鬱蒼とした大森林を抜けると視界いっぱいに広がる大きな湖。それを見下ろすように悠然と聳えるのは、フォース『
その城の最奥。普段は城主である半人半竜の少女が一人篭もっている玉座の置かれた間には、二人の少女と一人の首無しの騎士が円卓を囲んでいた。
一人はこの城の主にして、フォース『エターナル・ダークネス』のリーダーである『クオン』。
一人は紫色のとんがり帽子を被り、ゆったりとしたローブを纏っている栗色の髪の魔女。ダイバーネーム『ドロテア』。GBNでも一、二を争うほどのビルド狂いフォース『ナイトメアハロウィン』のフォースメンバーである。
そして最後。頭部がないため手元の仮想キーボードを叩いて空中ディスプレイに文字を表示させる、という方法で会話をしているのは、フォース『ナイトレイド』のリーダーを務める『首無し』と呼ばれるダイバーだった。濃い藍色の全身鎧を着たこのダイバーはその名の通りに
そんな三人組を、下部に三脚が取り付けられたハロカメラが映している。そう、クオンがドロテアと首無しの二人を自身の城に招待したのはガールズトークに花を咲かせるためではなく……月末に行われる合同イベントについての配信を行うために、ゲストとして呼んでいたのだ。
「―――こんばんわ。亡者の皆さん。良い
配信時間が来ると同時に、ハロカメラの目が配信中を示すように赤く点灯する。それを確認すると、クオンは始めの言葉を口にした。ハロカメラの左横に展開されている配信画面のコメント欄には、配信を見に来た
『こんばんわー』
『良き週!』
『待ってたぜぇ、この時をよぉ!』
『クオンちゃんかわいい』
『(*´Д`)クオンちゃんの声聞くだけでご飯三倍はいける』
『三杯じゃなくて三倍なのか・・・(困惑)』
『こんばんわ。今週も楽しみにしてた』
『クオンちゃん様の配信で今週も生きられるし、来週も生きられる』
『おや? 今日は他にもいるんだね。珍しい』
『あ、ほんとだ。首無しさんがいる』
『いかにもな魔女ルックの子もいるぞ!』
『ついにボッチ卒業か・・・( ノД`)』
「って、誰がボッチよ!?」
いつものようにコメントを目で追っていたクオンは、ボッチという単語に思わず反応してしまった。ガタッと椅子を鳴らして立ち上がったものの、今回は一人ではなくドロテアと首無しの二人もこの場にはいるのだ。二人の視線(首無しは上体が僅かにクオンへと向いた程度だが)を受けて、クオンはこほんと咳払いして何事もなかったかのように元に戻る。
『赤面頂きました』
『かわいい』
『クオンちゃんそういうところやぞ』
『赤面助かる』
『これは恥ずかしいやつ』
『魔女っ子・首無しさん「(なんやこいつ・・・)」』
『草』
『やめたげてよぉ!』
「―――ンンッ! 今日の配信内容だけれど、月末に控えた合同ハロウィンイベについてのことよ。ツブヤキ、ガンスタグラムでも告知した通り、我がエターナル・ダークネスとナイトメアハロウィン、そしてナイトレイドの三つのフォース合同で行うわ。そんなわけで、今回はナイトメアハロウィンとナイトレイドからそれぞれゲストダイバーをお呼びしたのよ」
『ハロウィン楽しみ』
『ナイトメアハロウィンの名があるだけで不安しかない』
『面妖なビルド狂いたちだからな・・・』
『絶対遅刻する(確信)』
『ということは、そちらの魔女さんはナイトメアハロウィンのメンバー?』
『新しく入った子かな?』
『どうしてまたあのフォースに入ろうと思ったのか。コレガワカラナイ』
「ふふふ、さすがは感がいいわね。そう、こちらの魔女っ娘ルックなダイバーはフォース『ナイトメアハロウィン』の『ドロテア』さん。首の無い騎士のダイバーはあなたたちも知っていると思うけれど、フォース『ナイトレイド』のリーダーの『首無し』さんよ」
クオンの紹介を受け、魔女っ娘……ドロテアと首無しはハロカメラの方へと向く。ナイトメアハロウィンについてやんややんやとコメントが流れていくのを見て、彼女は苦笑しつつも口を開いた。
「ど、どうも……。本当は団長かカーミラさんが来るはずだったんだけど、製作依頼が立て込んでて代理としてきました。ドロテアです」
『ナイトメアハロウィンはさぁ・・・』
『い つ も の』
『カーミラちゃん様の吹き出し芸見たかったけど、依頼なら仕方ない』
『ナイトメアハロウィンは通常運転ですね』
『ドロテアちゃんがもうすでに苦労人の匂いがする』
『それな』
「『ドーモ、亡者の皆さん。ご紹介に与りました首無しです。普段はヨーロッパサーバーで首狩り族してるので、通りがかったら覚悟シロヨ』」
『ひえっ・・・』
『首狩り族してるのか・・・』
『斬り落とされた首を探してそう』
『置いてけ! 首ぃ置いてけ!』
『ハロ置いていくんで許して』
『パトランプ置いてくから許して』
「なんか、大喜利が始まってる・・・」
「いつものことだから気にしなくていいわよ」
「『盛り上がるのはいいことさ。ま、こちらはこちらで本題に入ろうか、クオンちゃん』」
「そうね。まず合同フェスだけど、参加条件は『何かしらのアクセサリーパーツを使って仮装している』こと。ただ一つよ。条件無しでもよかったのだけれど、せっかくのハロウィンイベントなのだからということで、仮装することが参加条件になったわ」
『ほーん。条件ゆるゆるなんやね』
『公式の方も同じ条件だし、それに合わせたのかな?』
『仮装かー。アクセサリーパーツ何かあったかな』
『当日にログボでカボチャ頭貰えるし、それでもいいんとちゃう?』
『せやな』
『せやかて』
『せやろか?』
『せんせー! 変態仮面は仮装に入りますか!』
『倫理コードに引っかかりそう』
『ダメです』
『ガードフレーム飛んできそう』
首無しさん大喜利の次はハロウィンの仮装で盛り上がるコメント欄。中には変なものもあったが……突っ込んだら負けな気がするので見なかったことにする。
「仮装するのは何でもいいけど、良識の範囲内でね」
「『ルールを守って楽しくハロウィン!』」
「ははは……」
「ああ、そうそう。イベントではフォースのメンバーの誰かに『トリックオアトリート』と言えばお菓子が貰えるわ。ただ、数に限りがあるから注意してね。もちろん参加者同士でのお菓子の交換や、配って回るのもOKよ。ただし、いちゃもんをつけたり強引に貰おうとするのはダメだからね。みんなで楽しくハロウィンを楽しみましょう」
『はーい』
『りょーかいです!』
『みんなで楽しくは大事よね』
『お菓子貰えるのは嬉しい』
『クオンちゃんにトリックオアトリートしたい』
『クオンちゃんにイタズラしたい』
『注意喚起は大事』
『俺もお菓子作ろうかなー』
「次はイベントに出るショップだけど、我がエターナル・ダークネスの他にもシャークヘッドさん、ファンキースさん、GHCも当日露店エリアでショップを出す予定になっているわ。他にも出店を出す人はいるから、気になったら見て回ってみるといいわ」
「『露店エリアの近くには特設ステージも設置してあるよ。当日特別ゲストを呼んで色々する予定』」
『色々!』
『(意味深)』
『三フォース合同イベで張り切ってのてんこ盛りっぽいけど、大丈夫? 人手足りる?』
『確蟹』
『いざとなればGHCから警備の人員狩ればいいからへーきへーき!』
『人狩りいこうぜ!』
『GHCの警備員を狩って亡者にするのか』
『これは終末を呼ぶ竜ですね』
「ふふん、この我を誰だと思っている? 心配は無用だ」
自分の胸に手を当て、ふんすとドヤ顔をするクオン。最も、コメント欄は『ほんとぉ?』『でも、クオンちゃんポンコツだからなあ』『クオンちゃんはかわいいですね』といつも通りの反応だったのだが。
「『シャークヘッドは相も変わらずサメ系のアクセサリー売るみたいだね。ナイトメアハロウィンの子とも合作してるって話だけど』」
「そうなの? ドロテアさん」
「へっ!? あ、えーと、そ、そうみたいでしゅね!」
『噛んだ』
『かわいい』
『ここ切り取り素材』
『新しい素材だと聞いている。期待させてもらおう』
『噛み噛み耐久動画とかやめてさしあげろ』
クオンと首無しが主だって進行していくため、半ば地蔵化していた自分に話を振られるとは思っていなかったらしく、電脳空間だというのに噛んでしまうドロテア。もちろんそれを見逃す
ちなみに『シャークヘッド』とは元ナイトレイドのサメンバーであり、頭がサメになっているスーツを着込んだ細身の男サメである(シャーク!)。ナイトメアハロウィンのサメ姿のダイバーにはシンパシーならぬシンパシャークを感じているらしい。
「……大丈夫? ごめんなさい、うちの亡者たちが」
「い、ぃえ……。気にしてませんから」
「『噛んだことをネタにしたやつは後で全員ぶっ飛ばす!(ドロテア心の声)』」
「ちょっ!? 勝手にモノローグ入れるのやめてください!」
『ここすき』
『わたわたしてるドロテアちゃんいいぞ』
『首無しさん結構お茶目だよね』
『いいよ! こいよ!』
『ドロテアちゃんはいじられキャラなのかな?』
『(素質)ありますねえ!』
『いじられキャラの先輩としてクオンちゃんから一言どうぞ』
「いや、いじられキャラとか、私そういうのじゃないし……。終末の竜ぞ? 我、終末を呼ぶ竜ぞ? あなたち、最近そのことを忘れてないかしら」
『草』
『毛先を指でくるくるしてるのすき』
『自覚なしじゃったか』
『忘れてはないけどそれとこれとは別なので・・・』
『クオンちゃんは親しみやすいからね。(いじられるのも)仕方ないね』
『ヴァルガにはいつも終末齎してるからセーフセーフ』
『もうやめて! ヴァルガ民のポイントはもうゼロよ!』
「『ヴァルガ民は何度吹っ飛ばされても、フィールドが修復されるのと同時に復活して失ったポイントを稼ぐために戦い始めるからへーきへーき』」
「……ハードコアディメンション・ヴァルガで戦いに明け暮れてる人たちって、たくましいんですね……」
ドロテアは、もし自分がポイント全損するようなことになったら、ショックでしばらく立ち直れなさそうだなとそう思った。
特にGBNのモヒカンの聖地、GBN動物園、申年が集う場所、などなど様々な呼び方をされる悪名高きハードコアディメンション・ヴァルガで日夜鎬を削っているような高ランクのダイバーともなれば、失うポイントもかなり多いはずだ。大量のポイントを失っても即座に取り戻そうとする切り替えの速さとたくましさはすごいと思う。まあ、それはそれとしてヴァルガの住民になりたいとは思わないのだが。
「露店エリアでの出店以外にもナイトメアハロウィンの協力の元、いくつかのアトラクションも用意しているわ。何が来るかは当日のお楽しみよ」
「『ナイトレイドもお化け屋敷を出すぜーい。しーちゃんが妙に張り切ってたからお楽しみに!』」
『ほぉ、アトラクションですか』
『今回欠席してる理由それでは・・・』
『なるほど?』
『ナイトメアハロウィン製のアトラクションと、ナイトレイドのお化け屋敷か・・・』
『ナイトレイドのお化け屋敷怖そう』
『変形ギミックとかあるんです?』
『ネーデルガンダムかな?』
『有事の際にはアトラクションが変形して戦う・・・普通(?)だな!』
「いや、普通じゃないからね常識的に考えて! ……アトラクションといっても、そこまで変なものは出てこない……と思う。たぶんきっとおそらく」
『草』
『ドロテアちゃん目を逸らしてて草バエル』
『安心と信頼のナイトメアハロウィン』
『とりあえずグランザムとリーブラはあるな』
『とりあえずでアトラクションに改造されるグランザムは草』
『何の光ぃ!?』
『イベント会場を砲撃すな』
「さすがにそんな危険なものは出てこないと思うわ。……えーと、次はフリーバトルとクリエイトミッションの先行体験会についてね」
『来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『イェァァァァァァァァァァァ!』
『フリバ! フリバ!』
『俺、この戦いが終わったらクオンちゃんにトリックオアトリートするんだ』
『フラグ立て乙』
『はえぇよ亡者』
『ちくわ大明神』
『クリエイトミッションの先行体験なんて滅多にできるものじゃない。楽しみすぎる』
『コノシュンカンヲマッテイタンダ!』
『誰だいまの』
今回の合同ハロウィンイベントの目玉ともいうべき、主催フォースメンバーとのフリーバトル及びクリエイトミッション先行体験会。その話題が出た瞬間、コメント欄の流れがスーパーバーニアを吹かしたかのように爆発的に加速する。今日一番の瞬間コメント速度を記録し、大いに盛り上がっているコメント欄。それを見ても既に慣れているクオンはストレージから電脳紅茶を出して一息つき、首無しは『勢いすごいねー』と空中ディスプレイに文字を表示し、ドロテアは引きつった表情をしていた。
「―――さて、と。合同イベントのフリーバトルだけど、対戦相手として指名できるのは我がエターナル・ダークネス、そしてナイトメアハロウィンとナイトレイドの各フォースのメンバーに限定されるわ。バトルは特設アリーナで行い、試合時間は1回15分。勝っても負けてもポイントの増減はしないから、気軽に挑戦してほしいわね」
「『ふっふっふっ、楽しみだねぃ』」
「うちのフォースメンバーはイベント当日遅刻すると思うけど、引きずってでも連れてくるから。絶対に連れてくるから」
『当日遅刻するのか・・・』
『草』
『頼んだぞドロテアちゃん! 君だけが頼りだ!』
『ナイトメアハロウィンの面々とフリーバトルできるまたとないチャンス。ドロテアちゃんには是非とも頑張ってほしい』
『試合時間15分か。まあ、どちらかが撃破されるまでのルールだと長引いたときに困るし制限時間あるのは当然か』
『負けてもぽいんよ減らないのはありがてぇ』
『クオンちゃんはもちろんジャバウォック使うんです?』
『特設アリーナ(ほぼジャバウォック用)』
「ん? 秘密」
『お?』
『お楽しみは取っておけということか』
『秘密にされると気になる気になる!』
『クオンちゃんの「秘密」の言い方えっっっっっ』
『ろ』
『すき』
『達する!達する!』
『狡知はお帰りやがれください』
「対戦可能なメンバーの一覧は後でツブヤキとガンスタグラムにあげておくわね。イベント当日にも一覧表を出しておくから、それを見て戦いたい相手を指名するのよ」
「指名方式だと、クオンさんや首無しさんに指名が集まりそうですね……」
「『どうかな。意外とばらけるかもよ? クオンちゃんなんかは、ヴァルガで暴れすぎてそこら辺のダイバーからは避けられてるし』」
「……………返す言葉もないわ」
ドロテアの「なにやってんだこの人」とでも言いたげな視線を、電脳紅茶を飲むフリでかわす。ちなみに彼女は、ガンプラを用いるいくつかのイベントやフェスからも出禁を受けている身である。
「私に挑んでくるのは頭ヴァルガ民か、上位ランカーか、亡者たちくらいのものよ……」
『頭ヴァルガは草』
『クオンちゃんを倒せば拍がつくからね』
『漁夫の利狙い下剋上はヴァルガの常(なおできない模様)』
『一般ダイバーから避けられてるクオンちゃん(*´Д`)』
『こうして今日もヴァルガ民は狩られるんやなって』
『そしてまた一般ダイバーに避けられると』
『まさに無限ループ!』
「う、うるさいわね! 私だって好きで避けられてるわけじゃないんだから!」
「『どうどう。まだ配信中だから、切り替えていこう! ね!』」
「元はと言えば……はあ、いいわ……。クリエイトミッションだけど、先行体験できるのは4つ。複数人で戦う共闘系と、一対一で戦う決闘系の二種類があるわ」
『複数人・・・ということはチーム戦か』
『協力型のミッションは難易度ヤバそうやなあ』
『タイマンのクリエイトミッション気になりますねぇ!』
『フリーバトルしたいし、クリエイトミッションもしたい』
『配布元がクオンちゃんかナイトメアハロウィンかでも難易度変わるな・・・』
『どっちでもぶっちゃけ大差ないと思う』
『それな』
「ちなみに、先行体験できるクリエイトミッションの中には我とナイトメアハロウィンとの合作もあるぞ。くくく……挑戦者たちが困難なミッションに挑み、もがき苦しむ姿を見るのが今から楽しみだ……」
『悪い顔してる』
『ここすき』
『ワイトもそう思います』
『そんなこと言ってるから避けられるんやで』
『ギザ歯すこすこのすこ』
『わかるマン』
『ワイングラス片手に言ってほしい』
「『まー、クリエイトミッションは先行体験会の結果で最終的な仕様が決まるから、どんどん参加して意見をくれるとこちらとしては助かるよ』」
「あたしも自分が関わったものを多くの人が遊んでくれたら嬉しく思うし、一人でも多く挑戦して感想でも意見でもあるといいかな」
『場合によってはガラッと変わったりするってことですかね・・・?』
『むしろ結果次第ではおじゃんになる、なんてことも』
『なんだっていい!クリエイトミッションをするチャンスだ!』
『イベント見て回りたいけど、クリエイトミッションも網羅したいんだよな・・・時間足りるか』
『クリエイトミッションのテストプレイができる機会なんて滅多にないんだ。難しいこと考えずに楽しもうぜ』
『そうだよ』
『せやな』
『ガンプラの調整するかあ』
「……あら、配信終わりの時間がきたわね。というわけで、月末に開催される合同ハロウィンイベント、是非とも楽しんでいってほしいわ。それでは、今回の配信はここまで。亡者の皆さん。良き
「『良き終末を!』」
「よ、よきしゅうまつを……!」
『よきしゅう!』
『よきしゅう~』
『お疲れー』
『おつです』
『良き終末を!』
バトローグ
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GPD配信(キリシマホビーショップ)
-
クオンVSクーコ
-
クオンVS首無し
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グランダイブチャレンジ(E・D)
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ロータスチャレンジ(E・D)
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激闘!SDガンダムタッグバトル!