1人と1匹   作:takoyaki

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百二話です




始まりましたね、ゴールデンウィーク!
まぁ、有休取ってないので明日普通に仕事ですけど
取り敢えず前回のフルーツの話の外伝が届いたので、見ていました。
やっぱり、面白いよなぁ………



てなわけで、どうぞ


急がば落ち着け

「急がないと……」

「分かったから、ローズもう少し落ち着いて。

さっきから何回も転んでるんだから」

レイアは、隣で焦っている泥だらけのローズを何とか宥める。

「失礼ね。私程落ち着いてる人はいないわ」

「ローズ程落ち着いていない人はいない……です」

エリーゼにまで言われてしまい、返す言葉がない。

「まあ、気持ちは分かりますけど……」

エリーゼは、そう言って俯く。

俯くエリーゼにティポが続く。

『いっつも、僕達が目を離した時に無茶をするもんね〜、ホームズは』

ティポの言葉に全員渋い顔をして、今までのホームズの行いを思い出す。

毒殺騒動の後、闘技大会の決勝、ウィンガル戦にナハティガル戦。

どれもこれもふと目を離した隙にとんでもない無茶をやらかしていた。

空気は更に重くなった。

『『………………………』』

走る一行に沈黙が降りる。

賭けてもいい。ホームズは、必ず予想外の無茶をしてる。

「両腕……使ってないといいけど………」

ジュードの言葉に更に一行の顔から血の気が引く。

「早く破壊して戻るぞ!」

ミラの切羽詰まった声に皆は力強く頷いた。

 

 

一行のかける足は更に速くなった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

走る抜けた一同の前には、ラ・シュガル兵達がいた。

 

 

 

 

 

「ジランドかっ!?」

ミラは刀に手をかけようとする。

「ううん、違う。アレは……」

四象刃(フォーブ)……」

ジュードとローエンは、気付いたようだ。

そこには、ウィンガル、ジャオ、プレザの三人がいた。

彼らは、兵達に囲まれていた。

「まだ?ウィンガル?」

尋ねられたウィンガルは、兵達を観察する。

兵達の白い鎧に紛れ、一人だけ、赤い鎧に身を包んだものがいる。

ウィンガルは、目を険しくさせる。

「アレが隊長だ」

ウィンガルのその言葉を合図に四象刃(フォーブ)は、動き出した。

「久々に血が騒ぐのぉ!」

ジャオは、楽しそうに言うと巨大な槌を振り回し自分の周りにいる兵を一掃する。

ジャオには、勝てないと思ったのだろう。

兵達は、プレザに集中する。

しかし、プレザは、それを嘲笑うかの様に精霊術をぶつけて倒していく。

 

 

 

 

 

 

王手(チェック)

 

 

 

 

 

 

ウィンガルの声が響き、赤い鎧を着た兵は切り倒された。

 

 

 

 

「失礼。王と呼ぶには相応しくなかったな」

 

 

 

 

そう言ってウィンガルが刀を納める頃には全ての兵は倒されていた。

 

 

 

 

 

ウィンガルは、ミラ達の方に顔を向ける。

 

 

 

 

 

「来たか、マクスウェル」

「………やはり、戦場で出会う事になったか。悲しい時代だのぉ」

ジャオは、寂しそうに告げた。

「山狩りは、楽しかったわ。アル」

プレザは、含みを込めてアルヴィンに言う。

「そいつは、良かった」

アルヴィンは、肩を竦めてやれやれと言う風に返す。

「ジランドを討ったの?」

「答える義理はないな」

ジュードの質問にウィンガルは、にべもなく言い返す。

「なら、話を変えよう。

道を開けろ!」

ミラが口を開き、要件を伝える。

すると、プレザが馬鹿にしたように笑う。

「うふふ。冗談でしょ」

「生憎、冗談は苦手なの。こっちは急いでるし、どいてくれないかしら?」

ローズがぴしゃりと言い放つ。

その有無を言わせない物言い他所ににプレザは一行を見回して、ポンと手を叩く。

「あぁ。ホームズの坊やとはぐれちゃったのね……」

うふふと面白そうに笑っている。

「今や、ラ・シュガルからも追われる身だものね、そちらさんは」

ローズは、その情報の早さに驚いて目を向く。

「心配なの?あの坊やの事が」

「ばか言ってんじゃないわよ。心配なんてする訳ないでしょ、あんな奴」

ローズは、即答する。

((嘘つき))

レイアとエリーゼは、突っ込んだ。

ティポも口を開こうとしたが、エリーゼがしっかり抑える。

なにせ、先程からローズの顔は、強張ったままなのだ。

急いで槍の元へと行こうとした矢先にこれだ。

焦らない方がどうかしている。

「まあ、心配しなくても大丈夫よ」

プレザは、そんなローズにひらひらと手を振る。

ローズ達は首を傾げる。

 

 

 

 

「彼には、生け捕りの指令が出ているから」

 

 

 

 

 

プレザの言葉にローズは、更に首を傾げる。

若干安堵したローズとは、違いローエンはハッとした顔をする。

「まさか、ヨルさんの力目当て……」

「その通りだ」

ローエンの言葉にウィンガルは、頷く。

「ホームズさん達を戦争に利用しようというのですね」

ローエンの言葉にローズの顔は一気に険しくなる。

「ま、攻撃系の精霊術を無効化するどころか、更にパワーアップするようなのを利用しない手はないわな」

アルヴィンは、納得する様に呟く。

「でも、だったらホームズは安全なんですよ……ね?」

エリーゼの言葉にローエンは、顔を険しくさせる。

「ローエン?」

「生け捕り……つまり、生きてさえいれば何をしてもいいと言うことです」

その言葉に一行は、顔を険しくさせる。

大人しく協力の要請に首を縦に振っていればいいが、もしそれを断っていた場合、どの様な目に合わせられるか、想像に難く無い。

「でも、ホームズの事だから裏切って一時的に、味方して切り抜けるんじゃ……」

エリーゼの言葉にミラは首を振る。

「ホームズは、私と約束をした。

もう裏切らないと。

恐らく、ラ・シュガル軍の誘いには乗らないだろう」

エリーゼは、ミラの言葉に少し驚いた顔をする。

ミラは険しい顔のまま口を開く。

「……私達が槍を破壊する。

そうすればそちらにとっての脅威を排除できる」

ミラはそう言った後ちらりとローズを見る。

「そして、槍さえ壊せば私達は、ホームズを救出に行ける。

ホームズさえ参加しなければ脅威は完全に消える。

そうすれば、お前たちの勝ちは確実だ。何故邪魔をする?」

「陛下の望みだからだ」

ミラの質問にジャオはあっさりと答える。

「この戦は、ただの通過点にすぎない」

ウィンガルは、相変わらず冷淡に言う。

「ここで、争えばあなた達も命を落とすかもしれない」

ローエンは、ウィンガルを必死に説得する。

「王を支えるものがいなくなるのですよ!」

「陛下は、お一人でも歩まれるわ」

しかし、ローエンの必死な説得も四象刃(フォーブ)には、届かない。

プレザは、あっさりと切り捨てた。

「あなたと違って、後ろに隠れてこそこそ戦うような真似はされない」

ウィンガルは、冷淡にローエンに告げる。

「どういう意味でしょうか?」

「イルベルト殿、なおも誤魔化されるつもりか?」

ウィンガルの口調が少しだけ強くなる。

「民の先陣を切り、戦わなければならない筈のあなたは、最後尾に回ってしまった」

ローエンは、もう何を言われているのか分かったようだ。

顔を伏せるローエンに対してウィンガルは、追撃の言葉を緩めない。

「その結果がナハティガルの独裁を許し、自らの手にかける結末を迎えたのだろう」

「ちょっと、ローエンじゃ……」

ないとローズは、言おうとしたが、ローエンは手で制する。

おいそれと晒していい情報ではない。

「さっきから、情報はえーな」

アルヴィンは、頭をかきかながら、呆れた様に言った。

「ローエンは、悪くないよ。

悪いのはナハティガルだ」

「国にとって、個人の是非など関わり合いのないことだ」

ジュードの言葉をウィンガルは、バッサリと、切り捨てる。

「………どういうこと?」

レイアは、戸惑いながら尋ねる。

「導く指導者がいなければ、民は路頭に迷うだけ、と言っている」

「なら、今からでもローエンが……」

「………そう簡単には、いきません」

ジュードの言葉をローエンは、少し黙った後否定した。

「私など、所詮は一介の軍師。

王には、相応しい器の持ち主が必要なのです」

ローエンの言葉にジュードも押し黙る。

「我らが王は、その器を持っている」

ジャオは腕を組んで自慢気に言う。

段々とローズにも話しがどこに行きたいのか分かってきた。

「そして、民を導く為の道を見出されたのよ」

「槍は我らが陛下の力として貰い受ける」

そう、だから四象刃(フォーブ)は頑なに道を譲らなかったのだ。

せっかく手に入れようという力を壊されては堪らないのだから。

「何度も言わせるな」

しかし、ミラはそれにぴしゃりと言い放つ。

「クルスニクの槍は渡さない。

どんな理由があろうとだ」

そう言ってミラは片手剣に手をかける。

「ミラの……マクスウェルの思いは邪魔させない!」

ジュードも小手をはめて戦闘の準備を整える。

話し合いは無駄だと悟ったのだろう。

ウィンガルは、自分の増霊極(ブースター)を起動させる。

眩い光とともにウィンガルの髪が白くなる。

《ふん!決着をつけてやる!》

「何を言っているかは、分からないけれど、やる気みたいね」

ローズは、二刀を引き抜く。

「来るぞ!」

「みんな、油断しないで!」

 

 

 

 

 

ジュードの言葉を合図にローズは、泥水を散らすように踏み込んだ。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「先手必勝!魔神剣・双牙!!」

地面を二つの剣戟が這うように進む。

ウィンガルは、それを無言で防ぐ。

防がれている間にローズは、距離を詰め刀を振り被る。

しかし、

「儂を忘れてもらっては困るぞ」

ジャオの槌がローズを襲う。

ローズは、ギリギリのところで防ぐが思い切り吹き飛ばされてしまう。

「ぐっ!!」

ローズは、泥だらけに転がりながらも何とか立ち上がる。

「どんな力してるのよ……」

悪態を吐くのも束の間、今度はウィンガルが襲いかかる。

「鳳墜拳!!」

そんなウィンガルをジュードが殴りつけ、止める。

「助かったわ、ジュード」

「ローズさんよ、少し落ち着いてくれ」

そう言ってアルヴィンは、銃弾をウィンガルの後ろにいるプレザに打ち出す。

しかし、プレザに届く前にウィンガルが叩き落す。

「失礼ね、こんなに計画的に攻撃してるのに」

「不用意に近づくのを計画的とは言わないよ、ローズ」

ローズは、さっと目を背けるとため息を吐く。

「……正直にいうわ。ホームズの事が心配なの。

だから、早く決着をつけたい」

うん知ってた、という言葉をギリギリで飲み込むと、ジュードは諭す様に言う。

「でも、それで負けちゃったらそれこそそれまでだよ」

「………」

ローズは、頬を引っ張る。

「……どうも、私は頭に血が上りやすいわね……」

「うん、知ってる」

「優等生、声に出てる」

アルヴィンの突っ込みでジュードは、ローズが真っ赤になって睨んでいるのに気付いた。

ジュードは、慌てて咳払いをする。

「ごほん、取り敢えずローズはウィンガルさんを任せていい?」

「ジュード達は?」

「プレザを止めるさ」

ローズの質問にアルヴィンが軽く答える。

「……ジャオさんは、どうするの?」

「私たちに任せろ」

ミラがそう言うと、レイアとエリーゼが頷く。

「ローエンには、後方支援をお願いしてある」

ローエンは、微笑みながら頷く。

ローズは、二刀を構える。

「わかったわ」

ローズは、そう言うと詠唱を始める。

《馬鹿め!!》

ウィンガルは、ローズの詠唱を止めるべく全力で突っ込んでくる。

しかし、

「省略!フォトン!!」

詠唱は、あっという間に終わり突っ込んできたウィンガルを光の球が弾けて吹き飛ばす。

態勢を崩したウィンガルにローズの追撃を仕掛ける。

「瞬迅剣!!」

ウィンガルが慌てて防ぐ。

ローズにとって、それも予想済みだったようだ。

防がれた時、ローズの二刀を炎が包む。

「鳳凰天駆!!」

燃え上がる鳥となったローズがウィンガルを切り上げる。

《ぐっ!!》

「ウィンガル!!」

「余所見してる場合か?」

視線を逸らしたジャオにミラが手をかざす。

「フレアボム!!」

「ぬぉお!!」

ミラの魔技をジャオは、ギリギリで防ぐ。

ガードを解くと、そこには詠唱を終えたエリーゼがいた。

「『ブラッティ・ハウリング!!』」

地面から黒い手が現れ、ジャオを襲う。

普通ならこれで勝ちだ。

しかし、プレザの事もある。

「多分………」

レイアは、構える。

精霊術が解けるとそこには、普通に立っているジャオがいた。

「やはりな……」

ミラは、歯噛みをする。

ジャオは、パンパンと服を叩く。

「………恐ろしい威力だのお……やはり、倒さねばならんのだのお」

ジャオは、悲しそうに目を一瞬伏せる。

ジャオとしては、エリーゼを傷つけたい訳ではない。

しかし、この戦いに勝つにはエリーゼの存在は無視できない。

ジャオは、決意を固めると槌を肩に担ぐ。

そして並んでいるレイアとミラに向かって槌を振り上げる。

「魔王地顎陣!!」

「?!!」

ミラとレイアは、弾ける地面から何とか飛び退く。

しかし空中に浮いた、ミラとレイアをジャオの振り回された槌が襲い来る。

「ぐっ!!」

「うっ!!」

レイアは、ローズの方に、ミラはジュード達の方に吹き飛ばされてしまった。

「ミラ、レイア!!」

「レイア!?」

苦痛に顔を歪めているレイアを見て、ローズが驚いている。

すると、レイアに気をとらている間にウィンガルがローズに斬りかかる。

《余所見している場合か?》

(ヤバい!今かわすと、レイアが……)

ローズは、刀を交差して防ぐ。

「ぐぅっ!!」

予想外の力にローズは、歯軋りする。

(前より……強い!)

 

 

 

 

 

 

「ミラ!」

同じように苦痛に顔を歪めているみらにジュードは、目で追う。

「……ブルースフィア!!」

そのジュードの頭上に水泡が形成され、落下してくる。

ジュードは、バックステップをしようとするがギリギリで間に合わず食らってしまった。

「うっ!!」

とは言え、大体かわせているので、ダメージ自体は少ない。

「ジュード!取り敢えず、ミラをどうにかしろ!」

アルヴィンの言葉にジュードは、コクリと頷き治療に駆け寄る。

「ミラ」

ミラはジュードの言葉に顔を歪ませながら辺りを見回す。

「エリーゼ……は?」

ジュードは、急いでエリーゼの方を見た。

 

 

 

 

そこには、一人でジャオと対峙しているエリーゼがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャオは、槌ではなくその大きな手を握り拳にして構える。

エリーゼは、必死に震えないように堪える。

はっきりと分かるのだ。

二人の援護なしでは、詠唱も間に合わない。

ローエンの援護も今はジュード達に向いてしまっている。

それでも、震えは見せない。

どこかの化け物との約束だから。

 

 

 

震えを堪えながらも強い意志を宿したエリーゼの目を見てジャオは、呟く。

 

 

 

「………安心せい。ちゃんと手加減する。少し痛いだけじゃ」

 

 

 

 

そう言ってジャオは、拳をエリーゼの水月に向かって放った。

 

 

 

 

 

『『エリーゼーー!!!』』

 

 

 

 

誰も駆けつける事が出来ない。

その時、エリーゼの前に人影が飛び込んでくる。

一瞬のことで何だか分からなかったが、はためくポンチョだけがしっかりとわかった。

 

 

 

 

 

 

その人影は、エリーゼに拳が届く前にそのまま空中で回し蹴りを放ちジャオを蹴り飛ばした。

 

 

 

その人影は、そのまま地面に水を飛ばしながは、着地する。

 

「安心したまえ。手加減なんてしない。ばっちり痛いだけだ」

 

 

 

 

 

 

人影……泥だらけのホームズは腰に片手を当ててそう言った。

 

 

 

 

 







やっと、パーティーメンバー全員が揃いました。


ここからです!


ではまた、百三話で( ´ ▽ ` )ノ

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