1人と1匹   作:takoyaki

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十話です




ついに、二桁になりました。感慨深いです。


傷口に塩水を塗る

「フシャー!フシャー!フーゴー!フーゴ!」

「…………どういうセンスしているんだい……」

「……なんの音だ?」

むくっとホームズは起きてレイアから借りた時計を探す。

そして見つけると、スイッチを押した。

「……目覚まし時計の音」

そう言って、例の黒猫の時計をヨルに見せた。

「……なんで、猫の威嚇音なんだ?」

「おれに聞かないでおくれよ……」

そう言うとノロノロと起きて、ホームズは朝飯を食べに下に降りて行こうとした。部屋を出る前に振り返るとヨルに向かって言った。

「後で飯を、持っていって上げるよ」

「『飯』を頼むぞ」

ヨルは眠そうな目で言った。

「……いってくるよ」

「おい、返事はどうした。おい」

ホームズはヨルのそんな言葉を無視して下に降りて行った。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

今日はレイアは休みである。だから、こんな朝早くにはいないはずなのだが……

「おっはよー、ホームズ」

元気一杯に朝食を頬張っていた。

「………今日休みじゃなかったけ?」

「休みだよ」

「なんで居るんだい?」

「朝の稽古をしていたからね」

「ふーん。あ、今日はミネストローネなんだ。」

そういうと、ホームズの意識はミネストローネの方にいった。野菜たっぷりで美味しそうだ。

「『ふーん』で片付けないでよ。他になんかあるでしょ、どんな稽古してたのとか」

「どんな稽古してたの」

憤慨したレイアに対して、どうでも良さそうにレイアに聞いた。その証拠に、ホームズはミネストローネと一緒に出てきたパンを真剣に千切っている。そんなホームズにこめかみをひくつかせながらレイアは言った。

「走り込みと素振りだよ」

「トマトサイコー」

「聞いてる?!」

「聞いてる聞いてる。」

ホームズはミネストローネに千切ってたパンを浸して食べている。

「やっぱり、武道家たるもの鍛錬は欠かせないんだよ。」

「パンうま」

今度はパン単体でも食べていた。ふっくらとした食感と小麦の味が実に素晴らしいハーモニーを奏でていた。

「ご飯派かパン派で分かれるよね。おれとしてはどちらでも可という、新たな選択肢が欲しい」

「いや、君の要望は聞いてない…じゃなくて!わたしの朝稽古の話を少しは聞いてよ!」

「聞いてるよ。走り込みやって素振りしたんでしょ」

もぐもぐとパンを食べながら、そう応対した。

「そう、でもね、一人じゃ組み手出来ないの」

「………」

「だからさ……」

「ごちそうさま!」

ホームズは急いで朝食を食べ終えると席を立とうとした。

しかし、レイアに周り込まれてしまった。

「組み手の相手して欲しいな〜、なんて」

やっぱりそう来たかとホームズは思った。組み手なんてそんな面倒臭いものゴメンなのだ。それに、

「あのね、おれは怪我人だよ」

「あ、やっぱりある程度戦えるんだ」

しまった、とホームズは顔を歪めた。言葉を明らかに間違えた。

「ということで、怪我が治ったら組み手しない?」

「治ったら、ここを出てくよ」

「お金返さずに?」

「……………治ったらね」

「よおし、約束だからね。今まではジュードとやっていたんだけど、今はいないからさ勘が鈍っちゃうなと思ってたんだよ。いや〜ありがとう」

「………お役に立て嬉しいよ」

ハア、とため息を吐くとパンをおかわりしてまた、食べ始めた。

「ああ、そうそう。今日は宿の玄関掃除が終わったらマティス医院の掃除をしてくれって、お母さんが言ってた」

「……君ね、そういうことは先にいってくれないかい。」

呆れながら、そう言うとパンを食べ終え、ヨルの飯を持って二階に上がった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「俺は『飯』を頼んだはずだぞ。『エサ』じゃなくて」

「いいだろ、別に。それに今日のは鳥そぼろ(薄味)だよ」

ホームズは着替えながら返事をする。ポンチョが上手く着れない。

「何が違うんだ。具体的に言ってみろ」

「鳥か魚か」

ようやく、着替え終わったので、今度は寝癖チェックをする。

「そうじゃなくてだな……」

「いいから、早く食べておくれよ。今日も忙しいんだから」

「……クソ」

不満そうにヨルはエサ、もとい飯を食べ始めた。

ヨルが食事をしているうちに、ホームズは支度を終えた。

相変わらず、アホ毛がぴょこんと立っている。

「どうだい?お味の方は」

「分かって聞いているな」

「当然」

ヨルは嫌そうな顔をすると何も答えず、最後の一欠片を食べ終えた。

ホームズはそれを確認するとさて、と気合を入れた。

「今日も1日頑張りますか!」

一丁前に腕まくりもしている。そんなホームズにヨルは聞く。

 

 

「この皿どうするんだ?」

「……持って降りようか」

少し、気合いが抜けたが関係ない。今日も1日頑張るのだ。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「おはようございます」

「おはよう。君達早起きだね」

玄関の掃除をしていると子ども達が挨拶をしてきた。ちなみに、朝6時30分。

「うん!レイアよりも早起きしてやろうと思ったから」

「ふふふ、甘い。私はもうすでに起きているよ」

「わあ!びっくりした。急に後ろに立たないでおくれよ」

子どもとそんな会話をしていると、レイアが人知れず後ろに立っていた。

「相手に気取られないように、後ろに立つのは武道家の基本だよ」

「ああ、そう、凄いね」

もう、まともに取り合うと疲れると判断したのか、引きつり笑いをしながら、レイアに返した。

「ねえねえ、レイア、早く遊ぼう」

「待った、朝ごはんは食べてきた?」

「ううん、まだ」

「だったら食べておいで。でないと遊んでる途中で倒れちゃうよ」

「ええ〜大丈夫だよ」

「いいえ、大丈夫じゃありません。看護師命令です」

「ぶー。わかった。食べてくる、その代わり…」

「うん、たくさん遊ぼうね」

そう、レイアが言うと子ども達は、家に帰って行った。

「レイアって看護師なんだね。ちょっと忘れかけてたよ。」

そんなレイアを見ながら、ホームズはそう呟いた。

「どうゆう意味かな?」

「そういう意味だろ」

「君達、怪我が治ったら覚悟しなよ」

レイアのそんな脅しにも構わず、ホームズはとっとと玄関掃除を終わらせた。

「さて、次はマティス医院かな」

そう言ってホームズは歩き出した。すると、そこに1人の男が話しかけてきた。

「どうだい?レイアと一つ屋根の下は」

「誰だい?君は?」

「ジュードのダチってところだよ。もちろん、レイアの事も知っている」

「ああそう」

ホームズとしては特に話すことは無いのだが……

「どうだった、お風呂でばったりはもうやったか?」

「おれが泊まっているの宿のほうだからそんなことないんじゃない?」

宿のほうの風呂だって、ちらっと見たら男湯、女湯と時間で分かれていた。うっかりレイアがそっちを使っても時間で分かれてればそんなことないだろう。それに、

「おれ、怪我人だからまだ風呂入ってない」

「え、嘘!言われてみれば少し臭うような……」

「嗅ぐな!」

これ以上傷口をえぐられたくないので、そうそうに黙らせた。

「じゃあ、あれは?」

「どれ?」

「あれだよ。『おはよう、朝だよ、起きて』みたいな奴だよ!起こしにくるアレだよ!」

「……あったよ」

斜め下を向きながら言う。

「マジで!いいな〜男のロマンだよな。で、どうだった。ときめいて心臓バクバクだったろ」

「………うん、そのまま死ぬかと思ったよ。」

昨日の朝の騒動はまだ、記憶に新しい。ヨルもホームズも遠い目をしている。

「だがしかし!勘違いしてはいけない!」

男はまた、熱く語った。

「何を?」

「レイアはジュード一筋なのだ。だから間違っても……」

そんなこと、本人見てれば、一発で分かるのだが、それよりも、

「きみきみ」

「なんだ?」

「後ろ」

レイアが仁王立ちでその男の後ろに立っていた。

「何してるの?」

笑顔が逆に怖い。

「いや、男のロマンとレイアについて語り合っていただけだ、な、ワトソン君」

「ホームズです」

ホームズはそっけなく返す。

「へぇー」

「ゴメンなさーい!」

レイアの迫力に押されてそのまま男は駆け出して行ってしまった。

すると、今度はホームズの方に向き直りホームズの肩に手を置いて詰め寄った。

「今、なにも聞いてないよね」

「え〜と、ジュードのこと?というより、顔近いんだけど。」

「き・い・て・な・い・よ・ね!」

「もちろん!たとえ聞いてても忘れるさ!な、ヨル!」

「俺に振るな阿保」

ホームズとヨルがそう言うとレイアはよろしい、と一言言ってどこかへ行った。

「あれで隠してるつもりなのか?」

「女心は複雑なんだよ」

彼らはそういいながら、マティス医院まで行った。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「なんだか疲れている様に見えるが……」

「ああ、気にしないでください。色々あるんです」

ホームズは仕事を聞きがてら、診察を受けていた。まだ、患者も他にいないということで、ヨルも連れている。

「とりあえず、この調子でいけば近いうちに包帯も取れるだろう。ああ、包帯を濡らさない様にすれば頭を洗っても大丈夫だぞ」

「ありがとうございます」

ホームズはそう言うと、服を着直していた。

「ところで、仕事って?」

「ああ、玄関掃除と草取りをお願いしたいのだ。もちろん、その分治療費から差し引いておく」

「了解です」

ホームズはヨルを連れて外に出た。

マティス医院の庭は青々と草が生えていた。

「多いな草。でも、もう少し。」

ホームズはそう言いながらぶちぶちと抜いていた。そして、ヨルは……木の上で寝ていた。

「君、なにしてるの?」

「見ての通りだ」

あくびをしながらそう言うと、また、寝ようとしていた。しかし、ホームズはそれを許さず、ヨルに石をぶつけた。

「いて、なにしやがる」

「見ての通りだよ」

ホームズはそう言うとまた、草取りを始めた。ヨルはもう一度寝ようと思ったが、また邪魔されそうなので、諦めて木から降りて、ホームズの肩に乗った。

「それで、調子はどうだ」

「誰かさんと違って寝てないからね、疲れてしょうがないよ」

「ま、猫の特権て奴だ」

ホームズの嫌味にたいして、ヨルは詫びれもせず、むしろ自慢げに言った。

「こんの、クソ猫」

「なんだ、クソ人間」

殺伐とした会話をしながら、草取りをしていた。

「相変わらず、仲悪いね」

「レイア?!どうしたの?」

そこには、今日は休みのはずのレイアが居た。いつもの、リーゼマクシアの民族衣装を少し着崩したものを着てそこにいた。

「車椅子を借りに来たんだ」

「「車椅子?」」

訳が分からないという風にホームズとヨルはハモった。

「そ♪そのついでに様子をみにきたんだけど……」

レイアは、ホームズの隣にある草の山を見る。

「草取り上手いね……」

「いや、こんなのに上手いも下手もないだろう」

レイアの言葉にヨルは呆れながら言った。

「ふふん、分かる?おれ、草取り得意なんだ」

「いや、だから……」

ヨルのツッコミは無視してホームズは続ける。

「旅をしてると、食糧が尽きちゃう時があってね。このままじゃ餓死しちゃう、ということで、食べられる草を出来るだけたくさん手にいれようと何度も引っこ抜いていたんだ。そしたら、そのうち特技になっちゃったんだよね」

「……命懸けの理由だね」

人の特技にどんな物語があるのか、なかなか分からないものである。

「死ねばよかったのにな……それなら、俺もこいつから解放されたのに……」

「ヨル、聞こえてるよ」

「へいへい」

ホームズとヨルはまた、険悪な雰囲気を出していた。

「仲良くしなね」

レイアはそう言うとマティス医院に入って行った。それを見送ると、ホームズは呟いた。

「しっかし、まあ、車椅子なんて、何に使うんだろうね。誰か怪我でもしたのかな?」

「その割には落ち着いてただろ」

「それもそうだねっ……と。よし終わった。こんなもんでいいだろ」

草取りを終えるとその大量の草を裏のゴミ捨て場に持っていった。

そして、マティス医院の玄関に戻ってきた。途中車椅子を意気揚々と押しながら出て来たレイアを見たが、気にしないことにした。

「玄関掃除の箒ってこれを使えばいいんですか?」

受付にいる女性にホームズは聞いた。

「ええ、ふふふ」

「どうしたんですか?」

突然、微笑んだエレンに不思議そうにホームズは尋ねた。

「いえ、相変わらず仲が良いなと思ってね」

そういいながら、肩に乗っているヨルを指さした。

「ははは、そうですか……」

ホームズは力無く笑うと外に出て玄関掃除を始めた。

「仲が良いてさ、ヨル君」

「忌々しいな。」

「そうだね……」

そんな会話をしながら玄関を掃いていた。ちゃんと角の方を箒で掃いて、ゴミをかき出していた。

「それにしても、いくら考えてもわからないな。車椅子なんて、何に使うんだろう?」

今度は、玄関から正面門までのスペースを掃いていた。

「お前、まだ考えていたのか?」

「だって、不思議じゃない?」

そのゴミを今度は外に掃き出した。

「考えたって仕方ないだろう」

「そりゃあ、そうだけどさ」

そして、そのゴミと含めて外のゴミを一緒に掃いて、一箇所に集めだした。

「案外乗って遊ぶつもりだったんじゃないのか」

「まさか」

「だよな」

「「ワハハハハハハ!」」

彼らは顔見合わせて高笑いした。

そんな彼らの前を、

「どいてどいて!!」

ものすごいスピードで車椅子が爆走しながら下ってきた。子供達も一緒にいる。そしてその車椅子はホームズがせっかく集めたゴミを撒き散らして、通り過ぎて行った。

「………今、レイアが乗ってなかった?」

「乗ってたな。あのひらひらは間違いなくあのムスメだな。」

彼らは呆然としていた。

「ま、とりあえず、散らばったゴミを集めますか」

ホームズは再び箒で掃き始めた。その時ヨルはふと言った。

「……今思ったんだが、この緩やかな下りの先って確か港じゃなかったか」

つまり、海があるのだ。

「………………あ」

思わずホームズは海の方を見る。

「…………まずい!!」

気付いた時には、ホームズはもう、駆け出した。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

ホームズは可能な限りの全力で走って港まで行ったのだが……

 

「うーそー!」

時すでに遅し。レイアは海に飛び込んでいた。

「何やってんだ、あの子は」

「!!」

そのホームズのつぶやきに近くにいたつり目の少年とその少年に背負われた金髪長髪の女性がホームズの方を見た。

しかし、ホームズは、そんなことに気付かず急いでポンチョを脱ぎ捨て、助けに行こうと、海に飛び込んだ。

 

そして、気付いた。

 

自分が今、怪我人だということに。

 

 

「いててててて!!傷口に塩水がしみる。助けに来といてなんだけど助けておくれ!ヘルプミーー!」

「無理ーー!わたしも自分と車椅子を助けるのに精一杯!自分でどうにかして!」

「じゃあ、ヨル!!」

「俺が助けられるわけないだろう」

サイズはただの黒猫だ。ぷかぷかと海に浮かんでいる。

「薄情者共、覚えてろーーー!」

 

そんな、カオスと化した海を金髪長髪の女性とつり目の少年、ミラ・マクスウェルとジュード・マティスはそれぞれなんとも言えないような表情を浮かべながら眺めていた。

 







今回話すテイルズは〜

………まあ、エクシリアの後はこれしかありません。



そう!エクシリア2です。


これは、2週しました。

そして、2回も同じところで泣きました。


自分の浅いゲーム歴の中で間違いなく指3本に入る名作だと思います。


そして、私は声を大にして言いたい……


ぜひ、エクシリアをプレイしてから、2の方をプレイして下さい!!
倍は面白いと思います!


では、また、次の話で( ´ ▽ ` )ノ

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