遠山キンジの追う女   作:/\三瀧/\

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 もし武偵殺しに追われている時、別の人との出会いを果たしていたら。そしたら、全然違うストーリーになってしまっていただろう。

 みたいな堅苦しい前置きは難しいので、簡易的に説明を。

 この物語では、アリアとキンジが出会う直前、ヒステアモードを封印されてしまいます。そのおかけで、キンジはアリアに目をつけられなくなります。その変わりに、そのヒステリアモードを封印した女の子を追いかけ始める所から始まります。




アンチ・ヒステリア・サヴァン・シンドローム

 遠山家。それは、義の一族。性的興奮を力に変えるHSSを持つ彼らは、代々相棒となる女性と共に、人間離れした伝承の技で悪を討ってきた。

 

 その力はただひたすらに強かった。鍛え抜かれた遠山家の男となれば、砲弾を生身で受け流すことや、心臓をとめ、極限に近い死体のフリなど、攻撃から守備に渡り、様々な技を扱うことも出来る。

 

 しかし、悪の立場から見れば、鬱陶しいことこの上ない。そこで、密かに開発されていた能力があった。

 

 それは、HSS(ヒステリア・サヴァン・シンドローム)を鎮める能力、アンチ・ヒステリア・サヴァン・シンドローム。縮めてAHSSだ。体から放出される特殊な物質がHSSの発現を抑制するのだ。

 

 その能力を持つ者の付近ではHSSは発動しない。一見有用な能力に見える。

 

 しかし、HSSの発動を防げるのは、せいぜい半径1メートル程なのだ。それじゃあ実用性に欠ける。そのせいで、ただ存在するだけの無名な一族となってしまった。

 

 その一族の名は芦捷家。この物語は遠山キンジと同じ時を生きる芦捷家の少女、そして、この物語の主人公でもある芦捷桐未(あしばやきりみ)の出会い、そして、辿る数奇な運命の物語である……。

 

 

 

 

 

 

 

 やかましい目覚ましの呼び声で、夢の世界から帰ってくる。体を起こした私は、朝食を準備のため、キッチンへ向かう。

 

 だが、途中で棚の上に置いていた「何か」を引っかけてしまい、カチャンと金属的な音をたてて落ちる。振り向くと、そこには黒光りする拳銃が落ちていた。

 

 それを見た私は、

 

「うわっ!ビックリした!」

 

と朝っぱらから大声を出して飛び上がる。もちろん拳銃が落ちているから……ではない。

 

「はぁ。暴発しなくて良かった……。」

 

ただ、暴発の心配。拳銃には違和感を覚えることは無い。

 

 何故、平穏な日常にこんな物騒なものが存在しているのか。それは、私の所属する学校が物騒の象徴的存在だからだ。

 

 

 東京武偵校。それは、武装探偵、通称武偵を育成する機関である。

 

 近年激化する犯罪に対応するため、武装することを許可される特殊な職業である。

 

 警察とは違い、法に触れる行為でなければ、報酬を受け取り依頼をこなすことが出来る。言わば何でも屋だ。

 

 何でも屋、と呼ばれる職業、武偵を育てる武偵校には、私が所属する探偵科や諜報科、狙撃科など、様々な学科がある。

 

 その中で、明日無き学科と呼ばれる危険な学科がある。強襲科という学科で、卒業時の生存率は97%。約3%は死亡するのだ。

 

 もちろん、そんな酔狂な集団に属する奴らなんて、マトモなわけが無い。大抵一つや二つ癖がある。

 

 腕っ節の強い武偵校生だが、偏差値は非常に低い。進学しない方が方がマシ、と言われる程だ。

 

 こんな地獄のような学校なのに、私は今ここに居る。それは、ひとえに遠山キンジと接触するためだ。私の体質、AHSSがいつか役に立つかもしれない。

 

 その時が来たら、遠山キンジを封印するために、地獄で毎日を暮らしている。

 

 神奈川武偵付属中学の頃から同じ学校へ通っているから、彼のことはよく分かっている……つもりだ。女嫌いでネクラな彼は、俗に言う陰キャというやつだ。

 

 しかし、HSSを発現させた彼は、正に超人だ。人智を超えた身体能力とバトルセンスを持っている。

 

 オマケにキザで女たらしだ。私は体質的に直接HSS時の彼とは関わっていないが、傍から見てるだけでも分かる。彼はカッコイイ。

 

 顔はとびきりの、という程ではないがイケメンなのだ。だが、HSSが発現していない時は、鋭い目付きと陰気なオーラから、あんまりカッコよくない。

 

 AHSSのお陰で、HSS時の彼が好きなのに、私は関わることが出来ない。むしろ、昼行灯を呼び出す始末だ。全く難儀な体質だ……。

 

 

 朝食を摂り、歯を磨く為に洗面所に向かう。鏡に映るのは、地味子という名前が正にピッタリな少女だ。

 

 長い前髪で隠れた目は、無気力に私を見つめる。後ろに流したロングの髪も、地味子を助長してる。

 

 明るい茶髪なのに、暗いイメージなのは、如何なものか。

 

 だが、オシャレに無頓着な私も、今日はきちんと整える。なんてったって始業式だ。流石にだらしない格好は出来ない。

 

 顔を洗い、髪をとかす。歯を磨いてリップを塗ったら完成だ。鏡に映るのは、キラキラに磨かれた陰キャだ。

 

 一見全く変化無し。だが、私には分かる。いやぁ、絶好調だ。ニヤけた陰キャは気持ち悪いものだが、自分なら問題無い。

 

 少しウキウキしながら防弾繊維でできた制服に、キンジと同じベレッタ92Fを身につけ、出かける準備は完了。しかし、少し時間があるので、ベレッタのあった机の上の写真を眺める。

 

 そこには、遠山キンジが写っている。少し幼いのは、中学校時代のものだからだ。奇跡的にHSS発動時の彼を捉えた集合写真。

 

 少しウットリして、見つめる。観察対象に好意があるのは如何なものか、とか気にしない。HSS時の彼がカッコイイのはしょうがない。

 

 対照的に通常キンジが少し悪く見えるのも仕方ない。とか考えてる間に出かける時間だ。

 

 毎朝の癒しを抜け出しす。これで今日も頑張れそうだ。私は玄関へ向かい、扉を開き、眩しい外へと歩んで行くのだった。

 

 

 朝特有の清々しさは、もう薄れてきている。寮から校舎へ向かう道のりはなかなか長いが、外の景色を眺めるのは気分がいいし、多少は鍛えておきたい。

 

 いつも通りの平和な通学路。これで一緒に歩く男でもいたら最高なのに……。どこかに運命の出会いが落ちてないだろうか。そのためなら、多少の数奇な運命だって受け入れる。それこそ、正義のヒーローにされたり、巨悪を討つのだって、ばっちこい。

 

 なんて考えていると、後ろから叫び声が聞こえる。というか迫ってきている。

 

 何事か、と後ろを振り向くと、チャリで爆走する遠山キンジが、セグウェイに追われている。……なにやってるんだろ。

 

「おい!そこをどけ!爆発するぞ!」

 

乱暴な言葉でそこのけと言われて、咄嗟に横に一歩出ようとする。

 

「いったぁ!」

 

が、足がもつれてその場でコケてしまう。そこに高速の自転車が迫る。やばっ。轢かれる……!

 

 ガシャン!目をつぶった私の後ろでチャリの転がる音がする。直後、体に何かがのしかかる。

 

「いってぇ……。……?」

 

体の上からキンジの声がする。それと同時に標準サイズの私の胸に、その、変な感触が……。

 

「うわぁ!変態!どいてよ!」

 

目を開けた先にいたのは、私の胸に顔を埋めるキンジだ。

 

 しかし、更なる衝撃がわたしを襲う。転んでも、慣性で転がっていった自転車がセグウェイを巻き込み大爆発を起こし、塵になった。

 

 それをキンジと二人揃って呆然と眺めていた。流石に武偵校でも、ここまでの爆発はなかなか見ない。しかし、先に我に返った私は、

 

「…………。ってか!いい加減離れて!」

 

キンジを押し返す。ガツンとコンクリに頭をぶつけて「いてぇ!」とか叫んでるが、気にしない。セクハラをくらった私は、プンスカと怒りながら、爆発跡地を踏み越え、登校を再開する。

 

 ……あんなことになっても平然としてられる私にビックリだ。既に武偵校馴染んでる証拠だ。不名誉だけど。

 

 

 その後は、教室に行き、授業をまともに受ける。そして、探偵科の授業もクリアして、寮に戻る。

 

 朝は、かなり非日常を行っていたが、午後は今のところ平和そのものだ。下校時は、チャリに轢かれることも無ければ、爆弾魔に巻き込まれることも無い。良かった良かった。

 

 このまま平和に終わってくれれば良いんだけど……。

 

 

 




 最初は説明多くてかったるいけど、どんどん愉快になっていく予定です。

 どうぞ、今後よろしくお願いします。
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