まずいぞ……。爆弾なんて本当にあるのか?見つかりやしない。それに、そもそも犯人も証拠も見当たらないし、動機も分からない。今回の捜査はかなり無茶があるんじゃないか?
しかし、隣のアリアはここに何かあると確信しているらしく、脇目も振らずブツを探している。
まるで警察犬みたいだ。実際鼻をフンフン鳴らしたりしてるし。ピンクの可愛い子犬だ。しかし、下手に手を出したら噛みつかれるだろうけど。
「なぁ、本当に爆弾なんてあるのか?」
「なめないで。あたしの直感が武偵殺しの存在を感じるの。」
直感って。そんなもん当てになるもんか。
「直感なんて当てにしてこんなことしてんのか?」
「あんたもそれに救われたの忘れた?ほら、無駄口禁止。さっさと探して。」
独断専行で進めやがって。一応今は協力してるんだ。多少の説明くらい求めても良いだろ。
だが、話を聞いてくれそうにない。仕方ないか。とりあえずやるだけやってやる。Eランクの俺がな。
パンの棚やお菓子の奥。ジュースの冷蔵庫までとにかく探し続ける。しかし、見当たらない。バックヤードのロッカーは女性の匂いがして諦めたけど。
時間だけが過ぎていく。それが不気味で仕方ない。もし無差別な犯行なら、とっくに爆破してるだろう。目的があるならそろそろ突き付けて来てもいい頃。
しかし、そのどちらも無い。爆弾魔に襲われた現場にしては、静かすぎる。おかしい。何かおかしい。しかし、神崎の様な直感はあいにく俺には無い。
何がおかしいのかなんて分からないまま時間が無駄に流れていく……。
変化の時はとつぜんだった。
「へーい!まだこのコンビニにいるおバカちゃん達?動いたらドカンと一発だよ?」
小柄な黒髪の女の子。ポニーテールが楽しげに揺れる体と連動している。
「誰だ、お前!」
ベレッタを向ける。
「あんたが武偵殺しの正体……!」
アリアはさっきとはうって変わり鬼のような形相。親でも殺されたのかって程の殺意だ。
「そうかもね。じゃ、君達には死んでもらおうかな!」
理不尽な。俺が何をしたってんだ。これで二回目だぞ。
「ふざけんな!テメェは逮捕してやる!」
Sランク武偵が味方についてるってのが大きい。俺一人じゃどうにもならんが、神崎がいれば平気だろう。
その油断がいけなかった。小柄な武偵殺しがいきなり防弾制服に向かいワルサーをぶち込みやがる。
その反動でよろけた俺を人質としてとるためか、武偵殺しが突っ込んでくる。しかし、あろう事か、俺がよろけた際にぶつかった棚から落ちたメロンパンを踏み付けて足を滑らした。
そして、俺にのしかかってきた。
顔にはメロンパンをゆうに超えるサイズの、その、胸が……。
やばい。桐未との生活で忘れかけてたヒステリアモードの感覚がやってくる。
「やぁーん。えっちぃ!」
武偵殺しはわざとらしく自分の身を抱いてみせる。
甘ったるい死ぬ程濃い香水の匂いがどんどん鼻腔に攻め込んでくる。あぁ、ダメだ。体の芯に血液が集まるのを感じる……。
あれ?無い。
理子達が出ていってからしばらくして、お茶とジュースをきらしてる事に気がついた。おまけに、お菓子も結構消えてる。
絶対理子が消費してるな。許すまじ。
確か理子が財布を持っていたはずだ。今から追いつけば、その分買い足して貰えるかもしれない。
食べ物の恨みを晴らすべく、勇み足でコンビニへ向かった。りょうは白雪と何やらゴソゴソしていたから、放置してきた。大方引き剥がすための作戦会議だろう。
全く。私が何をしたってんだね。まぁ、引き剥がされるのは少し嫌だね。最近話してて結構楽しいし。
果たしてキンジと私でこのバーサーカーを止められるのか。正直無理そう。キンジはとてもじゃないが役に立ちそうない。はぁ。気が重い。
コンビニに着いた。が、買い物は到底出来そうにない。中が完全に戦場なのだ。
ヒビだらけのガラス越しにキンジとアリアとかいうSランク武偵が組んでチビのポニテ少女と戦っているのが見える。
しかも、キンジは足でまといどころかアリアをリードしている。明らかにHSSが発動してる。
はぁ……。戦いながらアリアの方を見てはアリアが赤くなっている。口説いてるのか。仲の良い友人が口説てるのを見るのは非常に複雑な気分。
だが、相手も一歩も引かない。今のキンジはSランクとも引けを取らない。つまり、Sランク武偵二人と一人で戦ってるわけだ。
もちろんキンジは女性相手に本気でやったりはしないが、それでも相当強いはずだ。
只者じゃない。加勢しようか。しかし、私じゃどう考えたって足でまとい。やっぱり帰ろうか。
しばらく迷って、やはり帰ろうと判断しコンビニに背を向けた私の背後で、ガラスを突き破る音、ついで誰か人がコンクリに叩きつけられる音。
何事かと思えば、後ろで転げてるのはキンジだ。受け身をとってはいるけど、そこそこダメージはありそうだ。
「あんた何してんのさ。」
平静を装って話しかけるが、状況が状況だし、何より相手はヒスキンジだ。緊張する。
「ははっ。誰かと思えば桐未じゃないか。こんなとこで奇遇だな。」
すっくと起き上がるキンジはいつもとは違う、少し気取った喋り方。表情に根暗な感じではなく、自信を感じる。
「奇遇って……。どうしてこんなことなってんのさ。」
「分からないね。そこのかわい子ちゃん二人に巻き込まれちゃってね。」
キンジがチラッと見た方には、こちらへ向かってくる黒いチビと、追いかけるアリアが見えた。
「あれぇ?お仲間かな?まずはそっちからだねぇ!」
なんと、そのチビがこちらにワルサーを向けていた。あ、ダメかも。避けられない。
「危ないね。こっちへ行こうか。」
キンジが私を軽々持ち上げて、お姫様抱っこで駆け出す。追いついたアリアがチビを牽制しているおかげで、どうにか近くの建物の影に隠れる。
「な、なにするのさ。やり方考えてよ。」
下ろされた私は、顔が熱いが、照れてるので何か言われるのは癪だから八つ当たり気味に聞く。
だが、キンジは向こうを伺いながら、ずっとこちらを見ようとしない。私も作戦を練る為に向こうを見ながら聞いてるから顔は見れないが、聞こえてない訳じゃないだろ。
チラッと見ればキンジの耳は真っ赤。ヒスキンジらしくないな。
いや、待てよ。もしかしてHSS切れた?私と濃厚接触したから。
そうとしか考えられない。
お姫様抱っこのショックがデカかったか。すまない、私もだ。
「ねぇ、HSS切れたのは分かったから。このままで勝てるの?」
変な空気から脱するため、逃げ道を作ってやる。私も居心地悪いし。
少し名残惜しいけど。
「あ、あぁ、大丈夫……じゃないかもな。」
そりゃそうだ。アリアとやり合うチビはどう見たってふざけている。アリアは本気なのに。こちらに来るのも時間の問題だ。
「どうする?私も少しなら手伝えるかも知れないし。あいつの癖とかは大体把握出来たから。」
そもそもの力が足りないからアリア程では無いが、ある程度はやれるはずだ。だが、
「それはダメだ。桐未は戦闘員じゃないだろ。こんなとこに入ればじきにあいつは桐未を見つけるぞ。」
「そんなこと言ってる場合?」
「戦闘員でもない女子を死闘に巻き込む程俺は落ちちゃいない。手伝うなら、仲間を呼んでくれ。」
許可は降りない。キンジから覚悟のようなものを感じる。HSS無しで戦おうってのか。死ぬかもしれない強敵相手に、しかも、女子を守ろうと。
かっこいいじゃん。キンジの癖に。非ヒスキンジにだって信念はあるんだな。流石正義の一族。
認めたくないが、死ぬ程臭い言い方をすれば、キュンとした。本当にビックリだ。
「そ、そう。じゃ、死なないでね。」
「遠山家の人間はそう簡単には死なない。安心してくれ。それじゃあ、俺が行ったら、それに合わせて桐未も出ろ。」
アリアがそろそろピンチだ。キンジのカウントで、全力で寮へ戻る。白雪やらりょうがいる自室へ向かうんだ。
結論から言うと、死人は出なかった。私がりょうと白雪を連れてコンビニへ向かうと、ボロボロのキンジとアリアが地べたに寝そべっていた。
どうやらキンジが出てしばらくしたらアリアの一撃が入ったらしく、逃げて行ったそうだ。恐ろしく逃げ足が早かったらしく、追いつくことは出来なかったそうだ。
今回分かったのはAHSSの即効性くらい。あと、キンジは思ったより出来る子だってこと。
あの後キンジと目が合わなかった。てか、合わせられなかった。私も。
目が合うとさっきのセリフが脳裏をよぎるから。いやぁ、お恥ずかしい。もしかしたら意識しちゃってるのか。私は。明日からどうしようかな……。
恋愛タグ、動きます。
恋愛脳の私的にはここからが本番です。準備が整って投稿頻度上がっちゃいそうですね。