マジでこの会社やめてやろうかな   作:ナイン

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二章:狼心支柱
なんもしてねぇっての!


 タナトスに関しては、私は……分からない。会計をしてくれていること、交渉役を引き受けてくれていること、銀色の髪に金色の瞳が特徴的なこと。一緒に働いてはいるが……本性を見せてくれない。

 

 エクシアにも聞いてみたが……受け流されてしまった。推測にはなるが、きっとエクシアも知らないんだろう。それだけ重要ななにかを隠している。

 

 もし、それを暴いて……タナトスがどこかに消えてしまうようなことがあるなら、知らなくても構わない。

 

 彼はタナトス、ペンギン急便の事務員で……憎まれ口を口にしながら私を受け入れてくれた人だ。

 

 

 

 

 

「……お前らちゃんと出勤してきてんのえらいな。おはよう」

「タナトスが遅いだけだって! なにしてたのさ!」

 

 エクシアが膨れっ面で詰め寄ってきたところで特になにをしていたわけでもない。事務所に居るのは……エクシアとテキサスのコンビだけか。あとの二人は仕事か物品漁りだろうな。

 

「……お前な、お前らのせいで昨日の終業時刻は遅かったんだ。少しくらい許容するってのが礼儀ってもんじゃねぇか? それにボスの許可も取ってる。文句を言われる謂れはねぇよ」

 

 ボスに連絡したあと、断られるかと思ったが、すんなり通って驚いた。……通らなかったところで勝手にやらせてもらっただけなんだが、ボスも分かってるだろうからな。

 

「その言い方ひどくない!? 心配とかしたんだからね!」

「へぇ、心配? お前が?」

 

 散々無茶してこっちに迷惑かけるクセに心配とは恐れ入った。いつから保護者になったんだ?

 

「そ……そうだよ! あたしだって心配するときくらいあるし……ってゆーか、なんかタナトス、モスティマみたい! モスティマと一緒に居たでしょ!」

「どんな判別の仕方だよ!」

 

 確かに、モスティマとは過ごした時間が長いせいで影響は受けているだろうが……今回はたった数時間だ。影響の受けようがないだろうが。つまりこれはカマかけだ。どうせ根拠なんてない。適当にやり過ごせばいい……そう思っていたんだが。

 

「……居ただろう」

「は? 急にどうしたんだ。居たってどこに?」

 

 テキサスが言葉が少ないのはいつものことだが、理解出来ないことはない。だが今回はなにが言いたいのかサッパリ分からねぇ。

 

「モスティマと一緒に居ただろう」

「……なにを根拠に?」

 

 マズった。この返答だと肯定してるようなモンだ。気付いたときにはもう遅い。既にテキサスの瞳には確信の色が宿ってる。言い逃れは……多分出来ねぇだろうな。エクシアはなんだかんだで受け流せる、これは経験的なものと、年上だからって側面のが強いんだが……テキサスは、そうじゃねぇ。まずこいつが詰問に転じることが稀だ。相当気になったんだろうが……なぜ?

 

「雰囲気と匂い」

「あー……」

 

 なるほど、たしかに同じ屋根の下に一泊してたんだ。少しは混じるだろうが……気になるほどか?

 

 まぁ、いい。正直に白状しよう。どうせ後ろめたいことなぞ何もねぇんだ。

 

「……その通りだ。昨日はモスティマと一緒に居た。お前らが酔い潰れたあとにバーに行ったらアイツが居た、それで宿がねぇ……ってんで仕方なしに俺の家に泊めた」

「えー! なにそれ!」

 

 デスクをバンバン叩く勢いで──若干音が出てた気がするが──エクシアが嫉妬の言葉を飛ばしてくる。

 

「モスティマの時だけ態度が変わりやがって……。大丈夫だ、間違いなんて起きねぇよ。お互いにそこは(わきま)えてる」

 

 同郷の中でも突出して長い時間を過ごした一人だ。そんなのが起こるなら既に起こってる。

 

「あたしも一緒に泊まりたかった!」

「そこかよ!」

 

 思わず頭を抱えて叫ぶ。もしかしたら外にまで聞こえてるかもしれない……が、そんなことは関係ない。いや、気持ちは分からないでもねぇんだが、お前もう少し言葉を自重しろよ……。

 

「だって二人で静かにお酒飲んでたんでしょ、だったらあたしが行ってもいいじゃん!」

「どういう理論だよ!」

「こういう理論だよ!」

「ない胸を張るんじゃねぇ! なんも出ねぇだろうが!」

「しょ……将来出るようになるし……! あとタナトス、それセクハラだかんね!」

 

 クッソ……この女郎……都合のいい時だけ女面しやがって……。エクシアに構ってられねぇ。テキサスに話しかけるとしよう。

 

「……と、いうわけだ。特になにかあったわけじゃないから……おい、テキサス?」

「……ん、なんだ?」

 

 あー、こいつ大丈夫か? ぼんやりしてるように見えることはあっても実際にぼんやりしてることはそうないんだが……。

 

「……すまない。少し外に出てくる」

「あ……ああ。あんな騒ぎがあったあとだ。気をつけていけよ」

「分かってる」

 

 振り返りもせず返答だけすると、事務所の扉を開けて出て行ってしまう。……いつもより少し強めにドアを閉めながら。

 

「タナトスってホント、乙女心がわかんないよね」

 

 売り言葉に買い言葉じゃないが、反論するために口を開こうとしたが、肝心の言葉が出てこなかった。

 

 

 

 

 

 

 モスティマと一緒に居た。その言葉を聞いたとき、腹が立った。……なぜ腹が立ったのかは分からない。ただ、嫌だと思った。モスティマに対するタナトスの扱いは、きっと私とは違う。それが……。

 

 言ったところで仕方のないこと。それは分かっている。

 

 だが少し……羨ましい。

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