ネタバレもあるため閲覧注意
「アキュラ君、いくらもう動けるようになったからって黙って出てきてよかったの?」
「ああ。コハク達には悪いが未だスメラギの脅威にさらされたマイナーズ達がいる。バタフライエフェクトやデマーゼルない今となっては機能することはないが、依然としてマイナーズ狩りは終わっていない」
そう言って自身が活動拠点として使っていたコハク達の隠れ家を向いてそう告げた。
「わかった。アキュラ君が決めたなら僕はそれに従うよ。それにアキュラ君一人じゃ心配だからね」
周囲に浮かぶ九つのバトルポッドの内一回り大きな顔のようなものがついたポッド、ロロがオレに向けて言った。
「減らず口を…だが頼りにしている」
その言葉を最後にその場から去ろうとする。
「行くのか、
不意に声をかけられ、足を止めて声のした方向に目を向ける。
そこではかつて対峙していた女性、ブレイドがいた。
「起きていたのか、ブレイド」
「見回りだ。デマーゼルも消えてスメラギの旗頭が消えようともお前の言う通りマイナーズ狩りは終わらないだろうからな。もうコハクにもあの子達にも危険な目にあって欲しくないから」
そう言ってブレイドはオレに向けて言った。
「だが、一言くらいコハク達にも声をかけてやってくれればいいものの。急にいなくなってはあの子達も心配するだろう?」
「…」
「ほら、ブレイドも僕の言った通りのこと言ってるじゃん」
ロロもブレイドの言うことに乗じてオレへと問いかける。
「…わかった。だが」
そう言いかけようとしたその時に、何か嫌な物を感じ、武器であるディヴァイドを構える。ブレイドも何かを感じ取ったのか腰に下げた刀を抜いて構える。
「強力なセプティマの気配!」
ロロもバトルポッドを展開させて周囲に浮遊させる。
「やっぱりデマーゼル様は死んだか…やはりあの人は人の上に立つような人じゃなかったな。僕の欲しかった物をあんなひどい事をしてたし当然の報いだけど」
声が響くと共に空間が歪み、穴を穿つとその穴からゆっくりと姿を表す。
そこに現れるのは白髪の旧文明のスーツを見に纏う男。
「何者だ?」
急に姿を現した存在に焦ることなくに問う。
「これは名乗らなくて済まないね。僕はピードだ」
「
「ああ。ブレイド。君もいたんだね。洗脳も切れるなんて本当に爪が甘いな、デマーゼル様も」
スーツの男、ピードはブレイドを見て少し驚いたふうに言うがその表情は特に驚きも何も見えない。
「貴様もデマーゼル同様にまだマイナーズ狩りを行う気か?」
ピードへと問いかけるが、ピードは首を振るう。
「マイナーズ狩りはやるつもりもないさ。僕にとってはマイナーズが居ようが居まいが感懐ないんでね。僕の目的は既に目の前に存在する」
そう言ってピードはオレに、いやオレではなく宙に浮かぶロロを指差す。
「君の持つ
「どう言う事だ?」
相手の意図が全く読めずにそう言った。
「僕はロロちゃんのファンでね。どうしても君の持つロロちゃんが欲しいんだよ!君の歌には何度も心躍らされた!今までに感じたことのなかった胸の高鳴り!欲しいと思うのは当然だろう!」
「…倒錯しているのか、こいつは…」
あまりにもしょうもない理由に呆気を取られてしまう。
「ブレイド、この倒錯した男が本当にデマーゼル直属の部下だったのか?」
「…私に聞くな…」
二人は少しだけ目の前の男から逃げたくもなるが、あちらはスメラギの能力者であり、倒さなければマイナーズである戦闘能力のないコハク達の身が危ない。
「うへぇ、今まで感じたことのない強力なセプティマ能力者だと思ったらただの変態さんじゃん…アキュラ君、絶対倒そう!主に僕の身が危険だって警鐘を鳴らしてるから!」
だがそう言ったロロの声が途中から遠くなる。すぐに異変に気付き、声の行方を追うとピードの手の上にロロがいつの間にか収められていた。
「貴様!ロロを返せ!」
「この!離せよ、変態!」
ロロも抵抗しているがピードが握る力の方が強いのか抵抗しても無駄であった。
「じゃあ僕はここでの目的を達成したからもう一人の歌姫のところに向かうよ。もう会えないと思ったあの子もこことは別の世界にいるのを見つけたことだし」
「貴様!」
ディヴァイドを構え、ブリッツダッシュを駆使してロロの救出するために接近する。
だが、ピードは能力を使用して何やらパステルカラーの変な生命体らしきなにかを呼び寄せる。
「もう一人の歌姫のいる世界のところにいた人を殺戮する物だけど、君たちを足止めするのにはちょうどいいかな?」
だが変な生命体はオレを狙うことなく、ブレイドへと迫り行く。
「こいつ等!」
ブレイドは持った刀を振るい変な生命体を斬ろうとするが刀は生命体を透過したようにすり抜ける。
「何!?」
ブレイドは一瞬訳がわからなかったが、すぐに襲い掛かる生命体の攻撃を防ぐために身体から雷撃を溢れさせて、高速で移動する。
「ならばこれでどうだ!」
雷撃を纏わせた刀を振るい、高速で斬り伏せる。今度は透過することはなく、斬られた生命体は身体を分断させられて黒く染まり、そのまま崩れ落ちる。
「ブレイド!」
「
生命体を刀を振るい、斬り伏せるブレイドが叫ぶ。
その言葉にオレは生命体のようなものから視線を切って動き、ピードへと向けたブリッツダッシュを駆使して高速で近づく。
「おかしいな?人だけを襲うって聞いていたんだけど?」
ピードはそう言いながら首を捻る。そんなピードへと向けてディヴァイドを叩きつけようとする。
「まあいいか。ロロちゃんも手に入ったことだしね」
そう言いながら、叩きつけようとするディヴァイドを足元に穴を開けると落ちるようにディヴァイドを躱す。
「じゃあね。
「アキュラ君!」
そしてピードとロロが落ちて行った穴は閉じようとどんどん小さくなっていく。
「逃さん!」
穴が閉じる前にピードの後を追うように飛び込んでいった。
「
謎の生命体を斬り伏せながらブレイドはアキュラが無事に戻る事を願い、人を襲う生命体を倒し、コハク達に危険が及ばないように刀を振るうのであった。
◇◇◇◇◇◇
穴へと飛び込み、沢山の穴が穿たれた暗闇の中を落ち続ける。もちろんただ落ちるわけではない。視線の先にはロロを捕らえたピードの姿があり、何処かへ向かおうと落ちている。
「全く、着いて来るなんてね」
「ロロは俺の大事なパートナーだ!誰だろうと渡さん!」
「いいや!ロロちゃんは僕が貰う!覚醒させて僕の大切なコレクションにするんだ!この姿で聞く声もとても愛らしいけどやはり動画で見たあの姿!そしてあの歌を僕のコレクションとして生で見たい!」
「倒錯しているその妄言、全く理解できん!」
「アキュラ君!助けて!僕こんな変態さんのところ行きたくないし、一刻も早くこの手を離れたいよ!」
「ロロちゃん、そんな怯えなくていいんだよ。僕なら
ロロをそう言って撫で回すとロロは悲鳴を上げて暴れ回る。だが暴れてもピードが手を離すことはなく、さらに愛おしそうに撫で回す。
「あー!ロロちゃん!そんな暴れないでよ!興奮しちゃうじゃないか!」
「いやだー!気持ち悪いよ!離して!」
ロロも激しく抵抗して本気でいち早く脱出を試みている。そのロロの行動でさらに息を荒げるピード。
周囲を舞うビットをロロのAI制御からマニュアル操作へと切り替えて、周囲のビットを陣形を変えてクロスランサーを放つ。
「貴様の倒錯した妄言など聞くに耐えん!ロロを返してもらうぞ」
それと共にブリッツダッシュを使い一気にピードとの距離を詰めようとする。
「来るかい!
そしてピードはブリッツダッシュに合わせて再びオレへと向けて何処へつなげているかもわからない穴を開ける。
だが、オレもそのような行動をとる事を予想しており、クロスランサーで射出した布を広げて姿を隠す。
「何!?」
予想外の出来事にピードは一瞬だが硬直してしまう。オレはその瞬間にクロスランサーの布からブリッツダッシュを連続して使用してピードの元へと近づき、ディヴァイドをロロを持つ手に叩きつけた。
「アキュラ君!怖かったよ!」
ロロは素早く手から離れてオレの元へと飛び、ピードの手から離れる。
「ロロちゃんを返せ!」
そして憤慨したピードは先ほどの落ち着いた表情から一変して怒り出す。
「アキュラ君!早く逃げよう!ここは多分あいつのセプティマのテリトリーだよ!またあいつに触られるのならロボの僕でも鳥肌ものだよ!」
「ああ、あちらのテリトリーで戦って勝てる保証もない。ならば一か八か、どこかの穴に飛ぶぞ!」
そう言ってオレは最後に残ったブリッツを消費して一番近くにあった穴へと考えなしに突っ込んだ。
「クソッ!予定より早くあの場所に逃げられた!こうなったら二人とも計画変更だ!二人一辺に僕のコレクションにしてやる!絶対に君達を手に入れるからな!ロロちゃん!モルフォちゃん!」
最後にまた変な台詞を吐き散らすピードを背にオレは入った穴の出口を目指してピードのセプティマの空間から脱出した。
◇◇◇◇◇◇
暗闇の空間の先、ようやく出口へと着いたと思えば空中に放り出される形で外へと出ると、ホバリングを使用してゆっくりと地面へと降り立った。
「はぁー助かった…危うく変態さんの魔の手に落ちるところだったよ」
「スメラギはまともな奴は少ないようだな。爆破をアートと曰う奴や自分をアイドルだと豪語する奴もいる。だが、希望のためとはいえ、お前も違法動画をアップしているからあんな輩に狙われるんだ」
オレは溜息を吐きながら出てきた場所がどのようなところなのか周囲を見渡す。
そこは森の中であり、草木が生い茂り、状況が全くわからない。
「とにかく、ここがどこかわからない以上危険だ。奴も同じ穴を辿り追いかけて来るならこの場にとどまるのは得策とは言い難い」
そう言ってオレはなくなったブリッツを装填するためにバトルジャケットから弾丸型のバッテリーを吐き出して新たに装填する。
「だね。もうあんな変態さんに会うのはごめんだもん。早く把握しよう」
ロロはそう言うと顔の部分から何か光を出すと地面へと地図を浮かび上がらせる。だが、その表示はnot dataと表示されており、まだ未開の土地である事を示す。
「どうする?アキュラ君?」
「とにかく現状を把握するには移動するのが一番だろう。ただここがスメラギの区域かもしれん。慎重に行くぞ」
「了解!マッピングは任せてよ!」
そして森から抜けるために一度空へと向けてブリッツダッシュで飛び上がる。
「街が見えるが、文明がかなり古いな…だが、老朽化した様子が見えない。むしろ新しく見える」
「新しく建てられたのかな?あっ、今も重機らしき物が動いてる!でもスメラギがわざわざ古い建物を建てる理由があるのかな?それともマイナーズ達の作った隠れ家?」
「マイナーズじゃここまで大っぴらに建てないだろう。スメラギに関してここに関与しているかはオレにもわからん。だが、行ってみるしかないだろう。情報を集めるならあの場しかない」
「だね。セプティマの反応があればすぐに伝えるよ。あの変態さんじゃない事を願うばかりだけど…」
ロロが震えながら言う。ホバリングを使い地面にゆっくりと降り立ち、見つけた街へと歩き出す。
森を抜け、舗装された道と出る。だが、何かの戦闘が最近あったのか破壊された痕跡が残っている。
「ここでも何か戦闘があったのかな?」
舗装された道路へと降り、破壊された痕跡を見たロロがそう言った。
「マイナーズ狩りにしては血痕すら見当たらない。破壊された痕跡を見るに爆破に近い威力の物がここまで被害を及ぼしたように見える。それも最近だ」
痕跡を調べながらロロへと言った。
「いったいここの一帯で何があったんだろう?ここまで被害があるような戦闘だったらなんかしら僕等も耳にしているはずなのに」
「…」
ロロの言う通り、ここまでの被害が出ている戦闘であるならば耳に届いていないわけがない。それに、先ほどのマップにデータがないと表示されていることにも違和感がある。考えるがこれだけの情報だけではなんとも言えない。
だが、破壊された舗装された道に残された僅かな文字でここが極東の島国ということは理解できる。
「とにかく街の方へ行かなければわからないと言う事か」
そう言うと同時に街の方から警報のようなサイレン音がこちらまで届く。
「何かあったみたいだね」
ロロも街の方へと向いてそう言った。
「…なんの情報もないまま向かうのは危険だが、行かなければ何もわからないままだ。行くぞ、ロロ。ビットの制御は頼んだぞ」
「OK、アキュラ君」
そう言って再びブリッツダッシュを駆使して街へと向かう。街へと向かう際に見つけたのはピードが使っていたあのよくわからない生命体であった。そして、それは街の人々を襲い、生命体と共に黒い塊へと姿を変えている。
「アキュラ君!あの人たちからセプティマを感じない!マイナーズだ!」
「スメラギの新兵器か何か知らんが、あの男のせいか…やはり、スメラギのセプティマホルダーは信用ならん。ロロ!あれをここで止める!」
「これ以上マイナーズを殺されたりさせるもんか!」
空中でブリッツダッシュを一旦解いて、方向を変えて未だ蔓延る謎の生命体へと向けてブリッツダッシュをして急速に接近するとディヴァイドを叩きつけてXの紋様をつけると生命体へと向けてフォトンレーザーを放つ。
フォトンレーザーは弧を描き、紋様の付いた生命体へと当たり、貫くとその生命体はいとも簡単に先程と同様の黒い塊へと変化する。
だが、それでも数が多い。未だ狙いを人々の集まる方に向かっているのか、こちらには全く興味を示さず、街の中心へと向かっている。
「させん!」
ブリッツでは効率が悪いと考えてロロにウェポンの展開を支持する。
遠距離にも対応するスパークステラーをロロが陣形を組み三つの放射された雷撃が目の前に存在する生命体を全て黒の塊へと変える。
そしてしばらくその謎の生命体を駆逐する中、ロロが謎の4つの高エネルギーを感知した。
「アキュラ君!こっちに何か近づいてくる!すごいエネルギーを放つ三つの反応!それともう一つ!セプティマの気配だ!それもものすごい強力な!」
「ちっ!この惨状もそのセプティマホルダーによるものか!」
アキュラは生命体を駆逐しながら悪態を吐く。
「敵にこれ以上ここの被害を増やすわけにはいかん!ここで討滅するぞ!」
「了解!アキュラ君!これ以上マイナーズ達を殺させるわけにはいかないもんね!」
そして生命体を駆逐し終えたと同時に歌がこの場まで聞こえてくる。そちらの方向を見て降り立つ四人の姿。
青と黄と赤の鎧を纏う何者か達。だが、そんな物達をどうでもいいと思えるほどの存在が目の前に現れた。
「貴様…ガンヴォルト!貴様が何故生きている!」
「アキュラ!?君が何故この場に!?」
それはかつて敵対し、煮湯を飲まされた人物。ガンヴォルトの姿であった。