マジでこの会社やめてやろうかな 作:ナイン
「おいエクシア。お前ちゃんと射撃練習はしてんのか? 自分は当たると慢心してねぇだろうな?」
エクシアの射撃に対する真剣さは知っているが……まあこいつだしなぁ。ちゃんとやってるか心配にもなる。油断して怪我でもされたらたまったもんじゃない。
特にエクシアは前線に出る方だったと記憶している。今のスタイルは分からないが……。近接戦闘するような体格でもねぇからな……。
「ちゃんとやってるって! ロドスでもやらされるから定期的にやってるし!」
「ならいいが……」
「心配性だなあ。あたしならダイジョーブだって! ほら!」
右手をひらひら振って余裕の表情を浮かべているが、だからこそ不安なんだがこいつ本当に分かっているのだろうか。医療費だとかそういうことを勘定に入れているわけじゃねぇ。ただ怪我されるのが嫌い、そんだけだ。
この龍門で人殺しは起きないことは関係ない。顔見知りが怪我してヒヤヒヤするのは勘弁してほしいしな。帳簿の金額見るより心臓に悪い。
渋い顔をエクシアに向けるとため息を吐かれた。お前……こっちは……
「んもう。しょーがないなぁ。じゃあ射撃場にいこ! あたしの実力見せたげるよ!」
「んー、まあそうな……見た方が早いか」
仕事はまだ残ってるが……どれも早急に対応しないといけないわけじゃないわけだしな。
「さて、どの競技でお前の実力を見せてくれるんだ?」
「なーんにも考えてなかった!」
「マジかお前……」
もう少し考えてくれ。いや、こっちに選択権をくれたと考えておくか……。そうだな……どうしたもんか……。
「あー……スピードシューティングとか?」
「えー、あんまり撃てないじゃん!」
「不満そうな顔で物騒なことを言うんじゃねぇよ」
誰だこいつに銃を教えたの。……ラテラーノ文化だわ。やべぇなラテラーノ。俺ちょっとあそこに居た記録を抹消したくなってきたかもしれない。無理かな。
スピードシューティング、銃で順番に六つの的を撃ち倒した時間を競うものだ。射撃精度、照準速度の両方が求められる。射撃練習では定番中の定番だ。
「えー、なんかご褒美ちょーだい?」
「見せてやるって言ったのお前だろうが……あー、なにがいい?」
こういうときのエクシアは露骨に高いものを要求してくるからな……嫌な予感しかしねぇ。
「タナトスのワインコレクションのナンバーナイン!」
「まぁじで? あれ当たり年の百年モノなんだが?」
お前遠慮ってものを覚えろよ……。
今ではワインは貴重だ。まず環境を整えねばならず、土や気候に左右されやすい。移動都市が多い現在では栽培自体が至難の業であり、上モノが出来上がることは稀。それだというのに百年モノの、しかも上モノワインを要求しやがってこの女……ッ!
「……4秒」
「へ?」
「4秒以内に全部の的を撃ち抜けたらいいぞ」
4秒ならまあ、くれてやってもいいだろう。俺が以前見たときのこいつは5秒かかっていた。あれから1秒縮められたと考えれば十分だろう。
「言ったねタナトス! 二言はナシだかんね!」
「はいはい……分かってるっての。いいから早く構えろ」
鼻歌交じりにスタンバイするエクシアを尻目にコンソールに向かう。
「準備は?」
「オッケー」
「……スタンバイ!」
銃声が何度か鳴るのと的が全て止まるのを確認してからタイマーを止める。
「……3秒86……ほぉ……」
感嘆のため息が漏れる。以前より確実に短くなってやがる……すげぇなこいつ……普段あれだけアホなくせにこういう技術だけは一丁前になりやがって……。喜んでいいやら悲しんでいいやら分からんな……。
「あたしだってやるっしょ?」
「……そうだな」
「……そうだ! タナトスも撃ってみてよ!」
「俺が?」
俺が、銃を、握るのか……?
「……」
「あー、ごめん。ウソウソ。本気にしないでってば! ……それよりもワイン楽しみだなぁ! タナトスのワインコレクションから一本もらえるなんて嬉しいな!」
「……ったく。約束は約束だ。くれてはやるが……ちゃんと味わえよ」
「……エクシア。やっぱ腕上げるのやめろ」
「えー! 理不尽じゃん! あれだけちゃんと練習してるのかって聞いてきたのに!」
しっかりやっているのは分かっちゃいたが、まさかあそこまで腕を上げているとはな……。
「……おかえり二人とも」
「おかえりなさい!」
「おっ、お二人さんどこ行っとったん?」
俺たちが居なかった間にペンギン急便社員組は勢揃いしていたみたいだな……全員揃うの珍しいな。今日は依頼もなかったはずなんだがなぁ。
「タナトスと勝負してた!」
「……またか」
「ひっどーい! まるであたしがタナトスに勝てないみたいな言い方じゃん!」
「だって……なぁ?」
「エクシアがタナトスさんに勝ったとこ見たことないし……」
「は? 負けたが?」
俺だって負けることくらいあるわ。だからその信じられねぇみたいな目をやめろ。お前らの俺に対する印象の方が信じられねぇっての。
「……本当か?」
「お前ら俺のことなんだと思ってんだよ」
「いぇーい!」
「うわっ、あいつ腹立つな……」
めっちゃいい笑顔、俺じゃなきゃぶん殴ってたわ。
「と、いうわけで! みんなパーティーしに外に行こー! タナトスの奢りだって!」
「は? おい……俺はそんな話は……」
してねぇぞ、と続けようとしたが、こちらを向いて人差し指を唇の前に持っていくエクシアを見て黙る。
秘密ってことな。まったく、気が利いてるやらいないやら……。
「タナトスはんタナトスはん! ぎょうさん食べてええんやろ? ウチ腹ペコさんやねん!」
「あ……あたしもいいですか……? 今日はダンスレッスンだったのでお腹空いちゃって……」
「……」
「あ、マジで? お前らの分も奢る話になってんの? まあいいけども」
あとテキサス、言わなくても甘いもの食いたいのは分かるけどちゃんと普通のメシも食おうな。偏った食生活は不健康な体を作るからな。……いや俺が言えたことじゃないんだが。
「よーっし! そうと決まったら宴の始まりや!」
「ご……ごめんなさいタナトスさん……ごちそうになります!」
「……甘いものがいい」
この大人数を運ぶとなるとテキサスの車でも誰か後ろに行かないといけないんじゃねぇかこれ? うーん、運転できる組の半数は酒飲みだしなぁ……たまには俺が運転するか。テキサスの運転は荒っぽいから酒飲み二人が吐いちまいそうだし。
外に出ていく三人に続こうと扉に手をかけて、手が添えられる。
「エクシア……?」
「……ワインの件、忘れないでね?」
ウィンクしながらそう言ってから、俺を置いていくように三人に続いて階段を下りていくエクシアを見ながら俺はため息を吐くしかなかった。
「追加で生四本持って来てくださいな!」
「へー、アップルパイなんて作ってるんだねここのお店! いいじゃん! すみませーん! アップルパイくださーい!」
「えへへ……お肉頼んじゃった……」
「……美味いな」
クロワッサン絶対酔って引きずらないといけなくなるやつだろめんどくさっ! っておいエクシア、お前なんでアップルパイを居酒屋で……ソラとテキサスは……幸せそうだからいいか。
「ほら、タナトスも食べようよ!」
「……そうだな」
経費でどうにかしよ。なんなかったらボスに言おう。うん。
「……これ、財布の金足りっかなぁ」
嘆きの声は居酒屋の
エクシアは無神経ってわけじゃないんだ……。
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