マジでこの会社やめてやろうかな   作:ナイン

11 / 27
それ飲もうと思ってたやつなんだが!?

「……不穏だ」

 

 あれから三時間は経つが、一切損害報告がないどころか連絡すらねぇ。まさか負けた、ってことはねぇと思うが……。今回の件、間違いなく鼠王が関わってくる。少し前に別口からスラム街の住人をマフィアが殴打していたという報告が来ている。

 

 あのジジイが黙ってられるとはとても思えねぇ。冷酷を演じようとしているんだろうが、根本にある優しさが見え隠れするのがあのジジイだしな。歳を食ったってのもあるとは思うが。

 

 今頃ソラが合流している頃だろう。あっちからの連絡も少し前に途絶えている。

 

 少し前に派手な花火が上がったのと、市民から自転車を貸したって電話が来たから無事だろ。知らねぇけど。

 

「こういうとき、歯痒いったらねぇな……」

 

 現場に居たらこんな心配しなくていいんだがな。この心配自体無用なものだと分かってはいるが、目の前で起こってないと不思議と不安になる。

 

 そんなくだらない思考を延々と繰り返していると、事務所の電話が鳴る。

 

「……どうせエクシアだろ」

 

 気だるげに、少し期待交じりに電話を取ってみる。

 

「ヤッホー、タナトス! 元気ー?」

「……」

「んー? あれー? もしもーし?」

「聞こえてるわアホ」

「ちょっと! アホって言った!? アホって言ったでしょ!」

「言ってねぇ言ってねぇ」

 

 ……とりあえずは無事っぽいな。ってかこいつピンピンしてやがる。もうちっとやかましさを自重してくれねぇかな。電話越しでもやかましくて仕方ねぇ。

 

「……お前、定時報告忘れてただろ」

「あっ……ごっめーん! 連絡しようとしたタイミングで忙しくなったりしちゃったからさ。ついつい……ね?」

「いや決まりは守れよ」

 

 ペンギン急便の決まりの一つに、一時間に一度連絡をするというルールがある。損害の確認はもちろん、怪我しているかの確認もある。……まぁ、俺とエクシアとの間での約束みたいなものなんだが。

 

 たまーにテキサスが代わりに連絡寄越してくれるくらいか。

 

 エクシア曰く、帰ったときに一気に聞かれるのが面倒だとかなんとか。……定時連絡の方が面倒だと思うがな。

 

「……ま、いいか。現状報告を」

「今()()()()()に居るんだけどさ~」

「はぁ」

「マフィアがしつこくてさー。襲撃してきたんだよね」

「はぁ……」

 

 待て待て。絶対ロクでもない発言とんでくるだろ勘弁してくれ。思わず人差し指でこめかみを押さえるが、現実が変わる事はなく……。

 

「酒瓶、何本かダメにしちゃった!」

「……嘘だろオイ」

 

 あそこには俺のコレクションが何本か置いてあんだぞ! 事務所とは別の! 俺の酒が! ずっと飲もう飲もうと思って結局行けてなかった結果がこれとか最悪すぎねぇか!

 

 こっちは真面目に働いてるのに……どうして……。

 

「まさかとは思うが……その中に百万クラスのモンとか紛れ込んでねぇだろうな……?」

「あー……クロワッサン? 百万クラスのやつあったかタナトス聞いてるんだけど」

「あー、タナトスはんご愁傷様や」

「マジで……?」

 

 あそこにある中で一番高いやつ……俺が正式な市場から仕入れためっちゃいいやつ……。あんな上モノ中々手に入らねぇのに……。

 

 心折れそう。事務所の帳簿とかもうどうでもいい……俺の楽しみがなくなったことの方がショック……。

 

 アジトにあったボスが闇市から仕入れたレコードとかどうでもいいわ……同情してた俺を返してくれ……どうせ酒瓶投げろとか指示したのボスだろ……。あの野郎ぜってぇに許さねぇ……。

 

「……ふぅ。まあいいや、どうせ取り返せねぇし」

「あ、思ったより立ち直るの早かったね!」

「どうせ投げたのお前だからお前をシバけば俺の鬱憤(うっぷん)は発散されるし」

「言いがかりじゃん!」

 

 あのメンツの中でいい値段の酒瓶投げるのエクシアくらいだしな。ボスとクロワッサンはモノの良さが分かるし、ソラは投げないだろうし、テキサスは……まぁ多分やってない。

 

 となると流れ弾に当たったかエクシアが投げたかの二択だが……前者だと鬱憤が晴らせねぇから俺は後者に決めつける。事実確認とか知るか。

 

「他の物品は?」

「今ボスが座ってるバーチェア以外は全部ダメになったかな」

「マジかよ。あのクソペンギン悪運強すぎねぇか」

 

 あの人なんでもかんでもアートとかほざくから今頃これこそアート! ……とか言ってんだろうな。想像出来るわ。アンタのアートのためにいくら犠牲になんだよ。

 

 どうせあの人の財布から補修費抜くから知ったことじゃねぇけどさ。

 

 こっちが負担する必要とかねぇしな。

 

「……テキサスは?」

「少し休んでるよ」

「そうか……ちゃんと見といてやってくれ」

「タナトス、なんだか保護者みたいじゃない? いいなー! あたしの世話も焼いてくれてもいいよ!」

「誰が保護者だバカ!」

 

 もう十分世話焼いてやってるだろ!

 

「おいタナトス、ちといいか?」

「なんだよクソペ……ボス」

「お前ふざけんなよ」

 

 いけねぇいけねぇ。思わずクソペンギンって言うとこだった。言わなきゃセーフ。聞かれてるからアウトだろうけど。

 

 人の話の邪魔をするんじゃねぇよ。

 

「……で、なんだよ?」

「奴らのことを永眠させてやろうと思う」

 

 また物騒な。まあ、安魂日だってのに頑なに喧嘩吹っ掛けられてんだ。こっちとしても黙ってる理由はねぇ。

 

 しかし、これだけ大きな騒動になっているってのにフェンツ運輸からはもちろん、龍門近衛局からなんの干渉もないってのはどういうことだ?

 

 奥歯になんか挟まってるような違和感だな……。絶対に、なにかある。




 個人財産まで犠牲になるタナトス大変そう。

特殊タグ導入してみたけど

  • いいねぇ!
  • 普通の方がいいな! いいな!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。