屋上の更に少し上。貯水タンクのある高台で、寝転びながら、一人考え事をする。
俺は、よくよく考えれば、かなり桐未に負担をかけてしまったんじゃないだろうか。
爆発事故に巻き込まれて、その上面識も無い人間に付きまとわれて。しまいには飯に誘われる。
少なくとも俺だったらあんなお願い断るはずだ。なのに、桐未は受けてくれたんだ。
今思えば、俺は舞い上がってた。兄さんの一件から、この力をより遠ざけていた。そんな中で見つけた、この力を封印する力。
いつまで桐未を付き合わせるかも分からない。桐未が俺といて楽しい訳もない。それなのに、今また時間を奪っている。
どうしようか。やっぱり、桐未に付き合って貰うのはやめようか。
不可避の運命にブルーになっていると、
「呼び出しといて、何隠れてんのさ。」
不機嫌な声が聞こえてくる。いや、桐未に関しては、あれが標準なのかもしれない。
「別に隠れてる訳じゃない。」
「そう。なら、も少し分かりやすいとこにいてよ。」
そう言いながら、こっちに登ってくる。それに伴って、チョコみたいな甘くて、でも少し苦い匂いがする。
「その、桐未。話があるんだが、いいか?」
「今さらなに?」
イマイチ感情の読めない声で返してくる。
「やっぱり、今までの約束、無かったことにしてくれないか?」
そうだ。これでいいんだ。人の、ましてや女子の邪魔をしてまでヒステリアモードから逃げるなんて間違ってる。
ここで、分かった。清々した。そんな言葉を投げかけられるんだと思った。
だが、桐未の返答は、予想の斜め上を行くものだった。
「なんでまた。ついに正義に生きることを決めたの?」
俺のお願いを受けることが当然だったような言い方だ。
「いや、そういう訳じゃない。ただ、迷惑じゃないのか?」
「どうなんだろ。ま、面倒ではあるけど、嫌でないね。」
遠く眺めながら、パンを齧っている。風になびく長い茶髪が、太陽の光を受けて輝く。
その姿に、少しドキッとした。別に、何かしてくれる訳じゃない。ただ、ヒステリアモードについて知っていて。しかも、それを解決してくれる女性。
ヒステリアモードを気にしなくていいってことに少し安心してるからこそ、女子として見てるのかもしれない。
「なんだそれ。」
「あんたが嫌なら、私はいつでもどっか行くけど。」
適当な喋り方。だけど、かえってそれに親近感を覚える。
「いや、桐未がいてくれるなら、そっちの方が良いにに決まってる。これからも頼むぞ。」
理由は分からない。だけど、桐未が優しくしてくれるなら、それに甘んじよう。
「告白なの?それ。」
かなり冷めた声が聞こえる。最悪すぎだ!なんてことを口走ってるんだ!?
「ち、違う!別にそういう意図があったわけじゃない!」
「HSSが無いからって、私が女ってこと忘れてない?」
返す言葉も無いな……。確かに油断してたかもしれんな。
「ま、まぁ、これからも頼んだ。」
誤魔化すことしか出来ない。だが、
「分かったよ。」
深く追求してくることもなかった。
結局、その後大した会話も無いし、仲良くなれた訳でもない。
それでも、罪悪感が軽減されたからか、随分気が楽になった。
桐未の体質についてや、俺の相手をしてくれること。謎は深まるばかりだが、急ぐ必要は無いだろう。
桐未と一緒に教室に戻った。のだが、それが悪かったらしい。
「やぁキンジ君。また新しい女の子を作ったのかい?」
「おいキンジてめぇ!その子俺に譲れよ!」
爽やかなイケメンに、ごついツンツン髪のやつが絡んでくる。
「うるさいぞ、別にそういうんじゃねぇよ!」
「またまた、二人でいい雰囲気だったじゃないか。」
「お前、白雪さんがいるじゃねえか!」
こいつら、全く言うこと聞きやしねえ!
「おいコラ!ベレの餌食になりたいのか!」
「おう、轢き殺してやるから覚悟しとけよ!」
「二人で周りに迷惑をかけないようにね。」
いつも通りのやり取りだ。別に本気でキレてる訳じゃない……。訳じゃないかもしれない。
「やぁ、きーちゃん。随分お楽しみだったみたいだね。」
教室に戻った私を待ち構えていたのは、ほっぺをぷぅー、と膨らませたりょうだった。
「悪かったって。」
「じゃあ、明日は二人で食べてくれるね?」
……どうなんだろ。
「迷ってるね!」
「いや、明日は二人で食べるよ。ごめんね、ほんとに。」
ここまでごねられると、流石に断れないな。
私の返答を聞いたりょうは、へニャと表情が崩れる。
「ふふーん。分かってもらえればいんだよ。」
これでこんなに喜ばれるなんて、なんか申し訳ないな。キンジもこのくらい分かりやすければ良いのに。
「はぁ。それにしたって、きーちゃんはどこでアイツと出会ったの?」
いきなりだし、かなり返答に迷う質問だな。元からってのは怪しいけど、初対面って感じでも無かったし。
「依頼を漁ってる時に少し話したことがあったんだよ。ほら、同じ探偵科だからさ。」
「うぅん。きーちゃん知らん人とは話さんでしょうに。」
うわっ。痛いとこ突かれたな!確かに私は関係ない人とは積極的には話しかけないし。
言い逃れは出来そうにない。しかし、同中とも言い難い。
「あれだよ、授業で関わりがあったから、キンジが私にヘルプを求めたの。」
「ふぅーん。そっか。まぁ、良いや。」
あまり興味なさそうに答えて、
「明日からまた一緒だね!」
今度はまた笑顔になる。なんだか今日は、さっぱりりょうの感情が読めない。
「そだね。次からはちゃんと事前に言うよ。」
「予定を書き換えてもらうかもしれないけどね!」
本音とも冗談ともつかない感じのりょうは、楽しそうに揺れていた。
寮の自室玄関の前。ドアの鍵が空いている。うん。そっか。
「ねぇ。事前に言ってくれない?」
靴を脱ぎながら、またソファーでくつろいでいた理子に語りかける。
「プロデューサーにはそんなもの必要無いからね!」
えぇ。ふざけないでよ。別に頼んだ覚えは無いし。
「……何したら帰るのさ。」
「くふふ!きりりんがお洒落ちゃんになったらだよ!」
ダメだな。これ。絶対聞いてもらえない。だったら、少しは妥協しなきゃ。
「分かったよ……。要は、服とか買ったりすればいいんでしょ?」
どうせ着ないだろうし、多少小遣い切って乗り切れるならそれでいいか。そう思ったのだが、
「甘いね。私のプロデュースはそんなに甘くないのだよ……!」
どうやら、そんな程度じゃ済まないらしい。
「はぁ……?どこまでやるの?」
「頭のてんこからつま先まで全身さ!」
「無理だよ……。そこまでのお金も気力も無いからね。」
「良いのかなぁ?理子Pにそんな口聞いて。」
そう言って得意げな理子の胸元から取り出され写真は、私の超ローアングル写真だ。制服のスカートの中身もくっきり写っている。
「はぁ!!?何それ!?」
思わず大声を出しながら、理子に飛びかかる。
だが、見事にかわされてしまい、ソファーに激突する。柔らかいが、流石に少し痛いぞ……!
「きりりんは無防備だねぇ!カメラをスカートで踏み潰すなんて!さぁ、これで分かったよね?」
あんなものさっさと捨てて欲しい。じゃないと何されるか分かったものじゃない。
悔しいが、理子のが一枚上手だったらしい。
「くぅ……。分かったよ。やればいいんでしょ?」
半泣きで降参する。理子は、完全勝利を収めた勝者の笑みだ。
「やっと理解してもらえたぁ!じゃあ、まずはあれからだね……。」
ズンとしている私を、理子は暗闇へと連れて行ってしまった……。
この度、3つ程の理由から投稿頻度がエラく落ちます。
一つ目は、リアルが忙しいことです。夏になったのに、リアルは暇になる気配がありません。
二つ目は、ストックが尽きかけてることです。あと二話しかストックが無いです。完全に油断してました。
最後の三つ目。知り合いに、二次創作って寒くね?って言われてから、心がひしゃげてモチベーションが低下してしまいました。
ですが、エタるつもりは毛頭ありません。
投稿頻度についてですが、最低週一にします。ノッてれば、週に二、三話投稿します。
さして人気者でもないのに、モチベーション云々語ってすみません。
二次創作の代わりに一次創作に取り掛かってるので、そちらも見て頂けたら幸いです。