マジでこの会社やめてやろうかな 作:ナイン
仕方なしに依頼を引き受けた次の日から調査を始めた。しかし、調査の進行割合は良くない。最悪、というほどではないがそれに近い。分かったのは殺人は間違いなく起きていること、検死の結果に間違いはないこと
「だから現地調査は嫌いなんだっての」
労力に見合わない結果になると、どうしてもやるせなくなる。これを四六時中続けている龍門近衛局の連中には頭が上がらない。よくもこんなことを続けていられるなと関心する。もっとも、地道な捜査をすることでしか辿り着けないことも多くあるのは違いねぇが。そんなことを考えながらスラム街を歩く。
一人分の足音しか響かず、他の物音が何一つしない。日陰者のたまり場にしても妙だ。
「……?」
なにかが降る音がする。そう、降っている。頭上から空気を切り裂く音……!
「クソっ……!」
急いで回避行動を取ると、今まで居た場所に黄色の雨が降り注ぐ。これは雨なんかじゃない……アーツの刃だ!
「……外したか」
物音一つしなかったはずのスラム街に、一人のループスが立っていた。艶やかな黒髪と、抑揚のない声が印象的な女性──というにはまだ若い。歳はそれほど取っているわけではなさそうで、感染者のような印象も受けない。
なにより目立つのは、右手に持っている光剣。これがおそらくアーツの元だろう。確か名前は、源石剣。源石を上手く道具として使った剣で、普段は刃がない手のひらサイズにも関わらず、使用者が戦闘の意志を表した途端に刃を形成する。しかも、これは変幻自在だ。
上手い。トラップが仕掛けてあったのにすら気が付かなかった。臨戦態勢を取っていなかったとはいえ、恐ろしいものがある。
いや、トラップと決めつけるには早急かもしれない。もう少し慎重にことを運ぶ必要がある。
どうする……俺はそもそも戦えない。このまま嬲り殺しに遭うのはごめんだ。
「……戦わない選択肢は?」
「ない」
一拍も置かない返答にため息が漏れた。穏便に済ませるという選択肢はハナから存在してねぇ……邪魔だったら斬る。そう感じさせるだけの力強さが彼女の瞳には宿っていた。明らかに場馴れしているのが見て取れた。呼吸が異様なほど落ち着いている。
ただ……瞳から伝わってくる感情の中に殺意がない。それどころか──そう、空っぽだ。ただ邪魔をしてくる人間が居るから敵として認識しているような、機械的な印象を受ける。戦意を削ぐのも難しそうだ。
援護を誰かに頼もうにも、電話をかけようとした瞬間に切り伏せられちまうだろう。やるしか、ない。
「そうか。なら──」
覚悟を決めて、拳を構えようとした瞬間、不意に目の前のループスの体勢が崩れ、気付けばループスが這いつくばっていた。
「ぐっ……」
彼女の足元をよく見ると、地面に小規模のクレーターが出来ている。これは……。
「ほら──やっぱり私を連れて行った方がよかった」
コツ、コツと靴を鳴らしながら背後から人が近付いてくる。モスティマだ。いつも通りの薄っぺらい笑みを顔に貼り付けながら、いつもよりトゲのある言葉を口にする。
「俺に対する依頼だと言ってあっただろうが。余計なことをするな」
その態度が癪に障って憎まれ口を叩いたが、モスティマが表情を変化させることはない。意に介さないと言っても間違いはない。
「うーん、それでもよかったんだけどタナトスは戦えないからね。こうして助かったわけだし、感謝されてもいいくらいだと思うんだけど?」
「……はいはい、ありがとよ」
軽く片手を振って感謝の言葉を口にしておく。モスティマは不服そうに見えたが、それよりもしないといけないことがある。
「近衛局への連絡は?」
「済ませてあるよ。そうしないうちに到着するだろうね」
「随分と用意がいいな」
「私をいらないと言ったからね、これくらいのいたずらは然るべきだよ」
元々いらないと口にして、助けに来てくれただけで恩の字だから言わねぇが……そのせいで危うく戦うことになってたかもしれないんだがな?
ループスの女の方に目を向けると、アーツの拘束をどうにかして破ろうともがいているのが見て取れた。
「あー、諦めた方がいいぞ。こいつのアーツの腕は折り紙付きだ。下手なことすると自分の首を締めることになる」
「すまねぇが、手錠をかけさせてもらうぞ。こっちも仕事なんでな。恨むな、とは言わないが……抵抗は止めておいたほうがいい。後ろの青髪になにされるか保証できない」
「酷いなぁ……私だって、大人しくしてくれるならなにもする気はないよ」
ひらひらと手を振るモスティマを無視してループスの女に近付く。だが、油断はしない。武装を取り上げるのは第二でいい。そちらに固執して反撃を受けてはいけない。ゆっくり近付く。
モスティマにハンドサインを送って、拘束を緩めてもらう。当然、相手も起き上がろうとするが、瞬時に相手の身体、その一点を抑えて──体重で押し潰す。
「……ッ」
「下手に動くなよ」
もがこうとしているようだが、上手く力が入らないらしい。人体は欠陥だらけだ。力を加える際に必ず使う部位はいくつか存在する。そこを念入りに潰してやれば……この通りだ。
抵抗をされる前に女の腕を拘束し、武器を取り上げる。
「……離せ」
「襲ってきたやつを離せと言われてはいと言えるほどお人好しじゃねぇ。黙って寝てろ」
しばらくもがいていたが、拘束から抜けられないことを悟ると大人しくなる。
しかし、これを傍から見れば乱暴してるように見えないか……?
近衛局の制服を着ているわけでもない、こちらが手配した人間と市民の通報で駆け付けた人間がブッキングするかもしれないな……仲の悪い二人じゃなけりゃいいが。
思ったより長くなりそうですね。テキサスの話の時に申し訳ないのですが、全人類、エクシアの新しいお洋服買ってあげましょうね!!!
特殊タグ導入してみたけど
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いいねぇ!
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普通の方がいいな! いいな!