マジでこの会社やめてやろうかな   作:ナイン

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一章:何事にも掟はある
安魂夜だって休みなんてねぇ


「いややっぱおかしいだろこの予算! なん桁だよこの概算! 概算でこれってなんだもっと跳ね上がんのかよ! くたばれボス!」

 

 この金額で一ヶ月だけ待ってやるとかよくほざけたな、冗談だと願いてぇ。ケタいくつあんだこれ……借金取り立て屋の方がまだマシだぞ!

 

「一企業が受け持つ概算じゃねぇよ……ふざけんな……」

 

 一回くたばらねぇかなあのクソペンギン。いやでもボス何度死んでるか分かんねぇしなぁ……どうせ今回も死ぬっつうか刺されるかなんかするだろ慣れたわ。

 

 怪我を治すこともなくピンピンしてんのゾンビかなんかだろ。

 

 ペンギン急便にボスの護衛って役割いらなくねぇか? あの人どうせ死なねぇじゃん。

 

 ため息を吐きながら予算に文句を言っていると、事務所の電話が鳴る。

 

「はい、こちらペンギン急便ですが」

 

 今度はなんだよ……どうせ依頼じゃねぇのは分かりきってんだ。なに来たって驚きはしねぇぞ。

 

「タナトスー? 聞こえてるー?」

「エクシアか……なんだこのクソ忙しいときに」

 

 こいつがわざわざ電話を寄越してきたんだ。ロクでもねぇことは分かる。

 

「バイソンくんが来たから報告しとっこかなーって思って!」

「あー、あのフェンツ運輸の若造か……」

 

 フェンツ運輸。近年急激に成長し、ほとんどの民間トランスポーターを掌握している大企業。社長のピーターズとうちのボス(皇帝)との仲は良好だが……どうにも裏がある気がする。

 

 そう考えるのは小規模であるうちを呑み込む、という形ではなく提携という形で協力しようと申し出てきたからだ。しかもこの案件が持ち上がったのが数日前、交渉役が今日合流するという予定なのだから動きが早すぎる。

 

 ペンギン急便は提携するには危険なのは疑いようもねぇ。街中でドンパチやるような連中だ。しかも()()を除いてはそれを当然だと思ってやがる。それ自体は問題ないとしても、敵が多すぎる。マフィアを始めとした面倒な相手は当然、民間企業にすら恨みを買っている。ボスに対する私怨も含めたらキリがねぇ。

 

 しかもその交渉役がピーターズの息子だってんだから妙な話だ。なにか企んでなきゃいいがな……。

 

「あ、あとマフィアに襲われたんだけど」

「またかよ」

 

 その展開飽きたぞ。今回はどれが原因だ。フェンツ運輸との提携が気に食わなかったやつか? それとも過去に返り討ちになったアホがノコノコやってきたか? まあどっちでもいい。問題は……。

 

「まあいいや。怪我は?」

「え? あたし? やだなぁタナトス。心配してくれてるの?」

「違うっての。坊主だ。フェンツ運輸のバイソンってやつ」

「ああ。そっちかぁ。あたしのこと心配してくれたのかと思っちゃったじゃん」

 

 いや別に心配してねぇとは言ってねぇけど。ただお前、クソ頑丈じゃん? 優先度は低いってこった。どうせバイソンの方も父親譲りの頑丈さは持ってるんだろうが。

 

「橋ごと車爆破されたみたいだけどピンピンしてるよ」

「マジで? 頑丈だな。うちに欲しいくらいだわ」

 

 軟弱なトランスポーターに入られたところで半日も持たねぇだろうしなぁ、うちの企業。そもそも一般的なトランスポーターと違って積極的にドンパチするし。

 

「ん? おいエクシア。お前橋を爆破とか言ったか?」

「ウン!」

「そいつは随分度胸があるなぁ」

 

 ウェイ長官ならまだマシだが、鼠王に目を着けられたらえらい目に遭うんだろうな。うちを巻き込まないで欲しいんだが。まあ目を着けられているとは思った方がいいだろうな。こちらに火の粉が降りかからないことを祈る。……まあ無理か。予算用意しろって言われてからもう一ヶ月以上経ってる。多分今回の案件がそのとんでも予算の捻出先だろ。

 

 そうなると……今回の件は事の大きさはともかく想定していたってことになる。

 

 実際のところ、そこはどうでもいい。着目するべきなのは……。

 

「相手はどこだ?」

「んー、多分シラクーザの親戚かなんかでしょ」

「ってことはシチリア人か……」

 

 少し、苦い顔をする。テキサスが無用に絡まれそうで面倒だ。……人の過去に口出しする気はねぇが、うちに居るときのテキサスは楽しそうだしな。いつかは過去に追いつかれるかもしれねぇが、少なくとも今じゃねぇ。

 

 なにか言っておいた方がいいかもしれないが……まあ、テキサスのことだ。大丈夫だろう。

 

「ソファーの下に何かねぇか?」

 

 電話越しで遠いが……ボスの声が聞こえる。こちらに話掛けているわけではないんだろうが……ソファーの下? なんか仕込んだ記憶はないんだが……。

 

「ん? ちょっと見てみよっか」

「おいエクシア……お前気をつけろよ。ブービートラップだったらどうすんだ」

「え? いやいやまっさかぁ! あたしらのアジトだよ? 連中に嗅ぎつけられてるわけないじゃん!」 

 

 丁寧に前フリしやがってこの女……。ぜってぇトラップだぞそれ。

 

「あっ、可愛いアソート缶! ボス、まさかソファーの下におやつ隠してたなんて!」

「は? アソート缶? ボスはそういうの置かねぇだろ」

「えー、でも確かにアソートのグミ缶。()()()()()()()()()()()()()って書いてあるし……」

「……おいエクシア。それ開けるな──」

 

 そう言おうとしたが、アソート缶を開く独特の音がする。あっ、これは……。

 

「……伏せろ」

「はえ?」

 

 電話越しに警告だけして受話器を耳元から離すと次の瞬間にやかましい爆発音が聞こえる。

 

 ほれみろブービートラップだったじゃねぇか。

 

 あーあ。アジトがひとつ吹き飛んだ。どうすんだよアジト確保すんのもタダじゃねぇんだぞ。

 

 エクシア達は……どうせクロワッサンが護ってくれてるだろうし気にする必要はないか。

 

 それより気にしないといけないのは龍門近衛局からの請求書と苦情の書類の山……。

 

「今日、安魂夜なんだけどどうなってんのかなぁ!?」

 

 死者の安らぎを願う日のはずなのにこれじゃこっちが死んじまうっての。

特殊タグ導入してみたけど

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