」

 

 配信画面に映し出されたのは、黄色とオレンジのツートンに塗られたMS。それはジオン公国軍の主力量産機『ザクⅡ(サンダーボルト版)』を、ザクムラが作業用MSとして改造した『ワークスザク』だった。

 

『これは・・・ザク、でしょうか』

『ワークスザクじゃん』

『見せたいものって、ワークスザク?』

『ザク配信』

 

「露骨にがっかりしてるんじゃないよ。てかよく見ろ、同僚たちよ。いつものワークスザクとなんか違うと思わないか?」

 

 そう言いながらGBNにおける自身の相棒であるワークスザクを指差すザクムラ。それにつられたのか、コメントたちも『違うところ?』『いつものワークスザクに見えるが・・・』『んんん?』とザクムラのいう「違い」に気づこうと頭をひねっている。

 

『あ』

『は』

『た』

『い』

『け』

『ん』

 

「なんだその連携・・・」

 

『きれいに決まってて草』

『この見事な連携は神配信』

『頭の横、なんか箱っぽいものが追加されてる?』

『ん?』

『あー、確かに言われてみれば』

『よく見たら両肩にも追加パーツあるな』

 

「おう、当たりだ。ガンダムMkⅡとかジェガンのオプションにバルカン・ポッドがあるだろ? あれをワークスザク用に調整して付けてる。両肩のはスタークジェガンのミサイルポッドな」

 

『バルカンポッドとミサイル? ワークスザクは非武装だったはずじゃあ』

『残念だったなあ、トリックだよ』

『バルカンやミサイルを使う作業、とは』

『大岩とか邪魔なデブリを発破するのに使うんだよ(凡推理)』

『物々しすぎる』

『スクショ引っ張り出してきた。足にもアーマー追加されてるな』

『スクショニキ助かる』

 

 ワークスザクの「違い」に気づいたことで、再び盛り上がるコメントたち。それを眺めながらザクムラはうんうんと頷いている。もし溶接マスクを付けていなければ、その顔に笑みが浮かんでいるのがわかったかもしれない。

 

「お察しの通り、こいつはワークスザクに攻撃用のオプションを取り付けたものだ。バックパックもサイコ・ザクのやつに変えて、ライフルやバズーカを追加装備できる。

 作業用の形態とは違う、戦闘用の形態……さしずめ『ワークスザク重装型』といったところか。最近、ディメンションも()()()()()()()()()からな。もしものための備えとして、戦闘もできるようにしとけって()からのお達しでね。あ、もちろんカレトヴルッフやウィンチで作業もできるぞ」

 

『火器マシマシはいいぞ』

『戦闘を想定していない作業用の機体、とは』

『転用できないとは言ってないから・・・』

『工具のほうが下手な武器より強いことは、ザクムラの前の職場であるUSAイシムラの一件で証明されている』

『やっぱり宇宙エンジニアじゃないか』

『ワークスザクの新形態お披露目は神配信』

『これでガンプラバトル配信もできるね(はぁと)』

 

「えー……バトル配信? 俺ガンプラバトル弱いからやりたくない……っていうか、バトル配信はしないからな。ドンパチは他のGチューバーに求めてくれ。ほら、昇格戦でマギーさん相手に勝って無事16位になったテトラちゃんとかさ。委員長もメキメキ実力伸ばしてるし」

 

『ザクムラがガンプラバトル弱いってマジ?』

『元ランカーが何言ってんだか』

『知らんのか? 古参面同僚からは逃れられない!』

『え、ザクムラって元ランカーだったん?』

『せやで』

『まあ昔の話だ。多くは語るまい』

 

「ああ、そうだ。昔の話さ。……あの頃の話したやつはカレトヴルッフ持って家まで行くから覚悟しておけよ」

 

 びしっ、とカメラに向かって指をさすザクムラ。またまた配信画面の上をコメントが高速で流れていく。

 

『つか、ここまで触れられないテトラちゃんに同情を禁じ得ない』

『誰や?』

『ご存じ、ないのですか・・・!?』

『ダイバーネーム「テトラ」。ギャンの改造機でトップランカーの座を駆け上っているいま最もホットなGチューバーよ。GPDから流れてきたらしくて、ガンプラバトルの腕前も製作技術もトップレベル』

『これにはマ・クベもにっこり』

『ちなみにサザメスが売ってたギャンパーカーのイメージガールしてたこともある。その縁で、サザメスのイベントがある時はゲストに呼ばれたりしてる』

 

「テトラちゃんはいいぞ。いかにもギャルって感じのダイバールックだし、口調もそれっぽいんだがガンプラバトルにかける情熱は本物でな。昇格戦のあとは戦った相手に許可を得て反省会配信をしているんだが、相手の都合が合えば自分の配信に招いて、一緒にリプレイを見ながら意見を交わすこともある。彼女は強くなることに貪欲なんだろうな。バトルでの自分や相手の動きを見返してどこが良かったのか、悪かったのかを研究して研鑽を積み、相手のアドバイスもよく聞いて次へと活かそうとする。あの子はきっと上まで行ける。もしかしたら、GBNの頂にも……最強のファイターである「チャンピオン」の背中にも、手が届くかも―――」

 

 いつにもなく饒舌に語っていたザクムラだが、ふとコメントの流れが止まっていることに気がついた。

 

『え、なにこの溶接マスク・・・キモッ』

『めっちゃ早口で喋ってて大草原』

『饒舌語り配信』

『推しを語るオタクみたいになってて草ァッ!』

『ザクムラはテトラちゃん推しなんか? おれもそうなの』

『ザクムラの動画、テトラちゃんがツブヤキで宣伝してくれてるもんな』

『マジ? ザクムラのチャンネル抜けてテトラちゃんのファンになります』

『ろくろ回しながらテトラちゃん語ってたの草』

『これは切り抜きされる』

『もうした』

『有能』

『仕事速すぎー!』

 

―――ああああぁぁぁぁぁぁ! 配信終了! 今日はもう終わる!

 

『草』

『草』

『発狂してて草』

『鎮静剤でも飲んでリラックスしな』

『発狂による配信終了とは珍しい』

『なにはともあれお疲れさん』

『いやー、次回配信が楽しみですね』




◆後置きな◆配信中に触れられるダイバーネーム「テトラ」ちゃんは、前回の「ナルミ」ちゃんと同じく「アルキメです。」さんが投稿している「お嬢様はピーキーがお好き」よりお借りしました。◆備えよう◆

バトローグ

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