キンジの事件に巻き込まれた月曜日。キンジと一緒にいることが確定した火曜日。前髪を理子にぶった切られた水曜日。近所のコンビニが再起不能になった木曜日。そして、キンジを意識して目を見れなかった今日。
怒涛の一週間を乗り切った私に待ってるのは土日だ。安息の二日間。家でゲームして二日間終わるはず。
しかし、私の携帯に届いた一通のメールがその予定を崩しやがった。
「明日どっか行かないか?」
短い文章の送り主はキンジ。忘れがちだがキンジの目的は女慣れだ。
それを受けるとは言ったし、暇な時と言った以上今回は適用されるはずた。悔しいけど。
「いいけど。どこ行くの?」
こちらも短く返信する。
「どこに行きたい?俺には女子の行くとこが分からん。」
ほう。奇遇だね。私も全く分からない。しかし、ここで丸投げしてもしょうがない。
「デパートとか?色々あるし困らないでしょ。」
「じゃあそれで。明日朝九時下で待ってるぞ。」
誤魔化しの要素の強いデパートを選択。これなら困ることも無いだろう。
安心して携帯を閉じようとした時、携帯から大音量の曲が流れ始める。
電話だ。しかも、知らない番号。
「もしもし、芦捷ですが。どちら様ですか?」
「りこりんでーす。ここで理子Pから課題でーす。」
げぇ。なんだろ。厄介事に変わりはないだろうけど。
「デパートで服一式揃えて来て下さい!もちろんきりりんが可愛いと思うものを!じゃ!頑張って!」
「あっ、ちょっ……。切れてるし。てか、なんで出かけること知ってんのさ。もう訳分からないし。」
ブツブツ愚痴を呟きながら、今度こそ携帯を閉じる。
まぁ、やらなきゃ写真が危ないし。やるしかないのか。全く。どこで盗聴してるのか。不思議で仕方ないよ。
翌朝。ジーパンに無地の白シャツという最低限の格好に親から引き継いだ革モドキの肩掛けバックを持ってキンジを待つ。
こんなんだから理子に服買えって言われるのか。
メイクもするべきらしいが、生憎やり方をしらない。親が教えるのはAHSSの事ばっかりだし、私も興味があまりないから調べなかった。今度理子に聞いてみるか。
時間は八時五十分。一応早めに部屋を出た。
本日は晴天。雲一つない透き通る空は綺麗だ。
ぼーっと空を眺めて約五分。徒歩でキンジがやってきた。
ジーンズに前を開けた黒いシャツ。まさかのジーンズダブりはさておき。
「待たせたか?」
「いや、待ってないよ。それじゃ行こうか。」
二人揃って歩き出す。はたから見たらこれはデートと相違ない。少し気付くのが遅かった。いや、気付きたくなかったな。そう思ったら少し緊張する。
バス経由で武偵校の敷地を出た私達が向かったのはアクアシティお台場。
「……なにするか。」
「分からないね。基本家だし。」
しかし、入口で二人立ち尽くしている。だってこんとこ来ないし。
一人なら本を漁ったりいくらでもやることはあるけど、二人でとなると途端にハードルが上がる。
「あ、そだ。服買うのに付き合ってよ。理子が買って来いってさ。」
「そうか。俺にはそういうのが分からないが、行くなら付き合うぞ。」
えっ。可愛い服と思うを着てキンジに見せるってことか。しかも、遠回しに見て見てって言ってるようなもんじゃん。センスの欠如やらなんやらで恥かくこと確定じゃん。
完全に何も考えて無かった。買い物を一緒にするってこういう事なのか。初知り。
やば。激しく緊張してきた……。こんな辱め滅多に無いぞ……。
やって来ましたはオシャレな服屋。来たことも来る気も無かった。店員さんの笑顔が恐ろしい。
キンジも女性向けの店だもんで浮いてしょうがない。
「俺は外で待ってるから。終わったら呼んでくれ。」
周りの視線に耐えかねたキンジが店外へ出ていく。恥をかかなくて済んだのは良し。孤立無援はピンチ。
さぁ、この局面どうする。最適解はたった一つ。
「あの、すみません。えっと、あの、私に似合う服とかありますかね……。」
店員への協力要請。人生支援が得られないなんてそう無いのだ。
「はい!もちろんございます!では、こちらへどうぞ!」
明るさ全開な営業スマイルのオシャレな店員が、店の奥へと私を連れ去る。
「どのような服をお望みで?」
どのような?知らん。こういうのって何言えば良いの?誰か教えてくれないかな。
「えっと、そうですね……。あまり目立たないやつが良いかな……。」
明らかにフワッとした答え。最早店員に聞けるレベルですら無かったのか、私。
しかし、相手はプロだ。
「では、予算の方は?」
「えっと……。」
実は魔境に乗り込む為に貯金をいくらか下ろしてある。
「五万程ですかね……。」
「でしたら、結構自由に組めちゃいますね!では、いくつかお持ちしますので、少々お待ち下さい。」
どうやら、こんなに薄っぺらい情報でも服を選べるらしい。恐るべし。
携帯をいじる気にも周りの服を見て回る気にもなれず、固まったまま過ごすこと五分。
何着も抱えた店員さんが帰ってきた。
「これらがまとめて五万円程ですよ。お客様あまり服をお持ちでないようですので、一気にいくつか買ってみてはいかがでしょうか。」
まさかそこまで分かるのか。まぁ、確かに一つだけ良い感じの持ってたらそれに依存しちゃいそうだしな。
よし。さっさと試着して決めてしまおう。キンジ待たせちゃ悪いし。
結局全部買ってしまった。五セットだから一セット一万円程。
そのうちの一つを現在着ている。店員さん曰く、
「せっかく男の人と出てるんですし、オシャレしてみたらどうですか?」
との事。一理ある。着慣れない服なものでソワソワして仕方ないけど、コソコソ店外に向かう。
店内の鏡に映る私は、朝と見違える程のオシャレさん。
シンプルな白いワンピースだ。長い丈で足が見えない分清楚なイメージを受ける。
いつも根暗な表情だが、服のおかげで少し明るくなれる。
いや、明るいワンピースだから明るくなったのか。
どちらにせよ、似合っていると思う。流石店員さんだ。
欲を言えば、私自身が黒髪が良かったな。そしたらもっと似合ったのに。まぁ、それは言っても仕方ない。
店の外へ出てみたが、キンジの姿は無い。携帯を開いて見ると、周りの視線が気になるからフードコートにいる旨のメールが来ていた。
まぁ、そりゃそうか。私でもあんなのがいたらジロジロ見ちゃうし。
はぁ……緊張する。私的には似合ってると思う。だけど、キンジがどう思うのか……。
フードコートで私の分まで席を陣取ったキンジが手を振っていた。
小走りでそちらへ向かうと、開口一番キンジが放った言葉は、
「そ、そのまま着てきたのか?」
服への評価では無かった。ちぇっ。
「悪い?べ、別に私の勝手でしょ?」
「いや。悪くは無いんだけどな。」
「それで?」
感想の催促だ。待ってるだけでも緊張しちゃうから。
「似合ってるぞ。そのワンピース。」
足りない。もう少し具体的性はないのか。
「フワッとしてるね、また。」
何か無いの?と遠回しに伝える。求めるのは一言、それだけだ。
「えっとだな……。あれだよ。」
「はっきり言ってよ。可愛い?可愛くない?」
いつもならこんな事絶対言えないだろうな。だけど、服を変えて少し自信が出てきた。ぶっちゃけ後悔はするだろうけど。
「……可愛いよ。全く……。」
言わされた、て感じ。でも、やった!引き出した!
「でしょ?」
思わずニヤけてしまう。良かった……。とりあえず恥はかかなかった。
可愛いって何年ぶりに言われたっけ。いや、男子からは初だ。
これならオシャレも悪くないのかな。理子には感謝しかない。
「そ、それでどうするんだ?この後。」
「ふふふ……。っはい?あ、この後ですか。行きたいとことかある?」
浮かれた私が呼び戻される。私は用件は果たした。次はキンジの番だろう。
「やりたいこと、か。とりあえず俺は腹が減ったな。」
「じゃあ、食べながら考えようか。」
心臓バクバクで心は上の空だ。嬉しいやら恥ずかしやら。だが、七周くらい回って平常心。明日にはキンジの顔だって見られないだろうけど、今ははっちゃける。
せっかくの休日だ。楽しんだ者勝ちだからね。
週一投稿ギリギリ滑り込みですね。非常に申し訳ないです。
多少言い訳すると、一次創作の短編書いてたのとリアルが忙しすぎたのが原因です。
そして、勢い削がれてますが、本編について語りたいです。
桐未さん、服装変えたりしてめっちゃ浮かれてます。明日にはどうなってるのか、期待して下さい!楽しい予感しかしねぇ。
活動報告はしましたが、更新少し遅くなっていくかも知れません。
追記
読み直して編集致しました。
(2020/09/02 20:17:45)