マジでこの会社やめてやろうかな   作:ナイン

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人のワインを

 案の定、仲の悪い龍門近衛局ツートップ様がいらっしゃったが、最低限の受け渡し手続きを済ませて帰ることにした。幸い、二人とも職務に忠実な人間だからスムーズにいった。

 

 ただ、問題はモスティマだった。ずっと笑顔を貼り付けてはいたが、確実に思うところはあったはずだ。それでも今度一日付き合ってやるといえば渋々、といった様子ではあったがお咎めはナシ。トランスポーターはこいつしか居ないのに俺のせいで動かないなんて言われたらボスがなんて言うか……。

 

 笑って許しそうだな。伊達に大物で通ってねぇ。

 

 そして、今回はそのボスに用がある。

 

「おいボス」

 

 事務所に入ってすぐ、挨拶もせずに自分の上司に話しかけるのはあまりいいことでもないが、さっさと確認しないといけない。

 

「んだよタナトス。俺がご機嫌なティータイムと洒落こんでんのが見えねぇのか?」

「普通の人間はティータイムにワインボトルを取り出したりしねぇ」

「ハッ、言えてるな」

 

 ケラケラ笑うクソペンギンを内心で見下しながら話を続ける。まずは報告だ。

 

「……例の依頼の件だが、モスティマが来てくれたおかげで解決した。互いに怪我はナシ、龍門近衛局への受け渡しも完了」

「おお、相手死ななかったのか。たいしたモンじゃねぇか」

「言っただろう。モスティマが来た。アンタの差し金だろうが、アーツで無力化してたな」

「いや、俺じゃねぇぞ」

 

 心底楽しそうにワイングラスを傾けて香りを楽しんでるが……。

 

「おい、そのラベルには見覚えがあるぞ。まさかお前……俺のワインセラーから盗ってきたわけじゃないだろうな?」

「いいだろ、減るモンじゃねぇんだからよ。お前の給料はどこから出てると思ってんだ、それに比べたらワインの一本なんて……グヘェ……」

 

 言い終わる前にそこにあったボトルで脳天に一発お見舞いする。ボトルの破片とワインが飛び散ったが、ボスに掃除させればいい。

 

「まあ、いい。上手くいったのは違いねぇよ。ただ……」

「クソッ……痛ェ……俺の脳ミソがぶちまけられそうになった以外に気になることでもあんのかよ」

「……殺意がなかったんだ」

「ほぉ、じゃあアレか? 他に犯人が居るとでも?」

「アーツも違っていた。確か、死体には灰色の傷跡が目立っていたらしいが、今回捕縛したのは源石剣のアーツ使用者だ。無関係ではない気がするが……」

 

 確証はない、漠然とした違和感。──これは後に分かることだが、組織を抜けたテキサスを追っていた人間がやらかした面倒だった。

 

 当時は可能性の域を出なかった話でしかなかったが、どこかに突っかかった印象が、頭から離れない。

 

「よし、タナトス。お前が捕まえたやつの尋問をしろ。情報を引っ張り出せ」

「……ウェイの旦那に文句言われるぞ」

 

 これは明らかに越権行為にあたる。統治政府に渡した以上、それ以上の干渉はできないだろうし、してはならないのは暗黙の了解だ。ボスには関係ないだろうが。

 

「元々こっちの仕事だ。それに、犯人を捕縛しろと言われただけで、それ以降口出しするなとは言われてねぇ。今日中に取り付けてやるから、明日龍門近衛局に行ってこい」

「……了解」

 

 尋問か……気乗りしないな。なにか喋ってくれる気もしない。事前に調べておきたいところではあるが、あいにく心当たりは一つしかない。艶やかな黒髪、目の下の赤。……明日カマをかけて、それから調べても遅くはないはずだ。

 

 ただ、あの一族はとうの昔に滅亡してるはず。

 

 全てをひっくるめて、明日あのループスに喋ってもらう必要がある。

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