マジでこの会社やめてやろうかな   作:ナイン

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俺が悪いのかよ

「……ってなわけなんだが、ソラ、どう思う?」

「タナトスさんが悪いと思いますよ」

「嘘だろオイ……」

 

エクシアと話しててもキリがないってんで、ちょうどいいタイミングで来たソラに聞いたんだが……これだ。なにかしら悪いという自覚はある。だが、バッサリと切り捨てられてしまうと思うところはある。

 

「嘘でもなんでもないですよ、テキサスさんの気持ちを考えれば当然です」

「そういうもんかねぇ……」

 

 気持ち、と言われると弱い。交渉が絡むならともかく、普段はダメだ。一度だけ直そうとしたが……どうにも上手くいかなかった。他人への配慮、というものが俺には欠けているらしい。交渉だと上手くやれるんだがな。

 

「いや、そうじゃなくて解決方法について教えてほしいんだが」

 

 そもそもどっちが悪いとか悪くないとかそういう論争をしたいわけではないんだ。なんとなく、俺が不用意な発言をしたことは理解してる。まあ、同僚が家に女招いてよろしくやってた──とは言わないかもしれないが──なんて聞いても微妙な反応をしても仕方がない。黙ってりゃよかったのか?

 

「ちなみになんですけど、私が言わなければどうしようとしてます?」

「そうだな……とりあえずテキサスに甘いものをやるために連れ回そうとはしてるが」

「タナトスさん、もしかして……餌付けしとけばなんとかなるとか思ってませんか?」

「えっ、違うのか!?」

「違いますよ!」

 

 言われてみれば確かに……テキサスはちゃんとした人間だ。犬猫みてぇに餌付けしてればなんとかなるわけじゃねぇのは違いねぇ。それは違いねぇが……他に思い付くわけでもねぇんだよな……。

 

「自分で考えてください……って言いたかったんですけど、その様子だと大丈夫じゃなさそうですね」

「生憎、人のご機嫌取りなんてやったことがなくてな」

「タナトスさんはそういうところも直した方がいいような気がしますけど……そうですね、私が教えるのもタナトスさんがやろうとしてることとあんまり変わらないと思います」

 

 変わらない、というなら俺と違った意見が根本にあるんだろうが……あんな言い方されたのに言おうとしてたことと近いのはなんか腹立つな。

 

「いいですか、タナトスさん。女の子はタナトスさんが思ってるような不思議な生き物じゃないんです」

 

 別に不思議な生き物だとは思ってないんだが……とは言えない。機嫌を損ねて方法を聞けないのは勘弁だ。

 

「テキサスさんはきっと、タナトスさんが誰かと親しくしていることに驚いたんだと思います。ほら、エクシアとはいつもやってますけど、モスティマさんとはあまり交流している印象がありませんから」

 

 まあ、たしかに。昔はともかく、今はそもそも会わないからな。だが……

 

「昔馴染みだってのはテキサスにも話してある。あいつがそんなに気にするとは思えないが……」

 

 そう、あいつがペンギン急便に入りたての頃には既に話してあったんだ。今更どうこうというわけではないと思ってたんだがな。ソラの反応を見る限り、どうやらそうではないらしい。

 

「タナトスさん、きっと理屈じゃないんですよ。……私は、ちょっと羨ましいですけど」

「どこがだよ……」

 

 呆れた視線を向けると、ソラは微笑んでいた。まるで届かないものに届いた人を見たような、そんな羨望を混じえて。

 

 

 

 

 

 タナトスが悪いわけではない。それは分かる、分かるが……自分で自分を納得させることが出来ない。モスティマと彼は旧友らしい。ラテラーノで同じ任務を行ったこともあると言っていた。だったら相当仲がいいんだろう。

 

 モスティマはきっと、私の知らないタナトスを知っている。そう考えるだけで、嫌な気分になる。過ごしている時間が違うんだ。逆に言えば私はモスティマの知らない彼を知っている。それでいいじゃないか。

 

 そうやって自分を騙してきたが……今回は少し、抑えきれないかもしれない。胸のあたりが苦しい。

 

 きっかけはやはり、タナトスの家にモスティマが泊まっていたことを肯定されたからだ。

 

 私は否定してほしかった。そんなことはないと言ってほしかったんだ。

 

 だが……それは私の勝手な願望だ。タナトスに押し付けるわけにはいかない。

 

 だから、私が彼に迷惑をかけるわけにはいかない。彼は私を救ってくれた。これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。

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