マジでこの会社やめてやろうかな 作:ナイン
「うげぇ……マジかこれ……弾が出ねぇ……」
正確な消耗品を報告されて書類にまとめてみると、相当な金額になった。多めに予算をとっていたとはいえ、なかなか厳しい。
しかもあのバカは道中で銃を故障させちまったらしい。幸いなのはあいつが持ってる守護銃じゃなくて戦術の幅を広げるためのサイドアームだったことだが……。
エクシアたちラテラーノ人は一人ひとりに守護銃、というのを持っている。この守護銃というのは自分の半身のようなものであり、これが破損したことで他に銃があっても戦えなくなるラテラーノ人も居るほどには使用者と密接した武器だ。
だが、誰でも使えるというわけではなく、銃を扱うにはラテラーノが発行する銃型武器使用許可証というものが必要になる。
そもそも、この世界において銃というのは自ら設計・製造出来るものではない。この世界に存在する銃のほとんどは過去の遺産をコピーした模造品だ。
その中でも気に入った一挺を自分の守護銃にする、というのがラテラーノの慣習だ。
「……直せそ?」
こいつにしては珍しく弱ったような声に背筋が凍る。これが守護銃だったらどうなってたことか、考えたくもねぇ。
「
「してるよ! あったりまえじゃん!」
「……だよな」
いくつか原因は思い当たる。銃の射撃時に出るゴミが詰まった、パーツが破損した、あとは……経年劣化。
経年劣化が銃で一番問題だ。なにせ銃ってのは得体の知れないもんだ。アーツ以上に世界に浸透していない上に、構造すら理解されていないことが多い。だからパーツが不足したらそのパーツを作る、といったことは出来ない。型しか存在しないから重火器店に持って行っても基本的には弾詰まり解消や潤滑油を塗りなおす程度しか出来ない。
「……テキサス、パフェの話明日でもいいか?」
「問題ない」
こういうときテキサスは話が早くて助かる。というか、エクシアが不安そうなのを見てあまりいい気分ではないんだろうけどな。
「タナトスさん、これから作業室に?」
「そのつもりだ。お前たちは帰っていいぞ。戦闘直後だ、お前らはタフだが、疲れてねぇわけじゃないだろ?」
「じゃあご飯買ってきますね。出来るだけ軽く済ませられるものがいいですよね?」
「そうだな。出来ればハンバーガーで頼む」
「あ! あたしもあたしも!」
うーん、こいつめ。ちゃっかり自分は残る宣言しやがった。働けアホ。……いややっぱり働かんでくれ。これ以上面倒を増やすな修理出来ねぇ。
「テキサス、すまないが車を回してやってくれないか? ソラひとりは不安がある」
「どういう意味ですかそれ……」
「承知した」
どうもこうも、栄養がどうのとか言って野菜を押し付けてきそうだし……。純粋に食うの面倒だし……。
「車!? じゃあうちも行くわ! 三人でなんか買おたろ! もちろん経費でええよな?」
「……はいはい。それでいいからさっさと行ってこい」
「さっすがタナトスはん! 話が分かるなぁ! ずっと食べに行こういこう思て行けなかったとこがあるねん!」
「さ、さすがにあまり高いものは……」
「いいんじゃないか?」
「テキサスさんまで……」
経費でなんでもかんでもやりやがって……今度から領収書切られても払わないようにしてやろうかな。
騒がしく事務所を出ていく三人を背に銃を持って作業室に入ろうとすると、エクシアが後ろをついてくる。
「……構ってやれねぇからな」
「あたしのこと小動物かなんかだと思ってる?」
「割と思ってる」
「ひっどーい。構わなくたっていいよ、自由にしてるから~」
「……はぁ。邪魔したら怒るからな」
事務用のデスクとは真逆の邪魔なものは一切ない作業台に銃を置き、明かりをつける。
さて、出来る限りをしよう。
「ねぇねぇタナトスー。この部屋なにもないのー?」
「……」
「タナトス―?」
「……ん? ああ……基本的に邪魔なものはおかないようにしてる。集中が削がれると作業の質に影響しちまうからな」
「へー……あたしはこんな退屈な部屋に居たら耐えられないけどなー」
「お前はじっとしてるの苦手だもんな」
「へへへー」
「褒めてねぇから誇らしげにない胸を張るんじゃねぇ」
「あっ、言ったなー! あたしだってちゃんとあるって!」
「ほーん……」
「触ってみる?」
「アホかお前! 摘まみ出すぞ!」
「あはは! 照れなくたっていいのにー!」
「あー、なんとか……修理出来たな……」
エクシアは……寝てるか。まあ何時間もかかっちまったからな。寝たくもなるか。寝る子は育つってな。……オツムが育たなかったことだけは残念だが。
「出来りゃあ壊れないことを願うが、まぁ無理か」
世の中に不変なものはない。モノであれ、概念であれ……関係であれ。
「まあ、でも……」
面と向かっては言えないが、かわいいやつだ。お前に頼まれれば何度だってなおしてやる。
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