マジでこの会社やめてやろうかな 作:ナイン
「気分はどうだ?」
「……」
龍門近衛局取調室。確信がないまま取り押さえたせいで、近衛局としては牢獄に入れるわけにもいかないらしい。もう少し慎重を期すべきだったと後悔をしちゃいるが、過ぎたことだ。このループスの少女から情報を引き出さなければならない。
「あー、メシちゃんと食ってるか? 獄中ってわけでもねぇのに食ってねぇって聞いたぞ」
「……」
ダメだ。会話が成立しねぇ。……仕方がない。
「今、この部屋を見張っている人間は誰一人居ない」
「……?」
「俺が頼んで席を外してもらっててな。録音や録画なんかもないから安心していい」
さっき会った上級警視に頼んで束縛のない状況にしてもらった。文句を言われたが……状況を少しでも変えたい。
「……だから喋れ、そういうことか?」
「いいや? そんなすぐに情報をもらおうとなんてしてねぇよ。ただ、敵意がないことだけは言っておこうと思ってな」
のんびりしてらんねぇ、それは違いないが。焦って状況が変わるほど楽な案件じゃない。
「……」
「信じなくても構わねぇ。ただ、俺なりのやり方ってだけだ。……あまり長時間やってると文句言われるんでな、また来る」
私は彼を信用することは出来なかった。捕らえた張本人だということもあるが、龍門に入って間もなかった私にとって、誰かを信頼することは出来なかった。なにか打算があると思っていた。
だが、彼は一日も欠かさずに会いに来た。私が一言も喋らないことも関係なしに、ひとしきり喋って帰っていく。
内容は……取り調べとは無縁のことばかりだった。今なにがしたい、ちゃんと食べているか……彼自身の話。
ずっと嫌な会社だと言い続けてこそいるが……顔は笑っていた。心底楽しそうに。
そんなある日、彼は唐突にこんなことを言い出した。
「なぁ、甘いモン食いたくねぇか?」
「……」
この男は何を言ってるんだ。仮にも相手は龍門に捕らえられてるのに。
「そう怪訝な顔をするなよ。別に外に連れ出そうってんじゃねぇんだから」
そう言って縦長の小箱を取り出す。……市販のもの、だろうか。箱を開けて中にある小包から棒のようなものを取り出している。茶色と黒の……なんだろう。
「……」
「見たことねぇのか?」
頷くと、微笑を浮かべてこちらに差し出してくる。いいのか、とは聞かなかった。警戒もしなかった。きっと目の前の男は毒なんか仕込まないと思い、口に含む。
ほんのり感じる苦味と、それ以上に感じる甘みが口の中を満たしてくれる。
「……もう一本」
「好きに取れ」
今度は箱ごと差し出された。黙々と食べ続けるうちに、気付けば箱の中身がなくなってしまった。
「……すまない」
「食い切ったことか?」
頷いて返すと苦笑を浮かべる。
「構わねぇよ。どうせ俺は一箱食いきれない」
彼の優しさだと思った。同時に、少し信じてもいい気がしてくる。
「……テキサス」
「あ?」
「私の名前だ」
「ああ、なるほど」
納得したように彼は頷く。
「俺の名前は、タナトスだ」
本当の意味で初めて会ったのはきっとこの時だった。
それから、毎日話をした。だいたいタナトスが喋って私が相槌を打つ形になったが、時々私から話すこともあった。
たどたどしく、口下手だったというのに、タナトスは嫌な顔ひとつせずに聞いてくれた。
すっかり、この生活を気に入ってしまっていた。自分がどういう立場かも忘れて。
「……で、情報は出たのか」
「出たといえば出たが……確証はなにも」
「微妙な反応だな……」
本人が話したことはなにもない。状況証拠にしかならないが……。
「こいつは推測になるが……」
「言ってみろ」
「……あいつはおそらく、テキサス家の生き残りだ」
「根拠は?」
「ひとつは彼女がテキサスと名乗ったことだが……」
正直、これだけでは弱い。偽名だったら、という指摘を受ければ反論できない。
「テキサス家が滅ぼされたとき、屋敷跡から見つかった死体の数とテキサス家の人数が合致しないんだ」
シラクーザ周りの情報だから調べるのに相当苦労したが……バレなきゃ問題ない。元から知っていた情報のひとつでもあったから、答え合わせをする程度で済んだ。
「テキサス家は商人の一家だった。俺もラテラーノに居た頃、世話になってたんだが……」
「お前、それをどこで知った?」
「知り合いに頼んで資料を持ってきてもらった」
今はモスティマの監視者……つまり、ラテラーノの首輪付きになった友人のことを思い出す。昔は仲が良かったんだがな。今じゃ仕事以外では一切関わらないくらいには疎遠になっちまったが……。仕方のねぇことだ。
「あぁ、名前がコロコロ変わるヤツか。今なんだったか」
「あー、世界救世者?」
「アッハッハッハッハッ! センスねぇなぁ!」
「そこには全面的に同意する」
エクシアの義姉は死に、モスティマは堕天使、俺は俺で問題が出てきて……俺たちの中でラテラーノ政府的に一番信頼がおけたのが彼女なんだが……名前で遊ばれるなんとも残念な役回りになっている。しかも、この名前付けが相当酷い。他人事ではあるが、哀れに思うことも少なくない。
「しかし、そいつを使うってことはラテラーノに借りを作るってことと同義じゃねぇか?」
「気にしてねぇ。向こうも俺が役に立たないってことは分かってるはずだ。今更なんかあるとも思えない」
「……ま、お前がいいなら構わないが。俺に迷惑はかけるなよ」
「ボス、本当にそういうとこだぞ」
余計な面倒を抱えたくないのは分かるが、それを表面化させるんじゃねぇ。軽口の範囲だと分かるが、それはどうなんだよ。
文句を言ったところで変わるものでもないから何も言わねぇが。
「……ボス、もし彼女がここしか来るとこがなかったら、どうする?」
「例のループスの嬢ちゃんか……?」
真意を探ろうとする視線を正面から返す。俺も、行先がなくて拾われた身だ。可能性があるんなら……賭けたい。
「お前に任せるさ。テキサス家と縁のある人間だっていうんなら、尽くしてやる義理もあるからな」
「……言質はとった。あとでやっぱやめたってのはナシだからな」
「言わねぇよ」
テキサスを調べていくうちに見付けたあの情報に間違いがないんなら……あいつは、元の組織を抜けて逃れてきたってことになる。
アークナイツ公式生放送、みんな見ような!!!
特殊タグ導入してみたけど
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いいねぇ!
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普通の方がいいな! いいな!