時を刻む音楽奏   作:狼と月の間

21 / 25
現実逃避したい……したくない?


第二十一話『集結。部隊大会議』

〜CIRCLE・カフェテリア〜

 

ゴクッ

 

「……もう少し挽いた方が良かったか」

「おっはよ〜レン!」

「珍しいわね。今日は休みなの?」

「ん……友希那とリサか。おはようさん」

 

休日。俺はカウンターで自ら淹れたコーヒーを飲んでいた。

 

「アタシ達も一杯良いかな?」

「畏まり。注文は?」

「「い(・)つ(・)も(・)の(・)」」」

「……おう」

 

毎度毎度メンバーがここに寄る度に『い(・)つ(・)も(・)の(・)』と言われ続けるので密かにカウンターの下にメモ紙を置いている。中身は言わなくても分かるな?そう、彼女達が頼む『い(・)つ(・)も(・)の(・)』だ。詮索?するなするな。

 

「そういえば時練、足りてるの?」

「足りてるって……何がだ?」

「人手よ」

「Human Hand?」

「それ人の手だよね?」

「あ、人手なら労働力だからManpowerか。足りるといえば足りて……るのか?まぁ色々やってるよ。ほい、お待たせ」

「ありがとうレン〜」

「ありがとう……何か情報とかって有るの?」

「……」

 

彼奴は……彼奴は絶対に俺を殺す。俺の仲間達はそれを知って現在進行形でこのMission(任務)を遂行中だ。

 

「(この身が尽きるまでは……俺は死ねる身ではないのか)」

「時練?」

「……悪い、少し新メニューの考え事だ」

「レン……」

 

あくまでこれは俺(・)の(・)問(・)題(・)だ(・)。彼女達に迷惑は掛けられない。迅速に対処しなければ。

 

「さて、こんな状況は止めだ。やがて来る任務に備え、今は皆のサポートとして、Roseliaのマネージャーとしてこの身を尽くそう」

「……そうね」

「さて、新作の制作に(prrrr)……ハクか。悪い、一旦席を外す」

「分かったわ」

「レン、支払いは……」

「要らん。置きたかったら置いておけ」

「ゴチになりまーす♪」

 

 

 

「……漸く繋がったか」

『悪いなハク。仕事で忙しくて』

「いや、大丈夫だ。私も休憩しているからな」

『そうか。んで何の要件だ?』

「あの手下の件でな。鎌太刀は私から言っておこう」

 

私は一呼吸置き、言い放った。

 

 

 

「奴(・)が(・)死(・)ん(・)だ(・)」

 

 

 

瞬間、スマホを落としそうになる。寸前で阻止したが、これは最悪な感じだと頭の中で囁かれた。

 

「どう言うことだハク!」

『そのままの意味だ。尋問しようと部屋に入った時には既に死んでいた』

「死因は」

『おそらく毒による自殺だろう。足元に小瓶が有り、現在解析中』

「……クソッ」

 

あくまでも情報は話さないつもりか……面倒事が増えたぞ。

 

『それにお前の姿の件もある。一刻でも治したいのは山々だが時間が掛かるんだ』

「分かってるさ、ゆっくりでも良い。最優先は小瓶の解析だ……取り敢えずハクはこのまま鎌太刀と霧霜に報告。小瓶の中の解析が完了次第報告せよ」

『Yes Sir』

 

ハクとの通信を切る。さて、これからどうするか……どうやら、聞いてる人もいるらしいみたいだし。

 

「聞いていたんだろ?友希那?」

「何かあったのね」

「……盗み聞きか」

「心配なのよ。私も」

 

そう、隠れていたのは友希那だ。

 

「リサはどうした?」

「先に帰らせたわ……ねぇ、これからどうするの?」

「これからとは?」

「その……死んだのよね?」

「嗚呼。情報は拾えずだが……このままハクの解析を終わらすしかないだろう」

「……ごめんなさい時練、私の所為で」

 

俯く友希那。俺は軽く頭に手をやり優しく撫でる。

 

「Intelligence Network(情報網)が若干途切れただけだ。お前の所為じゃないし、これは俺(・)達(・)の(・)問(・)題(・)だから責任とか感じるな」

 

彼奴(廣岡 佐崎)の言葉からして、襲撃は確実だ。さて、どうするか……。

 

 

 

 

 

「……という訳だ。気をつけてくれ」

『了解……それとハク、あ(・)の(・)件(・)についてだが……』

「分かってる。既に調べたが、怪しい動きをする人物は1人も居なかった」

『そうか。……調べてくれてサンキューな』

「礼は要らない。では私は解析に戻る」

『了解』

 

鎌太刀との通信を切り、小瓶の内容物の解析を再開する。現状判明している事は……この小瓶の毒はTetrodotoxin(フグ毒)でもなくPlant-based natural poison(植物性自然毒)でもない。

 

「なら、この毒は一体何なんだ?」

「(コンコン)霧霜です。先生、失礼します」

 

扉を開け、白衣姿の霧霜が入ってくる。髪は何時も通り後ろで縛ってるな。

 

「時練さんの能力についての報告書です」

「そこに置いておいてくれ、解析で確認が出来ない」

「分かりました。では机の上に置きますね」

「助かる。……それと少し良いか?」

「はい?何でしょうか?」

 

首を傾げ聞いてくる霧霜。わたしは息を整えて話す……話す……。

 

「……いや、なんでもない」

「そうですか?私もこの後は忙しいので先に上がらせて頂きますね」

「嗚呼、ゆっくり休め……」

 

背を向け部屋を出る霧霜……話せなかった。いや、話(・)せ(・)る(・)訳(・)が(・)無(・)い(・)……。

 

「この事は……私から見てまだ幼き彼女に話した所で……いや、考えるな。解析に集中しろ……」

 

フラスコの中に入っている薬品が、徐々に色が変わっていく……。

 

 

 

 

 

〜数日後〜

 

「良し、全員集まったか?」

「全員揃ってるぜ旦那」

「誰が旦那だ誰が」

「茶番は良いが、本題に入るのを忘れるな」

「そうふぇすっ!?」

 

あ、霧霜が噛んだ。

 

「霧霜、そこで噛むか」

「あぅあぅ……」

 

両手で顔を隠す霧霜。全く、ドジなのは変わらない奴だ。

 

「さて、本題に戻すか。鎌太刀」

「俺は近隣住民や元バンドメンバーにTarget(廣岡 佐崎)の事について聞いてみたんだが、今のところ目撃情報はない……」

「姿一つも見せないとは……変装の可能性は?」

「いや、そしたら私が確認出来るはずだ」

「確かにそうですよね……先生の『解析』は見破ることも可能……」

「……と言うことはハクの能力でも発見出来ないと」

「すまない」

 

そう言い俯くハク。

 

「仕方のないことだ。鎌太刀は以上か?」

「俺からの情報は以上だな」

「次は私と先生からですね」

 

すると霧霜は背負っていたバッグから1枚の紙を取り出す。

 

「先生が調べた小瓶の成分なのですが、未だ判明しておりません……」

「おそらく幾つかの毒の成分を混ぜて使っている。解析結果についてはまだ未定だ」

「自ら口封じの為に死ぬとは……」

「……それと、私個人で調べさせてもらったのですが……隊長と鎌太刀さんはご存知であるPastel*pallettes襲撃事件についてです」

「話してみろ」

「はい……容疑者2人組についてですが何者かに依頼された組織の一員と言う事が判明しました」

「組織……依頼人は誰だ?」

「いえ、文通で渡されたらしく犯人の特定は……」

「……そうか」

「それと隊長の獣化なんですが……私にも分からない状況で……これが検査結果です」

 

そこには大きく『Unknown Data(未知のデータ)』と書かれている報告書類だけだった。

 

「他は全て正常でした。……と言いたいのですが」

「異常か?」

「時練、能力を使用している間に何か感じなかったのか?」

「……」

 

彼奴(Khimaira)の事は話すべきか。否、話さない方が良いだろう。

 

「いや、何も「感じたんだな?」……読むなら聞くなよ。ハク」

「……お前の事だ。ま(・)た(・)隠して自ら対処しようと思ってるなら大間違いだ」

 

返す言葉もない。確かに自ら対処しようとしたのは本当だ。その結果何が起こった?自らをコントロール出来ず、暴走した……完全に俺の責任だ。

 

「すまない……言っても信じてもらえないのかと思ってな」

「馬鹿言うな、私等は部隊。お前の言う事も信じれるさ」

「……ありがとう」

 

俺は3人に、暴走時起きた事を隠さず全て話した。

 

「Khimairaの名乗る存在に、殺意を含んだ謎の声……後者の方は追々話すとして、前者の方は初めて……だな」

「はい……しばらく経ってから苦しくなると言うのは呼吸困難とかですか?」

「いや、そんな感じじゃない」

 

暫く考えたハクが口を開く。

 

「……今後の件に解析を増やしておこう」

「頼む」

「俺からは……先程言った内容だけだ。身体の件もな。以上、各自警戒を怠らずに」

「分かってる」

「了解です!」

「良し、解散」

 

話も終わり、俺も持ち場へと向かうが……。

 

「時練」

「どうした?」

 

ハクに呼び止められた。

 

「少し話が……時間あるか?」

「……構わんが」

 

 

 

ハクに連れられ、河川敷へとやってきた。

 

「で、何の話だ?」

「先賢と烏のことでな」

「……」

 

戦闘技術や指揮技術。部隊の中でも格別であったところから『Xianxian(先賢)』と言う異名を持つ男であり、俺(・)の(・)親(・)父(・)だ。

しかし、謎の部隊に親父は狙われていた。そして俺の歳が7の時に居場所を見つけられ、御袋と俺を逃す為に時間稼ぎとして戦い……戦死したと聞いた。

『烏(Crow)』は誰よりも多くの人の顔を記憶したり、色を識別する能力が高いところから付けられた御袋の異名だ。御袋も俺を逃す為に追手を相手し、戦死したと聞いている。2人とも23で亡くなった……若き時に、それも家族が死んだのは……。

 

「……俺の親がどうかしたのか」

「掘り起こす様で悪かったが、一つ疑問が浮いたんだ」

「疑問?」

 

人差し指を唇下に付けて考えるハク。

 

「少し昔話をしよう。お前がその異名を持って、親と共に生き抜いた日々をな」




お次のお話は過去の話になります。ご了承下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。