追記 諸事情で少し編集しました。
(2020/07/28 20:25:07)
朝っぱらから災難な事件に巻き込まれたが、流石は武偵校で鍛えられただけある。割と早々に立ち直った私は、現在、FPSシューティングをプレイしている。
このゲームは、実際の東京を舞台にしており、ビルの中身や廃墟の中身も緻密に再現されている。月一で建て替えた建物も更新されていく。
そんな大規模なことがどうして出来るのか。それは、武偵校絡みだからだ。訓練を兼ねているから、随分リアル志向だ。
難しい任務にいきなり挑むのはリスクが高すぎる。だから、こうやって練習して、様々なシュチュエーションに対応出来るようにするのだ。
まぁ、訓練だから、理不尽なまでの難易度な任務もあったりする。その時は、マウスで机を殴るまでなんだけどね。
ヘッドホンを着け、理不尽な任務に野良の人と共に潜っている。だが、実の所いまいち集中出来ていない。というのも、この部屋に違和感があるのだ。
記憶力に圧倒的自信のある私は、寮の部屋に帰った時、少し朝と変わってる気がしたのだ。そして、しばらくくつろいだ後で、その違いに気が付いた。
例の集合写真が少し、数ミリズレていた。それに気付いてからは、あっという間だ。
クローゼットや食器の棚など、至る所に形跡があったのだ。もちろん、普通の人じゃ気付けないような小さな形跡だ。だが、特異体質とでも言うべきこの記憶力のお陰で、気づけた。
そして、私の背後。ゲームの類のある箱の中。多分、カメラが仕込まれてるな。探偵科を伊達にやってる訳じゃない。
しかし、下手に動けば何をされるかも分からない。だから、パソコンの画面越しにそちらを伺ったりしている。
まさか、盗撮魔が湧くとは思わなかったな。私はとてもじゃないが美人ではない。それに、有名人でもないし。
まぁ、目的は何であれ、盗撮は気分のいいものじゃない。
しばらくゲームをした後、
「飽きたなぁ。しょうがない。」
とデカめの独り言をして、充電器の頭に化けた隠しカメラを底に沈めながらPSPを取り出す。これで盗撮は出来ないだろう。
その後は、部屋の隅々まで探し回って、自然な日常の動作でカメラを封印して回った。が、全部やったら自然な動作でやる必要もないよね。って事に気が付いてしまい、結局全て堂々と破壊した。
今までの小芝居がめちゃくちゃ恥ずかしくなったのはもちろん内緒だ。もし見られてたなら、知らない奴に私は家で独り言のデカい女だと思われるわけだし。とりあえず、カメラの処理だ。
小さな機械を踏みつけて破壊するのは非常に気持ちがいいものだ。持ち主の損害とか知ったこっちゃなし。自業自得ってやつ。
犯人探しなんて心当たりが無さすぎて出来そうにない。それでも探偵科か!?とかそんなツッコミは受け付けない。だって、面倒だから。
なんてことは無い。武偵なんて犯罪者から恨まれて当然の仕事をしてる訳だ。いつ襲われてもおかしくないし、文句も言えない。だから、しばらくは適当に強襲科の友人に身辺警護でも頼めばいいか。
そんなユルい考えをしていた。しかし、世の中そんなに甘くない。明日起こる出来事は、私の人生を変えてしまう程のものだ。しかし、その事実に気づくのは、既に手遅れになったあとであった……。
翌朝。昨日より早く起きた私は、そのままの勢いで学校へ向かう。
昨日の今日だ。流石につけられてるかもしれないのに、いつも通りゆったり登校する訳にはいかない。不審がられない程度に周りを確認しながら歩いている。
周りの景色はいつも通り。昨日の爆発事件が嘘みたいだ。いつもより早く出たお陰で、少し涼しい。
爆発の跡地も掃除されてすっかり元通りだ。噂にはなったけど、ニュースやらにはならなかった。つまり私がその場に居合わせたことはほぼ誰も知らない。これで日常に戻れる……。訳では無さそうだ。というのも、日常の景色の中に下手っぴな追跡者がいるのだ。
探偵科の人間を騙せるほど上手ではない。バレバレだ。だけど、素人でも無さそうだ。
普通に考えたら、昨日カメラを仕掛けた奴だろう。盗撮では飽き足らずストーキングに走ったのか。
しかし、正面から戦っても私は弱いからな。所詮探偵科だから。だったら、もう少し泳がせておこう。隙があれば反撃だ。
チラッと見えた人影は男っぽい。まさか昨日願った一緒に歩く男が現れてしまうとは。もう少しまともな出会い方をしたかったよ。
校舎に着いた私が教室に入ると、
「おっはよー!きーちゃん!元気してる?」
オシャレなお友達との会話を中断して、朝とは思えない程のハイテンションで挨拶をしてきたのは、ショートの活発な女の子だ。
名前は穂沿りょう(ほぞりょう)。強襲科のBランクの少女。やや小柄ですばしっこさが取り柄だ。ついでに、根っからの陽キャ。
陰キャな私にはとても釣り合う相手じゃないなんていう卑屈な考えはとうに放り捨てた。
というのも、私はあまり積極的に人と関わることはしない。目立ちたくないからだ。
思い出すのは、一年の始め。りょうは、友達のいない一人の私を見つけるなり駆け寄ってきて、
「君!名前なんて言うの!?」
いきなり名前を聞いてきた。
「桐未。芦捷桐未だよ。……。えっと、何のようかな……?」
陰キャ特有の内弁慶な私は、少し鬱陶しそうにしながら、しかし口調はやや下手で名乗った。私は随分態度が悪いが、
「私穂沿りょう!出来ればあだ名が欲しいな!まぁ、よろしく!」
滅茶苦茶笑顔でハンドシェイクされた。恐らく向こうはこっちの態度なんて気に止めても無い。
正直出会ってしばらくは鬱陶しいことこの上無かった。毎日話しかけて来るが、慣れてくれば、全く問題無い。むしろ、今では数少ない友人だ。
「おはよ。また朝から元気だね。」
「そっちは元気ないね。昨日のこと引きずってるの?」
「いや、聞いて欲しいんだよ。」
それから五分程盗撮やらストーカーやらについて説明した。
「はぇー!まぁ、きーちゃん可愛いもんね。」
嫌味ゼロパーセントの笑顔だ。
「はぁ……。節穴だよ。りーは。それでさ、もしもの事があったら護衛頼むかもだからよろしくってこと。」
ちなみに、りーとはりょうのあだ名だ。何でも、男っぽいからりょうはどうしても嫌らしい。
「任せなよ。友の敵は敵だ!眉間に風穴空けてやるよ!」
さすが武偵校生。華のJKとは思えない発言だ。だが、Bランクの武偵がタダで護衛してくれるなんて、ありがたすぎる。とりあえず安心そうだな。
りょうには、いつでも駆けつけられる状態で待機して貰って、私は午後の探偵科の授業へと向かった。
が、ここで問題発生。何故だか視線を感じる。多分ストーカーはこの中にいることになる。
しかし、ここには沢山人がいる訳で。流石に捉えることは出来なかった。しょうがない。決戦は帰りだな。
りょうに捕らえて貰うのが一番楽なのだが、そうすると私じゃ見つけられないとタカをくくって再犯の可能性がある。だから、自力にこだわるのだ。
下校し始めると、またしても背後に気配。スタスタと早足で歩けば、向こうも早足で駆けてくる。
私は自然な動作で脇道に入り、クルッと振り向き、拳銃を頭が来るであろう位置に構える。
ドキドキする胸を抑え、出てくるのを待つ。たった数十秒なのに、かなり長く感じる。
そして、その時が来る。早足で脇道に駆け込んで、私に気付き、ギョッとしている。私も驚いて、
「へぇ?」
間抜けな声が出る。何故か。だって、その相手は……。
「遠山キンジ……?」
今まで観察してたはずの相手だったからだ。
やっとキンジと桐未が正式に出会えた訳ですね。