頭の上にハテナを浮かべたりょうは帰宅し、キンジは白雪に連れられ病院へ向かった。アリアは不思議そうにチラチラキンジを見ていた。恐らくHSS時と非HSS時の実力の違いについて疑問で溢れてるのだろう。
そして、私が家に帰ろうとすると、何故が理子がついてきた。
「あのさ、理子の家って私の部屋じゃないよね。」
「いやいや、あそこははりこりんの快適な別荘だと思ってるよ!」
別荘とな。自分の家と距離にして数百メートルあるかないかの別荘か。オマケに他人が住まう狭い部屋だ。
「なら料金とろうかな。」
お菓子も飲み物もいつもの三倍消費するんだから。理子は太ってないのにお菓子は馬鹿みたいに食べるのだ。
「えぇー。そこは散髪代ってことにしといてよー!」
うーん。確かにそれはそうかもな。髪切るのって地味に高いし、理子の散髪ってかなりクオリティ高いし。
押し売り販売と言えばそうだけど、顧客が満足してるなら問題無いだろう。
「まぁ、そう思えば良いかな。」
「いやったー!晴れてきりりんハウスは理子の部屋だー!」
疲れてとぼとぼ歩く私を置き去りにして理子は駆け出して行った。行先は多分私の部屋だ。いや、さっき理子の部屋になったらしいから、私の部屋でもない。最早訳分からん。
やれやれって感じだ。理子はすごく子供っぽい。だから一緒にいて退屈では無いけど疲れる。
そういえば、この生活が始まる時も同じことを言った気がする。最近一日が長すぎて遠い昔の記憶になりつつあるけど。
もしかして老けてるんじゃなかろうか。だとしたら、理子に若さを吸われてるのか。理子も侮れないな。
部屋に戻ると、理子がこの部屋最後の秘蔵のお菓子である板チョコを咥えながら、自前の黄色いPSPをいじっていた。
「きりりんおそーい。先にひと狩りしちゃってるよー。ほら、荷物置いてきりりんも参加しよ!」
後ろから覗くと、明らかに上等な装備に身を包んだ可愛らしい理子のアバターが巨大な神々しい龍と戦っていた。
「へいへい。分かったよ。」
私も結構やりこんだゲームだから、きっと理子と一緒に戦えるだろう。
理子がカメラを仕掛けてたゲームの箱から黒のPSPとカセットを取り出してリビングに戻る。
理子がいつの間にか寝そべってソファーを戦力してたから、向かいのソファーに腰掛ける。
今回は古龍と呼ばれるバカでかい龍の討伐だ。
「ねぇきりりん。さっきキーくんと一緒に戦おうとしてたんでしょ?」
白雪かりょう経由で聞いたのか。
「そうだね。止められたけど。」
「なんで止められたの?キーくん弱っちいじゃん。少しでも助力があった方がいいだろーに。」
「いやさ、キンジ曰くこんな危険に無関係な女子は巻き込めないとさ。全くカッコつけちゃってさ。」
思い返したらまた恥ずかしさがぶり返してきて、少し熱くなる。ウブすぎるだろ。私。経験少ないのはそうなんだけどさ。
「ふーん。キーくんやるねぇ。ちなみに、その時キーくん変じゃなかった?」
なんだろ。いつになく理子の質問が多い。
キンジなんて常に変なやつではあるけど、HSS発動してなかったから変ではないな。
「別に?いつも通りだったよ。」
「そうか……。あっ、やった!倒した!きりりんやったよ!でも、なんか早くない!?」
「まぁ、ある程度やってるからね。」
ここで言うある程度とは、それぞれの属性の装備の最適解を集める事だけど。理子は汎用性の高い武器を使いまわしてる感じだから私よりかかるんだな。
「相変わらずきりりんお強いねぇ。」
「まぁ、そうかもね。」
ほぼ会ってない相手だけど、例の武偵のシュミレーションでのプレイを見てのことだろう。
「よし。ゲームは済んだ!じゃー帰るね!また明日ここで待ってるね!」
口の周りにチョコをつけたままPSP片手に部屋を出ていく。思いつきで行動するのは良いけど、読めなすぎて圧倒されがちになるな。
「はいよ。またね。」
既に出て行っちゃったから聞こえてるかは分からないけど、一応送り出す。また明日ね、か。嬉しいね。何だかんだ理子といると楽しいし。
「まずいなぁ……。」
部屋に戻り開口一番不意に口からもれた言葉は焦燥感を帯びていた。
そりゃそうだろう。引き離したい二人がたった数日で思ったより仲良くなってて。
いざアクションを起こしてもむしろ仲を深めるだけ。対策方法が分からなくなって来てしまったんだから。
まさかヒスってないキンジに桐未が落ちるとは。
「あはは……。はぁ……。悩んじゃダメ!りこりん頑張ります!」
鏡に向けて敬礼をしてみせる。しかし、不安は一向に無くなりそうにない。
心を落ち着けるため、頑張る決意をまた固めるため。
胸元を探ると、出てくるのは十字架の飾り。今亡きお母様からのプレゼント。
これがある間はまだ一人じゃない。私には力がある。この力ならきっとアリアだって楽勝で勝てる。そうだ。私はお膳立てしてあげてるだけだ。
そんなに悩むことは無い。私がアイツを越えるための準備でしかない。
最悪キンジ以外のパートナーを探すのもなしではない。選択肢はいくらでもある。まだ思い詰めるには早すぎるってものだ。
「さぁ、やるぞ!りこりん出撃!」
まずは桐未の情報をもっと得ないと。そのために別荘は手に入れた。次は弱点を探さないと。
翌朝。
調子はぼちぼち。カーテンの隙間からは眩しい朝日が部屋に入り込んでいる。
全く。憎くて仕方ない。なんで朝が来てしまうのか。昨日の事件なんて無かったかのように明日が来てしまうことに激しく抗議したい。
昨日無駄に疲れた分寝かして欲しい。
まぁ、誰に抗議すればいいのかなんて分かったもんじゃない。現実逃避は無駄でしかないことは最近知ったのだ。逃げられるならとっくにキンジとも理子とも関わってないだろうからね。
朝ご飯を食べ終わって、洗面台で顔を洗ったりスキンケアに勤しんだりしていたら、重大な事実に気がついてしまった。
いつもより十分遅いのだ。なんでだ?起きたのはむしろいつもより早いのに。遅刻寸前にも関わらず深く考え込んでしまう。そう、大事なのは失敗した後の対応だ。
色々確認してまわったら、鏡に映る自分の姿がいつもとは全然違っている。
髪はいつもよりストレートだし、まつ毛やまゆ毛も整っている。ノーメイクだから大きく変わる訳じゃないけど、小綺麗になっている。無自覚に丁寧にやっていたのかもしれない。
何故かって?言わせないでよ恥ずかしい。
いつもより遅いし流石にキンジはいないかな。少し残念に思いながら小走りで階段を降りて、通学路に出ようとした時。
「おう、遅いぞ。」
キンジに呼び止められる。そう、いないと思ったあのキンジだ。
「ちょっと。びくっくりさせないでよ。」
思わず飛び上がってしまう。
「びっくりも何もこれからしばらく頼むって言ったろ?」
「そうじゃなくて。遅かったら行っててもいいんだよ?こんな律儀に待たなくたって。」
「こっちから頼んでんだからそんなことしねぇよ。それより連絡先交換しないか?こういう時あった方が良いだろ?」
いつになく積極的だな。まぁ、確かにあった方が便利か。
「はい、どうぞ。」
メアドを見せる。私の異様に少ない連絡先が潤うね。私の携帯にはりょうと親と、今増えたキンジと、あと一人しかいない。
チラッと覗いたキンジは白雪とか理子とか結構いやがる。どうやら仲間ではなかったらしい。
「それじゃ、行くか。」
「はいよ。」
適当にフラフラ歩き出す。
今日一日平和に終わった。昼食はりょうと白雪が作戦会議なる謎の会合でいなくなったからキンジと二人で雑談しながら食べたし、帰りもたまたま居合わせたから一緒に帰った。
基本休み時間はりょうと、残りはキンジと過ごしていた。この事実一切の問題は無い。
しかし、私自信には大変由々しき問題が発生していた。
あんまり目を見てない。てか見れない。男慣れしてないの事が露呈した瞬間だ。
キンジのあんな言葉一つでこんな意識しちゃうのが何よりの証拠。
キンジは私をそういう目で見てないから女慣れの練習になるんだろうが、私は男慣れ出来そうにない。
はぁ……先が思いやられる。こんなことならAHSS要らなかったような、でも、これがなかったらキンジとも関わらないわけだし。
難しいね。全く。
しっかしあれですね。私の小説は弱小も良いとこですね。お気に入り下さっている方の小説やワード検索で出る小説を見たりするんですが、少ない話数でUAもお気に入りも多いですね。
いやぁ、難しいですね。目指せUA一万超え!