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某月某日。
GBNに星の数ほど存在する無数のフォースの中で、ランキング1位に燦然と輝く『
「どうぞ、こちらです」
ここに彼を連れてきたメガネの女性……
当然というかなんというか、外見が中世に建てられた城を模したものであるならその中身もまた中世風を感じさせるものだった。4~5人のダイバーが横に並んでもなお余裕がありそうなほどに幅のある石造りの廊下には、等間隔で壁に埋め込むタイプの燭台とロウソクを模した照明具が配置されており、高い天井にもまた同じく等間隔でガラス製の照明器具が吊り下げられている。
GBNは電脳空間に作られた仮想世界であるため交換の手間はないが、これがリアルなら減ったロウソクの交換や、ランプのメンテナンスといった恐ろしいほどに面倒な手間がかかるだろうな……とザクムラはそう思った。GBNのグラフィック班はどいつもこいつも変態か狂人しかいないが、こういうゲーム的な部分にまで変なリアリティを持ち込んだり無理に追求しない程度には「それを使うのはあくまでユーザー」であるという意識を持ち合わせているらしい。
「それでは準備が整うまで、こちらでお待ちください」
しばらく歩き続けて辿り着いた大広間もまた、絢爛な造りをしていた。何百人ものダイバーが一堂に会しても余裕で収容できるほどの広さを持つそこは、豪勢な料理の数々が乗った大小様々な皿が置かれた長机がいくつも置かれており、GBN各地から集められた多種多様なダイバーたちがグラスや皿を手に談笑をしていた。
ざっと見渡してみるだけでも『第七機甲師団』や『鉄仮面ズ』、『GHC』といった有名どころのフォースに所属するダイバーたちや、ランク145位のツバキ、28位のレイヴン、27位のミリムといったトップランカーもちらほらといるのが確認できる。奥の方で白い狐耳の少女を前にして、顔を赤くしてあわあわしている黒いロングドレスを着た竜人の娘は『二桁の怪物』と称される『クオン』だろう。とても個人ランク13位に座しているハイランカーとは思えないが……これが戦闘になると巨大なMSなんだかМAなんだかよくわからない機体を巧みに操るのだから、人は見かけにはわからないものだ。
他には黒いコートにクルーゼの仮面をつけた少年や、ザビーネのアバターに両目眼帯という思わず二度見するような恰好をしたダイバーもいる。
個性的なダイバーがたくさんいるなあ、と思いつつ自身もその『個性的なダイバー』に含まれるであろう見た目のザクムラは談笑している輪に入っていくでもなく、取り皿を手にビュッフェ形式の料理を取り分けていく。ここに並ぶのは開発スタッフの変態と狂人が血と汗と涙と、あと膨大な予算と時間を掛けて忠実に再現された料理の数々。美味しくないわけがない。
「あー……こんなうまい飯最後に食べたのいつだっけな……。あれ、なぜか目から汗が」
仮想の料理を食べながら、一人静かに涙を流す悲しき社畜の姿がそこにはあった。
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「ヌハハハハ! 余が、ここに、ただいま参上である!」
バァァァン! と扉を開け放って大広間に入ってきたのは、赤マントを羽織ったスク水の少女。赤紫の揺らめく髪に、頭の左右に生えた赤黒い結晶のような角。GBN歴がそれなりに長いものなら知らぬものはいない、自称「普通」のビルダー(実際は相当なビルド狂い)マオー・エガオー13世だった。彼女を連れてきたであろう青年……カルナはなんだか疲れたような表情で何処かへと去っていく。次のダイバーを迎えに行ったのだろう。
「マオー・エガオー13世……」
「あのビルドキチ集団の団長の!?」
「なんだ、グランザムかパトゥーリアかバルジ要塞でも持ってきたのか?」
「デビルガンダムJrだろ」
「いや、バルバドロじゃね?」
「この前ハルファスのキット出たし、ハルファスベーゼハルバードという可能性も……」
「ハルバードは普通すぎるな」
「あのビルドキチがそんな普通のガンプラスクラッチするわけないだろいい加減にしろ!」
散々な言われようであるが、マオー・エガオー13世はビルド狂い集団『ナイトメアハロウィン』のまとめ役故に是非もない。むしろ彼女を知るものたちは、彼女の登場に心強ささえ感じていた。そして、彼女以外のメンバーの姿が見えない理由もなんとなくだが察していた。
『ビルド的な事情で来れなかったんだろうな……』と。
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―――すごい、すごい、有名なフォースやダイバーの人たちがたくさんいる! あ、あそこにいるのはタイガーウルフさん! あそこで優雅に談笑しているのはシャフリヤールさんだよ! あの馬鹿みたいに高笑いしてるちんちくりんはマオー・エガオー13世ちゃん様!!
高速タップでそんな文字を空中ディスプレイに表示させているのは、フォース『ナイトレイド』のリーダー『首無し』。本来なら頭部の無い『首無し騎士』のダイバールックなのだが、いまは王冠型の帽子を被った、紫の髪をセミロングにしている糸目のピエロの首が載っている。ちなみにその表情は非常に迷惑そうで、表示されている文字のテンションとの温度差がすさまじい。
「リーダー、リーダー? 憧れの人たちと同じ場所にいるのが嬉しいのはわかるのだけどぉ……。そろそろワタシの頭を返してくれるかしらぁ?」
そう低めの声で言うピエロの生首。首無しの近くには首を奪われた胴体がぽつんと佇んでいる。
「そうデス。リーダーの頭としてブッピガァン! していいのはシーツーではなくこのワタシなのデスかラ、速く代わってクダサイうらやまけしからン」
「後半本音駄々洩れてるにゃあ……」
「いつものデュラ子って感ジ。しーちゃんもリーダーに捕まったのが運のツキよネ」
興奮気味にディスプレイに怪文書を打ち込んでいる首無しと、その頭部を載せられて迷惑しているシーツーこと『
ダイバーネーム『デュラン』。アイルランドに伝わる首のない妖精『デュラハン』をイメージしたアバターの彼女もまた、ナイトレイドのメンバーであり……同じくデュラハンをモチーフに取り込んでいるC&Cを一方的にライバル認定していたりする。
そんな三人から少し離れたところで料理をつまんでいるのは、ツツジ柄の着物を着た猫耳に二股の尻尾を持つ少女……『タマっち』と、青い肌に中華風の衣装を着たキョンシーの少女『ルゥルゥ』だった。
「思ったんだけドー、ウチのフォースって首のない人多すぎなイ?」
「メンバー5人のうち3人がデュラハンだからにゃー。アタシたちも首を取り外し可能にしてみるかにゃ?」
「効果音はいらないなラー、考えるかナー」
「(考えるのかー……)」
ルゥルゥの返答に(心の中とは言え)思わず語尾を付けるのを忘れるタマっち。ちなみに胴体に首を取り付ける時はガンダムシリーズおなじみの「ブッピガァン!」というSEが流れる。(運営遊びすぎー!)
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「いやー、これだけのダイバーが一つ所に集まっているというのは壮観でありますなあ!」
「あまりきょろきょろするなよ、フロッグマン。我ら『量産機同盟』が頼りないフォースだと思われるからな」
「まーまー、そんな硬くならないでよリーダー。作戦前のこの時間くらいはリラックスしていこうよ」
大広間の窓際では奇妙な三人組が会話を交わしていた。一人は新生ネオ・ジオンの軍服を着た、軍曹と呼ばれていそうな二足歩行するカエル。一人は褐色肌に厳つい顔つきをした、同じく新生ネオ・ジオンの軍服を着た男。最後の一人は新生ネオ・ジオンの軍服を着た丸っこいSDガンダム。
彼らはフォース『量産機同盟』のメンバーであり、同じジオン系MSを使う第七機甲師団のメンバーとも交流がある。
そんな三人に近づく影。それにいち早く気づいたリーダーと呼ばれた褐色肌の男……ラーガン・ダカランは姿勢を正して敬礼をした。
「やあ、量産機同盟の諸君」
「あ、これはこれはロンメル大佐殿! お久しぶりであります!」
「お久しぶりです、ロンメルさん」
「うむ。楽にしてくれていい。今この場においては私たちは目的を同じくする同志なのだからね」
「はっ!」
そう言われて敬礼を解く三人。ロンメルは白いフェレットのようなかわいらしい見た目とは裏腹に、低音の渋い声で言葉を続ける。
「ラーガン、君のところでもマスダイバーが出たと噂に聞いたが……」
「はい……。まことに遺憾ながら」
GBNを蝕むブレイクデカールという毒。そして、その毒を持ってGBNに悪影響を与えるマスダイバー。その影響はフォースを組んでいるものたちにも……否、フォースを組んでいるからこそその影響は大きい。
少し上のランクに位置するフォース『スレイマニ』とのバトル中、量産機同盟のメンバーが一人ブレイクデカールを使用した。その場は全員で対処し何とか事なきを得たが、自身のフォースからマスタイバーを出したことで量産機同盟はバトルを棄権し、活動も自粛していた。奇しくもそれは、現在活動を自粛している『百鬼』と似通った状況であった。
百鬼も有志連合への参加要請は打診されていたが、これを辞退。代わりに別のフォースを推薦していたが、量産機同盟は自分たちの中からマスタイバーを出したケジメとして有志連合に参加し、マスダイバーと戦うことで贖罪とすることを決定した。
「そうか……。だが、あまり気負いすぎるなよラーガン。フォース内からマスタイバーが出てしまったのは残念なことだが、それに囚われてしまっては本来の実力を十分に発揮できない」
「はい。このラーガン、大佐のお言葉しかと胸に刻み付けておきます」
「うむ」
そんな堅苦しいやり取りをしている二人をよそに、フロッグマンとSDガンダム……フルカラーはお互いのバトルスタイルの話で盛り上がっていた。
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「フハハハハハ!! 私は宇宙最強の闘士、マスクドサタン!」
「ヌハハハハハー! 余は宇宙最強の銀河鉄道ジェノサイドXプレスの車掌マオー・エガオー13世であるぞ!」
「ファッハッハッー!! 辿り着いたぜぇ、信念と夢の果てぇ! お宝だらけの新天地によぉ!! 野郎ども、祝砲を鳴らせぇい!!」
大広間の一角では紫色のマスクで顔を隠し、同じ色のマントを羽織い、同じ色のパンツを身に着けたガチムチの男と、赤マントにスク水のちんちくりん少女と、顔面土砂崩れしそうな髭のおじさんが馬鹿みたいな高笑いをしていた。
三人の周りにいるダイバーたちは「なにやってんだこいつら……」とでも言いたげな視線を向けている。
「(この料理)うめぇじゃねえか!!」
ていうか、この料理食べて光ってる髭のおっさん誰!? とその場の全員が思ったとか思わなかったとか。
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世話になったフォース『
「(なんというか、場違い感が半端ないな……)」
いまこの場に集まっている錚々たるメンバーを横目で見て、アルトは疎外感のようなものを感じていた。彼は元々ランキングにも名前が載っているダイバーだった。フォースにも所属し、GBNを楽しんでいた。
しかし、ある時から実力が伸び悩みフォース内でも徐々に浮いた存在になっていった彼はブレイクデカールに手を出した。これがあれば、フォースの仲間たちの足を引っ張らなくて済む……と。
「(ま、結果はブレイクデカールの力に振り回された挙句に倒されたんだけど……)」
いまだに鮮明に思い出せる。ブレイクデカールに浸食され、自分制御を完全に離れて暴れまわる自分のガンプラ。仲間たちを蹴散らし、対戦相手も蹂躙して、それでもなお止まらない、止まれない暴力の化身。
誰か止めてくれ、とあらん限りの声で叫んだ。果たしてその声を聴き届けたのは、たまたまその場に居合わせた魂太のメンバー。激闘の末になんとか鎮圧されたものの、ブレイクデカールを使ったということでフォースからは追放された。去り際に吐き捨てられた言葉も覚えている。自分に向けられる元フォースメンバーたちの怒りのこもった瞳も。
取り返しのつかないことをしてしまった。そう悔やんでも、もう後の祭りだった。
その後は魂太に一時身を置き、なんとか立ち上がってからはソロダイバーとして活動している。ブレイクデカールについて知りえる情報もすべて運営に提供した。GBNの広大なディメンションを旅してマスダイバーと思わしきものたちを説得したりもした。結果はあまり芳しくなかったが……。
今回有志連合に参加したのも、罪滅ぼしという意味合いが強い。あるいはマスダイバーたちを説得すれば、戦いをやめるものもいるのではないか……所詮は理想論だと笑われようと、無駄なことだと言われようと、それでも何かしら行動せずにはいられなかった。
「(リガズィ・スペリオール……。都合がいいことだとはわかっている。だけど、もう一度俺に力を貸してくれ……)」
かつてブレイクデカールで傷つけてしまった愛機を思い浮かべ、固く決意と共に拳を握るのだった。
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テーブルに並べられたいくつもの大皿。そのうちの一つ、いわゆるマンガ肉と呼ばれる骨付き肉最後に伸びる二つの手。
「ム?」
「あン?」
お互いが同じものに手を伸ばしていることを認識し、互いに隣へと目を向ける。黒髪ロングの三白眼の少女と、金髪碧眼で目がつり上がっているメイド服の少女の視線がかち合う。
「おい、これはオレが先に狙ってたモンだ。あとから来たやつは手を引きな」
「ハッ、ナンだそりゃあ。冗談のつもりカ? コレはアタシが狙ってたエモノだゼ」
「ンだァ? ヤるかテメェ」
「上等ダ、表に出ナ。ドッチが上か分からせてやるヨ」
睨み合い、一触即発の雰囲気になる二人。そんな空気をぶち壊すのは通りすがりの第三者だった。
「おっ、マンガ肉じゃん。ほんとGBNはなんでもあるなあ」
首から大きな円状のゴーグルを下げた白い長そでシャツに黒のチノパンというラフな格好の青年が、マンガ肉の最後の一つを手に取っていった。
「アッ、テメェ!」
「それはオレのもんだ! 返しやがれ!」
「ウェイ!?」
もちろん(二人からすれば)横取りを見逃すはずもなく、アワレ青年は二人のおっかない女に追い回されたり、睨み合いの間に挟まれて生きた心地がしなくなるのだった……。
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運営公認Gチューバー『ナルミ』……改め空前絶後の超絶美少女ダイバー(自称)『ナウイ』は浮かれていた。それというのも、いまこの場には著名なトップフォースのメンバーから、ランキング戦にこそ参加していないが腕利きとして掲示板で話題になっているダイバーまでが、揃いも揃っているからである。もちろん様々な事情で参加していないところもあるとはいえ、これだけのフォース、これだけのダイバーが一堂に会するというのも滅多にお目に掛かれない貴重な光景だ。
そして、
「はぁ~、これだけでもリリジマに仕事を押し付け……げふんげふん、任せてきたかいがあるというものだね」
今頃コガネイやカツラギさんを相手に、必死に誤魔化しているだろう後輩の姿を思い浮かべつつも料理を頬張る。もしものために作った対処マニュアルは既に渡してあるし、何より彼女は優秀だ。自分がいなくてもなんとかなるだろう。それに、彼女とはこの戦いが終わったら「丼盛り高級焼肉店鉄火丼の食べ放題コース」を奢る約束をしている。十分な働きをしてくれると信じよう。
「んぐ……さて、と……。料理も堪能したしそろそろ動くかな」
ぺろりと指についたソースを舐め取ると、ナウイはサングラスの位置を直した。後輩に仕事を押し付けてまで有志連合に潜り込んだのは、バーチャル飯をたらふく食べるためではない。本来の目的は別にあった。
それは……「ここにいる有名フォースや有名ダイバーとお近づきになる!」ということである。すっかすかのフレンド欄を埋めたり、あわよくばアライアンス(いうなればフォース同士のフレンド)を結ぶこともできるかもしれない。一応Gチューバーとしての活動用にフォースこそ作ってあるが、運営公認という部分が引っかかり長らく非公開設定になっていた。だがしかし、いまここに居るのは運営公認Gチューバーのナルミではなく空前絶後の超絶美少女ダイバー(自称)のナウイである。よって公開設定にして、名前を『GBN不具合事象調査係』なんて堅苦しいものから『休暇くれ』に変えて、アライアンスを結んでも問題なし! ヨシ!(なおバレたらカツラギさんの雷が落ちる)
とはいえ、フォースとしてもダイバーとしても無名もいいところなナウイがいきなり行っても色よい返事は貰えないだろう。ならばどうするか。それらのフォースやダイバーとパイプを持っている人物に紹介してもらえばいいのである。
「(マギーさんなら人当りもいいし、フレンドもたくさんいそうだし、狙いはそこだね)」
ぐふふ、と悪い笑みをこぼすナウイ。アロハシャツにスパッツ、グラサンという格好も相まって怪しさ大爆発だが、気にしてはいけない。
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料理を食べ終えて大広間を見て回っていたザクムラが、その見覚えのありすぎる灰色狐耳ツインテを見つけたのは、鉄仮面ズのリーダー、鉄仮面の人と挨拶を交わして歩き出そうとした時だった。
「君、かわいいねー! どうかな、私とアライアンス組まない? あ、そうだフレンド登録もしようよー、いいでしょ?」
「え~、どうしよったかな~。あーしもフレンド枠いっぱいいっぱいなんだよねー」
「そこをなんとかさー! ここで会ったのも運命、デスティニー的なアレだと思って!」
……。
なにあれ(素)。
グラサンをかけてアロハシャツを着た灰色の狐耳ツインテールの少女が、狐耳と同じ色のもふもふ尻尾をご機嫌に左右に振りながら、先端が尖り立った黒地の虎耳を頭に生やした健康的な小麦色の肌の女性ダイバー……というか、ザクムラが推しているGチューバーのテトラだった……を口説いていた。というか、口説き文句がどこぞのチャラ男のそれである。
恰好こそ違うもののダイバールックと声的に同僚なのはほぼ確定なのだが、テトラを口説いている狐耳少女と彼が知っている同僚の彼女とのイメージが一致しない。お前さんそんな喋り方じゃなかっただろとか、語尾に「~ッス」をつけたら小生意気な後輩みたいだなとか、一般ダイバーとのフレンド交換したってバレたらカツラギさんに怒られるぞとか……色々な言葉が脳内を駆け巡り、否、ナウイと楽しそうに話している
「うーん、わかった。アライアンス? はよくわかんないけど、ここで会ったのも何かの縁ということで、フレンド登録するっしょ!」
「お、キタキタ。はーい、承認したよー。ありがとう!」
「いいっていいってー、あーしもフレンドが増えて嬉しいし♪ それじゃ、お互いにガンバってこーね!」
「おー!」
(テトラちゃん)かわいい(やったー!)。
「またねー☆」と手を振りながら、テトラは離れていった。
「えへへ……。フレンド登録しちゃった……」
そして残されたのはテトラの名前が入り、枠が一つ埋まったフレンド欄を見てにやにやしているグラサンアロハシャツ狐娘。テトラがいなくなったことでザクムラは再起動を果たし、オペレーションパターン2に移行する。
「―――ナルミ」
「はいはい、どーもナルミ……じゃない、ナウイちゃんですよー。え、ナルミちゃん? いえそんな空前絶後の超絶美少女ダイバーなんて知りませ……ゲェ!? ザクムラ!」
人の顔を見て「ゲェ!?」とはなんだ。
背後から近づいて名前を呼ぶと、ナルミ……いまはナウイと名乗っている……はフレンド欄を閉じて振り返った。それと同時に溶接マスクの遮光ガラスの部分をグポーンと赤く光らせたザクムラを見て素っ頓狂な声を上げる。その光るギミックはなんなの? EXAM搭載型ザクムラなの? という疑問はこの際おいておく。
「お前さん、ナルミだろ」
「え、い、いや……違いますよ人違いじゃないですか? 私の名前はナウイであってナルミって名前じゃないですしぃ……」
両手を出して顔を隠すようにしながら、たらたらと冷や汗を流しながら全力で視線を逸らすナウイ。
「やっぱりナルミじゃないか」
「チガイマスヒトチガイデス」
「……その格好、バレバレだぞ。具体的にはクルーゼのマスクつけて活動してたチャンピオンくらいにバレバレだぞ」
「うぇっ!? ウソでしょ!? ……あ」
なぜそれでバレていないと思ったのか……コレガワカラナイ。
「飯持って行ったときに、デスクの隅にガンプラがあったからもしやとは思ってたんだが……。ナルミ、お前仕事はどうしたよ?」
「うっ……リリジマに代わってもらったんだよ。対処マニュアルは渡してあるし、たぶんきっとおそらく大丈夫」
悪戯のバレた子供のように、ばつの悪い顔をしながら視線はそらして素直に言う。灰色の狐耳はぺたんと倒れ伏し、もふもふの尻尾も垂れ下がっている。
「そうか。まあ、あいつのことだし高級店の焼肉食い放題あたりで手を打ったんだろう」
「……」
「それで? なんで名前変えてまでここに来たんだ? バレたらカツラギさんに大目玉食らうのわかってるだろう。ていうか、リリジマみたいに仕事用とプライベート用のアカウントくらい分けろ」
「……部屋に引きこもってパソコン画面睨んでるよりもね、こっちのほうがしっくりくるというか……ううん、違うな。私は見ているだけなのがイヤだったんだよ、ザクムラ」
ザクムラは何も言わない。無言で続きを促す。ナウイは言葉を選びながら、その続きを継ぎ足していく。
「私はこの世界が好きだ。自分が開発の一端に関わって、そして今も関わり続けているこのGBNという世界が大好きだ。デバッガーの真似事をしていたのだって、バグの報告は次々上がっているのに、対応が後回しにされていたことに怒りを感じて衝動的にしたことだし」
そのせいでカツラギさんには怒られたし、真面目にクビが飛びかねない事態にまでなったものの、そこに後悔はない。なんやかんやあっていまも仕事を続けられているし、運営公認のGチューバーとしても活動できている。
「だから、ユーザーのみんなや
少なくともウソは言っていない。だが、この有志連合に潜り込めば有名フォースや有名ダイバーとお知り合いになれるかも? という打算的な考えもあったのも確かだ。無論それについては口にはしないが。
「…………。こういう場合、カツラギさんに報告すべきなんだろうけど……」
はぁぁぁ、と深い深いため息をつくザクムラ。
「来ちまったもんはしょうがないし、お前さんの性格はともかく腕前は確かなのは知ってるからな。頼りにしてるぜ、
「……君ってやつは本当に。……でも、ありが」
「えい」
もふっ。
「ふわぁぁぁ!?」
ナウイの言葉は、狐耳に向かって背後から伸ばされた手によって中断された。「あ、あ、だめ、そこ敏感なとこぉ……」とふにゃふにゃになっていくナウイの言葉を無視して狐耳をもふもふするのは、どこかの学校の制服を着た青い長髪の少女。Gチューバーとして主にガンプラバトル配信をしている『委員長』『イオリん』こと『イオリ』だった。
「いい手触り……。ずっと触っていられますね……」
「ふぁぁぁ……ら、らめぇぇぇ……」
「委員長じゃないか。有志連合に呼ばれてたのか」
「あ、ザクムラさん。こんにちわ。ええ、はい。なぜか私もお誘いを受けました。まだまだ未熟な私がどこまでお役に立てるかわかりませんけど……」
「エ、ウンソウダネ」
個人ランクの4桁台にいたシャアマスクの人を下してから勢い付き、3桁台のランカー相手にも勝利を収めている彼女が「まだまだ未熟」とは思えなかったが、人は満足してしまえばそこで停滞するものだ。あのチャンピオンですら自らを「挑戦者」として歩み続けることを止めないのだから、イオリもまた現状に満足して歩みを止める気は更々ないのだろう。
「(……俺とは違うな)」
かつての自分を思い出し、チクリと心に棘が刺さったような気がした。
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チャンピオンとロンメルによるブリーフィングが終わり、有志連合の一同は作戦開始まで各自待機することとなった。自身のフォースネストに引き上げるものもいたが、ザクムラの姿は格納庫にあった。
「(いよいよマスダイバーとの決戦か。出来る範囲で準備はしたが、どこまでやれるか……)」
メンテナンスベッドの中に直立しているFAワークスザクを見上げる。思えばこの機体ともそれなりの付き合いになった。ランカーとして上を目指すことを諦め、初心者向けのQ&A動画を作ってGチューブに投稿し、紆余曲折あって運営公認Gチューバーとして正式に活動することになった。
一度夢を諦めた自分が、いまだにこのGBNに関わり続けているのは、ナウイの言っていたことではないがこの世界が好きだからだ。GBNが好きだから、少しでも新たなダイバーの助けになればと動画投稿をしているしクリエイトミッションも配布している。
「(最初はなんで俺がって思ったけど、俺がGBNを守るためにできることはガンプラを使って戦うことだ。なら、やってやるしかないよな)」
ナルミ……ナウイの言葉が思い出される。自分をまっすぐに見つめる力強い瞳も。自分が関わっているこの世界が、このGBNが好き。だから、守るために戦う。
「……俺だって元ランカーだぜ」
作戦開始時間が近づき、ザクムラはFAワークスザクに乗り込みカタパルトへと移動する。この先には、今回の作戦地点である初心者用サーバー・エリア11への転送ポイントが用意されている。それを潜れば……そこはもう敵地だ。作戦中はサーバーが隔離されるため、一度撃墜されると再突入は不可能になる。
―――防御重視にしておいて正解だったな。
味方の盾となり、負担を減らす。突入隊がエリア11のラグランジュ4資源衛星で黒幕を確保するまでの間、防衛隊はマスダイバーと戦わなければならない。一度やられれば返ってこれない以上は一機でも多くの味方機を長生きさせる必要がある。今回はそのための鎧であり、そのための盾だ。
「ザクムラ、フルアーマーワークスザク……発進する!」
カタパルトが動き出し、FAワークスザクを空中へと打ち出す。GBNの感覚フィードバックで圧を感じたと思えば、僅かな浮遊感がする。すぐさま機体を安定させると青空に口を開けているゲートへと迷うことなく飛び込んでいった。
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ここぞとばかりに参加したダイバー出そうと思ったらそんなに消化できてない罠。
ていうか中々始まらないな対マスダイバー戦・・・。それもこれも予想以上に話が長くなったナルミちゃんが悪いんだよ・・・。
【デュラン】
通称『デュラ子』。フォース『ナイトレイド』に所属しているダイバーの一人で、ダイバールックはデュラハンをモチーフにしている。(どこがとは言わないが)まな板。
【タマっち】
フォース『ナイトレイド』に所属している猫娘。ダイバールックのモチーフは猫又である。その胸は豊満であった。
バトローグ
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GPD配信(キリシマホビーショップ)
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クオンVSクーコ
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クオンVS首無し
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グランダイブチャレンジ(E・D)
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ロータスチャレンジ(E・D)
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激闘!SDガンダムタッグバトル!